香水サブスク「セントピック(SCENTPICK)」の真実

香水サブスクscentpickの真実 マニア向け記事

あるメーカーさまから「小分けして売るのは便利だけど風情もないだろう」と言われたことがありました。香水は、香りへのこだわりはもちろんボトルデザインや詩的なテキストといったことも含めてブランドの世界観があります。パフューマーだけでなく、ブランドから流通に至るまで、一つ一つの香水に関わる人たちが皆プライドを持っているんですよね。

CEO 川島匠(WWD2021年2月)

 日本の3大香水オンラインサービスのうちの1つ、2019年5月に始まったのがセントピック(Scentpick)です。日本初フレグランス・サブスクリプションサービスと名乗るパイオニアの実態はどうなのか?グレーなのか?ホワイトなのか?それともブラックなのか?当サイトがどこより詳しく調べ、できるだけ客観的に考察してみました。
注:2023年、株式会社SCENTPICKは、CYPHER株式会社と名を変え、香水サブスクサービスは終了しました。

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その前に…

 香水のサブスクとは、メーカー正規の小さなサイズの商品を販売しているわけではなく、サブスク提供の会社側がどのような経路からか購入した商品を、小分けして販売しているサービスです。したがって、どのように小分けがなされているのか?」「どのような環境で保管されているのか?」は不透明であり、小分けされている時点で香水の酸化が始まってしまうため、本物の香りをきちんと味わいたいという方には確実にオススメしません
 劣化レベルを見るために複数社1か月のみサブスクオーダーしましたが、続けることはありません。最初から劣化の恐れがある及び劣化しやすいというのが弱点です。また、結局追加料金を払って毎月3本買っていると、案外普通の香水が買えていることもあります。この記事を参考に、自己判断の精度を高めて頂ければ幸いです。

注意:こちらはPRでもなければ、委託で作った記事でもありません。

会社概要

当時、心を寄せていた女性が付けていた香りが気になりつつも、本人に聞くことができませんでした。その香りが何の香水なのかを探すべく、百貨店のフレグランスフロアに通いました。(中略)恋愛感情というエンジンを積んでも、目的の香りを探し当てられないんだと悟りましたね。

CEO 川島匠(WWD2021年2月)

運営会社:SCENTPICK株式会社
事業内容:コンサルティング事業、ソフトウェアの企画・開発
取得免許:化粧品製造販売業許可(許可番号13C0X11623)
設立:2019年2月

 ここで面白いのは、運営会社であるSCENTPICK株式会社の事業内容には香水サブスクの文字が全く入っていないことです。
 創業者である川島匠氏は、大手外資コンサルのボストンコンサルティンググループ出身です。A.Tカーニー時代も含めると、7年半もの間経営コンサルをしており、2018年からはフリーのコンサルになっています。ちょうど、このときにAVANCE GROUP株式会社の役員になっており、この会社の事業内容が、コンサルおよびソフトウェアの開発になります。国税庁に登録されている住所もSCENTPICK株式会社と同じですが、法人番号は異なります。(想像ですが)AVANCE GROUP株式会社の委託でSCENTPICK株式会社が動いているのかもしれません。

 ちなみに、川島氏は、カラリアの創業者と同じ早稲田大学出身で、10年くらい先輩になります。

化粧品製造販売業許可免許も取得しています。この免許はコスメの通販サイトでも取得していないことが多いのが実情ですが、少しでもユーザーに安心してサービスを利用してもらうためにも取得しておきたかった。申請のための書類自体は形式的なものですが、都の担当者に事業内容を理解してもらうのが難関でした。「香水を小分けにしたサブスクリプションって何ですか?」といったことから丁寧に説明しましたね。

CEO 川島匠(WWD2021年2月)

サブスクリプションサービス

サブスク内容

【Scentpick注文内容】

初回は、専用のボトルケースが無料でついてきます。私は以前利用したことがあったため、今回はケース無し。

 セントピックは、サブスクのみのサービスで、最大3種類までのボトル注文しか存在しません。それ以上の注文がしたい場合は、LINEで問い合わせをする必要があります。現品の取り扱いは今のところありません。

