MUSICOLOGY(ミュージコロジー)── 香水はシンフォニー。香りはメロディー。

ブランド創業者

“Just like a music composer, I used notes and chords to create perfumes that will bring emotion in people’s heart.”
── ナタリー・ローソン(マスターパフューマー)


基本情報

  • ブランド名: MUSICOLOGY(ミュージコロジー)
  • 設立年: 2019年
  • 創設者: ファビアン・ブコブザ(Fabien Boukobza)
  • 調香師: ナタリー・ローソン(Nathalie Lorson)
  • 拠点: パリ(フランス)
  • 公式サイト: musicologyparfums.com

※ブランド名の「MUSICOLOGY」は、プリンス(Prince)が2004年にリリースしたアルバム『Musicology』に由来するとされる。


創設者・ブランドの成り立ち

ファビアン・ブコブザ──フレグランス業界のベテランが見出した「音と香りの接点」

ミュージコロジーの創設者ファビアン・ブコブザは、フレグランス業界で約30年にわたるキャリアを持つ人物である。複数の大手パフュームハウスとのコラボレーション経験を重ね、香水ビジネスの上流から下流まで深い知見を蓄積してきた。LinkedInのプロフィールによれば、2019年9月からは自身の会社「ATELIER BEAUTE COSMETIQUES INTERNATIONAL」のディレクターとして香港とパリを拠点に活動しており、同時期にミュージコロジーを立ち上げている。

ブコブザが30年近い業界経験の末に辿り着いたのが、「音楽」と「香水」という、一見異なる二つのアートの共鳴であった。香水と音楽はともに「ノート(notes)」「ハーモニー(harmony)」「アコード(accords)」「メロディ(melody)」という言葉を共有する。さらに両者を深く結びつけるのは、目に見えない「空気(Air)」という共通の媒体だ。ミュージコロジーの公式サイトでは、このコンセプトが次のように詩的に語られている。

「すべての芸術は互いに共鳴し合うが、音楽と香りだけが同じ”触れることのできない、はかない乗り物”を共有し、それが心へと運んでくれる。音も分子も空間を旅し、同じ輝きを持って現れては消える。そしてこの”はかなさ”こそが、香水と音楽の本当のつながりを浮き彫りにしているのかもしれない。」
── MUSICOLOGY 公式サイト

熱烈な音楽愛好家であり、同時に香りの世界に精通するブコブザは、自身の記憶のなかにある音楽的・嗅覚的な感動を、ミュージコロジーを通じて表現することを決意した。ブランドのモットーは “Perfume is a Symphony; Scent is a Melody.”(香水はシンフォニーである。香りはメロディーである。)

ナタリー・ローソンとの運命的コラボレーション

ブコブザがこの壮大なコンセプトの実現を託したのが、世界的に著名なマスターパフューマー、ナタリー・ローソンである。

ローソンはフランス・グラース──世界の香水産業の中心地──に生まれた。父親がフレグランスハウス「ルール(Roure)」の化学者であったことから、幼少期より香料の原料やボトルに囲まれて育った。しかし彼女がキャリアをスタートさせた1980年当時、調香の世界に女性はほとんどおらず、女性パフューマーとして道を切り拓くこと自体が大きな挑戦であった。

1980年代は、調香師になる女性はほとんどいませんでした。
── ナタリー・ローソン

ルール・ベルトラン・デュポン(現ジボダン)の調香学校を卒業後、IFF(インターナショナル・フレーバーズ&フレグランシズ)ドラゴコ(現シムライズ)を経て、フィルメニッヒ(現DSM-フィルメニッヒ)に在籍している。200以上のフレグランスを生み出してきた彼女の代表作には、イヴ・サンローラン「ブラック・オピウム」、ラリック「アンクル ノワール」、グッチ「フローラ」、ジバンシイ「ジェントルマン」などが並ぶ。

ローソンの作風は「ハーモニアス(調和的)でジェネラス(豊かな)」と評され、使用する原料の選択にはラウンド(丸み)、スムース(なめらかさ)、センシュアリティ(官能性)という特徴が一貫してみられる。彼女自身は、創作について次のように述べている。

「最もシンプルな処方こそが最も創るのが難しい。しかし同時に、最もユニークな個性を持つフレグランスに結実し得るのもまた、シンプルな処方なのです。」
── ナタリー・ローソン(DSM-Firmenich公式プロフィール)

また、しばしばサン=テグジュペリの言葉を引用する──「完璧とは、もう何も加えるものがないときではなく、もう何も取り去るものがないときに達成される」。この削ぎ落としの美学は、ミュージコロジーの香水にも色濃く反映されている。

ブコブザの音楽的ヴィジョンとローソンの卓越した調香技術が出会ったことで、ミュージコロジーは「音楽を香りに変える」という唯一無二のコンセプトを高い品質で具現化することに成功した。香水ブログ「CaFleureBon」のレビューでは、二人の協働について次のように評されている。

