Q. 香料によって揮発速度が異なりますが、揮発の遅いものは香りが後から出てくるのでしょうか?

smoke Q&A

A. そもそも、揮発速度とは何でしょうか。揮発速度とは、「空間に香りが広がる速度」のことで、沸点が低いほど揮発性が高くなり、揮発速度は早くなります。

 では、空間に香りが広がるとはどういうことでしょう?香りというのは、目に見えない分子の集合体です。ローズの香りは、数百種類の様々な分子が集まり、それが嗅覚を刺激することで、ローズの香りと認識しているのです。つまり、「空間に香りが広がる=空間に香りの分子が散らばる」ということです。香りの分子は、温度が高ければ高いほど運動し(散らばり)やすくなります。そして、香料は、構成されている分子によって、それぞれ沸点(エンジンがかかる速度のイメージ)が異なります。
 香水を肌につけるということは、体温によって香料たちが温められるということです。よって、早くエンジンがかかった香料は、颯爽といなくなり、エンジンがかかるのが遅い香料は、いつまでたっても留まっているということです。

 さて、分子は、実は絶えず運動して(飛び交って)います。分子の運動が完全に止まるのは絶対零度(-273.15℃)以下になります。つまり、すべての香料の分子は、肌につけた瞬間、同時に肌の上から飛び出てきているのです。しかし、それぞれで沸点が違うため、ハッキリと感じられる香りと最初は分かりづらい香りとに分かれるのです。

 したがって、「揮発の遅いものが後から出てくる」のではなく、「最初も香りを放っているが、時間を経るにつれ、認識しやすくなる」という言い方が正しいでしょう。

 例えば、グレープフルーツ・ローズサンダルウッドで構成された香水において、これらは順番待ちして、グレープフルーツの香りが先に香り、次にローズ、サンダルウッドと香っていくわけではありません。最初からすべての香りは存在しますが、揮発速度の速い(=分子が早く運動していて、肌からたくさん外に飛び出ているイメージ)グレープフルーツが最初は強く香り、ある程度時間が経つとグレープフルーツの香りの分子は肌から消えます。すると次に揮発速度の速い(グレープフルーツよりは遅い)ローズの香りが強く感じやすくなります。そして、比較的揮発速度の緩やかなサンダルウッドが最後まで肌の上に残っている、ということです。

 これらを分かりやすくしたものが香りのピラミッドやトップ・ミドル・ラストノートになります。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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