香水販売員の考えるチェンソーマンのイメージ香水

マニア向け記事

 香水販売員が、○○をイメージした香水を教えて欲しいと言われたら、どのようにして紹介するのか?今回は、元香水販売員である私が、最近香水発売が決定したことをお祝いし、最新刊までバッチリ読んでいるチェンソーマンを題材に、思考回路から実際のイメージ香水まで、ご紹介しましょう(特にネタバレはないです)。

 この香水の選び方は、友人や好きな人に香りをプレゼントする際にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。(あくまで私が想像する香りで、それが実際にマッチするかどうかはまた別問題です)

思考回路

①まず、対象となる人物のイメージをひたすら列挙していきます。このとき香水のことは全く考えず、単語でも文章でもとにかく自分の中でのイメージしたことを書き出すことがポイントです。

②次に、それらを含めて、どういう時(場面)にその人から漂ってくる香りを見つけたいか、を考えます。

③最初の2つのステップで考えたイメージから、3~5つの外せない要素と香料や香りのイメージと結び付けます。(ここは少し難しいステップ)

④香料とイメージを元に、似合う香水を記憶の中から探し出し、実際にその香りをつけた場面を想像しながら、香水を選定していきます。

 では、チェンソーマンを題材に、実際に上記の4つのステップをやってみましょう。

デンジの香水

  1. デンジのイメージ
    ピュア、純粋、エロ、真っ直ぐ、不真面目、バカ、お風呂、ゲロチュー、マキマラブ、イカレテル、戦闘狂、最強、謎、目立ちたがり、モテたい男、チェンソー、血、ちょっとしたことに幸福感を感じる
  2. 香水をつけている場面
    普通の日常生活チェンソーマンとして戦っている時戦闘中に頭がイカレテ無敵モードになった時
  3. 外せない要素と香料
    普通の日常生活…お風呂やちょっとしたことで幸福感を感じる&ピュア
    →クリーンな香りやピュア感を演出する合成ムスク、さっぱりとした気持ち良さを出すシトラス
    チェンソーマンとして戦っている時…血、チェンソー、カッコよさ
    →チェンソーや血液を感じさせるメタリックノート、エンジンをふかすために必要なガソリンの香り、激しい戦いで舞う土埃をイメージさせるベチバー
    戦闘中に頭がイカレテ無敵モードになった時…血、最強、悪魔的
    →チェンソーや血液を感じさせるメタリックノート、深みがあって複雑な重めのウードのような香り

さて、上記の3ステップで出た内容を元に、デンジのイメージ香水を3つ選んでみます。

普通の日常生活でデンジに纏ってほしい香水

Clean Warm Cotton(クリーン ウォームコットン)

 毎日お風呂に入れることで喜び、ちょっとしたことで喜ぶデンジには、お風呂上りの心地よさやそよ風に揺られながらスヤスヤと眠っているような気持ちになれるクリーンのウォームコットンをまず纏ってほしい。ネクタイを緩め、普段着ているシャツのボタンを開け、この香りを纏ったなら、清潔感バッチリの優男の香り。香水をつけているのに、エロには純粋で、恋にピュアな感じもする。年上の女性から言い寄られるデンジにぴったり。

チェンソーマンとして戦っている時にデンジに纏ってほしい香水

Le Labo Cuir 28(ルラボ キュイール28)

 戦闘が始まれば、エンジン全開。血しぶきをあげさせながら、バッタバッタと敵を切り倒す。敵に攻撃されても止まらないぜ。うぉぉぉぉぉ、血が足りない。血が無いと動けねぇ。そんなデンジくんには血の代わりにガソリンをあげよう。ガソリンと汗が混ざり、男くさい香りになっていくルラボのシティエクスクルーシブ(1年に1ヶ月しか買えない限定品)のキュイール28が戦闘中にはぴったり。目立ちたがりのデンジくんがこの香りを纏えば、数キロ先からでも嗅認できる。革(キュイール)という名の通り、ワイルドで男らしい香り。

戦闘中に頭がイカレテ無敵モードになった時にデンジに纏ってほしい香水

Les Liquides Imaginaires Beaute du Diable(リキッドイマジネール ボーテドゥディアブル)

 我を失い、戦闘狂と化したデンジくん。求めるのは圧倒的な力なのか、それとも完全な死なのか。その闘うときの姿はまさに悪魔の美しさ(Beaute du Diable)。一直線に突き進んでくるかと思いきや、戦闘センスが光る技ありの倒し方。一筋縄ではいかなくなったデンジくんには、リキッドイマジネールのボーテドゥディアブルがぴったり。悪魔の深淵を思わせるウードの濃厚な香りが漂う中、チェンソーを思わせるゼラニウムの切れ味の良いメタリックな香り、相手を切っていくことに快感を感じるかのようなアブサンやシトラスのさっぱりした香りがとてつもなくカッコ良い。

