Officine Universelle Buly 1803(オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー)── 時を旅する美の万屋

ブランド創業者

「私たちは商品を売っているのではない。”ワオ”を売っているのだ。ドアを開ける、ワオ。音楽が聞こえる、ワオ。香りがする、ワオ。カリグラフィーを目にする、ワオ。誰もが商品は持っている。だが”ワオ”を持っている者は、そう多くない」
── ラムダン・トゥアミ(共同創設者)


基本情報

  • ブランド正式名称:Officine Universelle Buly 1803(オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー)
  • 通称:Buly 1803(ビュリー)
  • 原型の創業:1803年、パリ、リュ・サントノレ(Jean-Vincent Bully による)
  • 現代の再興:2014年、パリ、6 リュ・ボナパルト(Ramdane Touhami と Victoire de Taillac による)
  • 本拠地:フランス・パリ
  • 所属グループ:LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(2021年10月買収)
  • 公式サイトbuly1803.com(グローバル) / buly1803.jp(日本)
  • 読み方補足:「Officine(オフィシーヌ)」はフランス語で薬局・調剤所の意。「Buly」は旧綴り「Bully」から英語圏での否定的な意味を避けるため「l」を一つ落として改名された。

創設者・ブランドの成り立ち

第一章:19世紀のビュリー家と「奇跡の酢」

物語は19世紀初頭のパリに遡る。蒸留師・調香師・化粧品師であったクロード・ビュリーは、「ヴィネーグル・ドゥ・トワレット」と呼ばれる酢ベースのフレグランスを発明した。それは体臭を消し、病を癒やし、肌を滋養するという、当時としては画期的な製品であった。

古来、酢は蜂蜜水と混ぜれば感染症の薬として用いられ、18世紀にはペストへの最良の防御策とされた「四人の泥棒の酢」が有名であった。水そのものが疫病の媒介と疑われていた時代、酢は入浴剤として、さらにスキンケアのトナーとして使われるようになる。

クロードの息子ジャン=ヴァンサン・ビュリーは、父の発明を科学的に裏づけることに情熱を注いだ。医師や科学者の検証を経て、このヴィネーグル・アロマティックは1809年と1814年に特許を取得。やがてビュリーの酢は、1823年・1827年・1849年の万国博覧会に出品され、1851年のロンドン万博にも出展、さらに1867年と1878年のパリ万博で栄誉あるメダルを受賞している。

当時の新聞は口を揃えてその評判を伝えた。1869年の『ル・プティ・ジュルナル』紙はこう書いている。

「ショーウィンドウには一個連隊が整列しているが、この連隊の大佐は常にジャン=ヴァンサン・ビュリーのお馴染みの酢である。競合の大軍が代わりを務めようとしても、この老兵は勲章を胸に最前線に立ち続けている」

ビュリーの名声はフランス国境を遥かに越え、ヨーロッパ中に響き渡った。1807年の『アルマナック・デュ・コメルス』にはパリだけで139もの調香師が記載されており、香水・化粧品業はパリ市の第二の雇用産業であったという。その激しい競争のなかで、ビュリーは時代の空気を読む天賦の才とビジネス感覚を武器に、科学と化粧品の進歩を取り入れた革新的な処方を次々と生み出した。

しかし栄光の後に悲劇が訪れる。革命期の暴動によって店舗を失い、事業を「はした金」で売却せざるを得なくなったビュリーは、貧困のうちに生涯を閉じた。その数奇な運命は、オノレ・ド・バルザックが1837年に発表した小説『セザール・ビロトー』の主人公──栄光と破滅を経験する調香師──のモデルとなった。

それでもビュリーの名は完全には消えなかった。1937年の『ル・フィガロ』紙は美容欄で「ビュリーの酢を一本買うことを忘れずに。ほぼ一世紀にわたって世界的名声の的である」と記している。さらに南米では、国際ライセンスによって「Vinagre Aromático Tipo de Bully」がフランス本国の消滅後も長く生き続けていた。


