アトリエ・アローム&パルファン・パリ — 新間美也の歩みと調香教育、講座・ディプロムの学び方

調香教材を使い、遠隔で香りを学ぶ様子を描いたAAPの記事用イラスト

いちばん大切なのは、情熱。それから継続していける根気ですね。

新間美也

香水を選ぶ楽しさの先に、自分で香りをつくる楽しさがある。その入口を日本で開いてきたのが、調香師・新間美也のアトリエ・アローム&パルファン・パリである。1998年に始めた教育活動を原点に、パリでの創作と日本での学びを結びつけてきた。

天然香料で学ぶアロマ調香と、合成香料も含めた幅広い素材で学ぶフレグランスデザイン。どちらにも、実際に嗅ぎ、比べ、試作し、自分の表現を育てるという共通の土台がある。現在は教材を手元に置いて学ぶ動画講座と、パリからのライブ指導が中心で、体験レッスンから学校独自のディプロム取得課程まで用意されている。

基本情報

  • 名称:Ateliers Arômes & Parfums Paris(アトリエ・アローム&パルファン・パリ、略称AAP)
  • 創立者・教育者:新間美也(しんま・みや)
  • 沿革:1998年に日本で教育活動を開始。創立者の公式プロフィールは2010年の学校設立を記載
  • 本拠地:フランス、パリのマレ地区。日本ではオンライン学習と、本部による教材・受講支援を行う
  • 日本の運営:株式会社アトリエ・アローム&パルファン・パリ
  • 公式サイト:アトリエ・アローム&パルファン・パリ

新間美也と、教育の成り立ち

音楽の楽しさから、香りの表現へ

新間美也は静岡で育ち、京都で学生時代を過ごした。大学ではフランス語を学んだが、初めから香水の仕事を目指していたわけではない。会社員として働いていた頃、雑誌で読んだ調香師の話が転機になった。調香は、音を組み合わせて和音をつくる作曲に似ているという説明だった。

幼い頃からピアノを習い、作曲も楽しんでいた新間にとって、それは親しみのある表現の世界へ通じる言葉だった。香水を商品として見るだけでなく、香りを通して自分の感じたことを表せるのではないか。その興味が、学びたいという気持ちにつながった。

1997年、パリでモニーク・シュランジェ(Monique Schlienger)に師事する。シュランジェはジャン・カールに学び、ISIPCAでも教えた。ロベルテで調香師として働いた後、1976年にサンキエームサンスを設立した教育者である。新間はこの学校で、原料を覚え、組み合わせを理解し、香りを組み立てる訓練に取り組んだ。

並外れた嗅覚だけが入口なのではない。冒頭の新間の言葉は、学びを続ける情熱と根気について述べたものだ。何百もの原料を覚えること、混ざった香りの中でそれぞれを捉えること、頭の中で再び組み立てること。自分の表現へ進むための基礎には、繰り返す仕事があった。

パリでの創作と、日本でのレッスン

学びを終えた新間は、日本の文学を読み返し、自然に心を寄せる和歌の世界から「花」「月」「風」の香水をつくった。香水メゾンMiya Shinma Parisの創立は1999年。2000年にはパリの百貨店ル・ボン・マルシェで作品が紹介された。学校とは別に続く、創作者としての仕事である。

一方、日本で香りを教える活動は1998年に始まっている。完成した香水を届けるだけでなく、人が自分の手で香りをつくり、その魅力を知る機会を開く仕事だった。アトリエ・アローム&パルファン・パリの名でレッスンやセミナーを重ね、2010年に学校を設立した。

新間は自分の香水をつくることと同じように、香りを教えることや教材をつくることも好きだと語っている。2017年には、日本で講師を指導する一方、香りに興味を持った人がさらに学び、成長できる場を増やしたいと述べた。

もっと時間をかけてでも、そういった方達の勉強や成長に繋がる場が増えればいいなと思いました。

新間美也(2017年)

その活動は書籍にも広がっている。『パリのレッスン』『恋は香りから始まる』『香水のゴールデンルール』などに加え、2021年には『[新版]アロマ調香レッスン』を刊行した。同書では、フランスで学ぶ調香の方法を、精油だけで行う調香へ応用している。さらに2024年には、香水の文化と歴史を扱う『香水のすべて』の日本語訳を担当した。

創作、素材の知識、教育は近くにあるが、同じものではない。新間の香水メゾン、香料を扱うアローム&パルファン・パリ、教育を行うアトリエ・アローム&パルファン・パリは、それぞれの仕事を持つ。学校は特定のメゾンの作風を再現させることを目的とせず、受講者自身の判断と表現を育てている。

教育の特徴と学びの流れ

精油で学ぶ道と、幅広い香料で学ぶ道

アロマ調香は、精油を用いて香りの特徴と組み合わせを学ぶ。フレグランスデザインでは天然香料に加え、合成香料も含む広い素材の範囲へ進む。天然だけを使うか、より多様な香りの性質を使うかという、学ぶ素材と目的の違いである。

二つのディプロムも上下関係ではなく、並列の専門認定として設けられている。精油を軸にした香りづくりを深めたい人と、より広い素材で香水や香りの表現をつくりたい人では、選ぶ入口が変わる。

どちらも、香料の名前を知るだけで終わらない。教材の香りを嗅ぎ、記録し、ほかの香りと比較する。組み合わせた後には時間を置いて変化を確かめ、試作を直す。学校がいう「香りの美学」は、この過程で何を残し、何を抑え、どこで完成と判断するかに関わっている。

