“If I had listened every time someone had told me I couldn’t do something, I wouldn’t be standing here.”
(「誰かに『できない』と言われるたびに耳を傾けていたら、私は今ここに立っていないでしょう。」)
── ジョー・マローン
基本情報
- ブランド名: Jo Malone London(ジョーマローン ロンドン)
- 設立年: 1994年(ロンドンに第1号店オープン。事業自体は1990年頃より開始)
- 創設者: Joanne Lesley Malone CBE(ジョーン・レスリー・マローン、通称ジョー・マローン)
- 親会社: The Estée Lauder Companies(エスティ ローダー カンパニーズ)── 1999年より
- 公式サイト: jomalone.com(日本語版:jomalone.jp)
※ ブランド名の読みは「ジョー・マローン・ロンドン」。創設者のフルネームは「ジョーン」だが、通称として「ジョー」が使われる。
創設者・ブランドの成り立ち
カウンシル・ハウスの少女
ジョー・マローンは1963年11月5日、ロンドン南東部ベクスリーヒースの公営住宅(カウンシル・ハウス)で生まれた 。父ピーターは画家でありながら賭博にのめり込む人物で、母エレーヌは美容師として働いていた 。家計は常に綱渡りの状態にあり、ジョーは幼い頃から大人の世界に足を踏み入れざるを得なかった。
“From the age of 11, I was essentially the adult, asking: ‘Do we have enough money for the electric and gas meter?’ I understood that if he spent all the money gambling, we wouldn’t have food.”
(「11歳の頃にはすでに私が家の大人役でした。『電気とガスのメーターに払うお金はある?』と聞く係。父がギャンブルに全部使えば、食べ物がなくなることを分かっていました。」)
── ジョー・マローン、CNBCインタビューにて
冬の朝、暖房のない部屋の窓ガラスに張った氷を指で削りながら、少女は静かに決意した。
“I remember scraping the ice with my finger and looking out and thinking, ‘I’ve got to change my destiny.'”
(「窓の氷を指で削りながら外を見て、『自分の運命を変えなければ』と思ったのを覚えています。」)
── ジョー・マローン
マダム・ルバッティとの出会い
ジョーの母エレーヌは、ロンドンのモンタギュー・マンションズ地区にあるプライベート・スキンケアクリニックで、風変わりな女性「マダム・ルバッティ」(別の情報源では「カウンテス・ルバッティ」とも呼ばれる)のもとで働いていた 。8歳のジョーもクリニックに出入りし、マダム・ルバッティからフェイシャルトリートメントやフレグランスの作り方を見て学んだ。9歳のときには台所でサンダルウッドをすりおろし、ジュニパーを濾す作業をしていたという 。
“I learn fast and quickly. I’m never frightened to say I don’t know how to do something. Teach me, and then I master it very quickly and move on.”
(「私は物覚えが早いんです。『わからない』と言うことを恐れません。教えてもらえば、すぐにマスターして次に進みます。」)
── ジョー・マローン、ABCニュースインタビューにて
重度のディスレクシア(読み書き障害)を抱えていた彼女は、ボトルに書かれたラベルを読むことはできなかったが、蓋を開けた瞬間にローズやサンダルウッドを嗅ぎ分けることができた 。のちに彼女は自身の嗅覚について「My nose is my paintbrush(私の鼻は絵筆です)」と語っている 。
1974年、マダム・ルバッティが亡くなり、クリニックはジョーの母に引き継がれた。ジョーは器具の消毒、冷蔵庫の掃除、製品の準備など「二番手」として母を支えた 。
家族の危機──少女は大人になった
やがて父が家を出て行き、母は精神的に崩壊してしまう(情報源によっては「脳卒中」とも記述されている)。ジョーは13歳前後で学校を中退し、妹の面倒を見ながら、朝は製品を準備し、妹を学校に送り、クリニックの商品を売り、夕食を作る──という生活を送ることになった 。週末には父の絵画を売りに行き、食料品の資金を確保した 。母の知識を活かし、手作りのフェイスクリームをロンドンまで持って行っては一つ4ポンド50ペンスで販売し、家族を支えた 。
花屋での発見と運命の転機
母の回復後、ジョーは英国の実業家ジャスティン・ド・ブランが経営するエリザベス・ストリートのデリカテッセンや花屋で働き始めた 。花屋での仕事を通じて、自分が驚異的な嗅覚の持ち主であることに気づく。どんな香水の中にも最も微かな成分を嗅ぎ分けることができ、摘み取られた花束が冷蔵庫に何日入っていたかまで分かったという 。
18歳でバイブル・スクールに通い始め、そこで将来の夫となるゲイリー・ウィルコックスと出会った。数年後に二人は結婚する 。
「ナツメグ&ジンジャー」── すべてはここから
20代半ば、母のビジネスから引き継いだ約3万ポンドの負債を抱えながら、ジョーはマッサージベッドをドアからドアへ担いでロンドン中を回り、フェイシャルトリートメントの出張サービスを始めた 。自宅のキッチンを「実験室」にして、手作りのスキンケア製品やバスオイルを調合した。
中でも反響が大きかったのが、ナツメグ&ジンジャー(Nutmeg & Ginger) のバスオイルである。もともとは20人のフェイシャル顧客へのお礼の品として作ったものだった 。ところがある顧客がこれを気に入り、パーティーのテーブルセッティング用に100本を注文。そのパーティーの出席者86人中86人がジョーに追加注文の連絡を寄越した 。口コミだけで顧客は増え、サラ・ファーガソン(ヨーク公爵夫人)をはじめ、王族、映画スター、モデルたちが彼女の顧客リストに名を連ねるようになった 。
“Word-of-mouth, no advertising. It was just me. I was the receptionist, I was the facialist, I was the chemist, and I was the bookkeeper. You name it.”
