Ernest Daltroff
エルネスト・ダルトロフ(1867ー1941)

エルネスト・ダルトロフ 調香師名鑑

調香史

 1867年11月17日にフランスのソーヌ・エ・ロワール地方のSainte-Cecileに生まれたダルトロフは、本名をErnest Léon René Lucien Daltroffと言います。元々、ロシアの中流階級の家系であり、母親のIda-Caroline Bingは、ダルトロフが子供の頃、寝る前に息子の耳の後ろに彼女の香水を1滴つけてあげていました。

 若い頃は中東や南米、パナマをよく旅していたダルトロフは、レヴィス通り67番地で紳士服店を営んでいました。1896年にお店は倒産してしまうのですが、子供の頃の嗅覚の記憶を思い出し、何のトレーニングも受けずに、調香師になることを決心します。1903年、弟のRaoulとともにアニエール=シュル=セーヌにあった香水ブランドMaison Emiliaを買収し、ワークショップを設立します。
 そして、1904年、ダルトロフ37歳のとき、パリの10 rue de la Paixに自身の会社を創設します。当時からすでにグローバルマーケットを想定していたダルトロフ兄弟は、1903年にAnne-Marie Caronから買収していた「Mercerie Parfumerie Caron」の名を借り、覚えやすく短い名前であり、どの言語でも発音しやすいパルファムキャロン(Parfums Caron)と名付けます。

 1906年、近くで婦人帽子の職人をしていたFélicie Wanpouille(フェリシエ・ヴァンプイユ)という女性と出会います。彼女は自身の顧客に彼の香水を紹介し、やがてキャロンのミューズとなっていきます。そして、アーティスティックディレクターとして、キャロンのボトルデザインも行い、1911年のナルシスノワールなどの名作を誕生させました。

ちなみに…

日本の代理店であるキャロンのヒストリーでは1904年に2人がブランドローンチをしたと書いていますが、公式では1906年に出会っており、一緒にブランドを設立したわけではありません。

 1919年にタバックブロンドを発売すると喫煙をする現代女性たちに支持され、1934年にはコロンを使う男性が多かった当時に、男性も香水を纏うべきだとプールアンオムを発売するなど、ダルトロフの先見の明は時代に完璧にマッチしていました。

 1923年にニューヨークのサックスフィフスアヴェニューにブティックをオープンさせ、絶好調のダルトロフはMadeleine Briet(1988 – 1987)という女性と結婚をします。

 1939年、ナチスの迫害から逃れるためにカナダ、ニューヨークへと移り住んだダルトロフは、1941年2月3日、ニューヨークで逝去します。ちなみに、フランスはフェリシエと彼のトレーニングをした調香師Michel Morsettiに任せていたようです。

調香作品

ダルトロフの特徴は、暴力的とも言える香りの中に、はっきりと見て取れます。文化的な社会的背景を持つ彼は、当時の芸術的な動向に深い影響を受けていました。フォーヴィスム、印象派、点描派の画家たちが、伝統的な写実主義のアカデミックな絵画を歴史のゴミ箱に追いやったという動きです。私は、この動向に、彼の創造のためのモーターがあったのだと確信しています。

ギ・ロベール

 彼はキャロンでしか香水を創っていないため、以下はすべてキャロンの香水。

1904Royal Emilia
1906Belle Amorur
1906Chantecler
1906Modernis
1906Ravissement
1908Affolant
1910Isadora
1910Parfum Precieux
1910Rose Précieuse
1911Elegancia
1911Jacinthe Précieuse
1911Narcisse Noir
1912Infini
1913Radiant
1913Violette Précieuse
1917London Paris
1917Mimosa
1917N’Aimez Que Moi
1919Tabac Blond
1922Narcisse Blanc
1922Nuit de Noël
1927Bellodgia
1929Acaciosa
1929En Avion
1933Les Rocailles de Caron
1934Caron Pour Un Homme
1934Fleurs de Rocaille
1935Les Cent Fards
1935Madame Peau Fine
1936Adastra
1936French Cancan
1936La Fête des Roses
1939Alpona
1939Rose de Noël
1939Voeu de Noël
1941Royal Bain de Caron / Royal Bain de Champagne
不明Bichon Fard
不明Pocahontas
主要作品年代順
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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