Gourmand Family
グルマン系

candies 香調

グルマンの歴史

 ティエリーミュグレーのエンジェル(Angel、1992、オリヴィエ・クレスプ)の大成功により1つのカテゴリーを築くことになったグルマンは、基本的に合成香料であるエチルマルトールオーバードーズとチョコレートを想起させる天然のパチョリを組み合わせることで生まれます。この組み合わせが上手くいき、エンジェルはこの数十年で最も成功した素晴らしい香水の1つとよく言われます。

ちなみに

実はエンジェルの原型は1955年にモリナール(Molinard)のNirmalaという香水にあり、似ていたため、法廷で争ったという逸話もあるとかないとか。

 そもそも、グルマン(美味しそうな香り)のアイデア自体は、香水業界では新しくはなく(エドモン・ルドニツカは当時流行りかけていた、あまーい香りに対抗してディオリッシモを作ったくらい)、エンジェルの行ったことは甘い香り(エチルマルトール)を高濃度(0.5%)にしたことでありました。つまり、単純にデザートの香りではなく、とてつもなく甘い香りにしたのです。それはマルトールというキャンディーの香り、の4~6倍の甘さがするエチルマルトールと、バランスをとるための大量のパチョリを使うことで可能になりました(この2つを適切なバランスで組み合わせるだけでもエンジェルに近い香りになる)。

エンジェルの革命は、すでに香水業界に存在していたグルマンという概念を前面に出したということよりも、フレーバーと香水、味と香りの間にある目に見えない壁を取り壊し、我々が食欲として感じる刺激と同じ衝動を香水に持ち込んだという点にあります。

ジェラルド・ギスラン

 その後は、いかにこのエチルマルトールをたくさん入れるかが競争になり、ランコムのラヴィエベル(2012)やイヴサンローランのブラックオピウムは、エンジェルの10倍以上の濃度でエチルマルトールを入れています。

 グルマン系の香りは主に、子供の頃に食べたお菓子を思わせる美味しそうな食べたくなる香りで、キャラメル、チョコレート、キャンディ、コーヒー、コニャックアーモンドなどを含め多種多様です。バニラやアンバー、スパイスが使われることも多く、多くは温かみを感じる香りになります。

代表的なグルマン

エンジェル(ティエリーミュグレー、1992、オリヴィエ・クレスプ):ビターチョコレートとコットンキャンディにキャラメルをかけた香り。
Lolita Lempicka(ロリータレンピカ、1997、アニック・メナード):アニスを中心に使ったファンタの香り。
ラブドントビーシャイ(Love, don’t be shy、キリアン、2007、カリス・ベッカー):セクシーなグルマンという新しいカテゴリーを生み出した。ギモーヴの香り。
タバコバニラ(トムフォード、2007、オリヴィエ・ギロチン):ぬるくなったバニラの霧
グルマンコキャン(ゲラン、2008、クリスティーヌ・ナジル):ラム酒チョコ
ライクディス(Like This、エタリーブルドランジェ、2010、マティルデ・ヴィジャウィ):パンプキンパイ
キャンディ(プラダ、2011、ダニエラ・アンドリエ):抽象的なデザート
ラヴィエベル(ランコム、2012、オリヴィエ・ポルジュ、ドミニク・ロピオン、アン・フリッポ):3年の月日と5000の試作を経て生み出されたフルーティーなデザート。
ワサンボン(パルファムサトリ、2013、大沢さとり):日本人ならではの感覚から生み出された和三盆の香り。
ノワールエクスキィ(ラルチザン、2015、ベルトラン・ドゥショフール):コーヒーバニラ
ノワールアフロディジアック(キリアン、2016、カリス・ベッカー):高級パティスリーであるジャック・ジュナンとのコラボによって生まれたオレンジピールチョコレートの香り。
ブラックファントム(キリアン、2017、シドニー・ランセッサー):アイリッシュコーヒー

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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