Lactone
ラクトン

 香水業界において、クリーミー・ミルキーな香りと表現されるとき、大抵の場合、ラクトンという物質が使われています。

基本情報

 ラクトン(lactone)とは、エステル基-COO-を持つ環状の化合物のことを言います。名前はラテン語で酸っぱくなったミルクを意味するlacになります。
 果物や乳製品、花の芳香成分に天然にも含まれる成分になります。様々な種類があり、使い分けることが重要になります。

まず、環を作っている炭素数によって、名前の最初につくギリシャ文字が変わります

環の炭素数とギリシャ文字
C3…α
C4…β
C5…γ
C6…δ
C7…ε
…etc

 次に、全体の炭素数によって、「ラクトン」の前につく名前が変わります。

全体の炭素数と名前
C5…バレロラクトン(Valero Lactone)
C6…ヘキサラクトン(Hexa Lactone)
C7…ヘプタラクトン(Hepta Lactone)
C8…オクタラクトン(Octa Lactone)
C9…ノナラクトン(Nona Lactone)
C10…デカラクトン(Deca Lactone)
C11…ウンデカラクトン(Undeca Lactone)
C12…ドデカラクトン(Dodeca Lactone)
…etc

 環の炭素数や全体の炭素数によって、香りは異なるものの、ラクトンに共通するのはクリーミーさ・ミルキーであり、香水だけでなくフレーバーでも使われます。
 フレーバーの場合、乳製品や牛肉に使うことで脂っぽさを増加させたり、料理のコクを増やしたり、フルーツジュースの果汁感を強めたりするのに使います。

香水界で有名なラクトン

ガンマウンデカラクトン

 香水業界で最も有名なラクトンの名をγ-ウンデカラクトンと言います。ウンデカとは、ラテン語で11を表します。上記の内容も含め、γ-ウンデカラクトンとは、「環の炭素数が5、全体の炭素数が11のラクトン」になります。

 さて、なぜこのγ-ウンデカラクトンが最も有名なのか。それはピーチの香りとして、ゲランのミツコ(1919、ジャック・ゲラン)やロシャスのファム(1944、エドモン・ルドニツカ)といった名香に使われたからです。そして、今でもピーチやミルキーなフルーツの香りを作る時に、よく使われます。

 γ-ウンデカラクトンは、別名、アルデヒドC14とも呼ばれています。しかし、実は、 γ-ウンデカラクトンの炭素数とは関係がありません。これは、γ-ウンデカラクトンが発見された当時、あまり見慣れない構造であったことと、「アルデヒド+数字」で新しい炭素数の多い物質を表そうという風潮があったため、名付けられたのでした。

ちなみに…

炭素数14の(本当の)アルデヒドは、ピーチの香りがしません。γ-ウンデカラクトンに紛らわしい名前が付けられてしまったため、勘違いされることが多いので、注意しなければなりません。

 また、γ-ウンデカラクトンとγ-デカラクトンの2つは、ロート製薬の研究による「若い女性のもつ特有の甘い体臭」を構成することが発見されたことでも有名です。

ガンマノナラクトン

 γ-ウンデカラクトンから炭素が2つ減ったラクトンをγ-ノナラクトンと言います。別名アルデヒドC18(こちらも勘違いのもとで、炭素数は実際には9)と呼ばれ、ココナッツの香りがすることで有名です。ココナッツだけでなく、トロピカルなフルーツの香りやチュベローズフィグといった異国情緒のあるクリーミーな香りを作る時に使われます。

補足

 この2つと同様に、アルデヒドC16(ストロベリーアルデヒド)は正式名エチルメチルフェニルグリシデート、アルデヒドC20(ラズベリーアルデヒド)は正式名エチルパラメチルβフェニルグリシデート、になります。(この2つはラクトンでもアルデヒドでもない) 

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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