Q. 香水をつけた時、人によって違ったり、紙で試したときと違ったりするのはなぜでしょうか?

A. 香水を肌につけてみると、ブロッターで試した時と異なっていたり、隣にいた友人や家族とも同じ香りなのに異なって感じたりすることがあります。この理由を解明してみましょう。

ブロッターと香りが異なる

 ブロッターとは、匂い紙ムエットとも呼ばれ、香水をお店などで試す際に使用する試香紙をいいます。ブロッターは、紙自体に匂いが無いのが特徴です。これによって香水が素でどのような香りなのかを評価することができるのです。

 一方、人間の肌はどうでしょう。人間の肌には、常在菌という存在があったり、体臭があったり、も出ます。また、紙とは異なり、体温があります。これらによって、肌につけた場合、ブロッターと香りが異なってくるのです。

肌の質によって異なるのも事実。肌がドライかオイリーかでも異なるし、酸性度や体温、肌についてるバクテリアの影響もある。紙とか布につけただけじゃ、こういう違いは分からない。

タニア・サンチェス

人と香りが異なる

 友人や家族と一緒につけた場合に、香りが異なるように感じることがあります。香水について調べてみるとよく聞く「人によって香りが変わる」ということです。なぜ、人によって香りが変わるのか。

 まず、人によって香りが変わるのは、肌上にある物質が異なるからだと考えられます。ここから予想されるのは、性別年齢人種によって大きく異なるのではないか、ということです。

性別による肌の匂いの差

 まず、男性と女性を比べた場合、汗の量は男性の方が約3倍(30代)、皮脂の量も男性の方が多く、これは年齢問わず変わりません。皮脂と汗は、皮膚の常在菌の作用の原因となったり、活性酸素による酸化の影響を受けたりします。これらがニオイを発生させやすくします。つまり、皮脂と汗の量が多い男性は、女性よりも体臭が現れやすいのです

 また、女性の肌には、男性よりもラクトンと言われる物質が多いことが判明しています。このラクトンは、ピーチ調のミルキーなフルーツの甘い香りがします。この匂い成分は、10代20代が最も多く、30代まで段々と減少することが分かっています。*(これを上手く利用して30代以降の女性に向けて開発した商品がデオコです。)
 したがって、男性と女性では、特に若い時は香りが異なりやすい傾向にあると推測されます。

年齢による肌の匂いの差

 さて、性別にさらに年齢を合わせると、加齢により女性は女性ホルモンが減り、男性ホルモンが優位になってきます。これが意味することは、女性ホルモンによって抑えられていた汗や皮脂が現れ、加齢臭が出てくるということです。
 そして、それだけではなく、女性の場合、加齢によりラクトンが減ってしまうのです。(ちなみに、40代を過ぎると少しだけ増えます。)

 つまり、女性は特に年齢によって大きく香りだちが異なる可能性があります。母娘で香水をつけて、香りが異なるのはこのような事情があるのです。

 また、男性においても、皮脂や汗の量は年齢によって大きな変化はないので、清潔にしていないと、それが積もりにつもって、体臭に大きな影響を与えるのは目に見えています。一般には30代半ば~50代半ばに最も強いニオイとなります。

 上記は、赤ちゃんのニオイと子供のニオイ、大人のニオイが全然違うということからも分かるのではないでしょうか。

人種による肌の匂いの差

 人種によって肌のニオイが異なるのはすぐに分かるのではないでしょうか。ニオイの個人差は、食生活遺伝で決まると言われています。食生活は国によって全然違い、遺伝は汗腺の量や毛の量に関係するため、人種間だけでなく国によって、ニオイが違うことは明白かと思います。

 さて、以上から、人によって香りが異なるのは自明の理でしょう。また、体温や体調も人それぞれその日ごとに違うのですから、匂いに敏感な人は僅かな差でも気づくかもしれません。

気候により香りが異なる

 人間の影響だけではなく、自然も影響してきます。例えば、気温、湿度、季節によっても香り方は異なり、国が違えば異なってきます。これは話が少しズレますので、また別の記事にて。

嗅覚の変化により香りが異なる

 結婚出産別れ、人生には様々な大きな出来事がありますが、これらが我々の感覚に与える影響は大きなものです。

昨日好きだった香りが、次の日には嫌いになる。
かつて愛用していた香りが、不快に感じる。
逆に、嫌いだった香りが、今では意外といけるじゃん。

 この話は少しズレますので、また別の記事にて。

マーケティング戦略

 しかし、トップノートは多少異なっても、ハートノートまでいけば大きくは異なってこないという意見もあります。つまり、「香りは人によって変わる」というのはマーケティング戦略の1つでもある可能性もあります

*ロート製薬より(https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M000357/201802140945/_prw_PR1fl_c12Hm6m4.pdf)

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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