アンリジャック
Henry Jacques

アンリ・ジャック ブランド創業者

基本情報

設立:1975年
創設者:アンリ・クレモナ(Henry Cremona)
公式サイト:英語オフィシャル(日本の代理店はこちら

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注:英語圏の発音を聞いてみると、「アンリ」ではなく「ヘンリー」と発音されていますが、日本でのメディアに合わせフランス語読みの「アンリ」で統一しております。

アンリジャックにとって、香水は王です。誰かの顔ではありません。香水は我々が注意を払うものの中心にいるのです。

Anne-Lise Cremona

創設者と娘

 アンリジャックの創業者であるアンリ・クレモナは、子供の頃から世界を旅することに興味があり、世界中を旅する自由な人物でした。彼が特に愛したのは手作業によって作られる職人技の美でありました。香水もその一つであり、ある調香師と出会ったことをきっかけに、自身の香水ブランドを立ち上げることを決心します。それがJoseph Sassyでありました。
 彼は、調香師の家系だったため、数世代前からの香水業界を知っており、70年代80年代に業界が商業的な香水を生み出す方向に舵を切っていることに不満を覚えていました。彼がアンリ・クレモナと出会うと、2人は自分たちの才能と情熱を掛け合わせることを決心し、その調香師が亡くなるまでの5年間、ともに時間を過ごします。

(父がブランドを創った)当時、香水を学ぶ学校は無く、次の世代へと受け継がれるノウハウもありませんでした。

Anne-Lise Cremona(アンリ・クレモナの娘)

 アンリは、妻のYvetteと調香師Josephとともにグラースの郊外にラボラトリーを作り、1000近くの天然香料を集めました。主にビスポークフレグランスの創作に励んだアンリは世界中の顧客のもとへ旅をし、UAE(アラブ首長国連邦)の初代大統領であるザーイド・ビン・スルターン・アール・ナヒヤーンも彼の顧客として名を連ねていました。ちなみに、ザーイドのために作った香水は64にものぼると言われます。
 また、オマーンの国王であったカーブース・サイードにも数百の香水を創ったようです。

 アンリには、3人の娘がいました。そのうちの1人であるアン・リーゼ・クレモナ(Anne-Lise Cremona)は現在、アンリジャックのCEOであります。

20歳になると、私の学業が終わり、父と本格的に働き始めました。私が自由に考えることを許してくれ、私はブランドを新しい方向に進めることにしました。つまり、もっとハイエンドなブランドにするという方向です。だから私はパッケージにフォーカスを当て、バカラクリスタルを使い始めることにしたのです。

Anne-Lise Cremona

 19歳のときから学業と並行してブランドで働いていましたが、アンは、途中で自分の時間が欲しくなり、ファミリービジネスからは少し離れ、パリに引っ越し、結婚し、子供をもうけます。そして、ゲランをはじめとして、パリやジュネーヴの大手の香水会社で働きます

 2010年、アンリ・クレモナが引退を決めると、会社は低迷期を迎えます。誰も父親のレガシーを続けることができないと思ったアンは、自分が会社に戻り、ビジネスを引き継ぐことを決心しました。そして、アンは、クリエイティブディレクターに、建築家として有名なChrisophe Tollemer(クリストフ・トルマー、ヴェルサイユ宮殿ホテルをデザインしたことでも有名)を招きました。3年もの暗黒時代の後、アンが大手の会社で働いた経験が功を奏し、光が見え始めました。

 アンが戻った2010年は、まだビスポークの香水の創作がメインでしたが、2年間費やし、ブティックをオープンすることにしました。そして、同時に、過去40年に作った3000を超える香水の中から、リテールに出すための50の作品を選び、ブティックで購入できるようにしたのです。

ちなみに…

 アンリジャックの元には、ハロッズをはじめとした大手からカウンターを置かないかと打診があったようですが、香りへのこだわりから、すべてのカウンター、トラベルリテール、マスマーケット用のコーナーを断ったようです。しかし、2014年には、(ロンドンの)ハロッズがSalons de Parfumsの一角にブランドを置くことを提案し(ここには他に10のブランドしか許されていなかった*)、ついにはハロッズの6階にブティックを開くことになりました。
*許されたブランドとは、ボンドNo.9・キリアン・シャネル・Clive Christian、クリード、ディオール、ゲラン、ロジャーダヴ、トムフォード、Xerjoffです。

 2014年のハロッズ出店以降、すぐにブランドは拡大し、アブダビ、ドバイ、パリ、中国、アメリカと10以上のブティックが誕生します。その最初の路面店は、シンガポールのマリーナベイサンズホテルでした。
 ブランドが拡大した今でもビスポークフレグランスをブランドの中心に据えています。

 アンは3人の子供がおり、長男はミュージシャン、次女は建築家、三男は調香師学校に通いながらアンリジャックでパートの仕事をしています。

私がファミリービジネスに戻った時、何をやって、何をやりたくないのかは、ハッキリと分かっていました。やるべきことは、自分たちのノウハウを少しずつ世界の他の人たちにシェアし、尚且つ品質と香水に対するヴィジョンに妥協をしないということです。

Anne-Lise Cremona

ブランドのこだわり

 アンリジャックの製品は大きく3つに分けられます。Les Sur-Mesures(ビスポークフレグランス)、Les Classiques(クラシックライン)、Les Exceptionsです。

 時間というのは、今日、最も重要なラグジュアリーです。私は時折、この業界で理解のできない行動があります。それは、ひと吹きスプレーした後、すぐにその香水の香りについて顧客に尋ねることです。それは我々の考えとは異なります。

 我々にとって、香水というのは、ジェスチャーでもあります。お気に入りの香水を見つけるために、自分自身の時間が必要なのです。雰囲気やテイストが変わるので、何年もかかるかもしれません。