 取り扱いは、香水とルームスプレーになります。サイズは全て5mlサイズになり、それぞれ円筒型の専用箱に入っています。注文した香りは、特製カードが添えられ、香りの紹介文・香りのピラミッド・イメージが裏面に書かれています。紙質はカラリアの方が上のような気がしますが、中に書かれている内容はセントピックの方がかなり丁寧です。香水が円筒箱に入っており、遮光性の高い黒色の袋に入ってくることも保管の観点からかなりポイントが高いです

 毎月10日までに香水の内容・ボトル数は変更することができます。

利用料金

現在は卸を通して購入することがほとんどで、直接ブランドと契約などのやりとりは実現できていません。末端価格で購入したものを小分けで売ること自体は違法なわけではありませんが、メーカーさまからはそういう買い方をして欲しくないという意見も真摯に受け止めています。

CEO 川島匠(WWD2021年2月)
1ボトルプラン30push × 1本1,180円+送料・梱包手数料347円(税抜)=1680円(税込)
2ボトルプラン30push × 2本1,180円×2+送料・梱包手数料622円(税抜)=3280円(税込)
3ボトルプラン30push × 3本1,180円×3+送料・梱包手数料987円(税抜)=4,980円(税込)
基本プラン一覧

上記が基本料金になり、主に元の商品価格によって基本料金にプラスαの金額がかかってきます。セントピックはこれを分かりやすくプレミアム商品と位置づけ、3つのランクに分けています。

プレミアム商品

GOLD+300円 ex. メゾンマルジェラレプリカシリーズ、ティートニック(ミラーハリス)、ティーフォーツー(ラルチザン)、サンタルマジュスキュル(セルジュルタンス)
PLATINUM+600円 ex. マラケシュ(イソップ)、アクアユニヴェルサリス(メゾンフランシスクルジャン)、ローズデヴァン(ルイヴィトン)
DIAMOND+900円 ex. ジャスミンルージュ(トムフォード)、サンタル33(ルラボ)、ムスクラバジュール(フレデリックマル)

違法?本物?

以下、私の知識に基づいて、考えを述べてみます。

a. ブランド商品の販売について

 基本的にセントピックが行っていることは、メーカーが販売している商品を小分けし、転売していることになります。この販売(転売)自体は違法ではありません。なぜなら独占禁止法があるため、メーカーがこれを止めることはできないからです。転売に対して、メーカーが唯一行えることは、商標権侵害(これ以外にも権利の侵害はありますが、基本的にはです)ですが、セントピックは商品画像については、すべてイラスト画を使用しています

 しかし、取り扱いブランドの紹介で、ブランドロゴを使用しているため、ここはブランド側から商標権侵害ということで言われても仕様がないかもしれません。

 したがって、ブランドの香水を販売するという点においては、グレーではありませんが、だからといって、許可を取っているという意味でもなく、だから正規品を扱っているという保証にもなりません。ここが重要です。

b. 小分け販売について

 香水の小分け販売は、実はある資格を持っていなければ違法になります。それが化粧品製造販売業許可になります。セントピックは、これを有しているため、香水を予め別容器に移し替え、保管し、販売することができるのです。

 香水の小分けは、薬機法により「化粧品の製造」とみなされるため、国の許可がいるのです(ただし、量り売りは話が別)。

 しかし、この許可があるからといって、香水が正しく保管されている保証であるわけではありませんし、香りの劣化が無いという保証にもなりません。

c. 本物か?偽物か?