創設者でありクリエイティブディレクターでもあるファビアン・ブコブザと、マスターパフューマーのナタリー・ローソンは、音楽と香りの調和を表現するために協働してきた。
── CaFleureBon


ブランドのこだわり

「名曲を香りに変える」という哲学

ミュージコロジーの最大の特徴は、すべてのフレグランスが実在する名曲やアイコニックな楽曲にインスピレーションを受けて創られている点にある。ポップス、ロック、ジャズ、ファンクなど様々なジャンルの名曲が嗅覚の世界へと翻訳され、それぞれのフレグランス名にも楽曲のタイトルや歌詞へのオマージュが込められている。

例えば「Fly Me To The Oud(フライ・ミー・トゥ・ジ・ウード)」はフランク・シナトラの名唱「Fly Me to the Moon」から、「The Rose(ザ・ローズ)」はジャニス・ジョプリンから、「Close To Midnight(クロース・トゥ・ミッドナイト)」はマイケル・ジャクソンの「スリラー」からインスピレーションを得ている。音楽に宿る記憶や感情を、嗅覚を通じて追体験させるという試みは、シネスセジア(共感覚)的な芸術体験と言えるだろう。

ボトルデザインとパッケージ

ミュージコロジーのボトルは、ずっしりとした重みのあるクリスタル製フラコンに仕上げられている。各ボトルにはヴァイナルレコード(アナログレコード盤)の形をしたアミュレット(お守り)が付いており、音楽と香りの融合というブランドの世界観を視覚的にも表現している。

さらに注目すべきは、化粧箱に点字(ブライユ)が施されている点である。視覚に頼らず嗅覚と触覚で楽しめるという包括的なデザイン哲学が、この細部へのこだわりから垣間見える。パッケージには環境への配慮も反映されており、サステナビリティへの意識がうかがえる。

ジェンダーレスであること

ミュージコロジーのフレグランスはすべてユニセックスである。性別を問わず、音楽が好きな人、香りが好きな人であれば誰でも楽しめるブランドを目指している。


香水ラインナップ

ミュージコロジーのコレクションは現在、ソング・コレクション(Song Collection)とリズム・コレクション(Rhythm Collection)の2つのラインで構成されている。

ソング・コレクション(旧称:Initiation to Solfège)

ブランドのデビューコレクションであり、7つのオードパルファム(EDP)で構成される。「ソルフェージュ(音楽の基礎教育法)への入門」という副題が付けられたディスカバリーセット(7本×2ml)も用意されている。

作品名オルファクティブ・アイデンティティ主要ノートインスピレーション
White Is Wightフレッシュ・ムスクコットン、ジャスミン、ホワイトウッドミシェル・デルペシュ「Wight is Wight」/ワイト島フェスティバル
Fly Me To The Oudウッディ・オリエンタルブラックペッパー、サンダルウッド、ウード、パチョリフランク・シナトラ「Fly Me to the Moon」
Close To Midnightアンバージャスミン、コーヒー、トンカビーン、アンバーグリスマイケル・ジャクソン「Thriller」
I Belong To Uフローラル・オリエンタルピンクペッパー、チュベローズ、パチョリ
Sun Goddessフローラル・アンバーオレンジブロッサム、フランジパニ、ヘリオトロープ、サンダルウッド、バニラアース・ウインド&ファイア「Sun Goddess」
The Roseグルマン・ローズピオニー、ダマスクローズ、バイオレット、バニラジャニス・ジョプリン
‘Cause I’m Happyシトラス・アンバーベルガモット、アンブレット、アンバーグリスファレル・ウィリアムス「Happy」

​ソング・コレクションのなかでも特に個性的な一本が「フライ・ミー・トゥ・ジ・ウード」であろう。CaFleureBonのシニアエディターは、以下のようにレビューしている。

「ミュージコロジー『フライ・ミー・トゥ・ジ・ウード』において、ナタリー・ローソンとファビアン・ブコブザは、ウード体験のエッセンスを抽象化し、その美しさを増幅させつつ、その他の要素を控えめにすることで、誰もが口ずさめるような芳しく忘れがたい一曲を香りとして作り上げている。」
── ゲイル・グロス(CaFleureBon シニアエディター)

リズム・コレクション(2025年発売)

2025年に新たに登場した第2のラインで、エクストレ・ドゥ・パルファム(Extrait de Parfum)としてより高い濃度で提供される。

作品名主要ノートイメージ
Vanilla Grooveシャンティイクリーム、ジャスミン、バニラ、ヘリオトロープ、トンカビーン、サンダルウッド、シダーウッドジャズ、ファンク、R&Bのグルーヴ感
Funky Cherryブラックチェリー、ベルガモット、バイオレット、パチョリ、アンバーウッド、インセンスレジノイドファンキーなジャムセッション
Oud Melodyジンジャー、カルダモン、サイプレス、ウード、シプリオール、レジン、アミリス、パチョリ中東のオリエンタルな旋律、ウードとダルブッカの響き

