Bertrand Duchaufour
ベルトラン・ドゥショフール

ベルトラン・ドゥショフール 調香師名鑑

ドゥショフールは陰影の専門家です。彼は、煙や木の香りで嗅覚のチャコールやグレー、深みのある紫を描くのです。

チャンドラー・バール

調香師ベルトラン デュシュフールの傑作ー「タンブクトゥ」「ゾンカ」「ジュビレイションXXⅤ」に共通するのは、いずれも「豊かさは清貧にこそ宿る」という真実に気づかせてくれること。レンブラントの肖像画に描かれた人物たち(当時の富裕層)が着ているものもそうで、敬虔なクリスチャンにふさわしくモノトーンで地味な感じながら、素材は間違いなく高級品。

タニア・サンチェス『世界香水ガイド』より

調香史

 ベルトランはフランス北部のナンシーに生まれ、松の木に囲まれて育ちました。16歳の時にパリに引っ越します。彼の父と兄は、地質学者であったため、彼らに倣い地質学を学んでいました。しかし、たまたま彼の最初のガールフレンドが香水が大好きで、シャネルのNo゜19を纏っていたことがきっかけで、香水の魅力に出会います。
 高校卒業後は、マルセイユやリヨンで生化学と遺伝子学を修めます。当時、香水以外に、旅行・写真・絵画に情熱をむけており、これが香水の調香に影響を与えているようです。

私にとって、旅行はとてもインスピレーションに満ちています。旅は特定の場所で物語を生み出し、家に戻ってきても記憶に残っている素晴らしい香りを発見できるのです。

ベルトラン・ドゥショフール

 1982年、調香を学ぶ決心をしたベルトランは、調香師学校であるISIPCAに入学しようとしますが、ISIPCA側が学校で学ぶよりも南フランスの香水の会社で実践的な訓練をした方が良いと勧めますが、どうすればそこに入社して学べるのか、彼には分かりませんでした。結果的にマルセイユの大学時代の友人が、グラースにあるFlorasynth社の6ヶ月トレーニングを紹介してくれました。1985年からFlorasynth社で香料や調香について学んだベルトランは、27歳のとき自身の最初の香水を作成しました(ちなみにセカンドスキンのような滑らかな香りだったそう)。

 この頃、ちょうどFlorasynth社にいたジャン・ルイ・シュザックドミニク・ロピオンミシェル・アルメラックとともに仕事をして、調香技術を学んでいきます。特に、彼ら3人は自身のメンターだと言っています。彼の最初の商業用の香水はジョーマローンのアンバー&ラベンダーでありました。

 1998年からは10年間、Creations Aromatiquesとシムライズ社で働きます。2008年から独立調香師になり、ラルチザンで実質専属調香師のような立ち位置として、何の制限もなく調香ができた他、パリに専用のラボ「L’Atelier de L’Artisan Parfumeur」を持っていました。このラボはフラグシップストアの2階であったため、住み込みの調香師「Perfumer-in-Residence」と呼ばれていました。ラルチザンはベルトラン以外の調香師にも香水を作らせていたため、実のところ専属というわけではありません。

 ラルチザンでは、雇用前の1997年に同ブランドでの初めての香水メシャン・ルーを調香し、その後もパチョリパッチやポワブルピカン、タンブクトゥなどを調香していました。2008年以降は、ラルチザン香水だけでなく、ラルチザンの旗艦店でパーソナルフレグランスの調香もしていたようです。

 2014年からはTechnico Florという会社に移り、調香だけでなく、若い調香師の育成も努めています。彼の弟子には、ステファニー・バコウシュ(Stéphanie Bakouche)らがいます。

 一つだけ私が確信しているのは、香水を最も正しく判断するのは時間だということです。香水が芸術であり続けるためには、ラベルや価格ではなく、品質とオリジナリティで私たちを魅了するような香りが必要なのです。

 シャネルやゲランはニッチなラインを作り、中にはとても良いものもありますが、私は彼らが原点に戻るべきだと思っています。

ベルトラン・ドゥショフール
ちなみに…

好きな芸術家は、フランシス・ベーコン、ゲルハルト・リヒター、エドヴァルド・ムンク、ペア・キルケビー、サイ・トゥオンブリー、ダヴィンチやラファエルを挙げています。

調香作品

私は常々シンプルさと静けさをもっともっとと追求しています。これはアフリカの人や仏教徒が持つ感覚です。両社は考え方も生活の仕方も正反対なのですが。

ベルトラン・ドゥショフール
YearBrandNameWith
1995Jo MaloneAmber & Lavender
1999EscadaTender Light
2002Christian LacroixBazar FemmeEmilie Copperman & Jean-Claude Ellena
2002GivenchyAmarige d’AmourEmilie Copperman
2003Acqua di ParmaColonia AssolutaJean-Claude Ellena
2005Acqua di ParmaCipresso di Toscana
2005GivenchyLucky Charms
2005LaliqueFlora Bella
2007Acqua di ParmaColonia Assoluta Edizione RivieraJean-Claude Ellena
2007AmouageJubilation XXV for men
2011Frapin1697
2012By KilianExtreme Oud
2013Jovoy ParisGardez Moi
2014Naomi GoodsirOr du Sérail
2017Les Bains Guerbois1978 Les Bains Douches
2021Les Bains Guerbois1986 Eclectique
2021Naomi GoodsirCorpus Equus
2021d’OrsayM.D. Nous sommes amants.
1997 – 2015L’ArtisanAedes de Venustas, Al Oudh, Ambroisie Ararat, Amour Nocturne, Déliria, Dzongkha, Fleur de Liane, Haute Voltige, Mechant Loup, Mon Numéro 1, Mon Numéro 3, Mon Numéro 4, Mon Numéro 6, Mon Numéro 7, Mon Numéro 8, Mon Numéro 9, Mon Numéro 10, Mure et Musc Extrait, Noir Exquis, Nuit de Tubéreuse, Onde Sensuelle, Patchouli Patch, Piment Brulant, Poivre Piquant, Rappelle-Toi, Rose Privée, Séville à l’Aube, Skin on Skin, Timbuktu, Traversée du Bosphore, Vanille Absolument
2000 – 2003Comme des Garconsseries 1, Leaves: Calamus & Mint, series 2, Red: Harissa & Sequoia, series 3, Incense: Avignon, series 3, Incense: Kyoto, series 5, Sherbet: Cinnamon & Peppermint, series 5, Sherbet: Rhubarb
2005 – 2011Eau d’ItalieBaume du Doge, Bois d’Ombrie, Eau d’Italie, Jardin du Poete, Magnolia Romana, Paestum Rose, Sienne l’Hiver
2009 – 2018Penhaligon’sAmaranthine, Lothair, Meadham Kirchhoff Tralala, Ostara, Sartorial, Vaara
2011 – 2012Parfums MDCIChypre Palatin, La Belle Helene
2011 – 2015The Different CompanyAurore Nomade, I Miss Violet, Oud For Love, Oud Shamash
2012 – 2014Ann GerardCiel d’Opale, Cuir de Nacre, Perle de Mousse, Rose Cut
2017 – 2018Olfactive StudioChypre Shot, Leather Shot, Woody Mood, Vanilla Shot
2018 – 2019Miller HarrisBlousy, Dance Among The Lace, Hidden on the Rooftops, Sublime Blossom, Tender
2018 – 2021Step Aboard3D Sul Duomo, Bosco Sospeso, Cuoio di Thaon, Infinite Square, Milano Centrale, Sunday Street, Transitions Gate
不明Christian DiorFahrenheit Fresh
主要作品年代順
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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