イオノンは、バイオレットの主要な構成成分であります。大量のイオノンは嗅覚のレセプター(受容体)を一時的に弱めるため、スミレの花の香りを嗅いでも香りが分からない場合、これが原因の可能性が大きいと言われます。
1893年に化学者であるTiemannとKrugerがイオノンを発見し、これにより安価な方法でバイオレットの香りを生み出すことができるようになりました。
イオノンの仲間には、α-イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、イロンが含まれます。
- α-イオノン…最もバイオレットの花の香りに近いフローラルの香り。
- β-イオノン…フリージアのような香りもあり、ラズベリーのようなフルーティーさも持つ。
- メチルイオノン…イオノンよりももう少しウッディでアイリスの香りにバイオレットのニュアンスがついた感じ。
- α-イロン…アイリスのウッディさ、ラズベリーのような甘味、パウダリーさがある。
- β-イロン…フレッシュで、ウッディ、パウダリーさがある。
初めてイオノンを使用したバイオレットの香水はVera Violetta(ロジェガレ、1895、アンリ・ロジェ)になります。そして、この香りをティー香水の礎としたのがジャン=クロード・エレナでありました。
β-イオノンは1893年に発見された合成成分だが、一世紀近くものあいだ、その匂いはスミレの匂いと同一視されていた。私はそのβ-イオノンに、ジャスミン様香気をもつ成分ヘディオンを組み合わせ、グリーンティーのアコードを取るという新しい使い方をした。ブルガリの「オパフメ オーテヴェール」はそうやって生まれたのである。この香水は、市場を代表する香りのモデルとなり、匂いがもつ意味を変えた。もはやイオノンはスミレの匂いだけではなく、お茶の香気も備えている。
ジャン=クロード・エレナ
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