第二章:ラムダン・トゥアミ ── ホームレスから連続起業家へ

ビュリーを現代に蘇らせた男、ラムダン・トゥアミの物語もまた、波乱に満ちている。

1974年9月23日、フランス南西部モントーバンに生まれたラムダンは、モロッコ系フランス人の6人家族の一員であった。父は農業労働者。田舎の生活の傍ら、父が管理を任されていた19世紀の古城に幼少期から出入りしており、古い建築、壁紙、床材、家具といった美的世界に早くから触れていた。

「子供の頃から、古い建築、美しい床、壁紙、家具……その歴史のすべてに触れていた。実はビュリーのブティックのインテリアデザインの多くが、あの城の記憶に基づいているんだ」
── ラムダン・トゥアミ

12歳のとき、中学校の教師が立ち上げた「ラジオ・レクレ」(Radio Récré)に参加し、隣町を訪れた当時の首相ジャック・シラクにインタビューを敢行。その音声は翌日フランス・アンテルで再放送された。

10代半ばにして、自らTシャツブランド「トゥシーランド(Teuchiland)」を立ち上げる。ティンバーランドのパロディに大麻カルチャーの要素を加えたもので、月に1,000〜2,000枚を売り上げ、大きな利益を手にした。だが、その稼ぎに目をつけた者たちに誘拐され、全収入を奪われる。寄宿学校を退学し、トゥールーズのギャングとのトラブルに巻き込まれた彼は、パリへ逃げ延びた。18歳前後のことである。​

パリではおよそ1年間のホームレス生活を送り、刃物で刺されて今も傷痕が残っている。

「ホームレスがどういうものか知っていると、もう何も怖くない。人は常に何かを失うことを恐れる。でも何も持っていないとはどういうことか、僕は知っている」
── ラムダン・トゥアミ​

1996年、スケートボード文化と結びついたストリートウェアブランド「キング・サイズ(King Size)」を立ち上げ、1998年9月17日にはパリ3区、リュ・デュ・タンプル30番地にコンセプトストア「レピスリー(L’Épicerie)」を開店した。当時パリで名声を誇ったセレクトショップ「コレット」への対抗馬──「アンチ・コレット」──を標榜するこの店は、ジェレミー・スコット、マーク・ジェイコブス、ジャン・トゥイトゥ(A.P.C.創設者)らデザイナーたちの注目を集めた。『Dazed & Confused』や『ニューヨーク・タイムズ』など国際メディアから「ヨーロッパで最もヒップなストア」と評されたが、1999年4月にわずか半年あまりで閉店している。

2000年に東京へ渡り、日本のファッションブランド「And.A」のアーティスティック・ディレクターとして、コレクション、店舗設計、ビジュアルアイデンティティの全面刷新を手がけた。東京では川久保玲をはじめとする影響力あるクリエイターと協働し、日本の小売文化やデザインの精密さを体得した。2003年にはロンドンの百貨店リバティのメンズウェア部門を再構築。こうした経験のすべてが、のちのビュリーに注ぎ込まれることになる。


第三章:ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック ── 貴族の娘、美の探究者へ

ラムダンのパートナーであり、ビュリーのもう一人の創設者がヴィクトワール・ドゥ・タイヤック(Victoire de Taillac)である。

フランス貴族の家系に生まれ、パリで育ったヴィクトワールは、南西部ガスコーニュ地方にある家族の城で過ごした幼少時代の体験が原点にある。

「パリの庭園『シャン・ド・マルス』の目の前で育ち、休暇はいつもガスコーニュの家で過ごしました。子供の頃から自然の季節の移り変わりをとても意識していて、一日中外で遊び、秋の落葉や春の花を楽しんでいました」
── ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック

歴史学を修めた後、1997年にパリの伝説的コンセプトストア「コレット」の立ち上げにPR責任者として参画。この経験を通じて、ファッションと美容の世界における「ストーリーテリング」の力を深く理解することになる。

ラムダンとの出会いは1990年代後半。彼がレピスリーを営み、彼女がコレットで働いていた時期であった。背景はまるで異なる──モロッコ系農家の息子とフランス貴族の娘──しかし、二人には旺盛な好奇心、旅への情熱、そしてフランスの豊かな歴史遺産への敬意という共通項があった。

