Q. 香水を試す時はどのようにしたらいいでしょうか?また、店頭で試す際の注意点はありますか?

Q&A

A.

実に大雑把なチェックで事足りたとする怠惰な習慣をもつ人が多すぎるようである。こういう人々は鼻を瓶の先にもっていったり、一滴を手の甲に垂らして皮膚をこすったりするのであるが、こうするとアミノ酸反応を引き起こし、むかつくような匂いにしてしまわないまでも、少なくとも香水を変質しかねない
 一流の香水にはアトマイザー(注:ここではスプレー付きのボトルの意)を使うべきである。瓶口から漏れる香りは判断を誤らせるもので、それを嗅ぐだけというのでは、奥行きのまるでない浅薄な印象を味わうだけであって、その後に生じ持続するすばらしい効果を発見するにはいたらない。香水というのは、香りの映画とでもいえるものであり、初めから終わりまで味わいたいものである。
 消費者に試してもらうさいのもう一つの大きな誤りはどんな香水店でもみられることだが、互いに対照させられるのではなく、別々に嗅ぐべき幾種類もの香水を次から次へと十分な間を置かずに、試させることである。感覚の相対性の法則は、この間違いをけっして受け付けることはない。

エドモン・ルドニツカ

香りの試し方

重要な注意事項

 まず初めに、絶対にしてはならないのが、香水瓶のスプレー部分に鼻を近づけることです。店頭にあるテスターは、毎日、何度も、長期間使用されているものであり、スプレー部分には香水を出したあとのカスしか残っていません。香りはしますが、空気にかなり触れて酸化しており、その酸化した液体が毎日積み重なるわけなので、実際の香りからは程遠い可能性が高くなります。

 また、すでに香りのついたムエットやお店独自の香りのついたプラスチックの何か、で試すこともオススメしません。なぜなら、「いつ香りがついたものなのか」が分からず、「過去につけた香り」と混ざっている場合が多々あるからです。その香水の香りを正しく判断できないのは当然ですよね?

 この2点は、購入した香水の香りが試したときと違うと感じる要因の一部になります。したがって、店頭で香りを試す際には、新しいムエットを店員さんにお願いするのがベストになります。

試し方(つけ方)

香水をまとった時、肌から3cmの距離と30cmの距離では香り立ちが違います。
香水をつけた直後、鼻の近くに腕を持って行きがちですが、鼻から30cmの距離でかぐと新しい発見があるかもしれません。
ちなみに私は肌から30cmの位置に立ちのぼる香りを意識して創ります。

村井千尋

 ムエット(肌)につける際は、約20~30cmほど離してつけます。特に、スプレーした際にでる霧が面でつくように意識します。なぜなら、距離が近いと点でつき、液体が紙(肌)から垂れたり、アルコールが強く残ったりし、香りが分かりにくくなるからです。
 逆に離しすぎると、香りがつかないので、適度な距離になるよう調整します。

 ムエットにつける場合、多くても2プッシュまでにし、アルコールを数秒飛ばしてから嗅ぎます。このアルコールを飛ばす間に、販売員側がつけた香水の名前を記入しておくと試す時にちょうど良い塩梅になります。ムエットを嗅ぐ際には、パタパタ扇がず、ゆっくりと鼻に近づけたり、遠ざけたりしながら嗅ぎます。パタパタ仰いでも香りの奥に潜むものが分かりづらくなるだけです。

 肌の場合、つけたあとは絶対にこすらないことに留意します。これは熱によって、香りが変質してしまうからです。したがって、こすらずに、軽く手と腕を使って仰いであげるとよいでしょう(お客様に行う場合は、美しく見えるように手首でするのではなく、腕を使って大きい動作でします)。

より正確な判断のために

 普段、食べることを避ける特定の食材はあまりないが、ガーリックは特に気をつけています。また、重ための食事は、嗅覚に影響が出るため控えています。
 香りを試すときは、前日の日中にブロッターに付け、夜や朝のドライダウンまで香り比べています。ドライダウンにはその作品が持つたくさんの情報が現れるからです。
 朝に香りを試す際は、朝食を食べる前の、最も嗅覚の優れている時に香ります。

フレデリック・マル

・1回の試香では、5~10種類の香りまでにすることを頭に入れておくことが大事です。調香師レベルのプロでも、正確に判断できるのは、1日10種類までと言われるくらいなので、真剣に判断したい場合は、嗅ぎすぎないことが肝要です

・鼻をリセットしたい場合は、コーヒー豆やチョコレートを嗅いだり、自身の肌の匂いを嗅いだり、外で深呼吸したりすることをオススメします。自身の肌の香りは安心感をもたらしやすく、嗅覚をリセットしやすいです。また、香水を試すお店は大抵他の香りもたくさん混ざっているため、外の空気を吸うとかなりリセットできます
 正確に香りを判断したい場合は、朝一で、朝食を食べずに、他の香りにも何も触れない状態で、嗅ぐことをオススメします

・時間によっても香りは変化するため、その香りを学びたい場合は、15分に1回の割合で嗅ぎ、ノートをつけると良いでしょう。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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