Metallic Note
メタリックノート

メタリックノート 香調

メタリックとは

 メタリックとは、「メタル(金属)のような」という意味で、「金属やステンレスを思わせ、鼻腔を突き抜けるような冷たさと鋭い針のような感覚を覚える」香りのことを言います。

 いわゆる金属臭ですが、化学に詳しい方なら疑問に思うでしょう。そもそもニオイと言うのは、ある化合物から揮発が起こり、それによって認知するはずですが、融点(液体になる温度)が非常に高いおインドにある金属類が日常生活で揮発するのか?それとも別の何かのニオイを感じ取っているのか?(ちなみに、銅は1084℃、鉄は1536℃です。)

 私たちが鉄のニオイがすると感じるのはどんなときか?鉄棒を触った時、10円玉を触った時、ちょっと錆びた鉄製の工具を触った時などなど。あれ…?手が触れたものじゃない?

 実は「本当に鉄のニオイを感じているのか?」と疑問に思い、実験・解明をした研究者たちがいます。それが、Glindemann博士のチームでした(フリーで読める論文なので興味がある方は参考文献からどうぞ)。

 彼らは、被験者に「鉄イオンと人工の汗を混ぜた溶液」と「鉄イオンのみの溶液」とを嗅がせ、感想を言ってもらうのですが、前者は鉄を触ったときの掌のニオイに似ており、後者は何のニオイも無いという結果になりました。そこで、この皮膚と鉄のニオイの関係を実験によって明らかにしていくのです。

 汗をかいた皮膚は金属鉄を腐食させ、反応性の高いFe2+イオンが形成されます。Fe2+イオンは、数秒でFe3+イオンに酸化されると同時に、皮膚に元々存在する過酸化脂質(注:皮脂のこと)を還元分解し、金属臭として感知されるカルボニル炭化水素を形成する。この反応の速さが、触れた直後に嗅ぐ「金属そのもの」であるかのような感覚的な錯覚を引き起こすのである。

“The Two Odors of Iron when Touched or Pickled: (Skin) Carbonyl Compounds and Organophosphines”(2006, Glindemann)

 そして、面白いことに、血液は、それ単体で金属臭が確認されたのです。この共通する金属臭は、1-octen-3-oneと呼ばれるアルデヒドおよびケトンでありました。ちなみに、これらはマッシュルームや動物臭、魚臭にも存在しています。

 思い返せば、新品の金属はそんなにニオイが気になったことはないのでしょうか?つまり、金属臭とは、肌と金属の融合によって生まれる匂いであり、血の香りでもあるのです。

使用される香料

 調香師が、メタリックノートに使う代表的な香料は、ローズオキシド(ローズの香りに含まれる香気成分の1つ)、ゼラニウムラベンダー、合成アイリスアルデヒドになります。この他にも、各香料会社はメタリック感を出す合成香料を作っています。基本的にはローズオキシドやアルデヒドなど合成香料を使うことが多いです。

メタリック感が分かる香水

 合成香料の使用が多いこともあり、エーテル(AETHER)の香水はメタリック感が分かりやすいのではないかと思います。また、メタリックが特徴的な香りのため、あまり多くはありませんが、メタリック感のある香水をいくつか挙げてみます。

・CARBONEUM(エーテル、2016、アメリ・ブルジョワ&アンソフィー・べヘーゲル)
・Rose Alcane(エーテル、2016、アメリ・ブルジョワ&アンソフィー・べヘーゲル)
・ULTRAE(エーテル、2016、Beverley Bayne)
・コンクリート(コムデギャルソン、2017)
・コムデギャルソン3(コムデギャルソン、2002、マーク・バクストン)
・メタリーク(トムフォード、2019、アントワーヌ・メゾンドゥー)

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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