「あらゆる決まり文句から、遠く離れて。」
ダニエラ・アンドリエ、ノーズのインタビューより
1964年、ドイツ・ハイデルベルク生まれ。
ダニエラ・アンドリエは、ジボダン(Givaudan)のマスターパフューマーです。プラダ(Prada)の香りを長く手がけてきた一人ですが、その仕事は一つのブランドに収まりません。ゲラン(Guerlain)、グッチ(Gucci)、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)など、異なる世界を香りに置き換えてきました。
調香師になる前には、パリのソルボンヌで哲学を学んでいます。しかし、その経歴から想像されるような、理論を先に組み立てる作り手ではありません。彼女の香りの出発点にあるのは、失われない幼少期の記憶と、本人にもすべては説明できない直感です。
調香史
コーヒー豆と、母の香水
幼いダニエラは、誰もが自分と同じように匂いを感じていると思っていました。自分の嗅覚への関心が人より強いと気づくのは、大人になってからのことです。
その子ども時代をよく伝えるのが、コーヒー豆の逸話です。大好きな香りにもっと近づこうとして、豆を鼻に入れてしまいます。結局、病院で取り出してもらうことになりました。香りを遠くから観察するのではなく、その中に入りたい。そんな子どもの衝動が、そのまま残っているような話です。
父がつけていたのは、ディオール(Dior)のオー・ソヴァージュ(Eau Sauvage)。母の香水は、エルメス(Hermès)のカレーシュ(Calèche)と、イヴ・サンローランのリヴ ゴーシュ(Rive Gauche)でした。美しい叔母が纏うシャネル(Chanel)のN°19にも惹かれ、その香りを秋の落ち葉に重ねて覚えていたそうです。
4歳から7歳ごろの夏には、毎年2か月ほどイタリアで過ごしました。太陽で温まった松の葉、地中海の空気、ラベンダーやアイリスを思わせるシーツ。後年、プラダやグッチ、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)と仕事をするようになったとき、意図していなかったのにイタリアのブランドとの縁が重なったことに、自分でも気づいたといいます。
しかし、13歳のとき、母が42歳で亡くなります。15歳ではフランスへ移り、パリでバカロレアを取得しました。やがて哲学を学ぶ一方、香りは離れてしまった人や場所につながる感覚として残り続けました。
システム(System)誌で、彼女は自分の記憶についてこう話しています。
「悲しい記憶はあります。でも、それは映像として残っていて、匂いとしては残っていません。」
ダニエラ・アンドリエ、システム誌
これは、匂いが誰にとっても幸福な記憶になるという意味ではありません。ダニエラ自身にとって、香りはまず、生きていた時間の豊かさを連れ戻すものだったのです。
香りと記憶の関係を考えるとき、彼女は作家マルセル・プルースト(Marcel Proust)の文章を引き合いに出します。なかでも心を動かされるのは、サンザシの香りに満ちた小道を、虫の羽音を思わせる言葉で描いた一節です。写真に残るのは、カメラに入った範囲だけ。一方、香りには、その時間に感じていたものまで呼び戻す力があると考えています。
パリで開いた香水の世界
パリで出会った友人たちは、ゲランのシャリマー(Shalimar)、ルール ブルー(L’Heure Bleue)、アビ ルージュ(Habit Rouge)を纏っていました。それまでの自分の周囲では馴染みの薄かった香りが、街の中では自然に息づいています。ダニエラにとっては、宝物の詰まった洞窟に入ったような経験でした。
最初の恋人から贈られたのは、ゲランのシャマード(Chamade)です。パフューム・ソサエティ(The Perfume Society)のインタビューでは、18歳になったころの5月1日だったと振り返っています。何十年も後まで日付を覚えていたほど、心を動かされた贈り物でした。
それでも、当時は調香師という職業を知りませんでした。香水はファッションデザイナー自身が作るものだと思っていたのです。
転機は22歳ごろ、ある女性が調香師という仕事について話しているのを聞いたことでした。本人のインタビューには、パーティーで、副鼻腔炎のためにその道を断念した女性の話を耳にしたとあります。ダニエラも以前から副鼻腔炎やアレルギーに悩んでいました。それなのに、この職業を知った瞬間、自分は調香師になれると確信したといいます。
まず電話をかけた先はイヴ・サンローランでした。そこで香水学校のイスィプカ(ISIPCA)を紹介されますが、入学に先立って化学を学ぶ必要があると知ります。すぐに進める道が見えないなか、友人がシャネルのジャック・ポルジュ(Jacques Polge)を紹介してくれました。