2001年に共同でプレスオフィス「VDT and T」を設立し、エスティ・ローダー、トッズ、ディオール、ルイ・ヴィトンなどをクライアントに持った。2002年には二人で「パルフュムリー・ジェネラル(Parfumerie Générale)」を開く。フランス初のニッチコスメ・香水専門コンセプトストアで、世界中から集めたインディペンデントなブランドを紹介した。この店は後に売却されるが、二人が世界の美容の秘密に惹かれる原体験となった。


第四章:シール・トゥリュドン ── 「復活」の予行演習

2006年、ラムダンに転機が訪れる。1643年創業、フランス最古のロウソク製造業者シール・トゥリュドン(Cire Trudon)の再生を任されたのだ。かつてルイ14世の宮廷やヴェルサイユ宮殿にロウソクを納めていたこの名家は、350年以上の歳月を経て眠りについていた。

ラムダンはアーカイブを徹底的に研究し、王室や教会との歴史を現代のデザイン言語で再解釈した。植物性ワックスで処方を改良し、それぞれにフランス史にちなんだ名と物語を持つ20種のフレグランスキャンドルを開発。代表作「アブデル・カデル」は、自らの父の名にちなんだものであった。シール・トリュドンのキャンドルは『Wallpaper』誌が「2011年ベストキャンドル」に選出し、世界600店舗以上で販売されるまでに成長した。2011年、ラムダンは持ち株(40%)を売却した。

この経験は、「忘れ去られた遺産を、過去への敬意と現代的なクリエイティヴィティの融合によって蘇らせる」というラムダンの手法を確立するものであり、ビュリー復活への直接的な予行演習となった。


第五章:ビュリー、再誕(2014年)

「19世紀のブランドを見つけたかった。そして、1803年にこの美容の館を開いた調香師ジャン=ヴァンサン・ビュリーの物語に恋をしたのです」
── ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック

シール・トリュドンを離れたラムダンは、かねてより温めていた構想──世界中の美容の秘密を集めるプロジェクト──に本格的に取り組み始める。2002年頃から各国を旅して得た知見がその土台にあった。モロッコの祖母が石鹸が生まれる前に使っていたラスール(粘土)やアルガンオイル、日本の鶯の糞(うぐいすのふん)を使ったスクラブ、ギリシャ・キオス島のマスティック樹脂、ウクライナの青い粘土──世界各地を巡って、こうした「消えゆく美の宝物」を一つひとつ発掘していった。

ビュリーとの出会いは偶然であった。19世紀の古い商品カタログにたどり着いたラムダンは、魅了された。

「19世紀のオリジナルのカタログを見つけたとき、魅了された。一種の魔法のようなものが見えた。まるで美の新世界を発見したかのようだった。宝の山だ。今日、ファッションも食も全てが高速で流れる時代に、確かな過去と歴史の感覚を持つブランドを復活させることには、本質的な満足がある」
── ラムダン・トゥアミ

当初、ラムダンの狙いは一店舗だけの「ショーケース」であった。パッケージ、ボトル、ラベル、香り、テクスチャー──すべてを自らの手でAからZまで設計し、自身のクリエイティヴ能力を示すためのプロジェクト。それを見た企業から仕事が来る──そういうエージェンシー的な構想であった。

2014年、パリ6区、リュ・ボナパルト6番地に最初のブティックがオープンする。ヴィクトワールはパリ国立公文書館で原資料を調査し、19世紀のビュリーのカタログに載っていた処方や製品の世界を現代に翻訳した。

「ラムダンと私は、バラの香水だけでなく、バラのオイルやバラの花弁のパウダーも買って自宅で自分だけの製品を作ることができた──そういう19世紀のカタログの世界がとても面白いと思ったのです」
── ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック

しかし「一店舗のショーケース」という当初の構想は、あっという間に覆される。店は大反響を呼び、二店舗目、三店舗目……と広がっていった。そして2017年にLVMH の少数投資ファンド「LVMH ラグジュアリー・ベンチャーズ」が出資。2021年10月、LVMHはビュリーを完全に買収した。LVMHのベルナール・アルノー会長兼CEOはこう語っている。

