A. 香水のことを少しずつ知っていくと、耳慣れない言葉を耳にするようになってきます。その最たる例が、メゾンとかニッチというワードです。ここでは、それらの対義語とも言うべきメインストリームも含めて、説明しましょう。
メインストリーム
本流という意味で、シャネル、ディオール、ブルガリ、グッチといったファッションブランドのフレグランスとほぼ同義になります。ファッションフレグランスとかデザイナーズフレグランスと呼ばれます。ファッションから始まった有名なブランドが、香水を作り、多くの人がファッションと同様に購入していることから、メインストリームと名がついています。
香水を知りだすと、とやかく人と被りたくないとかファッションフレグランスを馬鹿にする傾向がありますが、メインストリームの香水のすごさはその規模と衰えぬ人気にあります。例えば、アメリカでは2019年の香水の年間売上において、ドルチェ&ガッバーナのライトブルー(2001、オリヴィエ・クレスプ)が約1000万ドル(約11億円)売れたとされています。*
これらのブランドでは、広告や宣伝、市場調査といったマーケティング戦略に多くの予算を割き、調香師は限られた予算と時間の中で、そのブランド(もしくはディレクターの方向性)を表現することが求められます。制限の中で素晴らしい香水を作らなければならないため、調香師の腕が試されるといっても過言ではないでしょう。
メゾン
メゾンとは、フランス語で家の意味を持ち、フレグランスメゾンなどと呼ばれます。フレグランスをメインで作っている香水専門のブランドのことです。香水の創作に特に力を入れており、お金や時間を惜しまずに香水にかけ、宣伝や市場調査をしないブランドが多いです。香水をビジネスとして捉えてブランドを作るというよりは、より芸術性の高いものとしてブランドを作る場合が多く、調香師も自身でブランドを作ることがあります。
メゾンディオールといった、ブランド「ディオール」の中に香水専門のブランドを作る場合もあれば、メゾンフランシスクルジャン、フレデリックマル、キリアンのような創業者(もしくは調香師)の名を冠するブランド、ザディファレントカンパニーやディプティック、バイレードなどの独自の名前をつけているブランドがあります。
ニッチ
ニッチとは、「大きくはないが特定のニーズや市場の隙間狙った部分」を意味し、香水に限らず使われる言葉です。ここ20年で増えてきたメゾンフレグランスのブランドは、ブランド規模もメインストリームに比べるとかなり小さく、多くの場合、「香水を芸術として捉える」というニッチな市場でブランドをローンチするため、ほとんどがニッチブランドに位置します。このため、ニッチフレグランス=メゾンフレグランスのような勘違いも生まれてしまいましたが、正確には、メゾンフレグランスのカテゴリーの中にニッチフレグランスが入っていると考えた方がよいでしょう。したがって、ブランドが世界的に有名になってきた場合、それはニッチフレグランスと呼べるか微妙なラインになってきます。
ブランドによっては、それがメインストリームなのか、メゾン(ニッチ)なのか分けられない場合もあるので、あまり言葉に囚われる必要はないでしょう。
*https://www.statista.com/statistics/441666/dollar-sales-leading-womens-fragrances-brands-us/
コメント