1988年、24歳のダニエラはシャネルで研修を始めます。ポルジュは彼女を励まし、その後の道筋を作ってくれた最初の師でした。しかも、母が愛用していたリヴ ゴーシュの創作者の一人でもありました。香水の仕事への入口に、母の記憶とつながる人物がいたのです。
二人の師と、引き算をすること
ダニエラはロベルテ(Robertet)でも研修を経験し、1989年にはグラースのルール調香学校(École de Parfumerie Roure)に進みます。ロベルテでの経験については、イタリアのブランドに向けた最初のプロジェクトを獲得したことも語っています。
学校を終えると、アルジャントゥイユのルールでエドゥアール・フレシェ(Édouard Fléchier)のアシスタントを務めました。ディオールのポワゾン(Poison、1985年)を生み出した調香師です。
フレシェから繰り返し教えられたのは、不要なものを取り除き、構造を簡潔にすることでした。素材を増やせば表現が豊かになるとは限りません。残すべきものを見極める訓練が、後のダニエラの調香につながっていきます。
1991年、ルールとジボダンの統合を経て、活動の舞台はジボダンへ移ります。1990年代にはニューヨークでも暮らし、カルバン・クライン(Calvin Klein)のコントラディクション(Contradiction、1997年)をアントワーヌ・リー(Antoine Lie)と共同制作しました。
ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)のエンポリオ アルマーニ シー(Emporio Armani She、1998年)、グッチのエンヴィ フォー メン(Envy for Men、1998年)、ラッシュ フォー メン(Rush for Men、2000年)なども、この時期の仕事です。2002年にはグッチ オードパルファム(Gucci Eau de Parfum)を発表し、翌2003年には同作がフランスのフィフィ賞で評価されました。
母のリヴ ゴーシュを、もう一度作る
2003年、ダニエラはリヴ ゴーシュの処方変更に携わります。オークモスの使用条件の変化に対応しながら、香りの大切な部分を残す仕事でした。
母が纏っていた香水ですから、単なる技術上の課題ではありません。香りの研究者アニック・ル・ゲレール(Annick Le Guérer)への言葉からは、その慎重な姿勢が伝わります。
「オークモスをコピーしようとするのではなく、そこにオークモスがあるという感覚を生み出そうとしました。コピーには興味がありません。」
ダニエラ・アンドリエ、アニック・ル・ゲレールによる人物紹介
同じ素材を同じように置き換えるのではなく、嗅いだときの存在感を別の構成で取り戻す。彼女が大切にする記憶と、フレシェに学んだ構造への意識が、ここでは一つの仕事になっています。
決まり文句を避けるということ
冒頭の言葉は、ノーズ(Nose)のインタビューで尋ねられたモットーへの答えです。ダニエラが避けようとするのは、単に過去と似た香水ではありません。流行や性別のイメージに頼り、香りそのものを考えなくなることです。
システム誌では、甘さやパチュリに偏る当時の流行を、静かな海辺を取り囲む巨大なヨットになぞらえています。ただし、甘い香水を一律に否定しているわけではありません。後に手がけたプラダ キャンディ(Prada Candy、2011年)を見れば、そのことはよく分かります。問題は、甘さを使うことではなく、何を表現するために使うのかという点にあります。
男性用と女性用の区分についても、同じ考え方です。
「これは男性用の香水、これは女性用の香水、と言われるのが好きではありません。香水は誰でも纏えるべきだと思います。男性だけ、女性だけのものにしてしまうと、私にはそれが決まり文句に見えます。そこには自由がありません。」
ダニエラ・アンドリエ、システム誌
販売上の区分があっても、香りを感じる人の自由まで限定したくない。その姿勢は、後年の男性用フレグランスにも自然につながっています。
近づきすぎると、飛んでいってしまう鳥
創作は、まず過去の試作や自分の記憶から始まります。開発中の仮の名前をつけ、最初の構造を作る。ダニエラにとって、その段階はかなり直感的なものです。
「美しい鳥に、とても近づいているようなものです。間近で、その美しい色をすべて見ることができます。でも、近づきすぎてはいけません。飛んでいってしまうからです。」
ダニエラ・アンドリエ、システム誌
直感を壊さないように扱いながら、次の段階では経験を使います。何と何が合うか、どこがうまくいかないか。顧客やジボダンの同僚の意見も受け止め、最初の発想を伝わる香りへ整えていきます。