マキマの香水

  1. マキマのイメージ
    大人、思わせぶり、ファムファタル、見た目と相反する強さ、無敵のデビルハンター、クール、冷静、ピンク色の髪、謎が多い、姿勢が良い、支配感
  2. 香水をつけている場面
    普通の日常生活冷酷に相手を殺す時
  3. 外せない要素と香料
    普通の日常生活…冷静なのに、思わせぶりで大人っぽい。小悪魔のような発言。謎が多い。
    →大人の色気を出しながら冷静さと可憐さを表現するホワイトフラワー、謎めいた雰囲気を出す重厚感ある天然バニラ、ファムファタルを表現するための相反するような構成の香り

    冷酷に相手を殺す時…無敵、冷酷にほほ笑む、謎の強さ
    →見た目と裏腹に強すぎる力を表現するための相反するようなイメージの香り、相手を一瞬で虜にして手玉にとる強さを表現するチュベローズやピーチ、ミステリアスな雰囲気を出す天然バニラ

普通の日常生活でマキマに纏って欲しい香水

Guerlain Néroli Outrenoir(ゲラン ネロリウートルノワ)

 クールで可憐な見た目のマキマさん。可愛らしい唇から発せられる言葉は、小悪魔のように相手を惑わし魅了する。不思議な雰囲気を醸し出しつつ、可愛い笑顔と言葉一つで相手を支配する。まさにファムファタール。そんなマキマさんにぴったりなのは、創業195年にもなるゲランの最高級ラインより、ラールエラマティエール(芸術と貴重な原料)シリーズのネロリウートルノワ(これ以上ない黒色のネロリ)。可愛らしく小さな白色のネロリが、スモーキーな紅茶によって漆黒に染まる。いや、それとも真っ黒に染まった悪魔の本性を純白なネロリが隠しているのか。マキマさんから漂ってくれば、男も女もイチコロです。

冷酷に相手を殺すマキマに纏って欲しい香水

SergeLutens Tubereuse Criminelle(セルジュルタンス チュベローズクリミナル)

 マキマの言葉は聞くな。言葉を聞けば彼女に魅了され、支配されてしまう。そんな罪作りなマキマさんには、犯罪的な催淫の香りがするセルジュルタンスのテュベルーズクリミネルがお似合い。月下香とか夜の香水とも呼ばれ、夜に香りが強くなる花チュベローズは、美しい白い花でありながら官能的で肉感的です。この女性になら殺されてもいい、マキマさんがこの香水を身に着けたならそう思ってしまう。しかし、この香水の中には血液を思わせるような香りが密かに含まれており、マキマさんに頭を支配されてしまった人の不穏な行く末を暗示しているかのようです。

Kilian Playing with the Devil(キリアン プレイイングウィズザデビル)

 圧倒的力で目の前に立ちはだかる敵を赤子の手をひねるように倒すマキマさん。それはまるで悪魔が戯れているかのよう。ほほ笑む余裕がある謎の強さを持つマキマさんには、禁断の果実を勧めてくる悪魔の香り、キリアンのプレイイングウィズザデビルを纏ってほしい。ジューシーで魅惑的なピーチの香りが周りを惹きつける一方で、彼らをいまかいまかと待ち受ける悪魔のバニラ。最後に笑うのは誰なのか。

早川アキの香水

  1. アキのイメージ
    ちょんまげ、青、剣、コン、真面目、タバコ、自己犠牲、大義、イケメソ、大人っぽいが若い、マキマに認められたい、清潔感、まぁまぁ頑固、実は情に厚い
  2. 香水をつけている場面
    普通の日常生活クールに戦っている時
  3. 外せない要素と香料
    普通の日常生活…クールでイケメン、清潔感、タバコ吸ってる
    →白シャツに似合いそうなフゼア系、タバコに合いそうなスモーキーな香り、渋すぎなく若々しい香り、清潔感があってミニマルな香り

    クールに戦っている時…大義、信念、情に厚い
    →クール感を出す透き通った香り、自身の信念を突き通すような存在感と自信のある香り

普通の日常生活でアキに纏ってほしい香水

Maison Francis Kurkdjian Aqua Universalis(メゾンフランシスクルジャン アクアユニヴェルサリス)

