édition privée(エディシオン・プリヴェ)|邸宅に集う独立系香水の世界

édition privée(エディシオン・プリヴェ)|邸宅に集う独立系香水の世界

私たちの仕事は香水を売ることではなく、香水を体験してもらうことです。

エドゥアルド・ウォルフ

ブエノスアイレスのレコレータ地区、アルベアル通りに立つ旧邸宅。その扉の先に、独立系香水を集めたédition privée(エディシオン・プリヴェ)がある。2023年末に開いた旗艦店は、歴史ある建物を修復し、世界各地の香水とゆっくり出会う場所へ変えた。

店舗のはじまり

構想が動き始めたのは2019年末だった。ビューティー・グループを率いるエドゥアルド・ウォルフは、海外の香水店を見て歩くなかで、ワインを選ぶように香水の違いを知り、楽しむ店に可能性を見いだした。2021年にはコルタッサとの提携が成立し、メゾンとの契約や店の準備を進めていく。

舞台に選んだのは、20世紀初頭に建てられた旧リョベット邸。かつてポロ・ラルフ・ローレンの店舗として使われていた建物だった。クリエイティブ・ディレクターのマルセラ・ナオンは、この場所を選んだ意図をこう表している。

ブエノスアイレスを象徴する建築の中に、エディシオン・プリヴェを置こうと考えました。

マルセラ・ナオン

2022年末から進められた修復では、建築家フアン・フレゴナと修復の専門家ヘラルド・ペレグリーノらが、邸宅の細部をよみがえらせた。香水を並べるために建物の記憶を消すのではなく、その記憶ごと店に迎え入れる仕事だった。

すべての部屋と床を修復しました。

フアン・フレゴナ

大理石のホールから、オーク材の階段へ。その上にステンドグラスの光が差す。かつての邸宅が持っていた素材や装飾を残しながら、新しい香水店として人を迎える空間が整えられた。

装飾彫刻のある石造りの壁と黒いアーチ形の開口部を描いたédition privée旗艦店の外観イラスト。
アルベアル通りのédition privée(イラスト)

店づくりの考え方

ウォルフが重視したのは、買い物を短く済ませることではなかった。開店に向けてスタッフは4か月にわたる準備を重ね、ホテルやファッションの接客経験を持つ人も迎えた。香水の説明と同じくらい、人がその場所で過ごす時間を大切にするためだ。

来店した人が、店内で2時間を過ごすのです。

エドゥアルド・ウォルフ

その言葉が示すのは、香水を選ぶ途中で足を止め、対話が続く店の姿である。館内には飲み物を楽しめる小さなバーがあり、買った香水は名入れのできる布の袋に収められる。香りだけでなく、選んだ日の時間も持ち帰れるように、接客や包み方まで組み立てられている。

商業面を担うベロニカ・エスクデロが目を向けるのは、新しさや独自の発想を持つ香水メゾンだ。ひとつの大きなブランドのカウンターに収まらない作品を集め、それぞれの個性を伝える。邸宅の部屋を移りながら香水を選ぶ体験には、異なるつくり手の世界を訪ねていく楽しみがある。

訪れたい店舗

アルベアル通りの旗艦店

エディシオン・プリヴェの原点に触れるなら、レコレータの旗艦店が中心となる。古い邸宅の外観と、扉の先に広がる香水の世界。その組み合わせが、この店の個性をつくっている。

館内には、現代美術家ビセンテ・グロンドナによる木炭製の頭部彫刻《Dhyana》も置かれた。目を閉じ、大きな鼻を持つ姿は、香水店のためにつくられたもの。昔の建築を復元するだけでなく、嗅覚をめぐる新しい表現が、その中に加わっている。

店が扱う香りの世界は、開店時の品ぞろえにとどまらない。2026年には、チェスの世界を香水に重ねるアメリカのMind Gamesをアルゼンチンで紹介した。ボトルの形や香水の名前にも、一手を考えるゲームの発想が結びついている。香りそのものから入ることも、その背景にある物語から興味を持つこともできる。

同じ年には、マティエール・プルミエールの共同創業者カイウス・フォン・クノーリングをブエノスアイレスへ迎え、Metal Lavenderの発表を行った。素材の違いを主題にするメゾンから、チェスに着想するブランドまで。異なる創作の入口をひとつずつ増やしながら、邸宅から始まった香水の体験を広げている。

参考文献