歴史
世界初のレザーの香水は、クリードの作ったロイヤルイングリッシュレザー(1780、ジェームズ・ヘンリー・クリード)と言われています。
クリードは元々、1760年に設立されたロンドンの香り付きレザーグローブの仕立て屋であり、時の国王ジョージ3世に、そのレザーグローブを提供していたブランドでありました。ジョージ3世は、そのレザーの香りが好きで、クリードにその香りのする香水を作ってほしいと頼みました。その結果できたブランド初(世界最初のレザー)の香水がロイヤルイングリッシュレザーでありました。
レザーの香りというのは、1つの香りではなく、何百の香りが含まれています。コストがかかりますが、自然のタンニングの過程でお花のように香るジェニュインレザーも多くあります。レザーにおいては化学的な香りというのは一般的なのです。そして、調香師がレザーの香りを作る場合、それはレザーの香りではなく、レザーの芳香にインスピレーションを受けた香りになります。
ジャン=クロード・エレナ
元々、レザーというのは、動物の皮を革にする過程で様々な薬品を使うため、その臭いニオイがついてしまいます。そのニオイを消すために、革の製造が発展した国では、それぞれで香りづけを生み出してきました。
例えば、
・スペインではローズウォーター・アンバーグリス・シダーウッド・ムスク
・イタリアではアーモンド・アイリス・ムスク・アンバーグリス・シベット
・イタリアのメディチ家カトリーヌ・ド・メディシスにより香りの作り方が伝わったグラースではアンバーグリス、シベット、ムスク、ローズマリー
使われていました。
ヨーロッパは主に、フローラルやハーブ+動物性香料で香りづけをするのに対し、ロシアではバーチタールを革にオイルとして使うため、バーチタールのスモーキーな香りがします。ロシアンレザーのその香りは、様々な革製品(特にウォータープルーフのミリタリーブーツ)を通しヨーロッパの人たちを魅了していきました。
レザー香水の分類
前述のレザーの香りづけの違いのように、香水において、レザーの香りは大きく2種類に分類されます。それはキュイールドゥロッシー(Cuir de Russie、ロシアの革)とポードエスパーニュ(Peau d’Espagne、スペインのスキン=スパニッシュレザーの意)です。香水では、レザー自体を香料として使えず、またレザーを表せる1つの香料というものもないため、基本的に調香師はレザーアコードを作らなければなりません。
キュイールドゥロッシーは、シャネルやゲランをはじめとした多くのブランドから出されている香りのタイプであり、主に合成香料イソブチルキノリンをメインに、バーチタールなどを使用します。イソブチルキノリンのアニマリックさやバーチタールのスモーキーさが特徴的です。
一方、ポードエスパーニュは、フローラルやフルーツ、ハーブをシベットやムスクなどのアニマリックな香料と組み合わせて作ります。古くはロジェガレやサンタマリアノヴェッラが作っていた香りになります。
現在では、この2つに分かれるというよりも、様々なタイプのレザーに分かれます。
レザー香水に使われる香料
天然香料
バーチ、ジュニパー、スチラックス、カッシー、カストリウム、ラブダナム、ブラックティー、パチョリ、タバコ
合成香料
イソブチルキノリン、スエードアコード、サフラレーヌ(safraleine)、アルデヒド
代表的な香水
キュイールドゥロッシー(シャネル、1924、エルネスト・ボー、現在レゼクスクルージフにあるのは2016年にジャック・ポルジュが再調香したもの)
タバックブロンド(キャロン、1919、エルネスト・ダルトロフ)
スキャンダル(ランバン、1931、アンドレ・フレイス)
No゜19(シャネル、1970、アンリ・ロベール)
キュイールモレスク(セルジュルタンス、1996、クリストファー・シェルドレイク)
ブラック(ブルガリ、1998、アニック・メナード)
キュイールベルガ(ゲラン、2005、オリヴィエ・ポルジュ)
パチョリ24(ルラボ、2006、アニック・メナード)
タスカンレザー(トムフォード、2007、)
ケリーカレーシュ(エルメス、2008、ジャン=クロード・エレナ)
キュイールダンジェ(エルメス、2014、ジャン=クロード・エレナ)
コメント