A. 下記の2点を前提に、個人的な意見を述べます。
①「繊細な香り」というマーケティング戦略の文言がほとんど。
②何が繊細かの絶対的答えはない。
一般的な例から考えると、書家は「繊細な文字」は書いても、「弱い文字」は書かないでしょう。 画家は、「繊細なタッチの絵画」を描いても、「弱いタッチの絵画」は描かないでしょう。 クラシックバレエのプロならば、「繊細な動き」はしても、「弱い動き」はしないのではないでしょうか?
ここから考えるに、「繊細」とは、ある一定以上の技術、職人技とでも言うべき、鍛錬の末に生まれる、「細さの中に生まれる芸術的美しさ」なのではないかと考えます。 そして、これは見る側においても問われ、その道のプロでなければ違いを説明することは難しいのではないでしょうか。しかし、プロでなくても、それが「繊細」であれば、その美しさから何かを感じ取れるもの、それが「繊細である」ということなのだと考えます。 この考えから言うと、「繊細な香り」と「弱い香り」の違いとは、「強くはない香りの細部に芸術的美しさがあるかないか」ではないかと私は思います。
では、「香りの細部が美しい」とは何か? 難しいですが、言語化してみると、 香水のつけたてから数時間経ったあとの残り香に至るまで、使用された1つ1つの香料がそれぞれ意味を成しながらシンフォニーを奏で、「甘い」「爽やか」といったイメージではなく、何か幻想的な空間にいったかのような、言葉も失い、恍惚の笑みを浮かべてしまう、そのようなことではないかと思います。 逆に、香りの細部が美しくなければ、「トップの印象だけが残る」「〇〇の香りみたいだなぁ」「香りは悪くないけど、なんか物足りないんだよなぁ」と感じる気がします。
本題は「繊細な香り」ということでしたので、上記の内容に、さらに「強くはない、細い香り」である必要があります。しかし、これは大きな問題ではありません。なぜなら、ウードが使われていたとしても「繊細な香り」と認知することはあるからです。 ここからさらに考えてみると、全体的なインパクトが強い香りや全体的なインパクトが弱い香りではなく、 一定のインパクトを持つ香りが存在しながら、その奥にか細い香りが優美な雰囲気を生まれさせ、敏感な鼻腔をくすぐる。 これが「繊細な香り」ということなのではないかと私は思いました。 そして、これは、誰もができる技ではなく、素養と常軌を逸した努力、審美観など、様々な要素が重なり合って生まれる香りだと思います。
ちなみに、これを書きながら頭に浮かび、纏った香りは、 ノワールエピス(フレデリックマル) ミュゲポースレン(エルメス) です。 ご質問ありがとうございました。