香水業界におけるAIの可能性

 2022年11月にOpen AI社がチャットGPTという自然言語生成の人工知能を発表して以来、様々な業界・仕事でAIの活用が急速に進み、一般の人でも簡単にアクセスし利用できるようになっています。チャットGPTだけでなく、Google社のGoogle Bard、チャットGPTの機能を使用したMicrosoft社のBingなどが今では利用できます。実際に使用した所感も交えつつ、香水業界における人工知能の可能性も探りたいと思います。

香水業界におけるあなたの可能性を教えてください。

チャットGPT
チャットGPT

香水業界において、私(ChatGPT)の可能性は以下のようなものが考えられます。

  1. 香水の開発と製造のサポート: 私は香水に関する知識を持っており、香りの組み合わせや香水の成分に関する情報を提供することができます。香水メーカーや開発者は、私を使って新しい香水のアイデアを検討したり、特定の香りを再現したりするために利用することができます。
  2. 香水の説明や販売支援: 私は香水の特性や効果に関する情報を提供できます。これにより、香水の説明やマーケティング素材の作成、顧客への推奨やアドバイスの提供など、香水の販売促進に役立つことができます。
  3. カスタマーサポート: 私は香水に関する一般的な質問に対する回答や、香水の選び方に関するアドバイスを提供することができます。顧客が香水に関する疑問や問題を解決する際に、サポートとして活用できます。
  4. 香水のトレンドや市場分析: 私は大量のテキストデータを処理し、傾向やパターンを抽出することが得意です。香水の市場トレンドや消費者の好みに関する情報を分析し、香水メーカーやブランドに戦略的なアドバイスを提供することができます。

ただし、私はあくまで情報提供やサポートのツールであり、専門家の知識や経験とは異なります。重要な意思決定や専門的な助言には、実際の専門家や業界の専門家の助けを借りることが重要です。

Google Bard
Google Bard

私は香水業界で次のタスクを実行するために使用できます。

  • 香水の説明、香りの特性、香水に合った服装などの香水に関する情報を提供します。
  • 香水のレビューや評価を収集し、消費者に香水に関する洞察を提供します。
  • 消費者の好みを分析し、消費者のニーズを満たす新しい香水を開発します。
  • 香水の製造プロセスを自動化し、香水の製造をより効率的にします。
  • 香水の在庫を追跡し、香水をより効率的に配送します。
  • 消費者の体験を向上させるために、香水に関するカスタマイズされたコンテンツを提供します。

香水業界における私の可能性は、まだ発展途上ですが、私は消費者の生活に大きな影響を与える可能性があると思います。

Bing AI
Bing AI

Bing AIは香水業界において、香りの調合や選択をサポートする可能性があります。例えば、NINUは、AIがユーザーの好みや状況に応じて、3種類のフレグランスを組み合わせて最適な香りを作り出すスマート香水です。また、IBMとシムライズは、AIがミレニアル世代の嗜好に基づいて新しい香水を調合する試みを行っています。さらに、NOSE SHOPは、AIが香りを言語化して香水選びに迷う来店客の背中を押すサービスを提供しています。

これらの例からわかるように、Bing AIは香水業界において、香りのデータ分析やパーソナライズドな提案などで価値を提供できると考えます。

自然言語生成AIの強みと弱み

 そもそも、最近話題となってるAIは、自然言語生成という文脈における人工知能であり、何でもできるわけではありません。その強みと弱みをよく知った上で、正しく使用することが重要だと考えます。

強み
  • 様々なトピックについて、自然な文章を理解し、さらに自然な文章で回答を生成することができる。日本語でもかなりのナチュラルさかつ回答の正確性だが、英語ならさらにそれを上回る。ボットは事前にプログラムされたルールに沿って、特定のパターンやキーワードを検出し、予め用意された答えを用意するが、チャットGPTは文脈に基づき、自然言語を理解し、自然言語で回答をしてくれることになる。
  • 対話を理解・把握し、対話に基づきながら、より意味のある回答をすることができる。
  • 1対1対応の回答ではなく、毎回異なる多様な回答を行うことができる。
弱み
  • 間違った情報や矛盾した情報が存在する可能性があり、保証ができない。そのため、回答の正確性は人間がある程度確かめる必要がある。
  • 明確な質問や文脈でない場合、意図を誤解する可能性があるため、正確な回答を得るためには、適切な言葉を補った質問をすることが推奨される。
  • 特定の製品や企業、ブランドについての詳細や評価を提供できないようになっている。

