「50 mlは何よりも、愛好家が出会う場所です。」
— マッテオ・ストリンギーニ
ミラノの50ml(フィフティーエムエル)は、香水を画面で紹介することから始まり、実際に香りを嗅ぎ、人と話す場所へと育った香水・ビューティー専門店である。ファビオとマッテオ・ストリンギーニ兄弟がつくったのは、オンラインと店頭を行き来しながら、知らなかった香水との出会いを広げる仕組みだった。
店名の50mlは、香水のボトルにもスキンケアの容器にもある容量。香水だけを別世界に閉じ込めず、日々使うものを選ぶ楽しみとつなぐ名前である。兄弟の歩みをたどると、商品の数よりも、どんな会話がその一本へ導くのかが見えてくる。
基本情報
- 名称:50 ml/50ml(フィフティーエムエル)
- 事業・オンライン販売の開始:2013年
- 創設者:ファビオ・ストリンギーニ(Fabio Stringhini)、マッテオ・ストリンギーニ(Matteo Stringhini)
- ミラノの実店舗開店:2017年
- 店舗所在地:Viale Monte Nero 16, 20135 Milano, Italy
- 運営会社:Fast Ventures srl
- 公式サイト:50 ml
兄弟のオンライン事業から、ミラノの香水店へ
デジタルを得意とするファビオと、芸術を好むマッテオ
兄弟は、得意分野の違う二人だった。ファビオは数字や事業の組み立て、デジタルの販売基盤に関心を持ち、マッテオは芸術とその魅力を伝えることに惹かれていた。2013年、ファビオはオンライン販売のプラットフォームを立ち上げる。現在の店舗から歴史をさかのぼると、最初にあるのは店の扉ではなくウェブサイトなのである。
この順序には、50mlの特徴がよく表れている。ミラノの一軒で扱う香水やビューティー製品を、街の外にいる人にも届けられる。一方で、香水には画面だけでは伝わらない部分がある。四年間のオンライン事業を経て、兄弟は商品を手に取り、顧客と直接向き合う必要を感じた。
2017年、商品と顧客に直接向き合うための開店
実店舗を開いた理由は、単に販売拠点を増やすためではなかった。商品に直接触れること、顧客と話すこと、そしてオンラインだけの事業とは取引してこなかった一部の流通業者と協働すること。兄弟は2021年の『IMAGINE』で、この三つを挙げている。実店舗で学んだことは、ウェブやSNSでの伝え方にも戻されていった。
「すべては2013年に始まりました。」
— マッテオとファビオ・ストリンギーニ
2017年に開いたのは、ポルタ・ロマーナ地区のモンテ・ネーロ通り16番地。兄弟が育ち、街の香水店の仕事を身近に知った地域である。中心街の華やかな売場へ出かけるのとは違う、生活の途中で立ち寄れる店になった。2018年には、近隣に住むジュリア・トレッリが店を訪ね、香水だけでなくヘアケアや身支度の品も扱う、ピンクを基調とした空間を紹介している。
香水とビューティーを一緒に選ぶ店であることは、名称にも残った。50mlは世界のどこでも覚えやすく、複数の香水を使い分ける人のボトルにも、クリームの容器にも通じる。国を越えるオンライン販売と、暮らしの中の身支度。その双方に通用する名前だった。
2023年末の拡張と、変わらない住所
店は2023年末、大きく拡張した。マッテオは2025年に、従来の約50平方メートルから約320平方メートルへの変化を説明している。公式の拡張告知は新空間を約300平方メートルとし、2023年12月の披露を伝えた。これは、同じモンテ・ネーロ通り16番地での拡張である。
2026年10月の公式店舗案内でも、所在地はこの住所である。運営会社の本社はパオロ・パッリア通り3番地にあるが、試香のために訪ねるブティックとは別だ。店舗の拡張と、会社の所在地を取り違えると、50mlがどのように育ったかも見えにくくなる。
50mlの歴史年表
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2013年 | オンライン販売事業を開始。現在の実店舗の開店年とは異なる。 |
| 2017年 | ミラノ、モンテ・ネーロ通り16番地にブティックを開店。 |
| 2018年 | ジュリア・トレッリが店舗訪問記事を公開。香水とビューティーを扱う当時の空間を紹介。 |
| 2019年 | オルト・パリージの取り扱いと、香水を一緒に探す接客が専門媒体で紹介される。 |
| 2023年末 | 同じ所在地で店舗を拡張。公式告知は12月の披露を伝える。 |
| 2026年10月 | 公式サイトで、オンラインのサンプル販売、店舗の個別相談と原料ワークショップを案内。 |
選品と接客に表れる50mlの考え方
見慣れた名前の隣に、違う表現の香水を置く
50mlの選品は、一つの香りの好みに統一されているわけではない。兄弟は、旅やインターネット、見本市、口コミ、店頭の顧客の要望を入り口に、新しいブランドを探してきた。現在の公式説明でも、候補を調べ、自分たちで製品を試す過程を重視している。
その幅は、2019年のオルト・パリージ導入にも表れている。高級香水と、既存の枠に収まらない表現のブランドを同じ店で扱う。オルト・パリージを、ただ「変わった香水」として遠ざけるのではなく、実際に嗅いで確かめる機会へとつなげるのである。
「一緒に見つけましょう。」
— マッテオ・ストリンギーニ
この言葉は、何を探しているのか自分でも分からない人に向けたものだった。欲しい香水を明確に言えることを、入店の条件にしない。知らない香水の前で言葉が出ないときにも、対話を始める余地を残す。選品の広さを生かすのは、そのような接客である。
創業期からの関わりを考えるうえでは、ラボラトリオ・オルファティーボも重要だ。マッテオが店の始まりと結びつけるブランドの一つであり、2018年の店舗訪問でも、その作品を説明する姿が紹介された。香水を集めるだけでなく、作り手ごとの考え方を伝える仕事が、早い時期から店頭にあった。
その場で買わせるより、戻ってこられる関係をつくる
