ZGO Perfumery(ズィー・ジー・オー パフューマリー)|サンフランシスコの香水店の創業と、選品・接客・試香の仕事

温かな窓辺にBDKグリ シャーネルのボトル、試香紙、キャンドルを配したZGO Perfumery紹介記事のスティルライフ 香水ショップ

「私たちの目標は、その物語を伝えることです。」

— クロード・グラティアンヌ(ZGO共同創業者)

サンフランシスコのカストロ地区、19丁目とカストロ・ストリートの角に、ZGO Perfumery(ズィー・ジー・オー パフューマリー)はある。キャンドル、香水、紅茶が並ぶ店の出発点は、好きな匂いをめぐる会話だった。

共同創業者のクロード・グラティアンヌとタニ・カンパクムがつくってきたのは、世界の香水を集めるだけでなく、その背後にいる人と、香りを探す人を結ぶ場所である。店の歩みをたどると、香水店主の仕事が、仕入れから接客、試香の仕組みづくりまで連続していることが見えてくる。

基本情報

  • 創業:2010年
  • 共同創業者:Claude Gratianne(クロード・グラティアンヌ)、Tani Kampakum(タニ・カンパクム)
  • 店名:Zen Garden Oasisの頭文字
  • 現在訪問できる実店舗:米国・サンフランシスコ、600 Castro Street, California 94114
  • 業態:複数ブランドのニッチ香水、キャンドルなどを扱う独立系専門店
  • 公式サイト:ZGO Perfumery

創業者と店の成り立ち

ソノマで育った土木技術者が、香りの店を始めるまで

クロードはフランス移民の家庭に生まれ、カリフォルニアのソノマで育った。子ども時代には家族の小さな農場があるフランスのピレネー地方でも過ごした。干し草、泥、家畜、雨、納屋の隣で熟成するチーズ。彼の嗅覚の記憶には、美しい花だけでなく、農場の暮らしにある強く、ときには快いとはいえない匂いも残っている。

やがて土木技術者となり、複数のプロジェクトに携わったクロードは、タニとともにそれまでの仕事を離れ、香りを探る事業へ踏み出した。二人を動かしたのは、日常で十分に意識されていない嗅覚の働きへの関心だった。

公式の創業史が記す2010年の問いは、「好きな匂いは何か」というものだ。友人たちの答えには刈りたての干し草や焚き火の煙があった。香りについて話すと、その人の記憶が語られる。その発見から、世界の香りを集め、人がそれぞれの記憶と出会える店という構想が育った。

Zen Garden Oasisという名前に込めた地球の姿

タニは仏教、クロードはカトリックの環境で育った。アジア各地の旅は二人に仏教への親しみをもたらした。一方、クロードは宇宙にも長く関心を持っていた。広大な砂漠のような宇宙に浮かぶ地球を、庭でありオアシスであると考える。その二つの関心が、Zen Garden Oasisという店名で結びついた。

2017年に公表された言葉では、二人はキャンドルを灯した夕食で、仕事の意味や、香りと炎が感情に働きかける理由を話し合っている。暮らしの小さな火から地球にまで思いを広げる発想は、香水だけに閉じない店の原点でもあった。

オンラインのキャンドル販売から、カストロの香水店へ

ZGOは、オンラインのキャンドル事業からヘイズ・バレーの店舗へ、そしてカストロへと進んだ。2013年3月にはすでに600 Castro Streetで営業し、香水の品ぞろえを広げていた。当時、クロードはオンライン販売についても、サンフランシスコまで来られない人と店を結ぶ大切な部分として考えていた。

その頃の店舗は、高い天井と大きな窓を備えたヴィクトリアン様式の店構えだった。2013年の新規取扱ブランドのイベントでは、ネ・ア・ネ、アゴニスト、ナーゾマットを担当者が案内し、キャンドルの上にはガラスのベルジャーが置かれていた。覆いを持ち上げて香りを確かめる展示と、人が集まって香水を試す催し。香りを見せる工夫は、早い時期から店の仕事に組み込まれていた。

作り手を招き、作品の背景を聞く場所にする

ブランドと客の間に店が立つ役割は、その後の催しにも表れる。2022年4月に配信した案内では、5月8日にBDKパルファムの創業者ダヴィッド・ベネデクを迎え、「グリ シャーネル エキストレ」の発売イベントを開くと告知した。新作だけでなく、もとのオードパルファムと、BDKを生んだ本人の歩みを語ってもらう企画であった。

