Seinde Signature(セインデ・シグネチャー)|収集家の部屋から生まれた香水サロン

Seinde Signature(セインデ・シグネチャー)|収集家の部屋から生まれた香水サロン

情熱から始まったことで、事業にするつもりではありませんでした。

オルフェミ・オルソラ

ラゴスの香水店、Seinde Signature(セインデ・シグネチャー)の原点は、収集家の部屋にある。創業者オルフェミ・オルソラ(Olufemi Olusola)が集めてきた香水を、一緒に試したいと人が訪ねてくる。その小さな集まりが、香りを体験するスタジオと、気に入った一本を持ち帰れる香水店へ育っていった。

店舗のはじまり

オルソラにとって、香りは子どものころから身近なものだった。父は家で香を焚き、香水も好んでいた。やがて海外へ渡った友人から香水を贈られると、自分でも瓶を集めるようになる。一本を使い切って次を買うだけではなく、違う香りを手元に置いて比べる楽しみが、長年の習慣になった。

転機は、コロナ禍にコレクションをSNSで見せたことだった。香水好きが自宅へ集まり、娘が料理を用意して迎える日もあった。日曜日の集まりが続くにつれ、家族の生活の場とは別に、香水を楽しめる場所が必要になる。こうして個人の収集は、ほかの人に開かれた体験へと変わっていった。

2020年に始まった事業は、まずExperience Studio(エクスペリエンス・スタジオ)で香りに触れる機会をつくった。しかし、そこで初めて出会った香水を、そのまま買って帰りたいという声が寄せられる。体験だけでは、その願いには応えきれない。

人々が求めるものと、実際に見つけられるものの間に隔たりが見えたのです。

オルフェミ・オルソラ

その隔たりを埋めるため、2021年7月に販売ブティックSalon de Parfum(サロン・ド・パルファン)が開いた。収集品を試すスタジオから、独立系香水を仕入れ、選び、届ける店へ。気に入った香りとの出会いが、次の店づくりを促した。

店づくりの考え方

スタジオの中心にあるのは、すぐに買う一本を決めることよりも、嗅いだことのない香りを知る時間だ。

スタジオでは、その場で買わなければというプレッシャーなしに試せます。

オルフェミ・オルソラ

開業初期のスタジオでは、テーブルを囲んで香水を比べ、質問し、会話する体験を組み立てた。オルソラの個人的な収集を出発点にしているからこそ、珍しい瓶を遠くから眺めるだけで終わらせない。香りを実際に嗅ぐことが、人を迎える理由になっている。

販売の顔ぶれにも、その好奇心が続く。クライヴ・クリスチャン、エレクティムス、エリス・パルファム、フランチェスカ・ビアンキなど、異なるつくり手の香水を扱う。創業者が集めてきた私物と、店で販売する商品は別だが、幅広い香りを比較する楽しみは双方に通じている。

2026年には、サラ・ベイカーのナイジェリア導入に合わせ、香水の物語を舞台へ広げた。オルソラは、共同創業者でもある娘のオレオルワとともに、このブランドを紹介する一連の催しを進めた。ラゴスのイベント会場で、Jungle Jezebel、Velvet Vendetta、Va Va Vanillaにまつわる脚本を俳優たちが演じたのである。香水の背景にある人物や場面を、演技や音楽でも味わう。店頭の試香を越えて、つくり手の世界へ招く試みだった。

訪れたい店舗

地上階のサロン・ド・パルファン

ヴィクトリア・アイランドのラゴス・オリエンタルホテルには、地上階の販売店と11階のエクスペリエンス・スタジオがある。初めて買う一本を探すなら、ロビーから入れる地上階のサロン・ド・パルファンが立ち寄りやすい。

ブロンズ色の枠のガラス扉と香水のポスターが並ぶ、Seinde Signature地上階店の外観イラスト。
ラゴス・オリエンタルホテル地上階のSeinde Signature(イラスト)

接客は、普段どんな香水を使っているかを聞くところから始まる。まずムエット(試香紙)で試し、気になるものを肌にのせ、時間を置く。その日に購入を決めず、ラゴスの暑さの中でどう香るかを確かめてから戻ることも、店の方針に合っている。

11階のエクスペリエンス・スタジオ

同じホテルでも、上階のスタジオは、ひとつの香水メゾンをじっくり知りたいときや、大切な一本を相談したいときの場所だ。販売店へ立ち寄る短い時間とは別に、香りに向き合う時間を取れる。収集家の部屋を訪ねるように香水を知り、その出会いを日常へ持ち帰る。二つの場所には、店が生まれた順序が今も残っている。

参考文献