本人によれば、得意なのは長距離走より短距離走です。締め切りが迫り、一つの作品に集中する終盤ほど創造的になれるそうです。一方で、パフューム・ソサエティには、ある年に23件のプロジェクトを獲得し、取材の前日にも異なる段階にある6本を進めていたと話しています。直感的な作り手であることと、多くの仕事を動かせることは、彼女の中で矛盾しません。
代表作とその背景
プラダと育てた、香りの言語
プラダとの仕事は、2003年のブティック限定コレクションに遡ります。No.1 アイリス(No.1 Iris)、No.2 ウイエ(No.2 Oeillet)、No.3 キュイール アンブレ(No.3 Cuir Ambré)、No.4 フルール ドランジェ(No.4 Fleur d’Oranger)。素材に向き合うこの仕事から、後の大きなコレクションへと関係が育っていきました。
ダニエラは、どのブランドに向けて作るのか分からないまま、汎用的な香りを開発する方法には馴染めないと話しています。相手の世界を理解して初めて、自分の嗅覚の言語へ置き換えることができる。その意味で、仕事は翻訳にも似ています。
2025年のフレグランス・ファウンデーション米国(The Fragrance Foundation USA)のインタビューでは、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とファビオ・ザンベルナルディ(Fabio Zambernardi)への感謝を、こう表しています。
「今の私が調香師としてあるのは、プラダ夫人とファビオ・ザンベルナルディのおかげです。私の想像力が開かれ、尽きないインスピレーションを与えてもらいました。」
ダニエラ・アンドリエ、フレグランス・ファウンデーション米国、2025年
伝統と新しさ、ありふれたものと貴重なもの、美しさと違和感。対照的な要素を組み合わせるプラダの世界は、彼女の創作を広げる場所になりました。ジボダンの調香師として多くのブランドを手がけながら、プラダとは20年以上にわたる対話を続けてきたのです。
インフュージョン ディリス──アイリスの周囲に空間を作る
インフュージョン ディリス(Infusion d’Iris、2007年)は、ダニエラの仕事を知るうえで欠かせない一本です。アイリスの粉っぽさだけを大きくするのではなく、木や樹脂、柑橘を思わせる表情とともに、透明な空間の中に置いています。
天然素材は例外なく好きだという彼女ですが、アイリスについては特別な言葉を残しています。
「神秘的で、深くて、多面的です。ウッディにも、パウダリーにも、どんな方向にも持っていけます。まるで別の惑星から来たような素材です。」
ダニエラ・アンドリエ、パフューム・ソサエティ
インフュージョンの発想を説明するときに登場するのは、水彩画や、水の中のタトゥーというイメージです。2016年のモジェ(MOJEH)誌では、シリーズに共通するベースを、水の温度にたとえて説明しました。
「それは、洗練された素材の処方を入れるための、ちょうどよい温度の水です。その水のような環境に置くことで、香りは現れたり去ったりして、繊細な空気感が生まれます。」
ダニエラ・アンドリエ、モジェ誌、2016年
これは、素材を実際に一定温度の水へ浸すという製造手順の話ではなく、共通のベースが作る感覚の比喩です。香りの輪郭を固めるより、その周囲の余白を整える。その考え方が、アイリス以外の素材へも広がっていきました。
ダニエラ自身も、インフュージョン ディリスは何本も使い切った香水だと話しています。シリーズには2024年、インフュージョン ドゥ ルバーブ(Infusion de Rhubarbe)も加わりました。
キャンディ──甘さを、樹脂で描く
2011年のプラダ キャンディでは、キャラメルを思わせる甘さが前に出ます。ただし、その中心に据えられているのは、単純なお菓子の再現だけではありません。ベンゾインの温かな樹脂感に、ムスクや粉っぽい柔らかさを重ねています。
香水専門媒体サ・フルール・ボン(ÇaFleureBon)では、ベンゾインの配合が12%に達するとも紹介されました。同記事が通常の目安として挙げる3〜4%より大きな数字ですが、記事自体も伝聞として述べています。公開された処方の確定値というより、ベンゾインを大胆に扱った作品だという評価として受け止めるのがよいでしょう。
レア・セドゥ(Léa Seydoux)を起用した広告の印象とともに、キャンディはプラダの遊び心を広く伝えました。静かなアイリスも、甘い樹脂も、同じ作り手の中にあります。共通するのは、素材の選択を少数の強い関係にまとめる姿勢です。
アンジェリーク ノワール──バニラに、苦い緑を合わせる