同じ名を持つ二つの濃度を並べることは、単に選択肢を増やすだけではない。何を引き継ぎ、どこを変えたのかを、構想した人の言葉で知る機会になる。ZGOの店頭イベントは、香水を商品として渡す前に、その背景へ近づく入口にもなっている。

ZGOの主な歩み

時期 出来事
2010年 クロードとタニがZGOを創業。
2013年3月まで オンラインのキャンドル事業、ヘイズ・バレーの店を経て、カストロで香水の取扱いを拡大。
2017年 香水、ホームフレグランス、ビューティーを含む75以上のブランドを扱う店として紹介される。
2022年 BDK創業者を迎えるグリ シャーネル エキストレの店頭イベントを告知。
現在 600 Castro Streetの実店舗とオンラインストアを運営。サンプルと個別の香りの提案も用意。

選品・接客・試香の仕事

店自身よりも、香水をつくる人の物語を伝える

クロードは、店が前面に出すべきものを、自分たちの物語ではなく、扱う各ブランドの物語だと考えている。香水をつくる人は、嗅覚を通して語る芸術家である。ZGOの選品を理解する鍵は、ニッチという分類そのものより、作り手の個人的な視点への関心にある。

「香りを通して物語を語る人。」

— クロード・グラティアンヌ、調香師について

現行の公式ストアには、メゾン フランシス クルジャンの「バカラ ルージュ 540」オードパルファム、BDKの「グリ シャーネル」オードパルファムが掲載されている。よく知られたニッチ香水を扱う一方、ジョラム スタジオの「ポニー ボーイ」や、フランチェスカ・ビアンキの「スティッキー フィンガーズ」なども並ぶ。自社製品だけを販売する店ではなく、異なる作者の作品を横断して探せる構成だ。

2025年のサンフランシスコ香水店案内も、ZGOでジョラム スタジオ、フランチェスカ・ビアンキ、ドルセーを挙げ、ほかの専門店と合わせて訪ねる意味のある品ぞろえとして紹介している。街の中で店を巡るときにも、選ぶ人の違いが、出会う香水の違いにつながっている。

最初の一本を探す人の、率直な反応に向き合う

クロードの記憶に残る接客の一つは、母親と来店した幼い娘の、初めての香水選びだった。少女は好奇心いっぱいにいくつも試し、好きなものにも、好きでないものにも率直に反応した。最後には気に入る香水が見つかった。

「子どもは意見を遠慮しないのです。」

— クロード・グラティアンヌ

何から始めればよいか分からない客を手伝うことに、クロードはやりがいを感じている。ここでは、香水についてうまく説明できることが出発点にはならない。まず嗅ぎ、反応し、次の候補を探す。そのやり取りを支えることも、香水店主の仕事なのである。

店頭の発見を、家で試す時間へつなぐ

ZGOは現在、ブランドから供給されるサンプルと、ブランドの基準に沿って店が準備するスプレー式の小容量サンプルを用意している。目的は、ボトルを決める前に、肌の上で時間をかけて確かめることだ。好みや使う状況に合わせ、スタッフにサンプルの候補を相談する仕組みもある。

試香紙での第一印象だけで判断を終えず、自分の生活へ持ち帰れるようにする。店頭の対話と小さなスプレー瓶は、別々のサービスというより、香りとの出会いを先へ続ける二つの方法といえる。なお、一部のブランドは小容量サンプルを認めておらず、全作品が同じ形で試せるわけではない。

現在の実店舗と、暮らしの香りへの広がり

現在の主要実店舗は、米国サンフランシスコのカストロ地区にある600 Castro Street。公式サイトの来店案内では、月曜から日曜まで11時〜18時の営業としている。ヘイズ・バレーは店の過去の歩みに属する場所であり、現在の訪問先はカストロである。

オンラインストアでは香水に加え、ディプティックのキャンドルやマリアージュ フレールの紅茶も扱う。香りを肌だけに限らず、室内やお茶の時間へ広げる構成には、キャンドルから始まった店の性格が残っている。

ZGOを訪ねる面白さは、知っている香水の隣で、知らなかった作者に出会えることにある。そして、その一本の背景を聞き、自分はどう感じるかを確かめること。店が集める世界の物語と、客が持ってきた匂いの記憶が、そこで交わるのである。

参考文献