BYREDO(バイレード)|香りの記憶に居場所をつくる

BYREDO(バイレード)|香りの記憶に居場所をつくる

いま、香水にふさわしい居場所ができました。

ベン・ゴーラム

香りから始まったBYREDO(バイレード)の世界は、革小物やメイクアップ、暮らしの道具へと広がってきた。それらを一緒に見せる店舗にも、ブランドの考え方が表れている。出発点はストックホルムの小さな店。ドバイの旗艦店では、木の格子や手描きの天井が、香りを選ぶ場所に新しい表情を与えている。

店舗のはじまり

ストックホルムに生まれた最初の店

バイレードは2006年、ベン・ゴーラムがストックホルムで創業した。記憶や感情を、ものや体験へと移し替えることが創作の出発点にある。ゴーラムはブランドを始めた頃から自分たちの店を思い描いていたが、当初の店舗はポップアップなどの一時的な売場だった。

顧客とのつながりが育ち、次の一歩を踏み出したのが2009年。創業の街に、最初の単独店を開いた。大きな空間ではなかった。その規模を、ゴーラムは後にこう表現している。

ストックホルム店は、いわば宝石箱のような形でした。

ベン・ゴーラム

初店の設計は、ゴーラムとクリスチャン・ハレロッド(Christian Hallerød)、ヨハネス・スヴァルトルム(Johannes Svartholm)の協働によるもの。スウェーデンの伝統的な吹きガラスと、インドの豪華列車からの着想が取り入れられた。北欧だけに閉じない取り合わせには、インドにルーツを持つゴーラム自身の背景も重なる。香水の瓶を包む空間を通じて、ブランドの出自まで伝える店だった。

店づくりの考え方

異なる品々を一つの空間に置く

2015年、二つ目の店舗がニューヨークのソーホーに開く。空間は広くなり、家具の設計や素材の選択にも、より踏み込めるようになった。同時にゴーラムが考え直したのは、香水と、新たに加わった革製品やアクセサリーの関係である。品目が増えるにつれて、それらをどう一緒に見せるかが店づくりの課題になった。

その考えがよく表れたのが、2018年にドバイ・モールで展開したポップアップだった。百貨店では香水、バッグ、アイウェアが別々の売場に分かれる。単独の空間なら、それらを集め、同じブランドから生まれた品々のつながりを見せられる。ドバイは中東の顧客との関係の中心であり、ゴーラム自身も幼い頃から訪れてきた街だった。

店の背景に求めているのは、商品を前面に出すことです。

ベン・ゴーラム

訪れたい店舗

ストックホルムの現在の店舗

ストックホルムの店舗は、2024年にビブリオテークスタン地区のより広い場所へ移転した。香水に加えてメイクアップ、ホーム向けの品々、小革製品などを扱い、ブランドの広がりに触れられる。

ドバイ・モールの旗艦店

現在、ドバイ・モールのファッション・アベニューにあるのは、バイレードの旗艦店である。香水からメイクアップ、ハンド&ボディ、ホーム向けの品々、サングラス、小革製品までを一つの店で紹介している。

店内を囲むウォルナットの格子には、区画ごとにガラスのクロッシュが収まる。ドーム状の覆いが繰り返され、棚の並びが壁面のリズムをつくる。中東の伝統的な格子窓、マシュラビーヤを思わせる構成だ。

木で縁取られた開口の先には、もう一つの部屋が続く。頭上を飾るのは、スウェーデンの画家ミリアム・エクロフ(Miriam Eklöf)による手描きの天井画。曲線的な装飾を特徴とする伝統絵画クルビッツが、平面的で反復する模様へと組み替えられている。格子の直線に対して、絵筆の仕事が加わる。

淡い色の石を思わせる台座、金色を抑えた金属面、織りの絨毯も組み合わされる。木の構造を見た後に天井と足元へ目を移すと、同じ店の中に異なる素材と模様が重なっていることに気づく。

木の格子とガラスのクロッシュを描いたBYREDOドバイ旗艦店の内観イラスト
ドバイ・モールのBYREDO旗艦店(イラスト)

香水は、スタッフに好みを伝えながら試すことができる。香りを選ぶ合間に、革小物の形やホーム向けの品々も見比べたい。香水から始まったバイレードの創作が、目に見え、手に取れるものへどう広がったか。そのつながりを、ひとつの空間で確かめられる店である。

Byredo(バイレード)── 記憶を香りに変えるストックホルムの異端児
バイレード(Byredo)の創設者ベン・ゴーラムと、記憶を香りへ変えるブランドの歩みを解説。ストックホルム発の独自の美学を紹介します。

参考文献