2025年、マッテオが店の特徴として挙げたのは、急がせず、今ここで必ず売ろうとしない態度だった。店が大きくなっても、顧客と話し、好みを聞き、探索を手伝うことを接客の中心に置く。
「顧客は、私にとって友人です。」
— マッテオ・ストリンギーニ
公式のブティック案内も、財布を空にして帰ってもらうことより、使った品を気に入って翌週また顔を見せてもらうことを目標に掲げる。香水の知識を披露する場というより、相手の暮らしに合うものを一緒に考える場。その考え方が、香水とスキンケアをまたぐ店の姿を支えている。
オンラインと店頭で、香水との出会いをつなぐ
サンプルと発信が担う、店の外の試香
オンラインには、ボトルを送る以外の役割もある。公式サイトでは香水のサンプルを販売し、注文時には無料サンプルをカートで選べる。完成した一本を買う前に、自宅で香りを確かめる入口になる。店が遠い人にも、知ることと嗅ぐことをつなぐ手段を用意している。
記事を載せるMagazineやYouTubeの「Profumi di Nicchia by 50 ml」では、製品の説明に加え、作り手との会話も扱う。たとえば50mlは、ジャン=クロード・エレナにラボラトリオ・オルファティーボの花を題材にした作品について話を聞いている。そこでエレナは、庭にある花と、香水として表現する花との違いを説明した。
花の名が同じでも、香水は植物そのものの複製ではなく、作り手の見方を含む。こうした対話は、香料名を覚えるだけでは見えない制作の選択を伝える。試香前に読んでも、香りを嗅いだあとで読んでも、一本への問いが変わる内容である。
45分の個別相談と、90分の原料ワークショップ
2026年10月の公式案内には、二つの異なる嗅覚体験がある。一つは、フレグランス・スペシャリストと行う45分の個別相談。予約時に担当者を選び、約一週間前には電話で好みを聞く。店頭で初めて候補を考え始めるのではなく、その人の関心をあらかじめ把握して相談へ進む仕組みである。
もう一つは、マッテオと少人数で香りの原料を知る90分のワークショップ。花や木などの原料、精油を嗅ぎ、香水を支える匂いに触れる。テーマは月ごとに変わる。自分に合う完成品を探す相談と、原料を知って嗅覚の経験を増やす学びは、目的の異なる体験である。
どちらも公式ページから予約を案内している。これらは香水制作の資格課程でも、自分の香水を必ず調合するサービスでもなく、香りを選び、理解するための店の取り組みとして位置づけられる。
作り手の言葉と香りが同じ場にあるイベント
ブティックでは、ブランドや調香師を迎える会も開かれてきた。フローリスの催しでは、エドワード・ボーデナムと社内調香師ニコラ・ポッツァーニが、マッテオとともに作品を紹介。参加者は香りを嗅ぎながら、歴史や制作について質問できた。棚のラベルと、その向こうにいる人を結びつける機会である。
ロレンツォ・パッツァーリアがSun-Griaを紹介した会では、料理人だった父の厨房と、香りへの関心のつながりも話題になった。イチジクを題材にしたAdam & Eve’s Dressについては、祖父の菜園で果実を摘むときの草、葉、果実を一緒に表したかったという説明があった。参加者は完成品を試しながら、なぜその匂いを組み合わせたのかを本人に聞けたのである。
店舗の外でも、マッテオは見本市で作り手を訪ねる。Pitti Fragranzeの紹介には、コレテルノのフランチッラ・ロンキや、バルーティのスピロス・ドロソプロスらとの交流が登場する。新しい香水を見つける仕事と、その背景を伝える仕事がつながっている。
50mlを理解する鍵は、オンラインか実店舗かの二択にはない。ウェブで知った香水をサンプルで確かめ、店で会話し、作り手の話を聞いてもう一度嗅ぐ。その行き来の中で、香水の名前だけでなく、自分が何に惹かれるのかを見つける場所なのである。
参考文献
- Matteo Stringhini di 50 ml sul successo, la gentilezza e i vecchi amori profumati — Fragrantica Italia、2025年6月6日
- Chi l’ha detto (che la profumeria non è per i giovani?) — IMAGINE、2021年2月号、60頁
- Chi siamo — 50 ml公式
- 50 ml IT — 50 mlによるアフィリエイト・プログラムの事業紹介
- 50ml: un E-commerce di successo con un servizio dedicato in Boutique — I Like Milano
- I profumi di Laboratorio Olfattivo Da 50 ml a Milano — Rockandfiocc、2018年11月12日
- 2023年12月のブティック拡張告知 — 50 ml公式
- Contattaci — 50 ml公式、店舗・本社所在地
- 50 ml accoglie tra i suoi marchi Orto Parisi — Extrait、2019年5月23日
- Boutique — 50 ml公式
- Conversazioni Olfattive: L’Intervista Esclusiva a Jean-Claude Ellena! — 50 ml公式
- Esperienze Olfattive — 50 ml公式、個別相談とワークショップ
- 50 ml x Floris London: Scopri l’Evento Esclusivo! — 50 ml公式
- Lorenzo Pazzaglia Presenta Sun-Gria — 50 ml公式
- Una giornata a Fragranze raccontata da Matteo Stringhini, founder di 50 ml — Pitti Immagine