「ビュリーは、LVMHグループのメゾンに見出される哲学と完璧に合致しています。比類なき伝統、職人技、そして卓越したブティックでのユニークな体験。ヴィクトワール・ドゥ・タイヤックとラムダン・トゥアミが率いるこの素晴らしい家族的起業の冒険が、LVMHファミリーの中で成長し続けることを、全力で支えていきます」
── ベルナール・アルノー


ブランドのこだわり

「美的脱グローバリゼーション」── 店舗デザインの哲学

ビュリーの最大の特徴の一つは、世界中すべての店舗が異なるデザインを持つことである。ラムダンはこれを「美的脱グローバリゼーション(aesthetic deglobalization)」と呼ぶ。

「どんな小売事業であれ、そのブランドが立地する都市や地域の特殊性を必然的に考慮すべきだ。この知的努力──グラフィック面でもマーケティング面でも──は成功に不可欠だ。周囲を見渡し、既にあるものを取り入れる。それは知性の証ではないだろうか」
── ラムダン・トゥアミ

パリの最初の店舗は19世紀フランスのオフィシーヌ(調剤所)を再現した。磨かれたクルミ材のキャビネット、大理石のカウンター、錬金術師の蒸留器やレトルト瓶、陶器やガラスの容器。一方で、東京・代官山の店舗は「フレンチ・パート」と「日本パート」を半分ずつ融合させたデザインで、ラムダンが自ら日本側も設計した。台北では「超フレンチ」を台湾のビルに持ち込み(本人はこの結果に不満だったという)、ソウルでは「超コリアン」なアプローチを採った。香港の店舗にはヴィンテージのイタリア製テラコッタ・タイルが敷かれ、ニューヨークはアール・デコ、ミラノは地域の個性と調和する設計がなされている。

ラムダンは65〜66の異なる店舗を一つひとつ手がけ、決して同じデザインを繰り返さなかった。

プラスチックフリーへの徹底

ビュリーの全製品ラインから、リップバームを唯一の例外として、プラスチックが排除されている。ボトルはガラスかアルミニウム、キャップは金属製。パッケージには19世紀の版画風イラストが施され、神話的・植物的モチーフが手描きのタッチで描かれている。

カリグラフィー ── 偶然から生まれた伝統

ビュリーを訪れた人が必ず目にするのが、スタッフによる手書きカリグラフィーである。購入した商品のラベルに、顧客の名やメッセージを鶏毛ペンとインクで美しく記してくれるこのサービスは、実は予算の制約から生まれた。

「個々の製品ごとに別々のパッケージを作る資金がなかった。だから『ラベルを書こう、手で書こう』と考えた」
── ラムダン・トゥアミ

カリグラフィーの先生を探し、経営が傾きかけていた一人の書道教授を見つけ、採用。彼は400〜500人ものスタッフにカリグラフィーを教え、3カ月の研修プログラムによって、世界中のビュリーの全スタッフが手書きの技を身につけている。

「もう誰も手で書かない。電話やパソコンで打つだけだ。手で書くという行為は一世代で消えてしまう。僕はそれが消えるのを見たくない。僕がやることには必ず政治的な意図がある。プラスチックゼロは自然のため。カリグラフィーは、人々が手書きに戻る欲求を呼び覚ますためだ」
── ラムダン・トゥアミ

オリガタ ── 日本の包みの芸術

ギフトラッピングには、日本の「折形(origata)」の技法が用いられている。450年にわたり天皇家のためだけに包みの芸術を伝承してきた一族から技術を学んだもので、折り目や包み方そのものに意味が込められている。

世界を旅して集める素材

ビュリーの製品に使われる原材料は、ラムダンとヴィクトワール自身が世界中を旅して探し出したものである。日本・五島列島の最高品質の椿油(ツバキオイル)、モロッコのアルガンオイルやラスール、ギリシャ・キオス島のスポンジとマスティック樹脂、ウクライナの青い粘土、コートジボワールの黒石鹸──消えゆく伝統素材を「最上の品質」で調達することへのこだわりは、ブランドの根幹を成している。

