Q. トップノートとかミドルノート、ラストノートって何?

spray Q&A

A. 香水は揮発速度(香りが肌の表面から蒸発するスピード)によって、速い順に、トップノートミドルノートベースノートの三つに分けられます。ベースノートは、日本でラストノートと呼ばれることもありますが、これらは「トップノートから順番に香り、ラストノートは最後に香る」という意味ではありません。すべてが同時に香っているのですが、肌からいなくなる(=蒸発しやすい)順番と考えると分かりやすいでしょう。

 例えば、グレープフルーツ・ローズサンダルウッドで構成された香水において、これらは順番待ちして、グレープフルーツの香りが先に香り、次にローズ、サンダルウッドと香っていくわけではありません。最初からすべての香りは存在しますが、揮発速度の速い(=分子が早く運動していて、肌からたくさん外に飛び出ているイメージ)グレープフルーツが最初は強く香り、ある程度時間が経つとグレープフルーツの香りの分子は肌から消えます。すると次に揮発速度の速い(グレープフルーツよりは遅い)ローズの香りが強く感じやすくなります。そして、比較的揮発速度の緩やかなサンダルウッドが最後まで肌の上に残っている、ということです。

 思えば、海外のブログやサイトでは、日本人がよくする「トップは~香り、ミドルには~になり、最後は~。」という表現をあまり見ないように感じます。実はラストノートは主に日本での呼び方になり、海外ではベースノートが主流なのです。
 これは恐らく、あくまで「トップ・ミドル・ベースノート」は、どういう揮発速度の香料を使ったのかを説明するためのものであり、実際にはすべての香りが見え隠れしながら、刻一刻と香りが移ろっていくからではないかと推測します。上記の表現と同じで、「香りが変化する(change)」という表現はあまり多く見ません。「変化する」ではなく、「香りが展開する」「香りの本質が姿を現す」なんて表現はいかがでしょうか?

 各香水において、トップノート・ミドルノート・ベースノートを分かりやすいようにしたものが、香りのピラミッドになります。トップ・ミドル・ラストの変化は、複数の香りで作ると生まれるわけではなく、1つの精油にも存在します。

香水作りの技巧の大部分は、この時間差を利用し、(中略)、いかにすべての段階で興味深く美しい効果を生み出せるかにかかっている。

タニア・サンチェス

各ノートの詳細

トップノート

 最初の数分で肌から揮発する部分のことで、最も分子量が軽く、蒸発しやすいものが含まれます。香りのピラミッドでは、先端の山の部分にあたり、ビターオレンジベルガモットタンジェリンなどのシトラス&フルーツの香り、バジルラベンダーなどのアロマティックな香りなどいわゆる軽やかに感じる香りがここに属します。ヘッドノートとも呼ばれます。

ミドルノート

 トップノートの後、2~4時間かけて展開する部分で、調香師が最も表現したい部分のため、ハートノートとも言われます。香りのピラミッドでは、真ん中部分にあたり、ローズジャスミンをはじめとするフローラル、ガルバナムカシスなどのグリーンやフルーツの香りなどが属します。

ラストノート

 ドライダウンとかベースノートと呼ばれるラストノートは、1日中香る部分で、ここにどれだけ高品質なものが使われているか、揮発の遅い香料が使われているか、によって持続時間が決まってきますクローブカルダモンをはじめとしたスパイス、サンダルウッドシダーなどのウッディ、バニラベンゾインなどのアンバー系ムスクなどが含まれ、価格帯もかなり高いものが多いです。

トップノート・ミドルノート・ラストノートに関する調香師・業界人の名言

香水は、このように時間が経つにつれて広がってゆくようにみえるにもかかわらず、それ自体、まとめられているというものは、主要テーマが展開するあいだ、すみやかに消えうせる、最もはかないいくつかの要素を別にすれば、成分のほぼ全体が、調香師の実現しようとした嗅覚的形態に関与するからである。香水と音楽のあいだの主な違いは、まさにこの点である。

エドモン・ルドニツカ

結局のところ、もし香水がトップから最後まで同じ香りであれば、面白くありません。蒸発するにつれて、異なるイメージや感情をもたらすべきなのです。しかし、劇的な変化はいけません。もしトップノートが体につけた際に全く違う香りになったり、上手く肌と結びつかなかったりすれば、不快になるからです。香水業界における芸術は、洗練させることと構造とにすべてかかっているのです。

ソフィア・グロスマン

トップノートは、香水の微笑みであり、最初の印象であり、香水という飛行機の離陸部分になります。ハートノートは、香りの曲がり角で、重要な移り変わりの部分になります。ここが上手く調整されていれば、香水に柔らかさと安心感が生まれ、最後の香りに期待が高まっていきます。最後に残るベースノートはシグネチャーノートとも呼ばれ、香水に魂を与えます。そして、その香水の香りの記憶を与える部分になります。

シルベーヌ・ドラクルト
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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