Rose
ローズ

ローズ 香料ま行や行ら行わ行

 25,000種を超えると言われる品種があるバラですが、香水に使われるローズは2種類に大別できます。ダマスセナ種(Rosadamascena、ダマスクローズ)センティフォリア種(Rosa centifolia、センティフォリアローズ)です。ダマスクローズは世界中で栽培されているのに対し、センティフォリアローズは主にグラースで栽培され、栽培方法は秘密になっています。ちなみに、ローズの香りは200~400の成分で成り立っていますが、まだすべては発見されておらず、何がローズをローズたらしめているのかは不明だそうです。

 ロベルテ社によれば、市場の98%の女性用香水と46%の男性用香水には、何かしらのローズの香り(天然・合成問わず)が入っているそうです。

ローズは、常に香水に多くの生命を吹き込んでくれる花です。

クリスティーヌ・ナジル

ダマスクローズ(Damasc Rose)

ローズが香水にとって何であるかというのは、ヌードが絵画にとって何であるか、愛が歌にとって何であるかと同じです。それは取るに足らないと思えるアカデミックな主題ですが、無限の可能性を開いています。

フレデリック・マル

概論

 ダマスクローズは、ローズオイル(ローズオットー、ローズアブソリュート)、ローズコンクリート、ローズウォーターが商業的に使われます。現在は野生では見つかりません。

 起源は中東にあり、名前はシリアのダマスカス(Damascus)が由来になっています。
 オスマン帝国(Ottoman Empire)の時代、ブルガリアとシリアは植民地だったため、双方行き来ができ、商業も交流がありました。そのため、シリアからブルガリアにローズが持ち込まれたのです。

 最大の産地は、ブルガリアとトルコで、一般にブルガリアンローズターキッシュローズは、このダマスクローズのことを指します。5月の半ばから6月の半ばにかけて手作業で収穫され、水蒸気蒸留と溶剤抽出法の2パターンで抽出されます。

 トルコで最初に栽培されたのは1894年に遡り、今では 年間1.7トンのローズオイル、5トンのローズコンクリートが抽出されています。収率はローズオイルで0.02%、アブソリュートで0.13%なので、年間数万トンの花が採取されている計算になります。

ちなみに…

ローズオイルは1kgあたり10,000€(約120万円、収率は0.02%)、ローズアブソリュートは1kgあたり2,100€(約25万円、収率は0.13%) の価格がつけられます。つまり、本物のダマスクローズアブソリュートをたくさん使えば、10gあたり2500円するので、価格を安くできるはずがないのです。しかし、市場には言葉巧みに0.01%くらいしか入っていないのにローズ香水だと謳う香水が溢れています。

 ダマスクローズが最も良い蒸気を発しているのは、AM8:30~AM9:00の間になります。したがって、朝摘みされることが多いです。ちなみに、1人の収穫者が摘み取れる花は1時間で5kgと言われます。

水蒸気蒸留

 ローズを水蒸気蒸留すると、Direct Oilと呼ばれるローズオイルローズウォーターが得られます。このローズウォーターをさらに蒸留し、Indirect Oilと呼ばれるローズオイルとSecond Waterと呼ばれるローズウォーターを抽出します。2つのオイル、2つのウォーターをそれぞれ合わせることで、より純度の高い製品へと仕上げます。基本的にDirect oilとIndirect oilを混ぜたものをローズエッセンシャル(ローズの精油)と言います。
 香りはフレッシュで、グリーン、スパイシーな香りも感じます。

 ちなみに、おおよそ35℃くらいの温度で蒸留をします。

溶剤抽出法

 ローズのようなデリケートな花には溶剤を使うことで精油を抽出する方法も使われます。溶剤によって花を洗い、花の香りがついた溶剤を60℃の熱で温め、溶剤を取り除きます。そこから得られたローズのエッセンスをローズコンクリートと言います。約0.25%の収率(400kgの花から1kgのコンクリート)になります。この状態ではワックス状になります。

 得られたコンクリートは、アルコールと混ぜ、アルコールに溶かしていきます。これにより、ワックスを取り除き、アブソリュートを得ます。アブソリュートはコンクリートから約60%の収率で得られます。香りはジャムっぽい甘さが多くなっており、フレッシュさはあまりありません。

 コンクリートからアブソリュートを得るためには、アルコール抽出法を使いますが、代わりに分子蒸留をすることもできます。分子蒸留をすると、色を抜いたり、アレルギー物質(メチルユーゲノール)を取り除いたアブソリュートを手に入れることができ、香りはコンクリートに近いフローラル&油分を感じ、ジャムっぽい香りは減ります。

アブソリュートは、エッセンスと比べると、トップノートではあまり主張しません。一方で、ローズエッセンスは、フォーミュラのまさに始まりの部分からすぐに輝き出します。

イザベル・ドワイヤン

センティフォリアローズ(Centifolia Rose)

 センティフォリアローズは、別名プロヴァンスローズキャベツローズ(cabbage rose、キャベツのように花びらがたくさんあるため)、ローズドメ(Rose de Mai)と呼ばれます。これは17世紀~19世紀の間にオランダのブリーダーによって生み出された品種で、100枚の花びらから成るという意味でセンティフォリアと名づけられた説がありますが、確かな資料は残っていません。
 主にグラースやモロッコで栽培され、甘く、軽いはちみつのような香りがします。

 主に溶剤抽出法によってコンクリートが採れ、そのコンクリートからアブソリュートを得ることができます。1000kgから1.3kgしか抽出できません。ちなみに、センティフォリアは水蒸気蒸留では収率が低すぎるため、ローズウォーターを得るために使用されるだけになります。