(「広告は一切なし。口コミだけ。全部私一人。受付も、フェイシャリストも、調合師も、帳簿係も、全部。」)
── ジョー・マローン
ウォルトン・ストリート154番地──ブランドの誕生
製品が家中にあふれ、文字通り足の踏み場もなくなった頃、ゲイリーが測量士の仕事を辞めてジョーのビジネスマネージャーとなった 。ゲイリーのビジネスセンスとジョーの創造力が合わさり、事業は急成長を遂げる。
1994年、二人はロンドンのウォルトン・ストリート154番地に最初の店舗「Jo Malone London」をオープンした 。開店初日、一人の男性が店に入ってきて100万ポンドでの買収を申し出たが、ジョーはこれを断っている 。
店は5年分の売上目標をわずか6ヶ月で達成し、18ヶ月後には売上100万ドルに到達した 。
ライム バジル&マンダリン──伝説の香りの誕生
ジョーが最初の「本格的なフレグランス」として世に送り出したのが、ライム バジル&マンダリン(Lime Basil & Mandarin) である。正式なフレグランス教育を受けたことのない彼女は、オイルサプライヤーであるロティエ・フロラシンス(Lautier Florasynth)社の協力を仰ぎ、同社の社内調香師リュシアン・ピゲ(Lucien Piguet)との共同作業でこの香りを完成させた 。
“I would find a note I really loved, and [the inspiration for] Lime Basil & Mandarin was just this one note that reminded me of those lime sweets that you sucked. And I’d been to a little Italian restaurant and had pesto for the very first time. I couldn’t believe the explosion of basil. Then I put the two notes together. It’s just how my mind plays with notes.”
(「大好きなノートを見つけるの。ライム バジル&マンダリンのきっかけは、子どもの頃に舐めたライム味のキャンディーを思い出させるノートだった。そしてある小さなイタリアンレストランで初めてペストを食べたの。バジルの衝撃が信じられなかった。二つのノートを合わせてみた。私の頭の中ではいつもそうやってノートが遊んでいるんです。」)
── ジョー・マローン、Rackedインタビューにて
この香りは瞬く間にカルト的な人気を獲得し、90年代の「パワフルな香水」全盛の時代に、透明感のあるコロンという新しい風を吹き込んだ 。
ニューヨーク進出──「空のバッグ」作戦
海外展開を目指したジョーとゲイリーは、ニューヨーク五番街のバーグドルフ・グッドマンにコンセッション(売場)を構えることにした。しかしマーケティング予算はほぼゼロ。ホテルの部屋で「失敗するかもしれない」と途方に暮れていたとき、ゲイリーがひらめいたのが「空のバッグ」作戦だった 。
50人の知人に、ジョーマローンのブランド入り紙袋を──中身は空のまま──ニューヨークのお洒落な地区を歩くときに持ち歩いてほしいと頼んだのである。ジョーは夫に「空のバッグに何の意味があるの?」と尋ねたが、ゲイリーは涼しい顔で答えた。
“Well, no one else knows.”
(「他の人は空だって知らないだろう。」)
── ゲイリー・ウィルコックス
紙袋はニューヨークの感度の高い人々の間で認知されるようになり、店がオープンしたときには「どこかにもう店があった」と思った客も多かったという。この逸話を語るとき、ジョーは「これは欺瞞ではなく、創造性をユニークに使ったこと」と誇りを込める 。
さらに、アメリカでの決定的な転機となったのがオプラ・ウィンフリー・ショーへの出演である。番組を通じて米国市場で一気に知名度が高まり、エスティ ローダーの目にも留まることになった 。
エスティ ローダーへの売却──そして別れ
1999年、ジョーはジョーマローン ロンドンをエスティ ローダー カンパニーズに売却した。金額は非公開だが「数百万ポンド規模」と報じられている 。売却に際してジョーが求めたのは3つの条件だった。
“I wanted money in pockets, I needed funding. I needed distribution, so I needed somebody who understood the rest of the world. But more importantly I needed heart, I needed somebody who really understood me.”