「僕たちの合言葉は、『片足を未来に、もう片足を過去に』。適切なバランスを探さなければならない。コピー&ペーストは決して魅力的ではない。そのブランドが異なる時代を通り抜けてきた印象を与えなければならないのだ」
── ラムダン・トゥアミ


香水ラインナップ

オー・トリプル(Eau Triple)── 世界初の水性香水

ビュリーの香水コレクションの柱は、「オー・トリプル」と呼ばれる独自の水性香水(ウォーターベース・パフューム)である。アルコールもエタノールも一切使用せず、開発に2年の歳月を費やした。

通常の香水はアルコールベースで、肌につけた瞬間にはアルコールの揮発臭がまず立ち、トップノートが開くまでに時間がかかる。オー・トリプルはこれを覆し、スプレーした最初の一秒から香りの全体像が花開くという技術的達成を実現した。乳白色のジェル状水溶液で、配合成分はわずか十数種類。肌を乾燥させず、そのまま肌になじむ。専用アトマイザーの開発にも相当な時間が費やされ、一吹きごとに「香りの雲」を生み出すよう設計されている。

パーマネント(定番)コレクションは、世界各地の土地と結びついた香りで構成されている。

  • フォレ・ドゥ・コミ(ロシアの松林、木質とミネラルの香り)
  • エリオトロープ・デュ・ペルー(ペルーの白花、トンカビーン、スミレ)
  • リシャン・デコス(スコットランドの苔、セージ、広藿香)
  • チュベルーズ・デュ・メキシク(チュベローズ、バニラ、丁子、ムスク)
  • マカッサル(インドネシアの木質アイリス、琥珀、煙草)
  • ベルカン・フルール・ドランジェ(モロッコのオレンジの花と葉)
  • スミ・ヒノキ(日本のヒノキ、墨の香り)
  • ミエル・ダングルテール(英国の蜂蜜、ムスク、シダーウッド)
  • ユズ・ドゥ・キゾ(日本の柚子、ミント、月桂樹)
  • ウード・ドゥ・メディーヌ(燻した扁柏、焚香)
  • ベルガモット・ドゥ・カラブル(イタリア産ベルガモット)

2023年にはクラシックコレクションに「セードル・デュ・リバン」(レバノン杉)、「アンブル・ドゥ・マダガスカル」(マダガスカルの琥珀)、「イリス・ドゥ・マルト」(マルタのアイリス)、「ミルラ・デリトレー」(エリトリアの没薬)が加わった。

また「レ・ジャルダン・フランセ(Les Jardins Français)」コレクションでは、フランスの庭園をテーマにした6種の香りが展開されている。バーベナとバジル、甘藷とニンジン、スグリとトマト──野菜やハーブの意外な組み合わせが特徴であり、耕したての土の匂いや太陽を感じさせるブーケといった、庭園の五感に訴えるコレクションとなっている。

ルーヴル・コラボレーション(2019年)── 名画に香りを与える

2019年、ルーヴル美術館が226年の歴史で初めて香水ブランドとコラボレーションを行った。その相手に選ばれたのが、ビュリーであった。

8人のフランスのトップ調香師が招かれ、ルーヴルの35,000点のコレクションから自由に一作品を選び、その香りを創造するという前例のないプロジェクトである。

「彼らの規模を考えれば、私たちは異例の選択です。ルーヴル初の香水ブランドとのコラボレーションで、どの有名メゾンも断らなかったでしょうに」
── ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック

「調香師たちは完全に自由だった。予算すらなかった。ただ一つだけ言った。『モナ・リザはなしだ。あまりにも当たり前すぎる』」
── ラムダン・トゥアミ

誕生した8つの香りには、「ミロのヴィーナス」「サモトラケのニケ」「グランド・オダリスク」「さそりのニンフ」「かんぬき(ル・ヴェルー)」「公園での会話」「大工の聖ヨセフ」「水浴の女」がある。IM・ペイのガラスのピラミッドの地下にポップアップストアが設けられ、2020年1月まで営業した。

