Zhufu 竹浮 ― 竹に託した「祝福」、上海から届く東洋の香り

ブランド創業者

「竹は決して一本では立たない。香りもまた、人と人とをつなぐものだ。竹は祝福と繁栄をもたらす存在でもある」
― ボバー・ワン(Bobber Wang、創業者)[1]

基本情報

設立:2022年(ブランドとしてのグローバル・デビューは2023年8月6日、Design Shanghai 2023)[2][3]

創設者:王超(ワン・チャオ/Bobber Chao Wang)[2][4]

運営会社:上海瑞宇品牌管理有限公司(Shanghai Ruiyu Brand Management Co., Ltd.)[4]

公式サイト@zhufufragrance [5]

ブランド名「Zhu Fu 竹浮」は、中国語で「祝福」を意味する「祝福(Zhùfú)」と同音であり、「竹」と「浮」という二文字からは、水面に浮かぶ一節の竹のような、静謐で軽やかなイメージが立ち上がる。ブランドは「Where Bamboo Meets Blessing(竹と祝福が出会う場所)」という言葉をコンセプトの中心に据えている[6]。

創設者・ブランドの成り立ち

デザイナーとしての前史

Zhufuを創った王超は、もともと香料業界ではなく、デザインの世界から来た人物である。複数の国際的ブランドのデザイナーとして経験を積んだのち、2022年にZhufuを立ち上げた[2]。

2023年、上海で開催された国際デザインフェア「Design Shanghai(设计上海)」の新製品発表ギャラリーに、Zhufuは「ZHUFU FRAGRANCE by TOKIDO BOBBER WANG」という名義で登場する[3]。
王超は単なる経営者としてではなく、自らの名を冠した「デザイナー/作家」としてブランドをクレジットしており、Zhufuが彼のクリエイティブ・スタジオ的な性格を帯びたプロジェクトであることがうかがえる。

祖母への敬意から生まれた「竹」のモチーフ

Zhufuのビジュアル・アイデンティティの中心にあるのは、「竹」である。ボトルは竹の節を思わせるフォルムを持ち、外装に至るまで、竹の意匠が一貫して使われている。この竹というモチーフの背後には、竹細工(竹編み)を生業としていた王超の祖母の姿があった[2]。ブランドのビジュアルとボトルデザインには、祖母の手仕事への敬意が、竹節のフォルムとして静かに織り込まれている。

ベストセラーとなったNana 柿不柿が、祖母からインスピレーションを得た、柿の甘やかな香りをまとうフレグランスであるのも、偶然ではない[2]。祖母という極めて個人的な記憶が、ブランドの世界観の根に据えられているのである。

王超本人も、ブランド名の由来を語るとき、この「連なり」のイメージを強調する。

「竹は決して一本だけでは生えない。香りもまた、人と人をつなぐもの。竹は祝福と繁栄をもたらす存在でもある」 ― ボバー・ワン[1]

ここには、祖母から受け継いだ手仕事の記憶と、中国文化における「竹=長寿・節操・繁栄」という象徴性が、自然に重なり合っている。

2022年の創業と、2023年の「東洋からの船出」

Zhufuという会社そのものは2022年に設立されたが、ブランドとしての本格的なグローバル・デビューは、2023年8月6日、Design Shanghai 2023の新製品ローンチの場であった[3]。このとき、ブランドは次のようなマニフェストを掲げている。

「変わりゆく現代に、過ぎ去った時代の美しさを連れてくるために、私たちはZHUFUを立ち上げた。東洋の美学は日々の暮らしに根ざしており、目に留まらない細部のなかから、一瞬の美しさを切り取ることでしか見いだせないものだと、私たちは信じている」[3]

この宣言には、王超がデザイナーとして培ってきた「生活の細部から美を掘り起こす」視線と、「失われかけた工芸や田園の静けさを、香りを通して今に繋ぎ直す」という編集意図が読み取れる。