 きれい好きで、整理整頓ができるアキくん。冷静さを欠かずに、淡々と仕事をこなすアキくんには、メゾンフランシスクルジャンのアクアユニヴェルサリス(普遍的な水)がぴったり。ただの洗い立てのシャツではなく、洗練された芸術的美しさすら覚える水によって洗われたシャツかのような香りは、パリっとした白シャツで部屋を綺麗にしているアキくんをより際立たせます。面倒見の良いアキくんの優しさを柔らかなウッディノートと明るいオレンジブロッサムが表現しているように思えます。

Parfum Satori Mizunara(パルファムサトリ ミズナラ)

 端正な顔立ち、綺麗な青色の瞳、冷静沈着なアキくんが仕事終わりに行くのは、1人で考えに耽ることができる静かなバー(ただの妄想)。そこで頼むのはシーバスリーガルのミズナラをロックで。ウイスキー独特のスモーキーさやアルコール臭は少なく、喉を通り抜ける水かのようなウイスキーを飲みながら、タバコに火をつける。そんなアキくんに纏ってほしいのはパルファンサトリのミズナラ。草原で寝ころびながら空を見上げているかのようなガルバナムのそよ風が吹いてきたかと思いきや、シーバスリーガルを思わせる柔らかな樽の香りとスモーキーさがチラリ。色んな意味で酔ってしまうこと間違いなし。

クールに戦っているアキに纏ってほしい香水

Chanel Egoiste Platinum(シャネル エゴイストプラチナム)

 多数に無勢でも諦めない。強敵だろうが屈しない。自分のエゴを突き通し、自分の目的を達成するためには負けられない。たまには弱気になることもあるけど、自分にとって大切な存在を失わないために生きる。そんなクールだけど情に厚いアキくんには、シャネルのエゴイストプラチナムがオススメ。堂々として、相手を恐れず、自身の運命をも受け入れ、戦場に向かう香り。透き通ったアロマティックでハーバルな香りは、勝利の凱旋を称える祝福なのか、それとも敗北による天国からの出迎えの香りなのか。

パワーのイメージ

  1. パワーのイメージ
    血、子供、魔人、肉が好き、野菜嫌い、髪長い、おバカ、元気、お調子者、傲慢、感情がすぐ表に出る、角、獣、自己中、ワシ、ネコ
  2. 香水をつけている場面
    普通の日常生活ガンガン戦っている時
  3. 外せない要素と香料
    普通の日常生活…わんぱく、明るい、元気、自己中
    →わんぱくで明るいイメージを出す太陽のようなソーラーノート、色気を付与する合成ムスクとグルマンノート

    ガンガン戦っている時…血、獣、自信
    →血に飢えた獣のアニマルノート、自信溢れるパワフルな香り

普通の日常生活でパワーに纏ってほしい香水

Guerlain Nettare di Sole(ゲラン ネッターレ ディ ソーレ)

 過剰な自信と言動、笑い声で、周りを明るくしてしまうムードメーカーであるパワーちゃん。デンジやアキにとって太陽のような存在のパワーちゃんには、「太陽の花の蜜」という名を持つゲランのネッターレディソーレがぴったり。これを纏えば、さらにパワフル。思わず笑みがこぼれてしまうようなマグノリア、ジャスミン、蜂蜜のコラボレーションが気持ちを明るくしてくれると、血の魔人パワーちゃんが自分の血で花火を上げたかのように、アルデヒドとローズオキシドが煌めきを与え、嫌な気持ちも吹き飛んでしまいます。その明るさで全人類が救われるかのような香り、それがネッターレディソーレです。

Kilian Rolling in Love(キリアン ローリングインラブ)

 血の魔人パワーちゃんが今宵狙っているのは、あなたの心(ただの妄想)。真っ赤な血が綺麗に染まるように、純白のドレスに身を包み、滑らかな肌をチラリとあなたに見せる。ほほ笑みの奥に微かに見え隠れするギザギザの歯に噛みつかれてしまうのだろうか、いや、それでもいい、今すぐ顔を近づけたい。そんな色気ムンムンパワーちゃんには、キリアンのローリングインラブがぴったり。アンブレットシード、アーモンドミルク、フリージア、合成ムスクのピュアで真っ白なイメージを想起させる香りは、返り血が映えること間違いなし。肌なじみが良く、肌から香っているかのような錯覚を引き起こし、無意識のうちに近づいてしまったが最後、目を覚ますまであなたの意識はどこかに飛んでいってしまうのです。

ガンガン戦っている時にパワーに纏ってほしい香水

Zoologist Tyrannosaurus Rex(ズーロジスト ティラノサウルスレックス)