その他の製品カテゴリ

ビュリーは香水だけのブランドではない。総合美容専門店として約700種の製品を擁する。

  • ボディケア:ユイル・アンティーク(植物オイル)、レ・ヴィルジナル(ボディミルク)、各種クレイ・パウダー
  • フェイスケア:クリーム・ポゴノトミエンヌ(ヒゲ用トリートメント)など
  • ソープ:サヴォン・スゥペールファン(中性石鹸、刻印可能)
  • フレグランス小物:アラバストル(石の芳香拡散器)、ペーパーダンサンス(香りのシート)
  • キャンドル・インセンス
  • 美容道具:日本製の櫛、エジプトのヘチマ、各国の伝統的道具

ちなみに…

  • バルザックとビュリー:オノレ・ド・バルザックの小説『セザール・ビロトー』(1837年)の主人公は、ジャン=ヴァンサン・ビュリーがモデルとされる。調香師として栄光を極めながら破滅していくパリのブルジョワの物語は、実在のビュリーの生涯と驚くほど重なる。
  • 名前の「l」が一つ減った理由:オリジナルの綴りは「Bully」であったが、英語で「いじめっ子」を意味するため、英語圏の顧客への配慮から「l」を一つ除いた。ラムダンは「新鮮な印象のため」とも語っている。
  • カリグラフィーは節約の産物:現在ブランドの象徴となっている手書きカリグラフィーサービスは、当初パッケージの印刷代が出せなかったための苦肉の策であった。
  • LVMHベンチャーズからの買収は唯一の事例:LVMHラグジュアリー・ベンチャーズが投資した企業の中で、LVMHグループ本体に買収されたのはビュリーが唯一の事例である。
  • ラムダンは2020年にシュヴァリエ・デ・ザール・エ・デ・レットル(芸術文化勲章)を受章している。
  • 書籍:ビュリーの歴史と哲学は、ゲシュタルテン社から出版された『The Beauty of Time Travel』(400ページ超)に詳しい。ヴィクトワールの著書『An Atlas of Natural Beauty』は6カ国で出版された。

