Vanillin
バニリン

バニリン構造図 合成香料

バニリンとは

バニリンが興味深いのは、19世紀に発見されて以来、今では誰も天然のバニラを使っていないということです。あなたが知らなければならないのは、子どもの頃の最初のケーキの記憶と結びついているのは合成のバニラだということです。素晴らしい香りというのは、人間によって作られるのであり、自然によって作られるのではないのです。

マチルド・ローラン

 バニリン(Vanillin)とは、バニラの香りの主要成分で、融点が81℃~83℃の白い結晶になります。市場の85%~90%以上のバニラの香りがバニリンと言われるほど合成バニラの香りが占めています。これは天然のバニラの精油が高すぎることに由来します。

 1858年、フランスの生化学者テオドール・ニコラ・ゴブリー(Nicolas Theodore Gobley)が初めてバニラ抽出物から純粋なバニリンを単離させることに成功すると、1874年には、ドイツの科学者であるフェルディナント・ティーマン(Johann Karl Ferdinand Tiemann)とヴィルヘルム・ハーマン(Wilhelm Haarmann)がバニリンの構造を決定し、合成することに成功しました。

ちなみに…

 ティーマンとハーマンは、その後会社を設立するのですが、なかなかうまくいかず、ルートヴィヒ・ライマーが別の方法によるバニリンの合成を発見し、工場がうまくいくようになったそうです。この会社がハーマン&ライマー社(現シムライズ社)になります。
 ちなみに、ティーマンはイオノンの合成もしており、莫大な利益を生み出したと言われています。

 バニリンはバニラだけに存在するわけではなく、クローブジャスミンオスマンサス、ジャガイモやトマトにさえも存在し、熱を加えることでコーヒーやオートミール、梅干しからも現れます。そして、面白いことに、製紙の工程で出るリグニンと呼ばれるグリコシドからも合成されます。このリグニンの存在が古本の特有の香りの1つになっており、古本をイメージした香りを作る際にはバニリンも使用します。

バニリンの製造方法

 ティーマン、ハーマン、ライマーは様々なバニリンの製造法を考案しました。上記のリグニンやグアイアコールからの合成、クローブに含まれるオイゲノールからの合成は非常に安易な方法で1930年代までは主要な方法でした。現在では、米ぬかから抽出される方法も開発されていますが、依然としてグアイアコールが最も使われているようです。

 1894年、同様の方法で、バニリンの約3倍香りが強いと言われるエチルバニリンの生成もされます。

 年間25000トンも生成されていると言われるバニリンは世界で最も作られているフレーバーの1つであり、天然のバニラよりはるかに使われています。

香水として

ジッキーがまだ構想段階にあるときにライマー・ティーマン反応の過程で作り出された合成香料のバニリンがちょうどでき上がりつつあり、ドレールというフランスの会社が特許権を取得した。最初の合成バニリンは単にチープというだけでなく、天然素材とは違うわざとらしい甘さとクリーミーな香りのする代物だった。調香師のエメゲランは合成香料と天然香料を巧みに配合し、力強く、それでいて華やかな香りを作りだした。だが、ドレールのイエローバニリンは独特だった。というのも、開発したドイツ人の製法では、せき止めシロップに含まれるグアイヤコールなどのスモーキーなフェノール系成分を少量残しているのだ。この香料をゲランが愛用し続ける理由はそこにある。

ルカ・トゥリン

 1889年、フジェールロイヤルと並び、合成香料と天然香料を組み合わせることで香水を芸術へと昇華させたと言われるジッキー(ゲラン、エメ・ゲラン)が誕生しました。ジッキーに使われている合成香料は、クマリンとバニリン(同時に天然のバニラも使用していた)でありました。ジッキーにさらにエチルバニリンをを加えることで生み出されたのが、シャリマー(ゲラン、1925、ジャック・ゲラン)であります。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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