Anne-Lise Cremona

ビスポークフレグランス(Les Sur-Mesures)

我々がマーケットのモデルにしているのはオートクチュールのブランドであり、クライアントのリクエストに応じてビスポークフレグランスを創るのです。他のどこでも見つけることができない何かを求める世界中の要人たちが、プライベートな顧客として我々のクライアントに名を連ねています。彼らが求めるものは、時として自分自身の香り、時としてギフト、さらに重要なことに、公的な立場の贈り物としての香りなのです。

Anne-Lise Cremona

 各ブティックには、ビスポークフレグランスのコンサルテーション専用の部屋があり、顧客はそこでじっくりと話をして、どのような香りにするか考えることができます。

 そして、すべてのボトルは、蓋から容器、紐に至るまで100%手作業で作られ、1つ作るのに2~3時間がかかります。その後、マセラシオンが行われます。3か月に渡りフォーミュラを作った後、3つのサンプルが顧客の手元に届きます。その後、顧客の要望に応じて、微調整や香料の追加を行っていきます。

 また、ボトルのサイズやデザインもパーソナライズで制作することができ、いくつかの香りが好きであれば、複数選択することもできます。合計4-8ヶ月の制作期間で完成するテーラーメイドの香水は€20,000~€85,000(約250万~約1000万円)ほどします。これぞアンリジャックの真髄であります。

私にとって、究極のラグジュアリーとは時間です。特に自分自身のビスポークフレグランスを創っているときの時間なのです。

Anne-Lise Cremona

私たちのインスピレーションは、記憶を再現することです。言葉では表現できなくても、香りのノートが可能にするのです。

Anne-Lise Cremona

香水(Les Classiques)

アンリジャックのブティックには何か買うために行かないで下さい。あなた自身の香水を、そしてあなたの感情を探すために来て下さい。

Anne-Lise Cremona

①エッセンス(Les Essences)

 自分の雰囲気やスタイル、季節によって香水を選びたい・変えたいという顧客の要望から生まれたラインです。嗅覚のワードローブというのがこのラインのキーワードです。

 元々、ビスポークフレグランスから既成の香水へと生まれ変わったクラシックラインの香水たちは、アルコールがかなり低濃度であり、ロングラスティングが特徴です。たった一滴で十分。アンリジャックの真髄を少し手軽に味わうことができるパルファム。

②ミスト(Les Brumes)

 2019年にLes Brumes(霧)と名付けられ発売が始まったスプレータイプの香水は、アンリジャックの核である濃度の濃いクラシックラインをもっと軽やかな表現として生み出したいという想いから生まれました。他のブランドと同じスプレーする香水ではなく、より革新的なものを作ろうと数年間にわたる開発期間の後、カジュアルに使え、服の上からでも纏え、気候が温かくなっても使える香水を生み出すことに成功しました。

③ソリッドパフューム

 スタイリッシュで斬新なデザインの固形香水(ソリッドパフューム)。Clic-Clac(クリッククラック、カチカチという音のことをこう言う)と名付けられたこの香水は、時代遅れと消え去った練り香水をライフスタイルの芸術へと昇華させたものです。

形、音、開く瞬間、動き方、すべてが重要でした。香水が時計作りの技術と邂逅したのは初めてでもあります。この独自の開発に携わった人間すべてにとって、本当に挑戦でありました。

Anne-Lise Cremona

 4年間かけてデザイナーのトレマー(Tollemer)氏とともにプロジェクトを進め、様々な職人にも合い、最終的に時計業界で有名なアンの叔父Richard Milleのアドバイスからスイスの時計のメカニズムを採用し、エンジニアも採用することにしました。20万回に及ぶ試作の結果、120gのチタニウムグレード5と235gのローズゴールドを使用したカーボンファイバー素材の外装と付け替え可能なクラシックラインの50の香りのソリッドパフュームにより、Clic-Clacが誕生します。

 成分はもちろんアルコールを含まず、100%天然のオイルとワックスを使用しています。

私は特にCEOとしてビジネス旅行をしますが、この広い世界で少し一人ぼっちのように感じることがあります。しかし、お気に入りの香りがあれば、家にいるような感じになることができます。チョコレートのように1つ食べるともう1つ食べたくなるような、安心感をもたらしてくれるのです。Clic-Clacは、開けて、ちょっとつけて嗅げば、気分が良くなり、安心することができます。(中略)時折私は空気中に香りを広げるために、Clic-Clacを開けます。これは本当に、魂の栄養なのです。

Anne-Lise Cremona

Les Exceptions

 普通なもの・合理的なものを撥ね退け、稀少で、ルールや規則に囚われない(Exception)香りを追い求める人のために作られたコレクションです。3年かけて開発されたこのコレクションは、Les Toupies(コマ)とLes Renaissances(ルネッサンス)の2種から成ります。

①独楽(Les Toupies)

 コレクション名の通り、コマの見た目をした香水のシリーズになります。そして、コマは対になるように作られており、3つの番(男性用と女性用)が存在します。1つは、創設者であるHenryと妻Yvetteの頭文字を取った「Mr. H」と「Mrs.Y」、2つ目は「N゜16」と「N゜81」、そして最後は「Galileo(ガリレオ)」と「Fanfan(ファンファン)」。男性用の方が若干大きく作られています。

②ルネッサンス(Les Renaissances)

 香水業界の黄金時代を思わせる、ジュエリーのコレクション、それがLes Renaissancesです。職人によって純金と宝石(シトリン、ホワイトダイヤモンド、ブラウンダイヤモンド、ルベライトトルマリン)を使って、手作業で作られた香水ボトルに、香りが詰められます。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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