(「ポケットにお金が必要だった。資金。流通──世界を理解してくれる相手。でもいちばん大事だったのは”心”。私を本当に理解してくれる人。」)
── ジョー・マローン
レナード・ローダーとの朝食から「求愛」のプロセスが始まり、取引が成立。ジョーはクリエイティブ・ディレクターとして残り、ブランドの創造を続けた 。
がんとの闘い──嗅覚の喪失
2003年、ジョーは攻撃的なタイプの乳がんと診断された。38歳だった。
“I was given nine months to live. I was 38 years old, and it was the biggest shock. I thought older people got breast cancer.”
(「余命9ヶ月と言われました。38歳で、人生最大の衝撃でした。乳がんは年配の人がなるものだと思っていたから。」)
── ジョー・マローン
エスティ ローダーの共同創業者一族であるエヴリン・ローダーに真っ先に電話すると、彼女はこう言った──“You’re not going to die, Jo. We’re going to get you through this.”(「死なせないわ、ジョー。私たちがあなたを救う」)。翌日にはニューヨークに飛び、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターで治療を受けた。
5〜6日おきに約18ヶ月にわたる過酷な化学療法が続いた 。そして最も残酷だったのは、抗がん剤の影響で嗅覚を失ったことだった。すべてが金属の味と匂いに変わり、約9ヶ月間、何も嗅ぎ分けることができなくなった 。
“I lost my identity. I lost because…”
(「自分のアイデンティティを失いました。嗅覚は私のコミュニケーション手段であり、世界の見方そのものだったから。」)
── ジョー・マローン、This Morningインタビューにて
がんを乗り越えたものの、以前の自分とは別人になったように感じたジョーは、2006年にジョーマローン ロンドンを離れることを決意。ブランドはエスティ ローダーの確かな手に委ねた 。売却契約には5年間の競業禁止条項(ノンコンピート)が含まれており、フレグランスもスキンケアも一切手がけることができなかった 。
皮肉なことに、ジョーマローン ロンドンを去った8週間後、嗅覚が突然戻ってきた 。
ジョー去りし後──ブランドの「第二章」
名を残した創業者なき船出
2006年、創業者ジョー・マローンがブランドを離れた。世界中のファンが「ジョーのいないジョーマローン ロンドン」の行方を案じた。しかしエスティ ローダー カンパニーズのもとで、ブランドは単なる延命ではなく、静かに、しかし力強く進化を遂げていくことになる。
その中心にいた人物が、セリーヌ・ルー(Céline Roux) である。
セリーヌ・ルー──フランスからやってきた「調香師のコーチ」
セリーヌ・ルーは南仏マルセイユ出身。祖父はグラース(フランス南部に位置する「香りの都」)で花やスパイスを香料メーカーに卸す仕事をしており、香りの世界は血筋ともいえる環境にあった 。
彼女のキャリアはニューヨークから始まった。エスティ ローダー カンパニーズのプロダクト開発部門に配属され、メイクアップ・イノベーションの分野で経験を積んだ 。その後パリの大手フランス・ラグジュアリーメゾンで同様の役割を経て、2009年、ロンドンに渡りジョーマローン ロンドンのフレグランス開発チームに加わった 。以来15年以上にわたり、「グローバル・ヘッド・オブ・フレグランス」(Vice President, Global Fragrance Development)としてブランドの香り創りを統括している。
ルーは自らを「調香師」とは呼ばない。その役割をこう説明する。
“I’m not a nose, but I work with noses. I see myself as the perfumer’s coach. I brief them, I feed them with ideas, inspiration.”
(「私は”ノーズ”(調香師)ではありません。ノーズたちと一緒に仕事をする立場。私は調香師のコーチだと思っています。ブリーフィングをし、アイデアとインスピレーションを与える。」)
── セリーヌ・ルー、W Magazineインタビューにて
ルーが一貫して大切にしているのは、起用する調香師たちに「英国」を体感させることである。ジョーマローン ロンドンのために香りを創る調香師のほとんどはフランス人だが、ルーはプロジェクトのたびに彼らをロンドンに招き、英国の空気を吸わせる。
“It’s very important, especially for an English brand, that they understand England. I’m French, but I live in London. I couldn’t do my job if I lived in New York. It’s essential that they live and breathe the Brits to understand and get inspired.”