 セントピックが扱っているメーカーは基本的に、日本で正規代理店がある、もしくは日本に本社があるメーカーになるので、偽物を仕入れる可能性は低いです。

 もし、日本では正規で販売されていないブランドがあると、並行輸入であれば偽物の可能性、個人輸入であれば違法の可能性があります。そして、セントピックにはそのブランドが存在します。それがクリード(Creed)です。クリードは2019年5月に日本の正規代理店であったブルーベルジャパン社が取り扱いを終了しました。現在扱っているのはアクアブーケという並行輸入で海外ブランド品を仕入れている業者になります。ここから3つの場合を推測してみました。(セントピックでは3種取り扱い)

①海外サイトから個人輸入でセントピックが購入したものを販売していた場合、違法である。→可能性はかなり低い。
②2019年5月取り扱い終了までに買い溜め、その商品を販売している。この場合、いかに保管が良くても、香りが多少変化していることは覚悟すべき。→可能性はまぁまぁある。
③アクアブーケのような並行輸入を取り扱う店舗から購入して、販売している。並行輸入も厳しくなったため、偽物である可能性はかなり低いが、問題は保管状況で、仕入れ先の海外の問屋等の保管が悪い場合もある。→可能性はかなりある。

 恐らく②か③だと思われますが、完全に正規の代理店があるわけではないので、どうしても正規品が良いという方にはオススメできない選択肢になります。(これを言うと、サブスク自体ダメですが。)

 また、セントピックはWWDのインタビューにて、メーカー直の契約は実現できておらず、卸を通して購入しているということを明らかにしています(WWD2021年2月)。

マーケティング手法

品揃えを増やすことを追い求めているわけではありません。“ラットレース”になってしまいますから。

戦略と聞くと“どう戦うか”や“どう競争を仕掛けるか”を考えてしまいがちですが、本来はそうではなくて。いかに戦いを略すか、つまり、“戦わないで勝つか”を考えるのが戦略だと考えています。価格や品揃えで競争していたら難しい。そうじゃない価値で選ばれるサービスになっていきたいですね。

CEO 川島匠(WWD2021年2月)

商品にチラシを同封したり、プロモーションのメールを送りつけることも行いません。こうした、一見非合理的な行動も、全てはお客様に届けたい世界観を崩さないためのものです。

CEO川島匠(CXLab2020年4月)

 セントピックのマーケティングは、カラリアとは正反対…まではいかずともかなり違います。マスマーケティング特化でインフルエンサーをガンガン使用し、映える画像や独自の記事を作り、スピーディーにマーケットシェアを高めていくカラリアと、インフルエンサーや広告は最低限に、ブランディングをするかのような丁寧なやり方で一定層からのシェアを受けるセントピック若いエネルギッシュさでひたむきに走るカラリア企業コンサルの経験を生かし静かにマーケットを狙うセントピック。どちらが良い悪いではなく、同じサブスクでも目指している方向が違うかもしれません。

a. UI・UX

 セントピックのマーケティング戦略はここに集約されているといっても過言ではないかもしれませんが、UI(User Interface:利用者との接点のことで、サイトの見た目や使いやすさのこと)とUX(User Experience:ユーザーの体験のことで、使い勝手や購買体験)が香水のサブスク業者の中で最も良いです。
 文字の大きさ、フォント、余白、整理された外観、直感で使いやすいサイト構築、他にはあまり無いサービスだからこその配慮が伺えます。

①ヘッダーには常に、締め日が書いてあり、いつでも定期便の変更ができるページに飛ぶことができます。(下の画像はPC版)

例えば同封する商品カードには、その香りが醸し出すキャラクターや、適したオケージョンを記載し、カードケースで持ち運べるサイズにしたり、専用のボトルケースは化粧ポーチの隙間に入るサイズまで小型化させたり、といった細かい工夫もなされています。

CEO川島匠(CXLab2020年4月)

②メイン部分は、ワンタッチで定期便に追加ができ、在庫の無いものは「リクエスト」を送ることができます。レフトからは、住まい探しのようにボタンを押して条件を絞り込む機能が分かりやすくついています(画像はPC版)。スマホ版もレスポンシブデザインになっているため、フィルターが上部についている以外、大きく変わりません。そして、現在取り扱っている商品はどれくらいあるのかが一目で分かるようになっています。さらに、セントピックの画像は、驚くべきことに1つ1つが手書きのイラストになっています。これは購入した際についてくるカードも同じです。