 グラース市では、ローザセンティフォリアに敬意を表し、1971年から毎年春にバラ博覧会(エクスポローズ)を開催しています。

 ローズドメは、その名の通り、5月(Mai)が開花の時期で、働く人たちは、この1か月で収穫し、生計を立てています。日が昇るとバラから香りの成分が蒸発し、抽出できる香りが減ってしまうため、早朝から日が完全にのぼるまでに作業をなければなりません。収穫者は1時間で6㎏収穫します。

香りの違い

・ブルガリアンローズコンクリート…ベルベッティで、スパイシーフローラル、芳醇で、はちみつの甘さがある。

・ブルガリアンローズアブソリュート…明るくジューシーで朝露のようなフレッシュさがある。徐々に甘く、アーシーな部分が出てくる。

・ターキッシュローズコンクリート…湿ったローズの香りとゴージャスなゼラニウムの温かみが感じられる。

・ターキッシュローズアブソリュート…ハニー調の香りと深みがあり温かみのあるローズの香りをもつ。

・ローズドメアブソリュート…温かみ、深み、そしてハチミツのような甘さを持つフローラルの香りがする。グリーンで、重い香り。

ローズに関する調香師・業界人の有名な言葉

私は全ての花が好きよ。でもローズは最も香水に適したノートだと思うの。女性的で、とても花びらの香りがして、すごく若々しい。

ソフィア・グロスマン

もともとの天然のローズに存在するβ-フェニルエチルアルコールは、ローズの匂いを喚起させるときに使われてきましたが、今では日本酒や炊いた米の匂いを喚起させる素材でもあります。

ジャン=クロード・エレナ

愛というのは自由のような香りであるべきであり、それは私にとってはローズです。ローズは私のお気に入りで、香水に使うのが好きな香料です。愛というのは私が生み出す全ての作品の中心であり、何かを生み出すときというのは自分が気持ちよく感じているべきだと信じているの。だからローズは常に、私の作品に存在しているのよ。

デルフィーヌ・ジェルク

私にとって、バラは香水製品を象徴する花であり、欠くことのできない原料であり、この業界では香水の「お砂糖」とよく呼ばれている。

(イストワールドゥパルファンの)「1876」の香水用には、モルドバ産のとても美しいローズを見つけた。しかし、天然原料はコスト高の製品でもあり、残念なことに、いつでも最高品質を用いるのに十分な予算があるとは限らない。もっとも、そのためにローズの原料は種類がとても豊富なのである。

シルビー・ジュルデ

代表的な香水

 分類は、主にRose(Nez Editions、2020)を元に、場合によって追加等しています。詳細をご覧になりたい場合は、この本がオススメです。
 自分がどういうタイプのローズの香りが好きなのか、発見の一助になれば幸いです。

ベジタルグリーンローズ

ティーローズ(パフューマーズワークショップ、1971)、プレジャーズ(エスティローダー、1995)、レッドローズ(ジョーマローン、1996)、サマジェステラローズ(セルジュルタンス、2000)、ローズボタニカ(バレンシアガ、2013)

ブラックカラントリーフグリーンローズ

ロンブルダンロー(ディプティック、1983)、インラブアゲイン(イブサンローラン、1998)、ローズイケバナ(エルメス、2004)、ルジュールスレーヴ(ルイヴィトン、2018)

ウッディローズ

ヴォルールドゥローズ(ラルチザン、1993)、ローズ31(ルラボ、2006)、フローラボタニカ(バレンシアガ、2012)

アクアティックローズ

エスケープ(カルバンクライン、1991)、ロードゥイッセイ(イッセイミヤケ、1992)

アルデヒドローズ

マダムロシャス(ロシャス、1960)、カランドル(パコラバンヌ、1969)、ホワイトリネン(エスティローダー、1978)

アンバーローズ

ステラEDP(ステラマッカートニー、2003)、ザコヴェテッドデュシェスローズ(ローズ公爵夫人、ペンハリガン、2016)

スパイスローズ

ラローズジャックミノ(コティ、1904)エタニティ(カルバンクライン、1988)、オポネ(ディプティック、2000)、ローズポワブル(ディファレントカンパニー、2000)、ミラク(ランコム、2000)、ラフィーユドュベルリン(セルジュルタンス、2013)

ヴァイオレットローズ

パリ(イヴサンローラン、1983)、トレゾア(ランコム、1990)、ミシア(シャネル、2015)

フルーティローズ

ナエマ(ゲラン、1979)、スソワールウジャメ(グタール、1999)、パリジェンヌ(イヴサンローラン、2009)

シプレローズ

アロマティックエリクシール(クリニーク、1971)、ローズドゥニュイ(セルジュルタンス、1993)、ユヌローズ(フレデリックマル、2003)、ローズバルバル(ゲラン、2005)、ポートレイトオブアレディ(フレデリックマル、2010)

パウダリーオリエンタルローズ

ローズ(キャロン、1949)、フラワーバイケンゾー(ケンゾー、2003)

パウダリーアイリスローズ

クロエEDP(クロエ、2008)、アラローズ(メゾンフランシスクルジャン、2015)、ローズデヴァン(ルイヴィトン、2016)

ミドルイースタンローズ

ローズドアラビー(アルマーニプリヴェ、2010)、ヴェルヴェットローズ&ウード(ジョーマローン、2012)、マジェスティックローズ(イヴサンローラン、2013)、ウード&ローズ(カルティエ、2014)

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

Rootをフォローする
香料ま行や行ら行わ行
ルシェルシェアする
Rootをフォローする
Le Chercheur de Parfum

コメント