(「英国ブランドにとって、調香師が英国を理解していることはとても重要です。私はフランス人ですが、ロンドンに住んでいます。ニューヨークに住んでいたらこの仕事はできません。英国の空気を吸い、英国人の感覚を体で覚えてもらうことが不可欠なのです。」)
── セリーヌ・ルー
そして興味深いことに、「外国人の目」が英国人には見えない魅力を引き出すことがある──とルー自身も認めている。その最たる例が、のちに世界的大ヒットとなるウッド セージ&シー ソルトだった。
“If I were English, I don’t think I’d like to do a fragrance based on the English coast because it’s not glamorous the way other beaches are. But when I went there, I was just transported. I thought, this is fantastic! When I tell the English that’s what inspired us, they say it smells like their childhood – but I don’t think they would have said, ‘Yes! Make a fragrance of that!'”
(「もし私が英国人だったら、イングランドの海岸をテーマにフレグランスを作ろうとは思わなかったでしょう。他のビーチほどグラマラスではないから。でも実際に行ってみて、心を奪われました。『これは素晴らしい!』と。英国人に『ここからインスピレーションを得た』と伝えると、『子ども時代のにおいがする』と言う。でも彼ら自身が『そうだ、この海岸で香水を作ろう!』とは決して言わなかったと思います。」)
── セリーヌ・ルー
クリスティーヌ・ナジェル──47の香りを創った名調香師
ルーが着任した2009年、ジョーマローン ロンドンのフレグランス開発の核を担っていたのは、スイス・ジュネーヴ生まれの調香師クリスティーヌ・ナジェル(Christine Nagel) だった。もともとフィルメニッヒ(Firmenich)のR&D研究室で原料に魅了されて調香師の道に入ったナジェルは、ナルシソ・ロドリゲス フォー ハー(2003年、フランシス・クルジャンとの共作)やミス ディオール シェリー(2005年)といった大ヒット作を手がけたのち、ジョーマローン ロンドンの仕事に携わるようになった 。
ナジェルがジョーマローン ロンドンのために創った香りは実に47作品にのぼる 。その中には、コロン インテンスの創設メンバーであるウード&ベルガモット、そして2014年のウッド セージ&シー ソルト──これがナジェルにとってジョーマローン ロンドン最後の大仕事となった──が含まれている。ウッド セージ&シー ソルトは2015年のマリ・クレール国際フレグランスアワードで「最もダリング(大胆)なフレグランス」として表彰された 。
ナジェル自身、「シンプルに削ぎ落とす」ことへの美学を持つ調香師であり、ジョーマローン ロンドンの「少ない素材で透明感を」という哲学と深く共鳴していた。
“I have a creative preference for compositions characterised by simplicity.”
(「私にはシンプルさを特徴とするコンポジションへの創造的な好みがあります。」)
── クリスティーヌ・ナジェル
2014年、ナジェルはエルメスに移籍し、ジャン=クロード・エレナの後継者として同メゾンの専属調香師に就任した 。
イングリッシュ ペアー&フリージア──ルーの「最初の仕事」
2009年にジョーマローン ロンドンに着任したばかりのセリーヌ・ルーが最初に手がけたフレグランスが、2010年発売のイングリッシュ ペアー&フリージア(English Pear & Freesia) だった 。
“English Pear & Freesia was actually the first fragrance I worked on when I joined Jo Malone London, so it has a special place in my heart. I had just moved to London from New York during the fragrance development and suddenly found myself in a different city discovering English gardens and Romantic poets.”
(「イングリッシュ ペアー&フリージアは、ジョーマローン ロンドンに入って最初に手がけた香りで、私の心の中で特別な場所にあります。ニューヨークからロンドンに引っ越したばかりで、突然別の都市でイングリッシュガーデンやロマン派の詩人たちを発見することになった。」)
── セリーヌ・ルー
英国の詩人ジョン・キーツの詩『秋に寄せて(To Autumn)』に着想を得たこの香りは、夏から秋へと移ろう果樹園──熟したキングウィリアムペアー(英国の伝統的な梨品種)が実り、白いフリージアが花開く瞬間──を閉じ込めたものだった 。フルーティでみずみずしいペアーのトップノートに、クールなフリージア、そしてアンバーとパチュリの温かなベースが支える構成は「モダン・シプレ」とも評される 。
発売から15年以上を経てなお、イングリッシュ ペアー&フリージアはジョーマローン ロンドンの看板フレグランスの一つであり続けている。2024年には姉妹作イングリッシュ ペアー&スウィートピー(English Pear & Sweet Pea) も登場した 。
コロン インテンスの拡張──世界を旅する香り
ナジェルの時代に中東からインスピレーションを得て始まったコロン インテンスのコレクションは、ルーのもとでさらに大きく拡張された。ナミビアの砂漠(ミルラ&トンカ)、インドの花市場(ジャスミン サンバック&マリーゴールド)、古代バビロンの空中庭園(ヴェルベット ローズ&ウード)──ルーは各地の文化や儀式から物語を汲み上げ、10作品以上のコレクションへと育て上げた 。
“Yes, we are a British brand inspired by Englishness. But we travel. And this has allowed us to have ‘olfactive diversity’.”
