インドールとは、元々、染料であるインディゴ(藍)の研究によって分離された成分であり、コールタールの主成分であったため、indigoとoleum(oil:油)をかけあわせた言葉として誕生しました。
この成分を高い比率で含むグラース産のジャスミンは非常に高価で、比較できないほど他の品種より官能的な刺激が強い。
ロジャー・ダヴ
インドールは、ジャスミンやイランイラン、リリーといった魅惑的な花の多くに含まれる不快な香りの成分になります。不快というのは、あまりに強烈な動物臭で、糞便の臭いが感じられるためです。しかし、面白いことにこの香りが含まれなければ、花の香りを再現できないと言われるほど重要な成分になります。つまり、単体で嗅ぐと強烈な不快感を催し、僅かな量をフローラルノートに混ぜると驚くほど美しい生命力を与える香料なのです。
さて、糞便の香りがするということは、糞便にインドールが含まれているということです。我々が摂取するタンパク質(protein)は、アミノ酸から構成され、そのうちL-トリプトファンというアミノ酸がインドールを有する構造をしています。このトリプトファンが腸内で悪玉菌により分解されることでインドールやスカトールといった臭い物質に変化するのです。
ジャン=クロード・エレナが見つけたジャスミンサンバックは、インドールという成分がたくさん含まれるアニマリックで圧倒的な香りでした。実は、糞にはインドールという物質がたくさん含まれていて、人間の体も腐敗するとインドールが発生する。つまり、インドールは女性的な香りであると同時に、死の香りなのです。
チャンドラー・バール
・『香水の歴史』
・『The Perfect Scent』
・Bois de Jasmin
・Fragrantica
・PerfumeShrine