③商品ページでも際立つのは丁寧さです。商品説明文をカラリア・セレスという競合と比べた時に、頭一つ出ているのはセントピックです。(あくまで全ての香水を見たわけではありませんが、)日本でも人気のソヴァージュの説明文を比較すると、セントピックとセレスが「自分たちの調べたことや言葉で香水の説明を書いている」のに対し、カラリアの説明文は「ほぼほぼ公式サイトの言葉」でした。セントピックについては、ただ自分の言葉というだけでなく、人気上位5商品の説明文平均文字数が約245文字という圧倒的な量に加え、かなり調べていることが伺えます(当然ですがコピペしてない)。

 残念な点は、画像の矢印部分がカテゴリとして機能していないところです。これはかなり使い勝手が悪く、ある香水から同じブランドで探したいと思ったときに飛べないということです。また、香料の部分がやや雑で、(恐らく公式サイトのみを参考にしているのか)「そんなわけ無くね?」ってくらい香料が少ないです。ソヴァージュがベルガモットとバニラだけなわけないですよね。公式の説明も大概ですが。また、香調やムード、イメージなどはカラリアやセレスの方に軍配が上がります。しかし、ここは初心者特化ということもあるかもしれません。香水に詳しい人は自分でFragranticaなどで調べるからです。

これまで数々の企業の戦略コンサルティングを行ってきた経験から、人は、未経験のサービスや商品を目の前にしたとき、まず始めにそれを利用した自分を思い浮かべ感情が動くかを判断し、その段階をクリアすると、その価格や機能が合理的と思い込むために自分への説得材料を探す、という行動原理があるように感じていました。

CEO川島匠(CXLab2020年4月)

b. AIを活用したおまかせ機能

 セントピックユーザーの多くが選んでいるというおまかせ機能は、会員登録時に回答するQuizの結果から好みやライフスタイルを予測し、香水をオススメする機能になります。こちらはプロフィールからいつでも回答を変更することができるようです。

 このAI機能は、川島氏によると、好みの香りに近づけるというよりは、「今までにない新しい自分」を発見するということに重きを置いているようです。

おまかせの香水を選定するアルゴリズムでも、利益率や在庫という経営観点は一切排除し、そのお客様に一番似合う香りや、大切な人と会うときに付けてほしい香りが選ばれるようにモデリングされています。

CEO川島匠(CXLab2020年4月)

アカウント情報(2022年7月時点)

SNSマーケティングをやっていないからか、アカウントの規模は非常に小さく、現在は稼働すらしていないようです。これでは、会社として動いているのかも怪しくなってきますが、カラリアにシェアを奪われすぎたのでしょうか?それとも川島氏はもはや運営に関わっておらず、とりあえず一定の利益を出すための会社としている?現在の状況は不明です。カラリアの持つ貪欲さやアクティブさが見られません。

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Instagram
フォロワー 約250人

解約の仕方

 昨今のサブスクの大きな問題点に、解約の仕方が分かりづらいという点がよく挙げられ、グーグルのサジェストにも出るくらいよく調べられていることが分かります。
 セントピックの解約の仕方は、非常に分かりやすく、消費者にとって良心的な設定になっています。プロフィール欄からいつでも退会できるのです。ちなみに、引き止められることもなく、速攻で退会できます。ちなみに、解約すると少し経った後に過去の登録者限定のクーポンが発行されます。

まとめ

 私見と調査(インタビュー記事、公式サイト、SNS、求人等)によって、セントピック(Scentpick)について詳しく書いてみました。サブスク登録の参考にして頂ければ幸いです。何も知らずに登録するのも、何も知らずに登録しないのも、どちらも勿体ないので、より知ることで自分が正しいと思う判断をしてください。

CXLAB
WWD

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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