(「ええ、私たちは英国らしさからインスピレーションを得る英国ブランドです。しかし私たちは旅をします。それが”嗅覚的な多様性”をもたらしてくれました。」)
── セリーヌ・ルー
2016年発売のミルラ&トンカ(Myrrh & Tonka) は、MANE社の調香師マチルド・ビジャウイ(Mathilde Bijaoui)が手がけた。ナミビアの砂丘、赤い大地、そしてナミビアの女性たちがミルラの樹脂と赤土を肌に塗る美の儀式──そこから着想を得た濃密なオリエンタルフレグランスである 。
“The idea of Namibia, with its sand dunes and warm desert colours, conjured up the romance and emotion of faraway lands. Myrrh felt like the perfect note to use for a new and innovative Cologne Intense.”
(「ナミビアという着想──砂丘や温かな砂漠の色彩──が、遠い土地のロマンスと感情を呼び起こしました。ミルラは、新しく革新的なコロン インテンスにぴったりのノートだと感じました。」)
── セリーヌ・ルー
2024年には初めて中東以外の地域──トスカーナの丘陵地帯──からインスピレーションを得たオリス&サンダルウッド(Orris & Sandalwood) が加わった。調香師ピエール・ネグラン(Pierre Négrin)との共同開発で、修道士が何世紀にもわたって栽培してきたアイリスの根(オリス)の二面性──ウッディでありながらパウダリー、フローラルでありながらディープ──を表現した一本である 。
マスター・パフューマーたちの座組
ナジェル退任後のジョーマローン ロンドンは、一人の専属調香師に頼るのではなく、複数のマスター・パフューマー(Master Perfumer) たちとルーが緊密に協働する「クリエイティブ・スタジオ」体制を確立した。主要な調香師とその代表作を以下に整理する。
ルーは各プロジェクトの着想段階から深く関与し、調香師たちにジョーマローン ロンドンのDNA──シンプルさ、コントラストへの情熱、セントペアリングの前提──を繰り返し伝える。だからこそ、調香師が異なっても「ジョーマローン ロンドンらしさ」が一貫して保たれている。
“I spend so much time explaining the Jo Malone DNA to them. If I had to explain that every single time to a new perfumer, I don’t think I’d ever get any work done!”
(「ジョーマローンのDNAを調香師たちに説明するのに膨大な時間を費やしています。毎回新しい調香師に一から説明していたら、仕事が全然進みません!」)
── セリーヌ・ルー
ブランドのこだわり
フレグランス・コンバイニング──香りを「重ねる」という革命
ジョーマローン ロンドンの最も際立つフィロソフィーは、フレグランス・コンバイニング(Fragrance Combining™)──のちにセントペアリング(Scent Pairing)とも呼ばれる──という概念である。一つの香りを単独で楽しむだけでなく、複数のコロンを重ねづけすることで「自分だけの香り」を作り出すという発想は、中東では古くから存在していたが、ジョーマローン ロンドンが西洋市場で広くポピュラーにした 。
“The personalisation that Scent Pairing allows is at the heart of everything we do. It’s central to the thought process from the very start and means that the way we develop our fragrances is truly unique.”
(「セントペアリングがもたらすパーソナライゼーションは、私たちのすべての核心です。最初から思考プロセスの中心にあり、それゆえに私たちのフレグランス開発のやり方はまったくユニークなのです。」)
── セリーヌ・ルー(Céline Roux)、ジョーマローン ロンドン グローバル・ヘッド・オブ・フレグランス
「少ない素材、高い透明感」の哲学
一般的な香水には最大400もの原料が使われることがあるが、ジョーマローン ロンドンのコロンはそれよりはるかに少ない成分で構成されている。これは重ねづけを前提としているためであり、同時に一つ一つの素材のクオリティを際立たせるためでもある 。
“As you can imagine, the more ingredients you have the less clarity you have. It would be the same with cooking – if you add a lot of spices, it becomes difficult to detect what’s actually in the dish.”
(「素材が多ければ多いほど、透明感は失われます。料理と同じです──スパイスを足しすぎると、何が入っているのか分からなくなりますよね。」)
── セリーヌ・ルー
そのため、各フレグランスの名前はライム バジル&マンダリン、イングリッシュ ペアー&フリージア、ウッド セージ&シー ソルトのように、キーノート(主要香料)をそのまま冠したシンプルなものが多い 。
ボトルとパッケージ──クリーム色の箱と黒いグログランリボン
ジョーマローン ロンドンのパッケージは、ブランドのアイデンティティそのものである。クリーム色の箱に黒いグログランリボンが結ばれ、箱を開けるとシグネチャーのライム バジル&マンダリンの香りがほのかに漂う黒いティッシュペーパーに包まれている 。
グログランリボンとは、表面に細い横畝(よこうね)のあるリボンのこと。サテンのような滑らかさとは対照的な、少しざらりとした質感が特徴で、構造的なしっかり感と上品さを兼ね備えている 。クリーム色は強い白でもベージュでもない、温かみと落ち着きを感じさせるトーンで、黒い文字との高いコントラストが視認性と洗練さを両立させている 。
このミニマルで「引き算」のデザインは、装飾過多な高級ブランドとは一線を画し、ジョーマローン ロンドンが「控えめな贅沢(quiet luxury)」の先駆者であることを物語っている。
英国のヘリテージ
ジョーマローン ロンドンは一貫して英国の風景や文化からインスピレーションを汲んできた。ブルーベル、キングウィリアムペアー、オークの木、ラベンダー──イングランドの田園や庭園を象徴する素材がブランドDNAに深く根づいている 。
“Whether it’s picturesque villages, rolling hills, and windswept beaches, or the latest in art, culture and design, we’re inspired by the best of British.”