リズム・コレクションは、ソング・コレクションが個別の楽曲をモチーフとしたのに対し、より抽象的に「リズム」そのものの感覚——グルーヴ、ファンク、メロディ——を香りに翻訳しようとする試みと言えるだろう。



ちなみに…

  • ブランド名のルーツ: 「MUSICOLOGY」というブランド名は、アメリカのミュージシャン プリンスが2004年にリリースしたアルバム『Musicology』に由来する。このアルバムは、音楽が商業主義に偏りすぎた時代に「音楽そのものの本質に立ち返ろう」というメッセージを込めた作品であり、香りの世界でも本質的な「美」を追求するブコブザの姿勢と呼応している。
  • ディスカバリーセットの名前: ソング・コレクションのディスカバリーセット「Initiation to Solfège(ソルフェージュへの入門)」の「ソルフェージュ」とは、音楽教育の基礎であるドレミ(Do-Re-Mi)の読譜法のこと。7つの香りが音楽の7つの音階に対応するかのように、香りの「読み方」を学ぶ入口として位置づけられている。
  • ローソンの意外な一面: 200以上のフレグランスを生み出してきたロルソンだが、「自分自身のためのフレグランスを作ることには全く興味がない」と語っている。

「私はこの仕事を自分のためにしているわけではありません。本当の目的は、人の心に触れることです。(…)私は映画スターでもなければ、自分のキャンバスの横でポーズをとる画家でもありません。むしろ、自分の言葉の後ろに静かに姿を消す作家のような存在だと思っています。」
── ナタリー・ロルソン

  • 「クロース・トゥ・ミッドナイト」と日本メディア: 日本のファッション誌『FUDGE』でもミュージコロジーが紹介されており、「クロース・トゥ・ミッドナイト」がマイケル・ジャクソンの「スリラー」をオマージュした作品として取り上げられている。

  1. M-Exception – Musicology ブランド紹介 – https://www.m-exception.com/en/collections/musicology
  2. Belodore.hr – Musicology ブランドページ – https://belodore.hr/en/brands/musicology
  3. MUSICOLOGY 公式サイト – The Brand – https://musicologyparfums.com/pages/the-brand
  4. CaFleureBon – Musicology Fly Me to the Oud Review – https://cafleurebon.com/musicology-fly-me-to-the-oud-review-nathalie-lorson-2020-initiation-to-solfege-draw/
  5. Parfumeriedusoleildor.com – Musicology Perfumes – https://parfumeriedusoleildor.com/en/collections/musicology
  6. CaFleureBon – Musicology The Rose Review – https://cafleurebon.com/musicology-the-rose-review-nathalie-lorson-kosmic-petals-of-love-giveaway/
  7. CaFleureBon – Musicology ‘Cause I’m Happy Review – https://cafleurebon.com/musicology-cause-im-happy-review-nathalie-lorson-2020-plus-a-refreshing-and-optimistic-giveaway/
  8. JOVOY Paris – Musicology – https://www.jovoyparis.com/en/marques/373-musicology
  9. DSM-Firmenich – Nathalie Lorson プロフィール – https://www.dsm-firmenich.com/en/businesses/perfumery-beauty/perfumery/fine-fragrance/people/nathalie-lorson.html
  10. Scentissime – Portrait of Nathalie Lorson – https://www.scentissime.com/en/blog/post/portrait-de-la-parfumeuse-nathalie-lorson.html
  11. The Perfume Society – Nathalie Lorson – https://perfumesociety.org/perfume-nose/nathalie-lorson/
  12. Fragroom – Nathalie Lorson Interview – https://fragroom.com/2018/05/19/nathalie-lorson-interview-exploring-beyond-the-limits/
  13. Parfumista.net – Musicology : vibrations olfactives – https://parfumista.net/2020/12/musicology/
  14. ALZD.de – Singalong mit Musicology – https://www.alzd.de/2021/07/16/musicology/
  15. FUDGE vol.250 – 香水特集記事 – https://fudge.jp/fashion/feature/269371/
  16. ScentAdvice – Vanilla Groove 2025 Musicology – https://scentadvice.com/vanilla-groove-2025-musicology-2/
  17. ScentAdvice – Oud Melody 2025 Musicology – https://scentadvice.com/oud-melody-2025-musicology/
  18. Parfumo.com – Oud Melody by Musicology – https://www.parfumo.com/Perfumes/musicology/oud-melody
  19. CaFleureBon – Musicology Sun Goddess Review – https://cafleurebon.com/musicology-sun-goddess-review-nathalie-lorson-summer-vibes-giveaway/
  20. MUSICOLOGY 公式サイト – Stores – https://musicologyparfums.com/pages/locations
  21. LinkedIn – Fabien Boukobza – https://www.linkedin.com/in/fabien-boukobza-5900b72a
この記事を書いた人
Root

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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