Liquides(リキッド)|パリの香水バーの創業史と、選品・対話・試香の仕事

真鍮のカウンターと試香紙、取扱品BDKグリ シャーネル エクストレを配したLiquidesのスティルライフ 香水ショップ

「私たちの唯一の願いは、お客様に似合う香水を見つける手助けをすることです。」

ダヴィッド・フロサール、2014年

パリのオー・マレで2013年に開いたLiquides(リキッド)は、香水をカウンター越しに紹介する店である。棚から自分でボトルを取り出す代わりに、まずスタッフと言葉を交わす。そこから、まだ知らない香りへ進んでいく。

この配置は装飾だけの趣向ではない。ブランドを選ぶ人、香りを案内する人、訪れる人のあいだに、会話の時間をつくるための仕組みである。同名を含む香水ブランドリキッドイマジネも扱うが、リキッドそのものは複数の作り手の香水を集めるセレクトショップだ。

基本情報

  • 店名:Liquides, bar à parfums(リキッド)
  • 開店:2013年、フランス・パリ
  • 創設・構想:ダヴィッド・フロサール(David Frossard)/空間設計:フィリップ・ディ・メオ(Philippe Di Méo)
  • 業態:マルチブランドの香水・ビューティー専門店
  • パリの路面店:9 rue de Normandie, 75003 Paris, France
  • 公式サイト:Liquides Parfums

創設者と店の成り立ち

流通の仕事から、自分たちの店へ

フロサールは哲学を学んだ後、アフリカで叔父の香水流通会社に勤め、ラルチザン パフューマーの輸出部門を経験した。2005年にはディフェラント・ラティテュードを設立する。独立系ブランドを販売先につなぐだけでなく、その事業や創作を支える仕事だった。

2019年に語った初期の協力者には、パルファン・ド・ロジーヌのマリー=エレーヌ・ロジョン、パルファン・ド・アンピールのマルク=アントワーヌ・コルティキアートらがいる。フロサールが扱ってきたのは、香りの背後に具体的な作り手がいるブランドだった。

店を持つきっかけは、仕事場に集まる香水を家族や友人が喜んでいたことにあった。昼食のために事務所へ立ち寄った人たちが、そこで出会う香水に驚く。その香水を一つの屋根の下で紹介できる場所が必要だった。フロサールはオテル・ド・ソーロワの傍らにある、オー・マレの一角を選んだ。

2013年、真鍮のカウンターを置く

空間を設計したのは、リキッドイマジネでも協働するディ・メオである。2013年4月の開店当時の記事には、真鍮のカウンター、鏡に映るボトル、光を受ける液体の様子が記されている。アルキスト、バイレード、フラパン、ミラー ハリス、オルファクティヴ ストゥディオ、パルファン・ド・アンピールなどが同じ店に並んだ。

当初から目指したのは、短時間にセルフサービスで選ぶ店とは異なる接客だった。カウンターの向こう側にボトルを置き、香りを嗅ぐ前後に、その香水をつくった人の考えを伝える。酒瓶のような陳列は、香水を急いで消費するのではなく、一つずつ向き合うための設計でもあった。

フロサールは2019年、店では香水の物語だけでなく、調香師の制作過程、着想の意味、情熱にも耳を傾けてほしいと語っている。ここで販売員が担うのは、完成した香りと、それを生んだ仕事を結びつける役割である。

パリから韓国への展開

2022年には韓国へ展開した。現地では現代百貨店グループ傘下のハンサムがリキッドを紹介し、ソウルの旗艦店や百貨店内拠点へと広がった。同年にはパリのプランタン・オスマンへの出店も報じられている。路地の一店として始まった構想は、百貨店の中や国外でも展開する形になった。

年店につながる出来事
2005年フロサールがディフェラント・ラティテュードを設立。
2013年パリのノルマンディー通りにリキッドが開店。
2022年韓国展開。ソウルの旗艦店、百貨店内拠点が登場し、パリのプランタン出店も報じられる。

選品と、作り手を支える仕事

「違う一面があるか」を問う

フロサールの選品は、まず一人の客として、その香りに惹かれるかどうかから始まる。そのうえで既存の香水と比べ、何かを加える作品なのか、異なる一面を示しているかを考える。最後に確かめるのが、創作者がその先に何をつくろうとしているかだった。

「それは何かを加えているか、違う一面をもたらしているか?」

ダヴィッド・フロサール、2014年

2015年当時のスタッフ、レア(Léa)は、店をディフェラント・ラティテュードが関わるブランドのショールームでもあると説明した。作り手との関係は仕入れで終わらず、コミュニケーションや開発を支える仕事へ続いている。一方、扱いを終える理由には、ブランドが自立して進めるようになる場合も、販売が振るわない場合もあったという。棚は固定した名品集ではなく、ブランドとの関係に応じて変わってきた。

