Q. 香水を楽しむのに説明はいるのか?

感情VS理性 Q&A

A. 香水(香り)を楽しむのに、ストーリーや背景、香料など、説明はいるのか?たまに議論が起こるのが、この質問です。

 結論から申し上げれば、当サイトのスタンスは、「どちらも正解であり、どちらも間違っている」になります。つまり、楽しみ方は人それぞれであり、何も知らずに楽しむのも正解であり、調べて想像を広げ楽しむのも正解である、ということです。

 「どちらも間違っている」とは、何も知らないという人も香料を見たり、説明文を読んだりするのであれば、それを深掘りしていくのは、香りを楽しむ世界を広げることができると考えます。この点において、「香水を楽しむのに説明はいらない」という人の考え方は間違っていると思います。
 一方、香水の背景や説明、香料などを追えば追うほど、その香り自体がおざなりになったり、変な先入観が入ってしまったりすることもあります。難しい理屈抜きで、香りを楽しむほど清々しく気持ちの良いことはありません。この点において、「香水を楽しむのに説明が必要」という人の考え方は間違っていると思います。

感性と理性

 さらに「香水を楽しむための説明要不要」について解剖してみると、嗅いだ瞬間に蘇る記憶や溢れ出る感情から「これが良い!」という”直感”や”感覚”で香水を選ぶことと、「この香水の背景には、こういうストーリーがあって、調香師はこれが伝えたかったのです」と聞いて、「これが良い!」と”理性”で選ぶことに大別されると考えます。

 であれば、どちらが優れているではなく、どちらも体験できる香水があれば、それがあなたにとって最も素晴らしい香りなのかもしれません。これは、ファッションや音楽、映画など他の分野でもそうだと思います。

 また、目には見えないものなのだから説明は不要かというと、愛も言葉で語らなければ伝わらないときがありますよね。香水も目に見えない以上、語る必要があることもあると思います。

著名な業界人の言葉

 香水業界でも有名な人たちはどのように考えているのか。参考にしていただければ幸いです。

最近まで、香水の芸術性を知的に語ることなど不可能だと思われていた。それが、いつの間にか語らねばならないものになった。

タニア・サンチェス『世界香水ガイド』より

香水とは、記憶と性では絶対にない。香水は美であり、知なのです。香水とは、香りではなく、ボトルに詰め込まれたメッセージなのです。そして、そのメッセージは調香師によって書かれたものであり、嗅ぐ人に読まれるものなのです。

ルカ・トゥリン『世界香水ガイド』より

素晴らしい香水というのは、美しい香りのハーモニーのはるか前に、まず素晴らしいストーリーがあると私は信じています。私は普遍的感情(愛、歓び、誘惑、中毒といった)のストーリーテラーであり、私の目的は男性と女性の感覚に訴えかける嗅覚のストーリーを話すことなのです。

キリアン・ヘネシー

香水に感謝の意を示すのであれば、その背景を知らなければなりません。

ジャン=クロード・エレナ

重要なことは、あなたがそのフレグランスを嗅いだ時に感じる感情です。

マチルド・ローラン

香水と言うものは、例え処方を読むことができ、芳香分子を知っていたからと言って、それだけですべてを理解することはできない。詩を、音楽を、風景を、肌ざわりを、香りの向こうに感じられるものだけが添い遂げられる。

大沢さとり

香水にまつわるエピソードをいつでも話題にしたがるものだが、私は専門家であっても皆さんと同じスタンスを取っている。つまり、ある香水が好きならば、それを分析しようと試みないこと。なぜなら、私が魅了されているのはその独特な世界なのだから。

オリヴィエ・ポルジュ

香水とは結局のところ感情であり、私は感情のレベルにおいて誰かを感動させるために香水を生み出しているのです。

クリスティーヌ・ナジル

誰もが芸術を理解しようとする。ならば、なぜ鳥の声を理解しようとしないのか。 人が、夜や花を、そして自分を取り巻く全てのものを理解しようとしないで、愛せるのはなぜだろうか。なぜか芸術に限って、人は理解したがるのだ。

パブロ・ピカソ
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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