(「絵のように美しい村々、なだらかな丘陵、風に吹かれるビーチ、あるいはアートや文化の最先端──私たちは”英国のいちばん素敵なもの”からインスピレーションを受けています。」)
── ジョーマローン ロンドン公式サイトより
香水ラインナップ
コロン──ブランドの核
レギュラーラインの「コロン」は、ジョーマローン ロンドンの根幹をなす存在である。透明感があり、軽やかで、男女を問わず使える汎用性の高さが特徴。一つひとつが単独で美しく香るだけでなく、他のコロンとのセントペアリングを前提に設計されている 。
ジョーマローン ロンドンの香りのコレクションは、大きく6つのフレグランスファミリーに分類されている 。
| ファミリー | 特徴 | 代表的な香り |
|---|---|---|
| Citrus(シトラス) | フレッシュで活力あふれる柑橘系 | グレープフルーツ、ライム バジル&マンダリン |
| Fruity(フルーティー) | みずみずしい果実の甘さ | イングリッシュ ペアー&フリージア、ネクタリン ブロッサム&ハニー |
| Light & Floral(ライト&フローラル) | 露のような繊細な花々 | ワイルド ブルーベル、レッド ローズ、ポピー&バーリー |
| Rich & Floral(リッチ&フローラル) | 華やかで芳醇な花の香り | ピオニー&ブラッシュ スエード、オレンジ ブロッサム、チューベローズ アンジェリカ |
| Fresh & Woody(フレッシュ&ウッディ) | 爽やかな木々やハーブ | ウッド セージ&シー ソルト、イングリッシュ オーク&ヘーゼルナッツ |
| Warm & Woody(ウォーム&ウッディ) | 深みのある温かなウッド | ミルラ&トンカ、ポメグラネート ノアール、ウード&ベルガモット |
コロン インテンス──深遠な旅路
2010年に登場したコロン インテンス(Cologne Intense) は、レギュラーラインよりも深く、濃密で、希少な素材をふんだんに使ったシリーズである 。調香師クリスティーヌ・ナジェル(Christine Nagel)が手がけた最初の3作──ローズウォーター&バニラ、ウード&ベルガモット、アイリス&ホワイトムスク──はスモーキーなボトルに収められ、ブランドに新たな奥行きをもたらした 。
“Most of the scents we create are quintessentially British and find inspiration in British landscapes, traditions and ingredients. But with Cologne Intense we allow ourselves to find inspiration from trips we have taken and ingredients we have discovered from further afield.”
(「通常、私たちのほとんどの香りは典型的に英国的で、英国の風景や伝統、素材にインスピレーションを得ています。でもコロン インテンスでは、旅先で見つけた素材やもっと遠い場所からのインスピレーションを自らに許しているのです。」)
── セリーヌ・ルー
現在のラインナップには、ヒノキ&シーダーウッド、ダークアンバー&ジンジャー リリー、スカーレットポピー、ミルラ&トンカ、アンバー ラブダナムなどが含まれる 。
ナイトコレクション、ラベンダーランド──新たな領域へ
近年のルーは、従来のコロンやコロン インテンスの枠を超えた新カテゴリーの開拓にも意欲的である。
ナイトコレクション(Night Collection) は、日が暮れてから眠りにつくまでの「あわい」の時間に着想したシリーズ。マチルド・ビジャウイとマリー・サラマーニュが調香を担当し、ラベンダー&ムーンフラワー、ムーンリット カモミールといった、カーミング(鎮静)効果を意識した香りを展開している 。
“The Night Collection isn’t so much about sleep, but rather about enjoying the time before sleep, which is a fascinating area to explore, inspiring new rituals and new olfactive expressions.”