「血は好きじゃ。味も、匂いも、死を感じるのも」「パワーが一番最強じゃ!」
 自信過剰だが、圧倒的強者を前にビビッてしまうパワーちゃん。しかし、パワーちゃんはもっと強くなれる!ガンガン行こうぜパワーちゃんには、ズーロジストのティラノサウルスレックスを纏ってほしい。ニャーコを思わせるアニマリックなシベットが威嚇をしたかと思いきや、ブラックペッパー・ローレル・ナツメグのスパイスコンボが牙をむく。相手が弱っても勢いを止めず、ローズ・ジャスミン・イランイランが血の花を咲かせる。これがスーパーになったパワーじゃ。
「どうじゃ! どんなもんじゃ!」

姫野先輩

  1. ヒメノのイメージ
    先輩、デビルハンター、お姉さん、ちょっとエッチ、酒好き、酔ったらキス魔、タバコ好き、現実逃避、幽霊の悪魔、ゲロチュー、右目眼帯、辛い過去、私が死んだとき泣いてほしい、アキへの想い
  2. 香水をつけている場面
    普通の日常生活(特に夜)戦っている時
  3. 外せない要素と香料
    普通の日常生活(特に夜)…エロさ、酒、タバコ、大人のお姉さん、アキへの想い
    →アキの香りと対になるようなお酒もしくはタバコの香り、少し性へのだらしなさを感じさせる誘惑的なフローラルの香り(イランイランやジャスミン)もしくはバニラ

    戦っている時…ゴースト、サポート役、死への恐怖と悲しみ
    →目に見えない攻撃を思わせる透明な香り、草木や食べ物など生を感じさせる香りが入っていない、死を連想させる香り

普通の日常生活の夜に姫野先輩に纏ってほしい香り

Kilian Angels’ Share(キリアン エンジェルズシェア)

 仕事が終わって、いつも公安4課のみんなを率いていくのは安い居酒屋。だけど今日はアキくんとのデート。夜のバーで大人の女をアキくんに見せつけるんだから。さっぱりしたシーバスリーガルを頼むアキくんの横で、姫野パイセンが頼むのはヘネシーのVSOP。芳醇な香りに甘さ、仄かなスモーキーさが鼻腔をくすぐり、二人きりの状況に緊張しながら口に運ぶと、すぐに目はとろんとなる。あぁ、アキくんへの欲望が抑えられない!
 そんな姫野先輩は、キリアンのエンジェルズシェアを纏って、アキくんを思いのままにしちゃいましょう。VSOPよりも濃厚なバニラとトンカビーン、シナモンの甘さは一瞬で相手を酔わせてしまう。何とか理性を保とうとするも、熟成されたオーク樽の香りが優しく包み込み、男は皆、姫野姉さんの腕に抱かれちゃう。冷静なアキくんも今日ばかりはこの甘い罠を避けられない。天使の分け前が、アルコールとともに一歩踏み出せないあなたの恋を後押しする。

「依存できるモンがあるといいよね〜 何かに寄りかかって生きたい人生ですよ」

Kilian Voulez-Vous Coucher Avec Moi(キリアン ヴレヴクシュアヴェクモア)

 今日こそはガチで伝える。アキくんにこの想いを。だけど何て言ったらいいんだろう…。えぇい、言っちゃえ、「しちゃう?」。ストレートに想いを告げられない、だけど淫らなエロティックさを持つ姫野先輩には、キリアンのヴレヴクシュアヴェクモアがお似合い。オスを自ら寄ってこさせるイランイラン・チュベローズの官能的な香りに、恋をする女性のブルガリアローズが絡み合い、朝までお互いを貪る動物を暗示させるかのようなシダーウッドとサンダルウッドのアニマリックさが香ります。普段はパンツ姿で男勝りな姫野先輩が、勝負下着をつけてタイトな漆黒のワンピースでこの香りをつければ悪魔も下僕となるのです。

「よしよし、下も脱ぎましょうね~」

戦っている姫野先輩に纏ってほしい香り

Kilian Black Phantom, memento mori(キリアン ブラックファントム)

「私の全部をあげるから…」

「私が…死んだ時さ…泣いてほしいから…」

 死に直面しながらも愛を失わない。すべてを捧げ、死してなお愛する者の力になる。そんな姫野先輩には、キリアンのブラックファントムを。死はいつやってくるか分からない。常に死を背後に感じながら戦いに身を投じていたとしても、それは突然やってくる。痛みを思わせるようなビターなコーヒーの香りと楽にしてあげると囁くようなバニラの甘い香りが漂うと、奥にはひっそりと生殺与奪を握る青酸カリのアーモンド臭が見え隠れします。これをつけた姫野先輩は、もはや自分の死すらも厭わずに仲間を助ける女神、いや死神。さぁ、私の仲間から離れよ。
 どこか孤独を感じさせるこの香りは、涙を流し、すべてを悪魔に捧げた姫野先輩へのレクイエムでもあります。