ゲランのラール エ ラ マティエール(L’Art et la Matière)から2005年に登場したアンジェリーク ノワール(Angélique Noire)は、バニラとアンジェリカの対照を使った作品です。
当時ゲランの香りの創作を率いたシルヴェーヌ・ドゥラクルト(Sylvaine Delacourte)によれば、出発点は、別の企画でダニエラと取り組んだものの、実現しなかった香りでした。その印象が忘れられず、新コレクションが決まったときに仕事を再開したといいます。
アンジェリカの種子や根には、鮮やかな緑と、ほろ苦さがあります。それをバニラに合わせ、甘さを予想外の方向から照らすのです。ドゥラクルトは、サンバックジャスミンやキャラウェイ、シダーも組み込んだ構成として紹介しています。ゲランらしいバニラを残しながら、その隣に意外な素材を置くところに、この作品の面白さがあります。
アンタイトル──育休明けに見えた、緑の閃光
メゾン マルタン マルジェラ(Maison Martin Margiela)のアンタイトル(Untitled、2010年)は、ダニエラが育児休業から戻って最初に取り組んだ香水でした。
マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)が求めたのは、緑の香りに包み込まれるような感覚です。ダニエラは、ノーズのインタビューで最初の試作の手応えを語っています。
「最初のバージョンを書いたとき、特別な喜びを感じました。これはよいものになる、と分かったのです。マルタン・マルジェラもすぐに気に入ってくれて、それは本当に大きな喜びでした。」
ダニエラ・アンドリエ、ノーズ
ガルバナムを思わせる鋭い緑に、インセンスやムスクの静けさが重なります。肌を甘く飾るというより、一度、空気を切り替えるような香りです。
翌2011年には、フレグランス・ファウンデーション米国のパフューム・エクストラオルディネール・オブ・ザ・イヤー(Perfume Extraordinaire of the Year)を受賞しました。さらに、ニューヨークのミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(Museum of Arts and Design)で2012〜2013年に開催された展覧会「香りの芸術 1889–2012(The Art of Scent 1889–2012)」でも取り上げられています。
ミュウミュウ──スズランに、もう一つの表情を
ミュウミュウ(Miu Miu)が2015年に発表した初めての香水も、ダニエラの仕事です。中心に置いたのはスズランのアコードでした。ローズやジャスミン、合成のグリーンノートなどで花を組み立て、パチュリ由来のアキガラウッド(Akigalawood)を合わせています。
オーストラリアン・パフューム・ジャンキーズ(Australian Perfume Junkies)の発売当時の記事では、採用までに約1,200回の試作を重ねたとも紹介されています。同記事が指摘する、控えめさと大胆さ、懐かしさと現代性の共存は、花の可憐さとウッディな刺激の組み合わせにも表れています。
スズランは、ダニエラが好きな生花の香りの一つでもあります。ただし、自然をそのまま写すのではなく、新しい素材と出会わせることでブランドの香りにしているのです。
マイセルフ──タンジェのオレンジの花から
2023年のイヴ・サンローラン、マイセルフ(MYSLF)は、クリストフ・レノー(Christophe Raynaud)、アントワン・メゾンデュー(Antoine Maisondieu)との共同制作です。
ダニエラの出発点には、モロッコのタンジェで出会ったオレンジの花がありました。現地のスークで香りの小瓶を探し、持ち帰った経験が、豊かで自然な花の表現につながったと話しています。
「イヴ・サンローランがタンジェで纏っていたかもしれない、オレンジの花を想像しました。」
ダニエラ・アンドリエ、フレグランス・ファウンデーション・フランス、2023年
男性用として提案された香りの中心に、オレンジの花を置く。その選択にも、素材を性別の決まり文句に閉じ込めない彼女の姿勢が見えます。2025年には、同じ3人が手がけたマイセルフ ラブソリュ(MYSLF L’Absolu)が、コスメティーク(Cosmétique)誌のゴールデンアワード、男性用部門で評価されました。
自宅のラボと、2025年の生涯功労賞
ダニエラは、ジボダンで出会ったジル・アンドリエ(Gilles Andrier)と結婚し、4人の子どもを育てました。ジルは長く同社の最高経営責任者を務め、2026年には会長となっています。
2025年のインタビューでは、ジボダンに所属しながら、それまでの18年間、自宅のラボを拠点に働いてきたと話しました。夫と同じ会社で働く独特な状況の中でも、自分の制作の場を保ち、調香師として仕事を続けられたことを誇りにしています。