複数ブランドを横断する現在の品揃え

現在の公式販売サイトでは、BDKパルファム、アルキスト、フラパン、ゴールドフィールド&バンクス、ルーム1015、リキッドイマジネ、オブヴィアスなどを確認できる。フロサール自身が創作に関わるブランドに加え、異なる作者の香水も扱っている。

具体的には、BDKの「グリ シャーネル」とそのエクストレ、リキッドイマジネの「ブランシュ ベット」、フラパンの「ザ オーキッド マン」などの掲載がある。香水愛好家に知られるニッチ香水も、実際の取扱対象に含まれている。ただし公式通販の掲載は、すべての実店舗で同じ日に試せることを意味しない。掲載品にも欠品があり、過去に扱ったバイレードなどを、そのまま現在の取扱ブランドとして数えることもできない。

カウンターでの接客と試香

好みを聞き、反応から次の香りへ進む

カウンターは会話の入口であると同時に、訪れた人が戸惑う境界でもあった。2015年のレアは、ボトルに自由に触れられないため、まず自分に話しかけてもらう必要があり、警戒心を解くところから接客が始まると説明している。

彼女は以前に使った香水だけで好みを決めつけず、苦手なものや、親密な香りを求めるのか、包み込むような香りを求めるのかを尋ねた。実際に嗅いでもらい、反応を読み、次の提案を変えていく。ときには苦手だと思っている素材を含む香水も試してもらう。あるグレープフルーツの香水が嫌いだったことと、その素材を使うすべての香水が嫌いであることは同じではないからだ。

「私は、感じたことを言葉にしてもらうよう促します。」

レア、2015年当時のリキッドのスタッフ

原料を知りたい人には素材を説明し、感じたことを話す人には、その言葉を手がかりにする。作り手の物語を伝えるだけでなく、目の前の人からも言葉を引き出す。この往復に、試香を案内する仕事の具体性がある。これは当時のレアが語った方法であり、現在の全スタッフが同一の手順を取るという意味ではない。現在の公式サイトも、スタッフを「バーマン」と呼び、個別の相談を案内している。

ワインを嗅ぐ経験から香水の案内へ

レアは香水の専門教育からこの仕事に入ったわけではなかった。醸造を学んだパートナーを通じてワインに親しみ、妊娠中に飲めなくなったとき、会話に加わるため香りを嗅ぐようになった。そこから土地や作り手の違いを鼻で読み取ることに関心を持ったのである。フロサールとの出会いを経て香水の世界へ進み、調香師たちと会ううちに、ワインと香水には素材への愛情という共通点があると気づいた。

「私たちは、交流の場、人と人が近づく場所も望んでいました。」

レア、2015年

隣の客が話す香水が気になり、自分も嗅いでみる。彼女が語ったバーのよさは、スタッフと客の一対一に収まらないところにもあった。リキッドのカウンターは、香水を説明するための設備であるとともに、ほかの人の感覚から未知の香りへ進む場所でもある。

現在訪問できる主要実店舗

2026年10月15日確認の公式店舗案内では、フランスのパリ、韓国のソウルと光州に次の拠点が掲載されている。パリの路面店と百貨店内拠点を分けて示す。

国・都市店舗・拠点所在地
フランス・パリLiquides Bar à Parfums(路面店)9 rue de Normandie, 75003 Paris
フランス・パリPrintemps Haussmann内61 rue de Caumartin, 75009 Paris/ビューティーエリア
韓国・ソウルCheongdam Flagship Store461 Apgujeong-ro, Gangnam-gu
韓国・ソウルThe Hyundai Seoul内108 Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu
韓国・ソウルHyundai Department Store Trade Center内517 Teheran-ro, Gangnam-gu
韓国・ソウルLotte百貨店本店内81 Namdaemun-ro, Jung-gu
韓国・光州Handsome Haus Gwangju内87 Wangbeodeul-ro, Gwangsan-gu

営業時間や試したい香水の有無は、訪問前に各店へ確認したい。オンラインショップはこれらの実店舗とは別の販売窓口である。香水を一人で次々に嗅ぐだけでなく、言葉を交わしながら好みを探りたいとき、パリの小さなバーから始まったこの店の考え方が、訪れる理由になる。

参考文献

  1. Rencontre avec David Frossard, créateur d’émotions olfactives — Spanky Few(2014年10月6日)
  2. À propos — Liquides公式
  3. Qui est David Frossard ? — Tatousenti(2019年2月14日)
  4. Liquides, la parfumerie au comptoir — Premium Beauty News(2013年4月30日)
  5. Parisian Concept Store Liquides Opens in Seoul — Retail & Leisure International(2022年6月7日)
  6. LIQUIDES PERFUME BAR — HANDSOME公式
  7. History — HANDSOME公式
  8. Léa : “Le parfum sert à sublimer le spleen quotidien” — Auparfum/Clara Muller(2015年7月24日)
  9. 現行のブランド・商品掲載と相談案内 — Liquides公式
  10. Gris Charnel Extraitと関連商品の掲載 — Liquides公式
  11. Our locations — Liquides公式店舗案内