Michel Roudnitska
ミシェル・ルドニツカ

ミシェル・ルドニツカ 調香師名鑑

生い立ち 

グラースで調香師の息子に生まれるのは特別ではないし、私の父は当時まだ有名ではありませんでした。普通とは違うと感じたのは、私の家族の美と哲学に関する考えです。それは、品質への高い期待、独自性、妥協のない美でした。

ミシェル・ルドニツカ

 1948年、フランスのSeine et Marne(セーヌエマルヌ)、偉大なる調香師エドモン・ルドニツカとテレーズの間に生まれたのがミシェル・ルドニツカです。

 香水業界で働く両親の元に生まれたミシェルは、7歳の頃からラボラトリーの香りに親しんでいました。
 実際にトレーニングを受け始めるのは、24歳の時。自分のビジネスの勉強のために父の元で学び始めます。5年以上に渡り、父親の作った香水の成分分析や再構築のトレーニング、そしてそれらは1%レベルの正確性で行なわなければ父親は納得しませんでした。しかも当時は、クロマトグラフィーはなかったので、非常に大変でした。

 ティーンエイジャーの時から、ミシェルは、「調香師になりたいかどうか」を自分には言い聞かせないようにしていました。それは家族からのプレッシャーもあり、当然のことのように思われていたからです。そのことがミシェルを別の方向への興味に導きます。それが写真や彫刻、建築でした。特に、フォトモンタージュ(写真を部分的に使って合成する技術)にミシェルは30年以上の時間を捧げることになります。

アーティストとしての人生

 ミシェルはその才能でVOGUEをはじめとする雑誌の表紙や本のイラストを作ったり、エアーフランスの広告のブロッシャーを作ったりしていました。そして、専門的な写真雑誌の多くの記事は、彼の作品によるものでした。

 また、芸術への探究が強いミシェルは、マルチスクリーンのスライドに投映する技術を使い、聴覚とレーザーのショーをクリスチャンディオールやジュエリーブランドで行ったり、フランスやオーストラリアでも格式高いショーやバレエを行いました。また、南フランスのポリネシアで8年過ごし、哲学作家と共著で本を書いたり、ジュエラーのために広告イメージを作ったり、出版社を作ったりもしました。

 そして、現代科学と芸術を結び付けるミシェルは、フランスで初めて視聴覚のスペクタクルにおける新しい色彩の合成イメージを統合した1人となります。その後、デジタルビデオの技術を使って、香りや香水を視覚化させる試みを行っています。この技術は、マイケル・エドワーズの本(Fragrances of the World)で使ったり、父生み出したディオリッシモを表現したりしています。

王の帰還

私は、父親が1996年に亡くなった後、やっと本当に自分の人生を香水業界に捧げることができるようになりました。

ミシェル・ルドニツカ

 40歳になったミシェルは、初めて「本当の」香水を作ることを決心します。ただし、このとき作ったものは商業用ではありませんでした。
 そして、厳格な父が1996年に亡くなると、父の作ったArt et Parfumを継ぎ、偉大な調香師の息子という呪縛から逃れたかのように香水を創り始めます。そんなミシェルが最初に販売した香水がフレデリックマルノワールエピス(Noir Epices)でありました。その出来は、シプレーとオリエンタルを融合させた、父を超えずとも劣らない、素晴らしい出来でありました。

 かくして、香水業界に舞い戻ったミシェル・ルドニツカは、父の意志を継ぎ、Art de Composer le Parfum(調香師の芸術)という名の会社を作り、励んでいます。

ちなみに…

 ちなみにエドモン・ルドニツカと仲の良かったジャン=クロード・エレナとは、18歳ぐらいのときに出会っています。そして、1975年にエレナが良い香りのする原料をイラストしてほしいと頼んだことがきっかけで、嗅覚と視覚を結びつける研究を始めます。ミシェルもまたエレナに影響を受けた人物なのでありました。

 また、90年代にはハーマン&ライマー(Haarmann and Reimer)社でエレナと一緒に働くことがあり、ここで2人は親友になります。1994年にミシェルが結婚するときには、エレナに自分の介添人にもなってもらうほどの仲の良さであります。

 ミシェルの1番好きな原料は、ジャスミン。センシュアルであると同時にピュアで、楽園の香りを表現しているようだから、とも言っています。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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