(「ナイトコレクションは眠ることよりも、眠りの前の時間を楽しむこと。探求するのに魅力的な領域で、新しいリチュアルや嗅覚表現にインスピレーションを与えてくれます。」)
── マチルド・ビジャウイ
ラベンダーランド(Lavenderland) コレクションでは、ラベンダーという一つの素材を3人の調香師に委ねるという実験的なアプローチが取られた。マリー・サラマーニュはフローラル寄りのウィステリア&ラベンダー、ヤン・ヴァスニエはウッディでセクシーなシルバー バーチ&ラベンダー、アンヌ・フリポはアロマティック・オリエンタルのラベンダー&コリアンダーを創り上げた 。同じ出発点から三者三様の解釈が生まれるこの手法は、ルーの「コーチ」としての手腕を如実に表している。
“Lavender was the starting point for each of the perfumers; after that they could do what they wanted because they understand our passion for contrasts. The result is very special.”
(「ラベンダーは各調香師共通の出発点でした。そこから先は自由に任せました。コントラストへの情熱を彼らは理解しているから。結果はとても特別なものになりました。」)
── セリーヌ・ルー
こうしてジョーマローン ロンドンは、創業者のジョーという個人の天才に依存するブランドから、ルーをハブとするクリエイティブ・チームの集合知によって進化し続けるブランドへと、静かに、しかし確実にその形を変えた。創業者の精神は残しつつ、世界中の才能ある調香師たちのビジョンが加わることで、ブランドの表現の幅は創業時とは比較にならないほど広がっている。
ちなみに…
- 「2つのビリオンダラーブランド」──ジョー・マローンは、ジョーマローン ロンドンと、2011年に立ち上げた新ブランド Jo Loves(ジョー ラブズ) の2つのブランドを「ビリオンダラーブランド」と表現している 。ジョー ラブズの最初のフレグランス「ポメロ(Pomelo)」は、カリブ海のパロット・ケイで心を再び取り戻した瞬間に生まれた 。
- 名前の権利──ジョーが唯一後悔しているのは、エスティ ローダーへの売却時に自分の名前(”Jo Malone”)の使用権も手放したこと。以降の事業では「Jo Loves」「Jo Vodka」のように、ファーストネームの「Jo」のみを使用している 。
- ジョー・ウォッカ──2025年、ジョーは香りの世界からアルコール業界にも進出し、フュージョンウォッカ「Jo Vodka」を発売した。「101 The Purist」「102 The Bohemian」「103 The Artist」の3種からなる 。
- ディスレクシアと共感覚──ジョーのディスレクシアは、逆説的に彼女の嗅覚的才能を研ぎ澄ませた可能性がある。彼女は香りを「色」として認識するシネスタジア(共感覚)に近い能力を持ち、「ピンクのクッションから香水を創れる」と語っている 。
- MBEからCBEへ──2008年にMBE(大英帝国勲章・五等)、2018年にはCBE(同・三等)を授与されている。CBEは英国経済およびGREAT Britainキャンペーンへの貢献が評価されたもの 。
- クリスティーヌ・ナジェルのその後──ジョーマローン ロンドンで47ものフレグランスを創った名調香師ナジェルは、その後エルメスに移り、ジャン=クロード・エレナの後継者として同メゾンの専属調香師となった 。
- She became her family’s sole breadwinner at 11 — now she’s a world-famous perfume entrepreneur – https://www.cnbc.com/2025/11/15/from-family-breadwinner-at-11-to-world-famous-perfume-entrepreneur.html
- Ms. Jo Malone CBE on resilience, reinvention (CNBC Executive Decisions podcast) – https://www.cnbc.com/video/2025/11/11/ms-jo-malone-cbe-executive-decisions-podcast.html
- Jo Malone on finding your calling (ABC News / Good Morning America) – https://www.goodmorningamerica.com/gma/story/jo-malone-finding-calling-great-advice-oprah-57913762
- The Queen of Fragrance Is Back With a New Brand (Racked, 2016) – https://web.archive.org/web/20181004022150/http:/www.racked.com/2016/12/12/13883836/jo-malone-jo-loves-fragrance-candles
- How Jo Malone launched in the US with empty bags (Cheltenham Literature Festival) – https://www.hotfootdesign.co.uk/thoughts/launching-us-just-empty-bag/
- Fragrance Maven Jo Malone Lost Her Sense of Smell (SurvivorNet) – https://www.survivornet.com/articles/jo-malone-lost-sense-of-smell-breast-cancer-battle/
- Jo Malone uncovers the reasons she sold Jo Malone London (Female First) – https://www.femalefirst.co.uk/lifestyle-fashion/stylenews/malone-uncovers-reasons-sold-malone-london-1062172.html
- Jo Malone CBE’s only regret is selling her name (CNBC) – https://www.cnbc.com/2025/11/23/this-famous-perfume-entrepreneurs-only-regret-is-selling-her-name.html
- Lime Basil & Mandarin by Jo Malone (Stephan Matthews) – https://www.stephanmatthews.com/2017/10/lime-basil-mandarin-by-jo-malone.html
- Jo Malone London – The Perfume Society – https://perfumesociety.org/perfume-house/jo-malone/
- Jo Malone Wood Sage & Sea Salt review (Cafleurebon) – https://cafleurebon.com/new-fragrance-review-jo-malone-sage-wood-sea-salt-cologne-christine-nagels-british-beach-draw/
- Jo Malone unveils Wood Sage & Sea Salt (Tatler Asia) – https://www.tatlerasia.com/style/beauty/jo-malone-wood-reveals-sage-sea-salt-fragrance
- The Untold Story of Jo Malone London (YouTube) – https://www.youtube.com/watch?v=5L-eyOpSDhE
