Q. 香水ってどうやってつけるの?

つけ方 Q&A

A. 香水のつけ方・纏い方には、様々な方法があります。しかし、同時に勘違いやあまり良くない方法でつける人も多いのが事実です。理由を説明しながら、より良い纏い方をお伝えしましょう。

纏う場所

かつてココ・シャネルはこう言いました。「香水はキスをされたい場所につけるのよ」と。だけど僕のオススメは、香水はキスをされたい場所に近いところにつけることだよ。だって、キスされたい場所につけたら香水の味がしちゃうからね。ハハハ。

フランシス・クルジャン

一番大切なのは、シャワー上がりなどの清潔な地肌につけることです。

 清潔であることが必要なのは、体臭を含めた別の何かの香りと混ざってしまうことで、本来の香りだちが楽しめない可能性があるからです。
 地肌につける理由は、調香師が香水を作る際に肌と融合したときの香りを考えているからです。体温によって温められ、人間のもつ本質的な匂いと混ざり合い、纏う人の香りとなるのです。

お風呂上がりや服を着る前に、「脇腹(ウエスト)」、「膝の裏」につけると優しく香らせることができます。さらに印象を高めたい場合は、「」、「ひじの内側」、「手首」、「デコルテ」、「鎖骨のくぼみ」などにつけます。
 体温によってアルコールが蒸発し、それとともに香りが拡散するので、体温が高い部分(脈)に近い場所につけるほど香りは広がりやすくなります。

注意

・手首につけた場合、手を動かしたときに香りが拡散するため、食事の時や対面で人と話す時には注意が必要です。

・胸など顔の近くにつけた場合、自分の鼻が香りの強さに慣れてしまうため、つけすぎないことに注意します。

・地肌の場合、皮脂腺の多い場所(耳の後ろや頭皮など)にはつけないようにします。 脂の出やすい場所につけると不快なニオイになります。

地肌につけて、ムエットで試した香りとは異なり、自分が不快な香りに感じる場合、洋服につけることも可能です。香りの芸術的な側面(香りの変化)は分かりづらくなりますが、香りを楽しむことはできます。ジャケットやコートなどの内側につけると脱いだときにふんわり香らせることができます。

注意

肌と違い、ジャケットやコートは何度も洗うものではないので、毎回つけないことに気を付けましょう。そうしないとベースの香りが凝縮されて、不快な香りをまき散らしてしまうことがあります。

肌の弱い方は、ハンカチにつけて、ポケットやバッグに忍ばせたり、下着やスカートなどの裾の裏地につける方法もあります。

香水を綺麗に香らせたい場合は、ボディウォッシュや洗剤・柔軟剤などはすべて無香料のものにすることをオススメします。また、肌が乾燥していると香りが持続しにくいため、無香料のボディローションを使うのもオススメです。

香水は乾いた肌の上では長く持続しません。なので、同じ香りのボディローションか無香料のボディローションを使ってから香りを纏うことをお勧めします。その際、洋服で覆ってしまわない方が良いです。

フランシス・クルジャン

纏う量

 目安は1箇所あたり、1プッシュで、複数箇所(香りの強さによって2~5か所)に分けてつけます。自分で匂いが確認できなくても、周りには匂いが分かっている場合が多いので、気になる方は、周りの方に香りがしているか聞いてみるといいでしょう

タイミング

・外出したり、人に会ったりする場合は、30分~1時間前にはつけておきましょう。トップノートが一番強く拡散しやすいため、トップノートミドルノートが落ち着く頃に、外出・面会を合わせると良いでしょう。

纏う方法

つける場所から20cmくらい離して、面で(=拡散させて)つけます。近づけすぎると液体が点でつき、アルコールが蒸発しづらくなるため、アルコール臭が強く、本来の香りが分かりづらくなります。また、面でつけることで肌にまんべんなく香りがつき、つけた際の液体が垂れることを防ぐこともできます。

この際、注意することは、「こすらない」ということです。こすってしまうと摩擦熱で香水の蒸発が早まってしまいます。香りも分子の集合体ですが、分子は運動を行っています。温度が高ければ高いほど、運動は激しくなります。このため、摩擦が起こると、その部分で熱が発生し、トップ→ミドル→ラストという香りの変化が分かりづらくなるのです。
 また、肌の摩擦により、肌表面の汗や汚れが混ざり合い、それがニオイを発する可能性があります

・絶対に強くこすらないこと。
・つけた際の液が気になるようであれば、優しく手で押さえる程度にすること。
・スプレータイプでない場合は、軽く逆さまにして、栓につけて、その後開栓して、栓の部分を肌につけることで纏うことができます。

