シプレーとは
シプレ(Chypres)系の香水は、フランソワ・コティが1917年に発表した「Chypre」という香水から始まります。それは、地中海に浮かぶキプロス島(Cyprus)に名前を由来します。ちなみに、コティ以前から、ピエール・フランソワ・ルバンがロシアの皇帝アレクサンドル1世に捧げたオードゥシプレー(1821)やゲランのChypre(1850)、Chypre de Paris(1909)などキプロスの名を冠する香りはありましたが、コティの香水が非常に成功したため、ほとんどの場合、コティのシプレが最初の香水として挙げられます。
シプレの特徴は、まず強烈なシトラスノート(特にベルガモット)から始まり、フローラルのアブソリュート(ジャスミン、ローズ、イランイランなど)が現れ、最後に、最も重要なラブダナムのスウィーティで深みのあるウッディな香りがする点です。ラブダナムは、オードゥシプレーの時代から特徴的な香料として使われていたようです。しかし、面白いのは、ラブダナムはアンバー系(オリエンタル系)の重要な香料でもあるということです。
2001年より天然のオークモスがアレルギーの観点からIFRAに制限され、2012年には禁止されたため、多くのシプレの香水が消え去りました。このことにより、オークモスを使わずに代替のものを使用したモダンシプレという形の香水が生まれることになります。
シプレーの香りはさらに、フレッシュシプレ、フルーティーシプレ、フローラルシプレ、グリーンシプレ、レザーシプレ、ウッディシプレと大別されていきます。ウッディアコードには、パチョリ、ベチバー、シダー、オークモス(これもかなり重要)が合わせて使われ、レザーにはイソブチルキノリンが使用されます。
シプレ系は女性用に多いですが、男性用もあり、どちらも端正で上品な香りです。80年代から90年代にかけてはカジュアルなスタイルが流行したため、シプレは上品すぎるとみなされたという時代背景もありました。キーワードは、品の良さ、エレガント、落ち着いた雰囲気です。
シプレー系の香水は、最初の香りからすぐには全ての香りが分かりません。徐々に、徐々に、纏っている人にその秘密を明らかにしていくのです。
ドロシー・ピオット
代表的なシプレー
20世紀から有名なフランスの香水を1つ思い浮かべて下さい。それは間違いなくシプレーでしょう。
ジェームズ・ヒーリー
以下のシプレーの分類は筆者の主観によるものです。
シープル(コティ、1917、フランソワ・コティ)
フルーティシプレー
ミツコ(ゲラン、1919、ジャック・ゲラン)
スブリームバルキス(ディファレントカンパニー、2008、セリーヌ・エレナ)
オードゥマグノリア(フレデリックマル、2014、カルロス・ベナイム)
ムースドシェーヌ30(ルラボ、2017、ダフネ・ブジェ):オークモスからNG成分を取り除いたクリスタルモスを使用した新しいシプレ
シプレーモジョ45(パルルモアドゥパルファム、2018、ミシェル・アルメラック)
グリーンシプレー
ミスディオール(ディオール、1947、ジャン・カール)
カボシャール(グレ、1959、ベルナール・シャン)
N゜19(シャネル、1970、アンリ・ロベール)
フローラルシプレー
マグリフ (カルヴァン、1946、ジャン・カール)
アロマティックエリクシール(クリニーク、1971、ベルナール・シャン)
レゼクスクルジフ 31, ルカンボン(シャネル、2007、ジャック・ポルジュ):オークモスを使わずに生み出した新しいシプレ
レザリーシプレー
アラミス(アラミス、1966、ベルナール・シャン)
アラミス900(アラミス、1973、ベルナール・シャン)
ウッディシプレー
ポロ(ラルフローレン、1978、カルロス・ベナイム)
アンテウス(シャネル、1981、ジャック・ポルジュ)
ベラミー(エルメス、1986、ジャン・ルイ・シュザック)
エルメッセンス ポワブルサマルカンド(エルメス、2004、ジャン・クロード・エレナ)
エルメッセンス ベチバートンカ(エルメス、2004、ジャン・クロード・エレナ)
レゼクスクルジフ シコモア(シャネル、2008、ジャック・ポルジュ)
テールドゥエルメス(エルメス、2009、ジャン・クロード・エレナ)
アヴァントゥス(クリード、2010、オリヴィエ・クリード)
シプレ21(ヒーリー、2015、ジェームズ・ヒーリー)
オードゥカルフォルニア(セリーヌ、2019)
サンタルブラン(セルジュルタンス、2019、クリストファー・シェルドレイク)
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