2012年にはフランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受章。そして2025年6月5日、ニューヨークのリンカーンセンターで、フレグランス・ファウンデーション米国の生涯功労賞・調香師部門(Lifetime Achievement Perfumer Award)を受賞しました。会場には、この夜のために彼女が作ったリンカーン イン ジューン(Lincoln in June)という花の香りも用意されました。
長いキャリアを讃えられたとき、最も尊敬する調香師として挙げたのは、著名な先輩の名前ではありませんでした。
「私が最も尊敬するマスターパフューマーは、自然です。例えば、スズランの香りの尽きることのない美しさを、ボトルに入れたいと思います。」
ダニエラ・アンドリエ、フレグランス・ファウンデーション米国、2025年
技術が新しい素材をもたらしても、自然の美しさにはまだ追いつけない。そう感じる余地を残していることが、彼女の創作を終わらせない理由なのかもしれません。
ちなみに…
- 好きな匂いとして、太陽で温まったイタリアの松の葉、風に乗るライラック、生花のスズラン、赤ちゃん、上質なエスプレッソを挙げています。焦げたコーヒーは好きではないそうです。
- 枯れた花やごみなど、生命が失われたように感じる匂いは苦手だと話しています。美しい香りへの愛情を、生きていることへの愛情と結びつけているのです。
- 歴史上の人物に香水を作るなら、映画監督のアルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)。作品の熱心なファンだと、パフューム・ソサエティに答えています。
- かつては喫煙していましたが、禁煙後は嗅覚がより鮮明になったと振り返っています。
- 香水を作ることには芸術と重なる部分がある一方、自分の仕事をそのまま音楽や絵画と同じだとは考えていません。大切にするのは、香りが過去とつながり、喜びや生の感覚をもたらす力です。
- 夫のジルもフレグランス・ファウンデーション米国の殿堂入りを果たしています。その受賞は、ダニエラの生涯功労賞に先立つ2024年でした。
調香作品
主な作品を年代順にまとめています。発売年は地域や濃度の違い、発表と販売開始の時期によって異なる記録があります。共同調香が記されていないものは「──」としています。
| 年 | ブランド | 作品名 | 共同調香師・備考 |
|---|---|---|---|
| 1995 | ラ ペルラ(La Perla) | イオ ラ ペルラ(Io La Perla) | ── |
| 1997 | カルバン・クライン | コントラディクション | アントワーヌ・リー |
| 1997 | ケンゾー(Kenzo) | ル モンド エ ボー(Le Monde est Beau) | ── |
| 1998 | ジョルジオ アルマーニ | エンポリオ アルマーニ シー | ── |
| 1998 | グッチ | エンヴィ フォー メン | ── |
| 1998 | ヴァレンティノ(Valentino) | ベリー ヴァレンティノ(Very Valentino) | ── |
| 2000 | グッチ | ラッシュ フォー メン | アントワン・メゾンデュー |
| 2002 | グッチ | グッチ オードパルファム | ── |
| 2003 | プラダ | No.1 アイリス/No.2 ウイエ/No.3 キュイール アンブレ/No.4 フルール ドランジェ | ブティック限定コレクション |
| 2003 | ランコム(Lancôme) | アトラクション(Attraction) | ボトルデザインはクリスチャン・ビエシェ(Christian Biecher) |
| 2003 | イヴ・サンローラン | リヴ ゴーシュ | 処方変更 |
| 2004 | ジョルジオ アルマーニ | アルマーニ プリヴェ ピエール ドゥ リュンヌ(Armani Privé Pierre de Lune) | ── |
| 2005 | ゲラン | アンジェリーク ノワール | ── |
| 2005 | フラゴナール(Fragonard) | フルール ドランジェ(Fleur d’Oranger) | ── |
| 2006 | プラダ | アンバー プールオム(Amber Pour Homme/Prada Man) | ── |
| 2007 | プラダ | インフュージョン ディリス | ── |
| 2007 | プラダ | No.5 ナルシソ(No.5 Narciso)/No.6 チュベローズ(No.6 Tubéreuse)/No.7 ヴィオレット(No.7 Violette) | ── |
