Skins(スキンズ)|アムステルダムで始まった香水店の歴史と、選品・接客・作り手との関係

アムステルダムの運河を背景に試香用の小瓶とムエットを配した、Skins紹介記事のスティルライフ 香りの世界を広げる

一人ひとりに合わせて助言し、そのお客様が何を好きなのかを見てください。

フィリップ・ヒレヘ

まだ知らない香水を紹介するには、棚に新しい瓶を並べるだけでは足りない。何を好む人なのかを聞き、作り手の考えを伝え、肌で試す時間を渡す。オランダ発の香水・ビューティー専門店Skins(スキンズ)は、その一連の仕事を店の中心に据えてきた。

2000年、アムステルダムの小さな店に集まったのは、わずか7ブランドだった。旧称スキンズ コスメティクスから現在のスキンズへ。香水だけでなくスキンケアやメイクアップも扱いながら、店は、海外の作り手とオランダの生活者をつなぐ場所として育っていく。

基本情報

  • 名称:Skins(スキンズ)
  • 旧称:Skins Cosmetics(スキンズ コスメティクス)。2024年に現在の名称へ変更
  • 創業・最初の店舗の開業:2000年、オランダ・アムステルダム
  • 共同創業者:フィリップ・ヒレヘ(Philip Hillege)、ミヒール・プールマンス(Michiel Poelmans)
  • 事業:香水・ビューティー製品の専門店、オンライン販売、ブランドの流通支援
  • 公式サイト:Skins

創業者と店の成り立ち

化粧品のマーケティングと飲食店の経験から

ヒレヘは、ネイルケアで知られるオランダのヘローム コスメティクスでマーケティングに携わっていた。製品開発や消費者の意見を聞く場を通して関心を深めたのは、人がなぜ化粧品を買うのかという問題だった。一方、学生時代からの友人プールマンスは、兄弟とともにアムステルダムのヨルダーン地区でレストランJean Jeanを営んでいた。

二人を動かしたのは、どこへ行っても同じものが売られているという疑問である。ヒレヘには、パリのコレットや、ジョー・ホーガンがオーストラリアで育てたメッカの店づくりが刺激になった。海外では、製品の発想も、見せ方も異なるブランドが育っている。それをオランダに紹介する余地があった。

私たちは、ただ、何もかも違うやり方にしたかったのです。

フィリップ・ヒレヘ

ただし、取り扱いたいブランドを説得できても、店を開く資金がすぐに集まったわけではない。銀行からは一般的なドラッグストアの開業を勧められた。母の友人である実業家から融資を受け、二人はRunstraatの物件を自分たちや家族、友人の手で整えた。窓には大きく「FINALLY……」の文字を貼った。売場の準備そのものが、新しい店の存在を知らせる始まりになった。

2000年、7ブランドから始まった売場

最初の店が開いたのは2000年11月。公式の25周年発表は、2025年11月11日を節目としている。場所は、運河の間に小さな商店が集まるアムステルダムのネーヘン・ストラーチェス、通称「9つの通り」の一角だった。

公式沿革に登場する最初期のブランドは、イソップとローラ メルシエで、続いてディプティックやクリードが加わった。香水だけの専門店として出発したわけではない。国やカテゴリーを越えて、小さなブランドの異なる考え方を一つの場所で紹介する店だったのである。その後、ル ラボ、メゾン フランシス クルジャン、バイレードなども、スキンズを通じてオランダの市場へ届いていった。

開業地として知られるRunstraatと、現在の店の住所は分けておきたい。公式店舗案内は、品揃えの拡大に伴い、現在の11番地へ移ったと説明している。現在の広さや内装を、そのまま2000年の小さな店に重ねることはできない。

2019年の経営体制変更と2024年の資本参加

店が増えれば、創業者の目利きだけでは事業を動かしきれなくなる。2019年、クラウディア・パウ=デュラールト(Claudia Pouw-Dullaart)がCEOに就任し、ヒレヘはクリエイティブ・ディレクターとしてブランドや店づくりを担う体制になった。

2024年には、消費財分野を専門とする投資会社ヴェンディス・キャピタルが過半数を取得した。初期の個人投資家5者は退出し、ヒレヘとパウ=デュラールトは株主として残り、それぞれの役割を継続した。単に名前が変わった年というだけでなく、成長を支える資本と経営の枠組みが変わった年でもある。

出店には内装や在庫への先行投資が必要となる。投資に際して商業デューデリジェンスを担当したOC&Cも、スキンズを店舗・オンライン販売と流通事業を持つ企業として捉えている。店頭で香水を薦める仕事の背後には、ブランドを輸入し、在庫を持ち、売場を育てる事業がある。

「コスメティクス」を外した店名と海外の拠点

2024年、名称はスキンズ コスメティクスからスキンズへ短くなった。同年のパッケージ制作の紹介は、その変更を5月としている。公式が新しい名前に込めたのは、形、色、質感、敏感さが一人ずつ異なる「肌」へのまなざしである。化粧品という製品分類を示す名前から、触れたり感じたりする人の側へ、焦点を移した。

海外展開にも、異なる運営の形がある。南アフリカでは、アフリカン・セールス・カンパニーとのフランチャイズのもと、2016年にヨハネスブルクのサントン・シティで最初の店が開いた。南アフリカ事業は、欧州の事業と別の法人として運営されている。欧州側の資本参加と、南アフリカの店舗運営を一つの出来事として扱うべきではない。

2026年10月時点の公式店舗一覧には、オランダ、ベルギー、ドイツ、南アフリカの拠点が掲載されている。ドイツではハンブルク、フランクフルト、デュッセルドルフが案内され、ヴィースバーデンは開店予定として区別されている。創業地の一店から広がった現在も、店舗ごとの場所と状況を確認して訪ねられる仕組みになっている。