人工知能と学習

 自然言語生成AIにおいて、使用者が学習させることができるかは、活用する人にとって最も知りたいことと言っても過言ではない。結論から言うと、できるもできないも正解、というのが答えである。

 例えば、チャットGPTはすでにOpenAIの大量のデータベースをもとにした訓練をなされており、これはOpenAI側で行えることで、ユーザー側がチャットGPTにある種の情報を記憶させることはできません。毎回のチャットは記憶されないようなシステムとなっているため、対話によって、新しい情報を学ぶことは有り得ません。つまり、悪意あるユーザーが、誤情報を学ばせようとしても、チャットGPT全体に影響を及ぼすような学習をさせることはできないということです。ただし、ユーザーとの対話から「対話における適切な応答の仕方」は学んでいるため、特定のニーズに合わせた回答生成能力が向上することはあります。

 では、できないのか?と言うとできることもあります。それがAPIを利用し、機械学習をさせることです。例えば、私が有料のAPIを利用すると、私の利用しているチャットGPTは私専用のものとなり、機械学習をさせることができるようになります。ただしこれはチャットGPT全体に影響を及ぼすわけではなく、私のAPIを通じて利用できるチャットGPTに限って、私の学習させたことを回答できるようになるのです。この機械学習が大変な部分で、適切なプロンプト(命令文)と回答を用意し、読み込ませる必要があります。次に機械学習のポイントをまとめましたので参考にしてください。

  • プロンプトとそれに対する回答を1セットで用意し、覚えさせる(やり方によってはcsvでできる)。
  • 1つの事柄について、できるだけ様々な角度からの1セットをたくさん用意することによって、チャットGPTがより正確かつ豊富、自然な回答を行うことができるようになる。
  • 1つの回答については、短文から中程度の文章量が望まれ、100文字~300文字程度を限度として推奨される。1つのプロンプトに対して、1000文字の回答を1つ覚えさせるよりも、100文字の回答を10個覚えさせた方が、回答の精度や柔軟性、ユーザーエクスペリエンスが向上することが分かっている。

 例えば、ある香水ブランドについて覚えさせるのであれば、会社概要・ブランド概要・取り扱いカテゴリー・歴史などトピックごとに要約した内容を覚えさせると、より自然な形で対話に取り入れてくれます。なお、リンクを推奨してもらうことも可能となります。

各AIを使用した所感

 チャットGPT、Bing AI、Google Bardの3種を使用した所感を述べます。

  • 手軽さは、Bing AIとGoogle Bardで、それぞれMicrosoftのアカウント、Googleのアカウントがあれば、すぐに日本語で使用できる。Bingはすでにアプリもあることからスマホでも使用が簡単で最もハードルが低い。チャットGPTは少し登録がめんどくさく、MicrosoftやGoogleほど知名度もないため、少し不安になるかもしれない。ただし、23年5月現在、チャットGPTもアメリカでアプリを提供し始めたことから、手軽さはそのうち解消されそう。
  • 文脈の理解が最も素晴らしく、自然言語生成が優れているのは、チャットGPT。Bing AIは言わずもがな、Google Bardも文脈の理解はチャットGPTより劣っており、より人間らしい会話ができるのはチャットGPTだと考える。
  • 情報レベルにおいては、Google Bardが最も優れている。これは、チャットGPTが訓練された言語モデルは現在、2021年より前の情報を元にされており、しかも、どの情報源を元にその情報を提供してきたのかが分からない。一方Google BardはGoogle検索を使用して回答もしてくれるため、より最新かつ包括的な情報を提供してくれている。BingもBingでの検索結果を元に情報源も教えてくれるが、文脈や知りたいことも含めて考えるとGoogle Bardの方が会話の質が高いように思える。しかし、有料プランであるチャットGPT Plusでは、ネット接続をしたチャットGPTとして利用できるため、お金を払うならチャットGPTが一番よさそうな気がする。
  • ビジネス利用はチャットGPTに最も軍配が上がり、現状APIを公開し、自由に連携させ、ブログや自社サービスと連携させることができているのはチャットGPTである。様々なプラグインもあり、有料プランではさらに活用ができる。ただし、無料版はチャットGPTの場合、制限がかかることも多く、使いたい時に使えないということもあるため、有料版をオススメする。