  1. Officine Universelle Buly – Wikipedia (英語) – https://en.wikipedia.org/wiki/Officine_Universelle_Buly
  2. Officine Universelle Buly 公式サイト “An History” – https://buly1803.com/en/pages/history
  3. Delood “Officine Universelle Buly 1803, Founded in 1803/Paris” – https://delood.com/photostory/officine-universelle-buly-1803-founded-in-1803-paris/
  4. Time Sensitive “Ramdane Touhami on Why He Will Never Slow Down” – https://timesensitive.fm/episode/ramdane-touhami-on-why-he-will-never-slow-down/
  5. LVMH 公式サイト “Officine Universelle Buly” – https://www.lvmh.com/en/our-maisons/perfumes-cosmetics/officine-universelle-buly
  6. Ramdane Touhami – Wikipedia (英語) – https://en.wikipedia.org/wiki/Ramdane_Touhami
  7. BIRKENSTOCK YouTube “Ramdane Touhami – From a problem child to a businessman” – https://www.youtube.com/watch?v=EfMORxRuGRU
  8. Glow Journal Podcast “Victoire de Taillac | Co-Founder of Officine Universelle Buly 1803” – https://podcasts.apple.com/ca/podcast/victoire-de-taillac-co-founder-of-officine/id1436666232 
  9. Ramdane Touhami – Wikiwand – https://www.wikiwand.com/en/articles/Ramdane_Touhami
  10. the thread “The Nomads: Ramdane Touhami and Victoire de Taillac” – https://blog.fabrics-store.com/2021/09/26/the-gypsies-ramdane-touhami-and-victoire-de-taillac/
  11. Ramdane Touhami 公式サイト Biography – https://ramdanetouhami.com/biography/
  12. Buly 1803 公式 “Eau Triple” 製品ページ – https://buly1803.com/en/products/eau-triple-verveine-des-andes-et-basilic-d-ulu
  13. We Wear Perfume “Officine Universelle Buly Gets Creative With The Louvre” – https://www.wewearperfume.com/2019/08/19/the-perfume-of-art-officine-universelle-buly-gets-creative-with-the-louvre/
  14. Global Cosmetics News “LVMH acquires Officine Universelle Buly 1803” – https://www.globalcosmeticsnews.com/lvmh-acquires-perfumer-officine-universelle-buly-1803/
  15. Love Happens Magazine “Luxury Fragrance Meets Art – Buly 1803 x Louvre Paris” – https://www.lovehappensmag.com/blog/2019/10/16/luxury-fragrance-officine-universelle-buly-1803-louvre-paris/
  16. Mecca “Why Chic Parisian Brand Officine Universelle Buly” – https://www.mecca.com/en-au/mecca-memo/fragrance/trending-now-officine-universelle-buly/
  17. The Telegraph “The Louvre commissions fragrances to match its masterpieces” – https://www.telegraph.co.uk/luxury/womens-style/scent-luxury-louvre-commissions-fragrances-match-masterpieces/
  18. Dyens & Co “LVMH acquires Officine Universelle Buly 1803” – https://dyensandco.com/lvmh-acquires-officine-universelle-buly-1803/
  19. Wallpaper “Ramdane Touhami on design in the reinvention of Buly 1803” – https://www.wallpaper.com/beauty-grooming/ramdane-touhami-design-success-of-buly-1803
  20. HIGHSNOBIETY.JP “OFFICINE UNIVERSELLE BULY「オー・トリプル」に4つの香り” – https://highsnobiety.jp/p/257070/
  21. Vogue Philippines “Officine Universelle Buly On Preserving Heritage Secrets” – https://vogue.ph/beauty/fragrance/officine-universelle-buly-on-preserving-heritage-secrets-and-practices/
  22. ビュリー日本公式 オー・トリプル製品ページ – https://buly1803.jp/products/eau-triple-verveine-des-andes-et-basilic-d-ulu
  23. Superfuture “Superchat Paris: Ramdane Touhami” – https://superfuture.com/2021/03/interviews/superchat-paris-ramdane-touhami/
  24. WGSN “Designing ‘wow’ with Ramdane Touhami” – https://www.wgsn.com/en/blog/designing-wow-ramdane-touhami-founder-beauty-brand-buly-1803
  25. ビュリー日本公式 レ・ジャルダン・フランセ – https://buly1803.jp/collections/eau-triple-jf
  26. Aromo.ru Buly 1803 フレグランスリスト – https://aromo.ru/brands/buly-1803/
  27. L’Officine Universelle Buly – wearethechildren.com – https://wearethechildren.com/senteurs/lofficine-universelle-buly-paris/
  28. Tatousenti “Buly 1803 enters the Louvre museum Paris” – https://www.tatousenti.com/en/buly-1803-enters-the-louvre-museum-paris/
  29. Maison & Objet “Luxe & Entreprenariat” 講演概要 – https://www.maison-objet.com/paris/le-programme/conferences-ateliers/luxe-entreprenariat-comment-penser-un-storytelling-sur
  30. Le Monde “Parfumerie Générale” (2002年) – https://www.lemonde.fr/archives/article/2002/09/27/extraits-parfumerie-generale_4257821_1819218.html
  31. Buly 1803 公式 “The Beauty of Time Travels” – https://buly1803.com/en/products/buly-history-the-beauty-of-time-travels
  32. PLEASE Magazine “A day in the life of… Victoire de Taillac” – http://www.pleasemagazine.com/a-day-in-the-life-of-victoire-de-taillac-officine-universelle-buly-1803
  33. The Greatest Magazine “Handshake – Victoire de Taillac” – https://www.thegreatestmagazine.com/handshake-victoire-de-taillac/
  34. The Perfume Society “Buly 1803 at the Louvre” – https://perfumesociety.org/buly-1803-at-the-louvre/
  35. Nuvo Magazine “The Beautiful Curiosities of Officine Universelle Buly 1803” – https://nuvomagazine.com/magazine/spring-2022/the-beautiful-curiosities-of-officine-universelle-buly-1803
  36. Wallpaper “Buly 1803 opens in Hong Kong” – https://www.wallpaper.com/lifestyle/lofficine-universelle-buly-1803-hong-kong
  37. Buly 1803 日本公式 Store Locator – https://buly1803.jp/pages/store-locator-1
  38. Fresque Magazine “The Allure of Buly 1803” – https://www.fresquemagazine.com/post/the-allure-of-buly-1803
この記事を書いた人
Root

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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