A. 初級者は迷い、中級者になると他の人にアドバイスができるようになり、上級者は悟りを開いたかのように自身の香水道を歩んでゆく。そして、古今東西、香水が好きになった人の心の片隅にある疑問は、「結局、香水はどのように選んだらよいのか?」という疑問。しかし、自身の香水哲学を持つ人たちは気づいている。「香水は好きなように選んだらよい。たかだか香水なのだから」と。
されど、香水。周りから嫌がられるのは避けたいし、自分の好きなものだってどう探そうか。見えない芸術と呼ばれる香水をもっと楽しみたい。やはり大海に投げ出されると選べないのが普通です。
香りは、人生における宝探しなのです。
カルロス・ベナイム
さて、見知らぬ第三者が香水の選び方を「まず香りのノートを知り、次に香りのピラミッドを学び…」と延々と記述するより、香水を創作した本人たちに聞いてみるのはいかがでしょうか?以下では、調香師や香水業界の著名人の「香水の選び方」に関する言葉を多く引用し、各人が納得する自分なりの選び方を見つける一助になれば幸いです。
調香師&業界の著名人から学ぶ香水の選び方
香水は、洋服を選ぶのと近いです。ビーチに行く時と冬とでは纏う物は違いますよね。また、香水は人柄を表すものであり、香水はその人が何者であるかを多く語ります。香水を選ぶ際は、こんなシンプルな質問をしてみるといいでしょう。私自身もお店で香水を売っていた時は、これらをお客様に質問していました。
・どこにまとっていくか。スマートな印象でオフィスでまとう?それともモードなファッションで外を歩く?上品なイメージ?可愛らしい感じ?
・朝つける?夜つける?仕事中?休みの日?
・人生を変えるため?恋人を変えるため?
・自分を印象付けるため?香りで落ち着くため?恋のため?
・運動の後に?リフレッシュのため? etc.纏う瞬間・場面を描いて、その場で自分がどんな人物でありたいか、に基づいて選びましょう。その場面を描くことで、香水を香る際に、より具体的にイメージしやすくなります。例えばイブニングドレスを買う時も、ジーンズを履いていく場面とは違うシーンを想像すると思いますが、香水もまさにそれと同じです。
また、纏っていて心地良いもの(違和感のないもの)を選ぶのが良いでしょう。メイクやファッションとも共通しているかもしれませんが、仲好しの友人や映画スターのようになりたいからそれを纏うのではなく、自分自身でいられる香りをまとうことを勧めたいです。彼女がこの香りがよいと言うから、と言う理由であまり好きじゃなくても纏うというような拷問はする必要がありません。それは似合う物ではないのです。
お店では、ブロッターで香り、実際にまとってみて、自分の上で綺麗に香るか、それが気に入るか、心地良いかを確かめて欲しいと思います。纏う人の人柄をより強調して、またそれを纏う人が香水を強調するような、マッチングが大切なのです。
フレデリック・マル
香水は、それを身につける女性なり男性なりの個性に組みこまれ一日中ついてまわるものなのだから、どうあっても人柄と調和するものでなければならず、調香師に多くの制約をもたらすことになる。
香水の選択が有効になされるには、知的な好奇心を働かせ、香水をなぜ、どのように使うかを理解しようとし、匂いの嗜好を磨きながらふさわしい能力を育てなければならない。つまり感受性を鍛えて、早とちりな底の浅い判断を下したりしないようにすることである。瓶の口先でちょっと匂いを嗅ぐだけなどというのは、音楽作品を、ただ序章から判断しようというに等しい。
エドモン・ルドニツカ
人の趣味、またはセンスは、たえず自分を深く磨くことによって高められます。それは絵画、彫刻に接したり、音楽や文学に心を開くのと同じことではないでしょうか。自分自身を高めること、それが、自分にとってよい香水に出会える道といえるでしょう。自分を深く知れば、自分に一番似合った香りは自然にわかってくるものです。
エドモン・ルドニツカ
私のアドバイスは極めてシンプルです。何も考えずにお店に歩いていって、選んでもらった香りを最初にブロッターで嗅ぎます。そして、これだ!と思ったなら、肌の上に香りをのせてもらい、理想的なのは1日か2日香りと一緒に過ごすことです。そして、自分の感情がまだそこに残っているのかを確かめるのです。
クリスティーヌ・ナジル(エルメスの専属調香師)
重要なことは、あなたがそのフレグランスを嗅いだ時に感じる感情です。
マチルド・ローラン(カルティエの専属調香師)
私にとって、自分のシグネチャーセントを見つける唯一の方法は、あなたの心、パーソナリティ、感情です。とても有名な調香師エドモン・ルドニツカは、よい香水というのは感情的な衝撃をもたらすものだといいました。私は、これこそ香水を選ぶ唯一の方法だと思っています。だから、あなたは常に心と感情で香水を選ぶべきなのです。
マチルド・ローラン(カルティエの専属調香師)
私は、人に自分自身で物事を決めることができるようになって欲しいと思っています。香水業界に20年以上いますが、常に聞かれる質問は「どうやって香水を選んだらいいですか?」です。皆、途方に暮れているんです。
私が望んでいることは、より良い情報を通して、皆さんがもっと楽しむことができるようになることです。そして、同時に、もっと美しくなり、それが続くような、具体的な香りにたどり着くことを願っています。
マチルド・ローラン(カルティエの専属調香師)
香水を選ぶのは、恋愛のようなものです。一目で恋に落ち、人生のように愛を育みます。結局、時間の問題なんです。トップノートからベースノートまで拡散していくので、香水を知るには時間がかかります。
私は、一つの香りだけを纏うというのは、過去の、時代遅れの遺産だと強く信じています。今の時代はもっと自由であり、私たちのパーソナリティのすべての側面を表現することができるということです。だから、私はフレグランスのワードローブを作ったのです。
フランシス・クルジャン
私が唯一できるアドバイスは、「時間を取って下さい」ということです。正しい選択をするために、色々な香水を試すことをためらわないで下さい。また、一日を通して香水がどのように変化していくのかをみるために、肌の上で試すこともお勧めします。香水というのは、あなたを驚かせるべきものであり、心地よく展開していくべきものなのです。
ジャン・クリストフ・エロ―
紙につけた後でもっとよく知りたくなったら、肌で試してみる。それからそのままランチに出かける。そして結果を確かめるー1)消える、2)退屈、3)不快、4)素晴らしい香りが残る。
タニア・サンチェス(『世界香水ガイドⅡ』より)
もしかするとあなたは、香水を選ぶのにロジックなんてあり得ないと感じるかもしれません。だって、嗅覚はとても感情的なものですから。しかし、あなたがとても楽しんでいる香水は、もしかしたら14のフレグランスファミリーの1つか2つ、どれかに属している可能性があります。やはりどんな良いものでもそうですが、正しい新たな香水を探すには、少し努力を要するのです。まずは、フレグランスファミリーがそれぞれどのような違いがあるのかを理解することをオススメします。
マイケル・エドワーズ
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