創業から約2年のあいだに、Zhufuは上海のファッションウィークと連動した国際香水見本市「ノーツ・シャンハイ(Notes Shanghai)」に三度出展を重ね[2]、さらにパリで開催された中国ブランド特集展「パリ・シャンハイ・パフューム・ショー(Paris Shanghai Perfume Show)」にもブランドを送り出した[1]。2024年にはフランス・グラース(Grasse)で開催されたセンドゥグレ・グラース・パフューム・アート・ゴールドアワード(Centdegrés Grasse Perfume Art Gold Award)2024を受賞[7]。2025年にはジャーマン・デザイン・アワード(German Design Award)2025で、「Excellent Product Design/Luxury Goods」部門のWinnerにも選出されている[4]。

「私たちは、中国文化を世界と分かち合いたい。国際的な香水市場には、中国ブランドが立つべき場所が必ずある」 ― ボバー・ワン[2]

この言葉は、いまのZhufuを最も的確に表している。

ブランドのこだわり

① 「竹」から始まる設計思想

Zhufuの世界観において、竹は単なるビジュアル・モチーフではない。竹は「幸運・長寿・揺るがぬ気骨」の象徴であり、その精神を視覚的にも触覚的にも、そして香りそのものにも宿らせることが、ブランドの核にある[8]。

「『ZHUFU 竹浮』は、中国語の『祝福(Blessing)』と同音で呼応する。竹は中国文化において、幸運と長寿、そして揺るがぬ気骨を象徴する存在である。私たちはその本質を、視覚だけでなく香りにも宿らせ、一瓶ずつに心からの祝福を込めている」 ― ZHUFU公式ステートメント[8]

シグネチャーボトルは、まさに竹の節をモチーフにしたフォルムで、このボトルそのものがジャーマン・デザイン・アワード2025の受賞対象となっている[4]。審査員はパッケージについて、次のように評している。

「このパッケージは、伝統的な中国の象徴性と現代的なデザインを見事に融合させている。幸運と長寿の象徴である竹と、モダンな美的要素の組み合わせは、文化的な奥行きと高級感を同時に感じさせる仕上がりとなっている」[4]

② ISIPCA出身の調香師

Zhufuの香りは、王超ひとりで作っているわけではない。ヴェルサイユにあるフランスの名門調香学校イジプカ(ISIPCA)で学んだ調香師たちとの協業によって、処方が組み立てられている[6]。主要な調香師として名前が挙がっているのは、以下の二名である。

  • メン・グー(Meng Gu/顾梦):フランスの老舗香料会社ロベルテ(Robertet)に所属する、パリを拠点とする中国出身の調香師。Donglin Temple 寺林東を手がけた[1][9]。
  • デヴィッド・ホアン(David Huang):ベテラン調香師で、ZhufuのAged Pu-Er Tea 夜访普洱の調香を担当している[10]。

東洋のモチーフ・物語・美意識をコンセプトの中心に据えながら、処方そのものは欧州のフレグランス教育とテクニカルな基盤を受けたプロフェッショナルに託す――Zhufuはそうしたハイブリッドなものづくりを選択している。

③ 精油とサステナビリティ

素材面では、ブランドはエッセンシャル・オイル(精油)の使用にこだわる。Design Shanghai 2023のマニフェストには、次のように記されている。

「私たちは精油を使い続けることにこだわる。自然がくれた贈り物に対し、適切なパッケージとデザインで応えていく」[3]

パッケージングには、FSC認証紙、再生金属部品、プラスチックの最小化が採用されており、さらに多くの製品にブライユ(点字)が刻まれているという、インクルーシブ・デザインへの配慮も組み込まれている[7]。ブランドが自ら掲げる素材基準には「FSC Certified Zero EVA Foam Packaging」という一文もある[6]。

④ 「香り」を、東洋ライフスタイルのキュレーションに拡張する

Zhufuは自らを、単なる香水メーカーではなく、東洋ライフスタイル美学における「オルファクトリー(嗅覚的)キュレーター」として位置づけている[11]。フレグランス以外にもボディオイルやキャンドルといった関連プロダクトも展開されており[2]、「香り」を軸にした生活全体のプロデュースへと領域を広げつつある。