- Queen Of Scent Jo Malone (This Morning / ITV) – https://www.youtube.com/watch?v=AVWwuqhiBqM
- “I lost my sense of smell”: Jo Malone CBE (YouTube) – https://www.youtube.com/watch?v=n1X7GsBt7NQ
- Jo Loves Founder on Changing the World with Fragrance (Scentbird) – https://www.youtube.com/watch?v=AWWA6TP5QHM
- The Real Story of Jo Malone CBE (Exhibit A podcast) – https://www.youtube.com/watch?v=NRtPt8SlD0k
- How Jo Malone Has Smelled the Sweet Scent of Success (LinkedIn) – https://www.linkedin.com/pulse/how-jo-malone-has-smelled-sweet-scent-success-twice-bill-ellis
- Jo Malone London 公式サイト – https://www.jomalone.com
- Jo Malone London UK: Philosophy of Scent Pairing – https://www.jomalone.co.uk/our-stories/philosophy-of-scent-pairing
- What Makes Jo Malone Perfume Packaging Recognizable (Gentlever) – https://gentlever.com/what-makes-jo-malone-perfume-packaging-recognizable/
- The Story Behind Jo Malone London’s Newest Fragrance (W Magazine, 2016) – https://www.wmagazine.com/story/jo-malone-celine-roux-beauty-insiders
- Meet Celine Roux, the fragrance artist (V Beauty, 2017) – https://www.vbeauty.co/blog/2017/8/3/meet-celine-roux-the-fragrance-artist
- Celine Roux – The Fragrance Foundation UK – https://www.fragrancefoundation.org.uk/celine-roux
- ITW de parfumeur : Jo Malone London (Paris 8) – https://www.paris8.lu/fr/interview-de-parfumeur-jo-malone-london/
- Maintaining the Essence of Jo Malone London (GCI Magazine) – https://www.gcimagazine.com/brands-products/fragrance-home/article/21849027/maintaining-the-essence-of-jo-malone-london
- Christine Nagel – Wikipedia – https://en.wikipedia.org/wiki/Christine_Nagel
- Christine Nagel – The Perfume Society – https://perfumesociety.org/perfume-nose/christine-nagel/
- Christine Nagel – Parfumo – https://www.parfumo.com/Perfumers/Christine_Nagel
- English Pear & Freesia: Céline Roux discusses (Jo Malone London UK) – https://www.jomalone.co.uk/our-stories/celine-roux-forever-favourite
- An Ode to English Pear & Freesia (Jo Malone London) – https://www.jomalone.com/our-stories/an-ode-to-english-pear-freesia
- The untold story of Jo Malone London’s English Pear & Freesia (Cosmetics Business) – https://cosmeticsbusiness.com/the-story-of-jo-malone-londons-english-pear-freesia-cologne
- Intense Travel Tales (Jo Malone London UK) – https://www.jomalone.co.uk/our-stories/intense-travel-tales
- Myrrh & Tonka Cologne Intense interview (AE Magazine) – https://aeworld.com/beauty/myrrh-tonka-cologne-intense/
- Cologne Intense: A Treasured Story (Jo Malone London) – https://www.jomalone.com/our-stories/cologne-intense-a-treasured-story
- Jo Malone adds Orris & Sandalwood to Cologne Intense (Moodie Davitt Report) – https://moodiedavittreport.com/jo-malone-adds-orris-sandalwood-to-cologne-intense-collection/
- Brilliant Blossoms collection (Jo Malone London) – https://www.jomalone.com/our-stories/brilliant-blossoms
- Lavenderland Perfumer Interview (Jo Malone London UK) – https://www.jomalone.co.uk/our-stories/perfumer-interview-lavender
- Night Collection Q&A (Jo Malone London) – https://www.jomalone.com/our-stories/night-collection
- The Story of English Pear & Sweet Pea (Jo Malone London) – https://www.jomalone.com/our-stories/english-pear-and-sweet-pea
- Mathilde Bijaoui – Agoratopia – https://www.agoratopia.com/perfumers/mathilde-bijaoui
- An olfactory trip with Celine Roux (Mecca, 2018) – https://www.mecca.com/en-au/mecca-memo/fragrance/jo-malone-celine-roux-interview/
- Jo Malone London – Wikipedia – https://en.wikipedia.org/wiki/Jo_Malone_London


