Isobutyl Quinoline
イソブチルキノリン

イソブチルキノリン 合成香料

 キノリン(Quinoline)とは、コールタールから分離された成分で、1834年ドイツの化学者Friedlieb Ferdinand Rungeによってはじめて発見されました。沸点が高い溶剤として、塗料や医薬品の製造のために需要があり、その後、シャープではっきりした強烈な土っぽい香りから調香師の間でも注目になりました。

 香水業界でキノリンと言えば、外せないのはDe Laire社です。De Laire社は現在のシムライズ社で、かつては香水のベースノートを調香する会社として非常に有名な会社でした。20世紀最高の調香師と評されるエドモン・ルドニツカやシャネルの2代目専属調香師アンリ・ロベールがいたことでも有名です。彼らの素晴らしさは、当時不快で使いにくいと感じる調香師の多かった合成香料をいかに使いやすい香料として使えるようにするかを画策し、様々な名香に使われるベースノートを作った点にあります。
 その1つが、キノリンの派生であるイソブチルキノリンを使用した伝説的なベースノート「ムースドサックス(Mousse de Saxe)」でありました。イソブチルキノリンの土っぽさとレザー感、グリーンノートを引き出しながら、ローズやバイオレットによって優しさを付け足したものでした。このベースノートは大変人気になり、コティのシプレー(1917)、キャロンのニュイドノエル(1922)、エルメスのカレーシュ(1961)、グレのカボシャール(1959)、など一世を風靡したシプレーに使用されました。最近では、フレデリックマルのローズエキュイール(ジャン=クロード・エレナ、2019)に使用されています。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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