| 2007 | エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna) | ゼニア インテンソ(Zegna Intenso) | ── |
| 2008 | プラダ | インフュージョン ドゥ オム(Infusion d’Homme) | ── |
| 2008 | プラダ | No.8 オポポナクス(No.8 Opoponax)/No.9 ベンジョイン(No.9 Benjoin)/No.10 ミル(No.10 Myrrhe) | ── |
| 2009 | エルメネジルド ゼニア | ゼニア コロニア(Zegna Colonia) | アントワーヌ・リー |
| 2009 | プラダ | インフュージョン ドゥ フルール ドランジェ(Infusion de Fleur d’Oranger) | ── |
| 2010 | プラダ | インフュージョン ドゥ ベチバー(Infusion de Vétiver)/インフュージョン ドゥ チュベローズ(Infusion de Tubéreuse) | ── |
| 2010 | カーナー バルセロナ(Carner Barcelona) | タルデス(Tardes) | ── |
| 2010 | プラダ | インフュージョン ディリス オードトワレ(Infusion d’Iris Eau de Toilette) | ── |
| 2010 | メゾン マルタン マルジェラ | アンタイトル | 2011年に米国フレグランス・ファウンデーション賞受賞 |
| 2011 | メゾン マルタン マルジェラ | アンタイトル ロー(Untitled L’Eau) | ── |
| 2011 | プラダ | プラダ キャンディ | ── |
| 2011 | プラダ | インフュージョン ドゥ ローズ(Infusion de Rose) | ── |
| 2012 | プラダ | インフュージョン ディリス アブソリュ(Infusion d’Iris Absolue) | ── |
| 2012 | プラダ | ルナロッサ(Luna Rossa) | ── |
| 2012 | プラダ | No.14 ロセット(No.14 Rossetto) | ── |
| 2012〜2013 | マルニ(Marni) | マルニ | ── |
| 2013 | プラダ | キャンディ ロー(Candy L’Eau) | ── |
| 2013 | プラダ | ルナロッサ エクストリーム(Luna Rossa Extreme) | ── |
| 2013 | ボッテガ・ヴェネタ | プールオム(Pour Homme) | アントワン・メゾンデュー |
| 2014 | ブルガリ(Bvlgari) | レ ジェンメ(Le Gemme):アマレーナ(Amarena)/アシュレマー(Ashlemah)/カラルーナ(Calaluna)/リライア(Lilaia)/マラヴィーリャ(Maravilla)/ヌーラー(Noorah) | ── |
| 2014 | ボッテガ・ヴェネタ | ノット(Knot) | ── |
| 2014 | ブルガリ | オペラ プリマ(Opera Prima) | ── |
| 2014 | マルニ | マルニ ラグジュアリー エディション(Marni Luxury Edition) | ── |
| 2014 | プラダ | キャンディ フロラーレ(Candy Florale) | ── |
| 2015 | ブルガリ | レ ジェンメ:ラズリア(Lazulia)/ザヒーラ(Zahira)/セリマ(Selima) | ── |
| 2015 | ブルガリ | オ パフメ オーテブルー(Eau Parfumée au Thé Bleu) | ── |
| 2015 | ボッテガ・ヴェネタ | ノット オー フローラル(Knot Eau Florale) | ── |
| 2015 | ボッテガ・ヴェネタ | プールオム エクストリーム(Pour Homme Extreme) | アントワン・メゾンデュー |
| 2015 | ミュウミュウ | ミュウミュウ | ブランド初の香水 |
| 2015 | プラダ | レ インフュージョン ドゥ プラダ(Les Infusions de Prada) | コレクションとして展開 |
| 2015 | プラダ | インフュージョン ダマンド(Infusion d’Amande)/インフュージョン ディリス シダー(Infusion d’Iris Cèdre)/インフュージョン ドゥ ウイエ(Infusion d’Oeillet) | ── |