香水ラインナップ

Zhufuは、7〜8種類のシグネチャー・フレグランスと、ボディオイル、そしてドングリン寺(東林寺)の僧侶との限定コラボレーション作品を展開している[2][6]。以下、現在コレクションの骨格をなす主要作品を紹介する。いずれもユニセックス、15mlのオー・ド・パルファムとして展開されている[6]。

Nana 柿不柿 ― 「おばあちゃんの柿」

  • トップノート:カキ、ベルガモット、パーシモン(柿)、バンブー
  • ハートノート:ローズ、アイリス
  • ベースノート:サンダルウッド、パチョリ、ムスク[12]

ブランドのベストセラー。祖母へのオマージュが込められており、柿という極めて東アジア的な果実を軸に据えている点が個性的である[2]。

Aged Pu-Er Tea 夜访普洱 ― 「夜に訪ねる、熟成プーアル茶」

  • トップノート:プーアル茶、ベルガモット、アクアティック
  • ハートノート:ベチバー、シダーウッド
  • ベースノート:ベチバー、サンダルウッド[6]

雲南省のプーアル茶を主題とした一本。調香はデヴィッド・ホアンが手がけた[10]。熟成された茶葉の深みのなかに、柑橘の軽やかさが重なり、歴史の重みと現在の瑞々しさがひとつの瓶のなかで出会う[5]。

Donglin Temple 寺林東 ― 「東林寺の祈り」

  • トップノート:シトラス、ベルガモット、グリーンカルダモン
  • ハートノート:ホワイトマグノリア、オリスルート、ミュゲ、バンブーリーフ
  • ベースノート:シダーウッド、アガーウッド(ウード)、ムスク[6]

Zhufuと上海近郊の伝統仏教寺院東林寺(Donglin Temple)とのコラボレーションから生まれた作品。処方はロベルテ所属の調香師メン・グーが担当し、お香(インセンス)を大胆なオーバードーズで用い、ローズ、ファー、サンダルウッド、ウードで柔らかく整えられている[1]。

この香りは2つの賞を受賞している。
Centdegrés 2024 Grasse Perfume Art Gold Award(2024年10月3日、グラース)
GOA 2024 Best Fragrance Design Winner(Golden Osmanthus Award、2024年11月15日、中国)

「Donglin Templeは、東林寺と共同で作り上げた、唯一無二の『寺院の祝福の香水』である」[7]

Poet 竹涧温酒 ― 「竹林で酌む、詩人の酒」

  • トップノート:シトラス、ベルガモット、ピンクペッパー
  • ハートノート:ローズ、ブラックペッパー、パチョリ
  • ベースノート:ベチバー、オークモス、アンバー、ムスク[6]

中国を代表する詩人・李白(リ・ハク/Li Bai)にインスパイアされた一本で、中国の白酒(バイジュー/baijiu)のニュアンスが処方に織り込まれている[2]。竹林のなかで酒を酌み、詩を詠む――そんな古典的な情景を、現代の香水語彙に翻訳したような存在である。

Master 玉竹贯仲

  • トップノート:レモン、マンダリン、シトラス、バジル
  • ハートノート:ブラックベリー、レッドフルーツ
  • ベースノート:アガーウッド(ウード)、オークモス、ムスク[6]

新作として位置付けられている一本。漢方薬草としても知られる「玉竹」「貫衆」を想起させる中国語名を冠している。

Above the Clouds 云端之上

  • トップノート:シトラス、ベルガモット、ジンジャー
  • ハートノート:ロータス、サイプレス、ファー、カンファー
  • ベースノート:ローズウッド、シダーウッド、アガーウッド(ウード)、ムスク[6]

雲上の高所、冷ややかな空気、遠くに広がる針葉樹の森を想起させる新コレクション作品である。

限定・コラボレーション

コアラインのほか、2024年にはプーアル茶産地・雲南とも結びつくような季節限定のジャスミンティー・フレグランス(Jasmine Tea Fragrance/茉莉花茶)もリリースされている[13]。