スキンズの歴史年表

年 出来事
2000年 ヒレヘとプールマンスが創業。11月、アムステルダムのRunstraatに7ブランドを扱う最初の店を開く。
2016年 南アフリカのサントン・シティに、現地パートナーによる最初の店舗が開く。
2019年 パウ=デュラールトがCEOに就任。ヒレヘはクリエイティブ・ディレクターを担う。
2024年 ヴェンディス・キャピタルが資本参加し、過半数を取得。名称をSkins CosmeticsからSkinsへ変更。
2025年 創業25周年。ジュリエット ハズ ア ガンとの共同制作香水を展開。自社の香りの構想Layer+も発表される。
2026年10月 公式店舗一覧でオランダ、ベルギー、ドイツ、南アフリカの拠点を案内。

選品と接客で、香水の背景を伝える

創業者の考えと、長く続く関係を見る

スキンズの公式紹介は、ブランドの中心にいる人の知識、構想、個人的な着想を重視する。規模の小ささだけで選ぶのではなく、その製品の後ろに誰がいて、どんな考えで作っているのかを確かめる姿勢である。

取り扱うことは、完成品を仕入れて終わる関係でもない。スキンズは他の小売店への卸売窓口を持ち、ホテルや飲食店などで香りやケア製品を使う提案も行う。一般客のための売場と、ブランドをほかの場所へ届ける流通の仕事がつながっている。小さな作り手にとって、店は顧客との接点であると同時に、活動範囲を広げる相手でもある。

買うことを急がせず、知識を持って案内する

創業時、ヒレヘが疑問に感じたのは、ブランドごとの販売目標や販促によって薦める商品が決まってしまう接客だった。スキンズでは、気になる香りをまず試したい人にサンプルを渡し、その場で購入を迫らないことを方針にした。

買わなければならないというプレッシャーはありません。

フィリップ・ヒレヘ

選択肢が増えるほど、案内する側にも学びが要る。教育担当のジャニータ・ハウレギ(Jannita Jáuregui)は、2023年の研修事例で、豊かな品揃えは客にとって楽園でも、スタッフには迷路になりうると説明した。店頭の静かな時間にも学べる短いオンライン研修を、対面の学習と組み合わせ、接客・助言からブランドや製品までを扱う仕組みを整えたのである。

人と人との接触は、その中で欠かせません。

ジャニータ・ハウレギ

商品知識を画面で学べるようにしても、対面の研修を残す。その判断は、客の好みを聞いて案内する仕事を、情報の暗記だけでは完成しないものと捉えていることを示している。

共同制作香水に育った、作り手とのつながり

店とブランドの関係を具体的に示すのが、ジュリエット ハズ ア ガンとの香水「Skins x Juliette has a Gun」である。公式は、ロマノ・リッチとヒレヘの約20年にわたる友情と共通の情熱から生まれた作品と位置づける。

題材は肌である。ライチやジンジャーの明るさに、アキガラウッド、パピルス、トンカビーンなどを重ねたウッディな構成と、さまざまな肌の色から着想したボトルの色が、一つの主題を共有する。店名を添えた限定品であるだけでなく、売場で育んできた関係を、実際の香水へ移した例なのだ。

さらに自社ブランドのLayer+(レイヤープラス)では、手持ちの香水に重ねたり、単独で使ったりする「フレグランス・エンハンサー」を提案する。公式は、ジボダン、IFF、高砂香料などの香料会社と開発したことを説明している。店が長く見てきた、一人ひとりが自分の香りを探す行為を、重ねづけで変化を作る製品へ展開したものといえる。

アムステルダムで出会える体験と、店の外への広がり

Runstraatの店から、街ごとに異なる入口へ

創業地をたどる入口は、現在のネーヘン・ストラーチェス店、Runstraat 11である。改装を経た店舗では、香水やビューティー製品の相談に加え、メイクアップの個別セッションも案内する。アムステルダムには、コンセルヴァトリウムの拠点やヘルダーラントプレインの店もあり、一つの街でも異なる場所に売場を持つ。

創業時に夜まで営業し、日曜日にも店を開けようとした姿勢と、現在の営業時間は区別したい。訪問時には公式の各店舗ページで営業日とサービスを確かめることになる。歴史を知って歩くなら、大きなチェーンになった今の売場と、7ブランドを紹介していた出発点の距離にも目を向けられる。

作り手と話す催し、香りを学ぶ講座

スキンズでは、作り手に直接会う催しが接客の延長にある。2026年11月8日にヘルダーラントプレイン店で予定される「Meet the Creators」には、クリス・コリンズ、ドルセー、ビビ パルファンなど、12ブランドの創業者が集まる。香水を嗅ぎ比べ、作品の始まりや制作について本人に質問し、スタッフとともに相談できる企画である。

また、マスタークラスには、店舗で行う回とオンデマンドのオンライン講座がある。公式の講座案内にはウードを題材にした「Story of Oud」なども並ぶ。一本の香水を買う機会だけでなく、素材や表現を知り、次に香水を嗅ぐときの手がかりを増やす時間を用意している。

自宅で試すサンプルとオンラインの相談

公式のサンプルサービスでは、香水やスキンケアから選んだ5点を試せるセットを扱う。オンラインでもスタッフへの相談窓口があり、実店舗、試すための小さな量、会話による案内を組み合わせている。対象商品や条件はサービスごとに異なるため、すべての香水を同じ方法で試せるという意味ではない。

旅行で店を訪ねなくても、スキンズの歩みから見えるものはある。知らないブランドを紹介するには、販売員の知識も、試す時間も、作り手を知る機会も必要になる。スキンズが広げてきたのは、香水を置く棚と、その香水を自分のものとして理解するまでの接点である。

参考文献