書籍&映画情報
書籍名:『香水 – ある人殺しの物語 – 』
著者:パトリック・ジュースキント
出版年:1985年
出版社:文春文庫
映画名:『パフューム ある人殺しの物語』(原題:Perfume: The Story of a Murderer)
公開:2006年
監督:トム・ティクヴァ
出演者:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン
18世紀のフランスに、とある男がいた。天才肌の、おぞましい男である。その種の人物が少なからず輩出したあの時代にあって、とりわけ天才肌で、この上なくおぞましい人物だった。これからその男の物語を始めよう。名前はジャン=バティスト・グルヌイユ。いかにもこの名前はサド侯爵や、革命家サン・ジュスト、稀代の辣腕家フーシェや、ナポレオン・ボナパルトといった同時代フランスの天才的な怪物たちとはちがい、すっかり忘れられている。(中略)彼の天才と野心とが、ある特殊な領分に限られていたからである。しょせんはこの世に痕跡一つ残さずに消え失せるもの、すなわち香りというつかのまの王国に。
『香水』より
書籍レビュー
ドイツで生まれ、1985年の刊行以来、46か国語に翻訳され全世界で1500万部をうりあげているベストセラー小説です。
本小説は、18世紀のフランスに生まれた類稀な嗅覚の持ち主である主人公が、香りに惹かれ、取り付かれる人生を香水とともに描いた作品です。巧みな表現で目の前で香っているかのような生き生きとした描写。誰もが思い描く自分の運命の香り。出会った瞬間に人生が変わるかのような、世界が違って見える。これを読んだ後、あなたは香りの魔力に抗えるか?それとも恐怖に慄くか。
香水の本としてだけでなく、小説としての完成度が非常に高く、これだけで面白い。小説が好きな人、香水に興味があるすべての人に読んでもらいたい作品です。
映画レビュー
映画では、単純にストーリーを楽しめるだけでなく、アンフルラージュ(冷浸法)をリアルに見ることができる興味深い作品になっています。
実は、映画の脚本には原作者であるジェースキントは関わっておらず、友人で映画プロデューサーのベルント・アイヒンガーが苦心の末、映画化権を獲得しました。ドイツでは最も高額な制作費用5000万ユーロとなっており、キャスティングには1年かけて見つけた主人公役ベン・ウィショー(のちに007スカイフォールやゼロの未来に出演)やハリーポッターのスネイプ先生役であるアラン・リックマンを採用しています。
映画の面白さは、何と言っても、香りの魅力に惹かれたピュアな心の主人公とあまりに香りに惹かれるがあまりおぞましいことを平気でやってしまうダークな主人公を描く明暗部分になります。香水が好きな人も興味がなかった人も、見終わった後は香りへの興味が爆発すること間違い無し。
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