| 2015 | プラダ | オルファクトリーズ(Olfactories):カーゴ ドゥ ニュイ(Cargo de Nuit)/デイ フォー ナイト(Day for Night)ほか、全10作 | ── |
| 2015 | プラダ | ルナロッサ スポーツ(Luna Rossa Sport) | ── |
| 2016 | プラダ | キャンディ キス(Candy Kiss) | ── |
| 2016 | プラダ | オム(L’Homme)/フェム(La Femme) | ── |
| 2016 | プラダ | インフュージョン ドゥ ミモザ(Infusion de Mimosa) | ── |
| 2016〜2017 | ミュウミュウ | ロー ブルー(L’Eau Bleue) | ── |
| 2016 | トゥエンティーセブン エイティーセブン(27 87) | ハッシュタグ(#Hashtag) | ── |
| 2017 | ティファニー(Tiffany & Co.) | ティファニー オードパルファム(Tiffany Eau de Parfum) | ── |
| 2017 | エタ リーブル ドランジェ(Etat Libre d’Orange) | ユンヌ アムレット ローラン ムレ(Une Amourette Roland Mouret) | ── |
| 2017 | プラダ | キャンディ グロス(Candy Gloss) | ── |
| 2017 | プラダ | オム インテンス(L’Homme Intense)/オム ロー(L’Homme L’Eau)/フェム インテンス(La Femme Intense)/フェム ロー(La Femme L’Eau) | ── |
| 2017 | プラダ | ルナロッサ カーボン(Luna Rossa Carbon) | ── |
| 2017 | プラダ | ミラージュ(Mirages):ダーク ライト(Dark Light)/ソレイユ オ ゼニス(Soleil au Zénith) | ── |
| 2017 | ボッテガ・ヴェネタ | プールオム パルファム(Pour Homme Parfum) | アントワン・メゾンデュー |
| 2017 | フラゴナール | モン オランジェ(Mon Oranger) | ── |
| 2018 | ボッテガ・ヴェネタ | ノット オー アブソリュ(Knot Eau Absolue) | ── |
| 2018 | エタ リーブル ドランジェ | アイ アム トラッシュ(I Am Trash/Les Fleurs du Déchet) | ── |
| 2018 | ミュウミュウ | ロー ロゼ(L’Eau Rosée)/フルール ダルジャン(Fleur d’Argent) | ── |
| 2018 | プラダ | ルナロッサ ブラック(Luna Rossa Black) | ── |
| 2018 | プラダ | キャンディ シュガー ポップ(Candy Sugar Pop) | ── |
| 2018 | プラダ | インフュージョン ドゥ マンダリン(Infusion de Mandarine) | ── |
| 2018 | ティファニー | ティファニー インテンス(Tiffany Intense) | ── |
| 2019 | エタ リーブル ドランジェ | シー ワズ アン アノーマリー(She Was an Anomaly) | ── |
| 2019 | ミュウミュウ | ツイスト(Twist) | ── |
| 2019 | ティファニー | ティファニー シアー(Tiffany Sheer) | ── |
| 2022 | ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten) | ジャルダン ドゥ ロランジュリー(Jardin de l’Orangerie) | ── |
| 2023 | イヴ・サンローラン | マイセルフ | クリストフ・レノー、アントワン・メゾンデュー |
| 2024 | プラダ | インフュージョン ドゥ ルバーブ | ── |
| 2025 | イヴ・サンローラン | マイセルフ ラブソリュ | クリストフ・レノー、アントワン・メゾンデュー |
参考文献
- Nose, “Daniela Andrier”
- System, Jonathan Wingfield, “The nose. Daniela Andrier.”, Issue 4
- Annick Le Guérer, “Daniela Andrier”