香水業界におけるAIの可能性

 さて、香水業界では、実は人工知能は少し前から色々な形で使われていました。例えば、ジボダン社は2019年にCartoという名の人工知能を搭載したフレグランス創作のプロセスに使用できるAIシステムの開発を行っています。このCartoは過去の香水の情報がすべて組み込まれており、その調香師の作った作品を分析することで、過去の香水と比較した際のオリジナリティ部分や新たな組み合わせの提案を行ってくれ、これまでにない新たなインスピレーションが生まれるとのことです。
 また、2019年5月には、シムライズ社の採用したPhilyraという名の人工知能が調香師David Apelに訓練され、世界で初めてAIが作った香水をブラジルの化粧品会社から発売しました。この際、シムライズ社は、AIのPhilyraが作った香水と、それに調香師が少し手を加えた香水、そして調香師がオリジナルで作った3種の香水を作り、ブラインドテストを行ったところ大多数がPhilyraの香水を選んだそうです。

 上記は自然言語生成とはまた異なる人工知能ですが、お分かりの通り、すでに人工知能は香水業界で活躍しています。当然、人工知能を使用するには莫大なデータベースと莫大な資金が必要なため、現在は大手香料会社に限られているでしょうが、時間の問題でしょう。このようなAIも含めて、私が考える香水業界におけるAIの可能性は下記になります。

  • レベルの低い調香師の淘汰と新たな調香師の台頭
     調香師は非常に多くの香料を暗記し、その組み合わせを理解し、芸術とも言われる香水を生み出します。しかし、実際のところは他の業界でも同じように、芸術品と呼ばれるものと低俗なものの境目はプロやそれに通ずる人にしか分かりません。ビジネスが9割の分からない人を相手にする限り、これは自然の摂理であり、どうしても生まれてしまうのです。例えば、新しいタイプの人気の香水が生まれれば、それよりも安価で似たような香水を生み出す会社が存在するのです。これは大手でも請け負ってることであり、必要なことでもあります。調香師の中にはこのことに不満を感じ、自身のブランドを立ち上げる者もいますが、ビジネスはそう甘くもなく、ブランドがすぐ終わってしまう場合も少なくはありません。
     ここにAIが登場することで、①コピーフレグランスばかり作り、ユニークな香水を作る技量の無い調香師はAIに取って代わられる可能性があり、②自分の考える自由な香水を創りたい調香師は①で抑えた経費分を使用することでユニークな香水を生み出すことができる可能性があります。③そして、AIを理解し、調香経験が少なくても、これまでにない香水を生み出すネオ調香師が現れる可能性もあります。
  • 販売員の削減と新しい接客スタイルの確立
     自然言語生成AIが生まれ、文脈をより理解することができるようになったことで、「選択していって、自分の好きそうな香りの選択肢を表示させる」という従来の香水診断から、「自分の好きな香水やイメージ」など接客では十分に伝えられなかったり恥ずかしかったりする情報を伝えることでAIがそれを理解し、情報に沿った香水を提案することができるようになると考えます。すでにチャットGPTなどに質問をすれば、9割以上の香水販売員では答えることのできない提案をしてくれます。さらにどんな質問にも真偽はさておき、すぐに回答を用意してくれます。
     この流れを踏まえると、現在の香水販売員は、①受付・レジ精算・事務係というAIのサポートをする販売員、②どんな自然言語でも超えることのできない人間の温かみや共感とAIの提案に負けないクロスセルや顧客満足度を向上させる提案のできる販売員、③AIをフル活用し、AIの最適な使用方法を理解しながら、店舗をマネジメントできる販売員の3パターンになっていくのではないかと考えます。例えば、店頭にタブレットや監視カメラを数台置いておくだけで、混雑時の緩和・決済の手間削減・在庫の管理など、人間がやらなくてもすむことになってきます。百貨店や大手はまだまだデジタル化が進んでいないため、数年先になる可能性もありますが、NOSE Shopのような新進気鋭の店舗であれば、このようなことをやることによって、貢献してくれている販売員の報酬へと還元できるのではないでしょうか。
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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