ちなみに…

  • ブランド名「竹浮(Zhù Fú)」が「祝福(Zhùfú)」の同音となっているのは偶然ではなく、ブランド設計の出発点となっている。中国語話者にとってはブランド名を口にするたびに「祝福」を呼ぶような響きになる、という仕掛けである[8]。
  • シグネチャーボトルの竹節デザインは、Design Shanghai 2023でのデビュー以降改良を重ね、2025年にはジャーマン・デザイン・アワードの「Excellent Product Design/Luxury Goods」部門を受賞している。賞の記録上、デザイナーとしてクレジットされているのはChao Wang(王超本人)である[4]。
  • Zhufuは、サステナビリティとインクルーシブ・デザインに関する具体的な取り組み(FSC認証紙、リサイクル金属、プラスチック最小化、多くの製品でのブライユ点字)を公表している、中国発ニッチブランドとしては数少ない存在である[7]。
  • Design Shanghai 2023の出展者リストには、ブランドが「ZHUFU FRAGRANCE by TOKIDO BOBBER WANG」名義で登録されており、王超が単なる経営者ではなく「デザイナー/作家」としてブランドをクレジットしていることが伝わってくる[3]。

参考文献

[1] Oh, My Shanghai! Your Fragrance Impulse Is Making Leaps, So High.(Essencional, Laurence Arrigo Klove, 2025年11月10日) – https://www.essencional.com/en/posts/oh-my-shanghai-your-fragrance-impulse-is-making-leaps-so-high/

[2] 3 Perfume Brands To Know From Notes Shanghai(Forbes, Gemma A. Williams, 2025年4月2日) – https://www.forbes.com/sites/gemmawilliams/2025/04/02/3-perfume-brands-to-know-from-notes-shanghai/

[3] ZHUFU FRAGRANCE by TOKIDO BOBBER WANG(Design Shanghai 公式出展ページ) – https://www.designshanghai.com/new-product-launch/zhufu-fragrance-tokido-bobber-wang

[4] ZHUFU Perfume & Fragrance(German Design Award 2025 公式ギャラリー) – https://www.german-design-award.com/en/gallery/detail/luxury-goods/zhufu-perfume-fragrance

[5] ZHUFU竹浮 公式Instagram @zhufufragrance – https://www.instagram.com/zhufufragrance/

[6] ZHUFU 竹浮 — Award-Winning Luxury Oriental Fragrance(ブランド紹介ページ) – https://zhufu-fragrance.vercel.app

[7] ZHUFU (竹浮), winner of the 2025 German Design Award, channels bamboo as a timeless blessing…(baroma.asia 公式Instagram投稿, 2026年1月14日) – https://www.instagram.com/reel/DTfbm1vEbv9/

[8] Notes Shanghai 2025SS: VOL16 ZHUFU 竹浮(Notes Shanghai 公式Instagram, 2025年1月28日) – https://www.instagram.com/p/DFZRbQHMXeI/

[9] China Comes to Europe at the First Edition of the Grasse Perfume Week(Pixi Dis Perfumes, 2025年7月30日) – https://www.pixidisperfumes.com/china-comes-to-grasse-at-the-first-edition-of-the-grasse-perume-week/

[10] David Huang – Perfumer Profile(Fraganty) – https://fraganty.ai/perfumers/David_Huang

[11] AGED PU-ER TEA by ZHUFU (竹浮) – Brand review post on Instagram, 2025年12月30日 – https://www.instagram.com/p/DS6GNd-km5L/

[12] NANA | ZHUFU Perfume 15ML – 製品ページ(MIST Paris) – https://mistparis.com/products/%E7%AB%B9%E6%B5%AEfu-parfum-ceramic-scented-parfum-%E6%9F%BF%E4%B8%8D%E6%9F%BF-15ml

[13] Perfumed Chocolates, Rare Tobaccos & Skin Scents(YouTube, 2025年11月10日)内「ZHUFU FRAGRANCES: Throne, Nana, and Donglin Temple」「Zhufu Limited Edition: Jasmine Tea Fragrance」 – https://www.youtube.com/watch?v=SUu0fJeackA