実に大雑把なチェックで事足りたとする怠惰な習慣をもつ人が多すぎるようである。こういう人々は鼻を瓶の先にもっていったり、一滴を手の甲に垂らして皮膚をこすったりするのであるが、こうするとアミノ酸反応を引き起こし、むかつくような匂いにしてしまわないまでも、少なくとも香水を変質しかねない。

エドモン・ルドニツカ

最悪なのは、香水を吹きかけた腕を擦り合わせることです。肌の温度が上がり、香りの移ろいを変えてしまうのです。例えば、フローラルの香りをつけて、温度が上がると、最終的には鮮明な香りを失ってしまうのです。本来の香りを保ち、持続時間を長くしたいなら、腕に軽く振りかけたら、液体が馴染むのを待ち、絶対に何もしないことです。

フランシス・クルジャン
ちなみに…

 自身の目の前に香水を降って霧を作り、その中を歩くことで纏うという方法があります。これは、1971年クリニークがかの名香アロマティックエリクシールを発売した際に宣伝した方法になります。

全体的な注意事項

・特に女性の場合、体調や生理周期により体温が変わりやすいため、顔に近い部分に香水をつけることは避けることをオススメします。自身の体調と相談しながら、纏い方を考えていきましょう。

・電車やエレベーター、社内など密閉された空間に行く場合、周りに配慮したつけ方が必要です。すべての人が好きな香りというものは存在しません。これを意識しながら、目に見えないファッションとして纏うのが香水です。

・パールはアルコールに弱いため、パールのアクセサリーを身につける場合は気をつけてください。艶がなくなってしまいます。

・色のついている香水やつけ方を間違えると服にシミができる危険があります。白色の生地やシルク素材などでは気を付けましょう。

・シトラス系のオイル(ベルガモットやライム)は光毒性を持つものがあります。水蒸気蒸留法によって抽出された場合は含まれませんが、今はあまり使われないコールドプレス法や圧搾法によって抽出されたものは光にあたると化学反応を起こす場合があります。これは参考程度になります。

香水の纏い方に関する調香師・著名人の言葉

 試香するときのベストな方法は、肘の内側ではなく、手の甲につけることです。これは19世紀初頭からの伝統でした。なぜなら当時はアトマイザーが無く、肌の上にのせる唯一の方法は液体を落とすことであったからです。
 手の甲は表面が広く、温度もちょうど良いため、一日を通して香りに気づくことができるでしょう。ただし、香水を肌にのせたら、決して手首同士などでこすってはいけません

 香水をつける場合、髪や肩につけることもできます。こうすると香りがより貴方に近くなり、貴方の後ろにいる人たちも香りに気づくことができるのです。

ジャック・キャヴァリエ

夏につける場合、私は服の内側につけるのが好きです。なぜなら夏は汗をかくため、香りをダメにしてしまうのです。だから、洋服の内側か外側に遠くから広げてつけるのが良いでしょう。でも近づけすぎてはいけません。シミになってしまう可能性があるからです。
冬の場合は、問題が少ないので、肌につけることをオススメします。

フランシス・クルジャン

髪やスカーフ、サロンに軽くつけることもオススメです。なぜなら、動いたときに空気とともに香りが拡散するからです。

フランシス・クルジャン

多くの人は脈のうつところとか、静脈に近いところにつけるのが、香水を最も良い香りにすると言います。しかし、洋服やスカーフ、セーターにも香水をつけても良いのです。肌か洋服か、2つの表現方法があるということです。片方(肌)は、より密着し、自分が楽しむもの。もう片方(洋服)は、より優しい表現なのです。

クリスティーヌ・ナジル

ラグジュアリーな香水のつけ方は、ジャケットの裏地につける方法です。

セルジュ・ルタンス

体全体ではなく、髪に香水をさっと一振りしてみてください。肌につけて素早くこするよりも、もっと長く香りが持ちます。また、頭を動かしたときに、より自然な香りがふんわりと漂うでしょう。

オリヴィエ・クレスプ

正しい香水のつけ方は、あなたがつけたいと思う方法がそうなのです。

ドミニク・ロピオン

香水を空間に一吹きして香りの霧を作って下さい。そして、その中を歩いて通り抜けて下さい。これが私のおすすめです。

エスティ・ローダー

こすらないで。ローションじゃないんだから。摩擦の熱で、香りがすぐに飛んでしまう(簡単な実験:両方の腕に少量をスプレーし、片方だけこすって違いをみる)。ふつうは両方の手首を合わせて香水を広げるだけで十分。

タニア・サンチェス
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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