『パリの調香師ーしあわせの香りを探して』

映画情報

映画名:『パリの調香師 しあわせの香りを探して』(原題:Les Parfums)
公開:2020年
脚本&監督:グレゴリー・マーニュ
出演者:エマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・モンテル

映画レビュー

香水を作りたい。
休暇なんていらない。
パルファムやオーデトワレを作りたいの!
4年もネコのトイレや車の座席の匂いを作ってきた!

アンヌ・ヴァルベルグ(本映画より)

 本作品は、ディオールの撮影協力とエルメスの専属調香師であるクリスティーヌ・ナジル監修により、少しマニアックな内容が含まれる調香師のヒューマンドラマ系映画です。業界を知っている人が見ると、コミュニケーションが苦手な芸術的感性の高い調香師が、仕事と自分の本当にやりたいことの間で葛藤しながら、自身と性格が正反対の運転手の影響を受け、少しずつ人生の軌道を変えようともがく様を描いているように感じます。逆に前提知識が何もなく見ると、無愛想な調香師が少しずつ心を開いていく様や調香師の仕事の一端を垣間見ることができます。

 率直に言えば、映画としての面白味は少し欠けるように思います(フランス映画らしいといえばフランス映画らしいのかも)。というよりも、邦題が勘違いさせるのかもしれません。現代はあくまで「Les Parfums」で、「香りたち」というのが直訳です。これは映画を端的に表しており、「調香師」や「しあわせの香りを探す」ということに焦点が当てられたのではないのかなと個人的に感じました。つまり、香水に限らず、様々な香りがどのように人生に影響を与え、主人公にとって意味をなしているのかを描いた作品なのではないか、というのが私の感想になります。

 主人公役のエマニュエル・ドゥヴォスが、本当に存在しそうな調香師役を見事に演じているのは、圧巻であり、香りの知識がなくても楽しめることは間違いないでしょう。

これ何の香りだと思う?
あなたなら分かるわ。
花の匂いを嗅ぐように息を深く吸い込むの。
頭は空に。
自分を信じて。いいから信じるの。

アンヌ・ヴァルベルグ(本映画より)
この記事を書いた人

香りの学び場「ルシェルシェパルファム」の運営者。
元香水販売員で、現在はとあるIT企業の管理職。
香水への愛が抑えきれず、自身の学んだことをはきだすサイトを作ってしまう。エルメス・フレデリックマルを主に愛用。

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