教材を手元に置いた動画学習と、パリからの指導

受講者には香料やレッスンノートなどの教材が届き、専用ページで動画を見ながら制作する。香料は学習が進むにつれて増え、ディプロム取得プログラムには保管用の「グランハーモニウム」も用意されている。画面の説明だけを見る講座ではなく、同じ教材を嗅ぎ、実際に手を動かす学習である。

ディプロム取得プログラムでは、パリアトリエからのライブ指導も受けられる。創立者の案内は2か月に1回の開催を示しており、動画学習で生じた疑問や調香について質問する機会になる。講座によって指導の条件が違うため、単発の動画講座すべてに同じ支援が付くわけではない。

現在の主な学習形式はオンラインである。新間による会場レッスンは定期開催ではなく、受講中の人に日程を知らせる形で案内されている。パリに本拠地を持つことと、全受講者がフランスへ留学することは、別の話である。

調香とともに、香水の文化を学ぶ

ディプロム課程は、調香の実技と「香水学マスターコース」を並行して進める。原料や嗅覚の基礎だけでなく、香りの歴史と流行、香水の物語、スタイリング、新作香水も学ぶ。ここでの「マスター」は学校の講座名であり、大学の修士課程を意味するものではない。

本を通じた学びも、新間の教育を理解する手がかりになる。『[新版]アロマ調香レッスン』の前書きでは、精油の特徴や配合例に加え、香りを立体的に捉え、イメージと結びつける考え方を示している。素材の知識と、何を表現したいかを往復する学びである。

現在の講座と申込み方法

以下は、2026年10月12日に公式サイトで確認した掲載中の講座である。特定の入学年度ではなく、現在の申込みページに示された条件と費用を記載する。日本語で案内されている講座を、主に自宅での動画学習として受講する形である。

体験から始めるフレグランスデザイン

1回体験レッスン・フレグランスデザインは、初心者やディプロム課程を検討している人のための講座である。3種類の香料で組み合わせを練習し、2種類のオリジナルフレグランスを制作する。受講期間は1か月、全1回で、期間内は動画を繰り返し見られる。パリからのライブレッスン1回と教材を含み、受講料は23,100円(税込)である。

初めてなら、少数の香料が組み合わせによってどう変わるかを学ぶ入口になる。ディプロム取得課程とは分けて用意された体験講座である。

二つのディプロム取得プログラム

両プログラムの掲載額には教材の配送が含まれ、ディプロムコースとAAP会員登録費を無料とする特典が示されている。受講はカリキュラム順に進み、教材も順番に届く。動画の視聴期間は各講座1か月、イニシアシオン・マスターのみ2か月とされている。

申込みは各プログラムの公式ページから行い、入金確認後に受講日程の案内を受ける。ページには春4月・秋10月の年2回開講と、「年間を通して、いつでも受講をスタートできる」という説明が併記されているため、開始日とライブ指導の日程は事務局に確認してから決めたい。

さらに原料を深めるパルファン・スペシャリスト

パルファン・スペシャリストは、いずれかのディプロム取得後に進む上位課程である。現在の課程ページは、「エスプリドパリ・マチエール・プルミエール」全8種の修了を条件としている。各カテゴリー48種、計384種の香料について、産地、成分、香りの特徴、調香への応用、香水での使用例を学ぶ。

マチエール・プルミエールは1種4時間の対面またはライブレッスンで、1種227,700円(税込)。公式に示す取得目安は約2〜9年で、先に取得するディプロム課程の学習とは分けて考える必要がある。原料を広く扱い、制作と評価を深めていく道である。

修了証・ディプロムと、その後の活動

学校の認定方針は、履修を証明する修了証と、能力・到達水準を認めるディプロムを区別している。ディプロムは所定の課程と評価を経て授与される学校独自の教育上の認定であり、国家資格、国家学位、公的な職業資格ではない。動画を見終えたというだけで自動的に授与されるものでもない。

取得後には、香料の提供、新しい素材や香水情報の紹介、オリジナル香水の商品化などの支援がある。ただし、ディプロムだけで学校を代表したり、学校名・教材・教育方法を使って指導したりする権限が与えられるわけではない。過去には認定講師制度があったが、新たな認定講師会員を養成・認定する制度は現在終了している。

学校は香りの魅力を伝える教育を中心に活動し、仕事の斡旋は行わないとしている。大学での学位取得や、企業へ採用されてからの社内養成とは異なる、民間の調香教育である。自分の香りをつくりたい、素材と文化を学びたい、将来の活動に生かしたいという目的に応じて、体験から専門課程へ進むことができる。

主な歩み

  • 1997年:新間美也がパリでモニーク・シュランジェに師事。
  • 1998年:日本で香りのレッスンを開始。現在の学校が原点とする教育活動が始まる。
  • 1999年:創作活動として香水メゾンMiya Shinma Parisを創立。
  • 2000年:ル・ボン・マルシェで新間の香水作品が紹介される。
  • 2010年:アトリエ・アローム&パルファン・パリを設立。
  • 2017年:日本での講師指導と、香りに関心を持つ人の学びの場を広げたいという考えを語る。
  • 2021年:『[新版]アロマ調香レッスン』を刊行。
  • 2024年:『香水のすべて』の日本語訳を担当。

参考文献

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