東山コベニ

  1. コベニのイメージ
    新人、デビルハンター、妹的な、ビビり、自信がない、おどおど、泣きべそ、意外と強い、接近戦得意、運動神経良い、契約悪魔が分からない、隠密OK、清楚
  2. 香水をつけている場面
    普通の日常生活戦っている時
  3. 外せない要素と香料
    普通の日常生活…自信の無さを補ってくれるような明るい香り、守ってくれるような優しく温かい香り、20歳の女の子らしさ、清楚な雰囲気
    →太陽の香りを思わせるヘイ(干し草の香り)、優しさと温かみのある少量のバニラや少量のパウダリーな香り、女の子だけど清楚さのあるフルーティーな香り、清楚とは真逆なイメージのフローラルもありか

    戦っている時…存在感は強くない軽やかな香り、接近戦を感じさせるパンチのある香り、強さが分からないミステリアスさ
    水や風など透明なものを連想させる香水、ハイキックのようなスパイスの香り、原料の分からない抽象的なイメージの香り

普通の日常生活にコベニちゃんに纏ってほしい香り

Frederic Malle L’eau D’Hiver (フレデリックマル ローディベール)

 今日は晴れ。仕事も休みだし、ショッピングにでも行こうか。でも人混み嫌だな…。変な悪魔が現れるのも嫌だし。だけどこのまま家にいるのも嫌だ…。ネガティブで自信のないコベニちゃんにはフレデリックマルのローディベールを。雪が溶けて水になる春が訪れたかのように、これをコベニちゃんが一たび纏ったならば、自然と笑顔に、心も不安から解放。明るい気分になれば身も軽い。太陽を思わせるヘイの優しい干し草の香りがコベニちゃんを包み込むと、優しく母性を感じさせるようなバニラとアイリスのパウダリーな香りが周りの視線からコベニちゃんを守ってくれる。そして、この香りは同時に近づいてきた敵意を抑えてしまうピュアな香りでもあります。

Maison Christian Dior Belle de Jour (メゾンクリスチャンディオール ベルドジュール)

 これはコベニちゃんのもう一つの世界線。親に迫られた選択肢はデビルハンターになるか、風俗嬢になる。そうコベニちゃんが風俗嬢になってしまった世界線。
 やはり自信のないコベニちゃんは、慣れない化粧をし、嫌な客に当たらないことを祈りながら、自分を隠すかのように香水を振りかける。できるだけオジサンに当たらないように地味な服を着るも顔のかわいさとのギャップでかえってそそられる。友達に会わないように隠れて昼だけ出勤するコベニちゃん。
 一度服を脱げばその淫らな姿は目を釘付けに。まさに昼にだけ咲く花。昼顔。熟した洋梨の虫を引き寄せるような甘い香りと、若い女性の肌を思わせるミルキーなピーチの香りが、少し背伸びした大人っぽいローズの香りとコベニちゃんの肌の上で出会えば、男は皆いちころ。こうしてコベニは気づかずに、昼だけの出勤でNo.1風俗嬢に登りつめた。

戦っているコベニちゃんに纏ってほしい香り

Serge Lutens L’orpheline(セルジュルタンス ロルフェリン)

「壊れやすいが完全。その名は断絶を暗示するが、その亀裂が現れる前に、最初の2音節は石をも魅了する詩人オルフェウスを想起させる」

 彼女の隠密行動は、彼女の早さは、彼女の本能的な動きは、煙のように捉えられず、視認できない。それはまるでこの香水に当てられた二つ名「灰の乙女」。そして、彼女の後ろには、拭い切れない過去、死んでいった仲間たち、殺した敵が横たわる。見たくない過去に蓋をするかのように、それらは乙女の記憶の灰となる。
 捉えどころのないムスクと煙のようなインセンスが融合し、コベニちゃんを覆い隠すことで殺意を感じさせない。時折、アニマリックでスパイシーなハイキックが炸裂すると、喉元にはナイフが。これを纏ったコベニちゃんには、不安も敵も関係ないのだ。

最後に

 このようなイメージ香水は、名前も重要なため、案外探すのは難しい。ただ、中二病全開なキリアンやセルジュルタンスはジャンプ系の漫画に相性が良いかもしれない。世界観が、現実を楽しむための香水を提供しているブランドなのか?現実を忘れさせた世界に連れていくための香水のブランドなのか?これを考えるのも面白いかもしれない。

この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

Rootをフォローする
マニア向け記事
ルシェルシェアする
Rootをフォローする