- The Perfume Society, “Nose-to-nose with Daniela Andrier”
- The Fragrance Foundation USA, “Lifetime Achievement Perfumer: Daniela Andrier”, 2025
- Givaudan, “Daniela Andrier receives Lifetime Achievement Perfumer Award”, 2025
- Givaudan, “Meet our leadership”
- The Fragrance Foundation USA, “Hall of Fame: Gilles Andrier”, 2024
- The Fragrance Foundation France, “FiFi Awards 2003”
- Now Smell This, “Five perfumers honored by French Minister of Culture”, 2012
- MOJEH, “The Fantasy Of Infusion”, 2016
- ÇaFleureBon, “Prada Candy (2011) by Daniela Andrier: The Beauty of Benzoin”
- Bois de Jasmin, “Prada Infusion d’Iris: Perfume Review”
- Sylvaine Delacourte, “Angélique Noire by Guerlain: The Shock of Vanilla and Green”
- Bois de Jasmin, “Guerlain Angélique Noire: Perfume Review”
- Australian Perfume Junkies, “Miu Miu – AT LAST!!”, 2015
- The Fragrance Foundation France, “Nez à Nez avec Daniela Andrier, Christophe Raynaud et Antoine Maisondieu… MYSLF”, 2023
- Givaudan, Instagram, MYSLF L’Absolu Golden Award受賞紹介
- The Moodie Davitt Report, “Fragrances: Lancôme creates new feminine Attraction”, 2003
- The Moodie Davitt Report, “Interview: All by MYSLF”
- The Institute for Art and Olfaction, “The Art of Scent”
- Prada Beauty, “Infusion de Rhubarbe Eau de Parfum”
- Now Smell This, “Daniela Andrier: Perfumers”
- Fragrantica, “Daniela Andrier”
- Parfumo, “Daniela Andrier”
- The Perfume Girl, “Daniela Andrier”
- Wikipedia, “Daniela Andrier”
- iDiva, “The Story of a Creator: Daniela Andrier”
- FASHION, “Why Prada/Miu Miu and Burberry Continuously Hire Perfumers…”
- FASHION, “Tiffany & Co. Releases Their First Fragrance in 15 Years”
- AnOther, “Mrs Prada on Perfumes”
- Industries Cosmétiques, Daniela Andrier生涯功労賞報道
- Per Fumum, “Édouard Fléchier”
- Gilles Andrier, LinkedIn, Daniela Andrierの2025年生涯功労賞に関する投稿
- The Scented Salamander, “Daniela Andrier: Directory of Perfumers”
- SOFW, “Givaudan’s Daniela Andrier Received the Prestigious Lifetime Achievement Perfumer Award…”
- ÇaFleureBon, “Prada No.11 Cuir Styrax: The Joy of the Hunt”


