Ambergris
アンバーグリス

 マッコウクジラが、タコやイカの硬い嘴など消化できないものを食べ、それが排泄されたものをアンバーグリス(灰色の琥珀)と言います。水よりも軽いため、海に浮き、海岸に打ち上げられることもあります。その塊からは、言葉にし難い良い香りがし、他には見ない色と形であったため、それを見たある中国人は、竜のよだれが固まったもの、「龍涎香」と呼びました。
 また、嘴が気道や腸内を刺激し、蝋状の分泌物が出てきて、それにより結石化するのが、貝と真珠の関係に似ていることから、マッコウクジラの真珠とも呼ばれています。かつては、イギリスのチャールズ2世をはじめとした王族らが食べていたという記録やアンバーグリスで香りづけしたチョコレートドリンクのレシピもあります。

 排出されたばかりのアンバーグリスは黒色で、少し柔らかく粘り気があり、ほとんどの人は不快に感じるかおりです。そのため新鮮なアンバーグリスには価値がありません。これが海の中で漂い、海水の塩分日光にさらされることで独特の香りになっていくのです。
 そして、海面を浮遊する期間が長ければ長いほど、色は淡くなり、香りはまろやかになっていきます。香水業界で使われるのは、茶色から灰色をしたスタンダードなものと、浮遊期間が長いため小さく白色になったもの(これが最高品質)です。

 価格は、最高のものだと1gで3000円以上になります。これまでで一番大きなアンバーグリスは、1953年、南極大陸で発見された420kgのものになります。この金額の高さから、「流れる金」とも言われます。天然のアンバーグリスは、上記の理由から安定してとれないため、合成香料が代替品として使用されます。

 香りは、とても軽く、微妙で、少しだけスウィートな香りとも言われますが、むしろ塩っぽさやドライさ、むせかえるような香りの印象を受けます。

 アンバーと略すと、アンバーノートと勘違いされるため、基本的にアンバーグリスと呼ぶことをお勧めします。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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Le Chercheur de Parfum

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