The Raconteur(ザ・ラカンター)|オーストラリアの植物を五感で知る店

ザ・ラカンター エンバシーの室内を参考にしたイラスト

香りを通して、面白く、型にはまらないオーストラリアの物語を伝えること。

クレイグ・アンドラーデ

シドニーのパディントンにある「エンバシー」は、オーストラリアの植物を五感で知るための香水店だ。手がけたのは、ザ・ラカンターの創業者で調香師のクレイグ・アンドラーデ。香水の瓶を並べるだけでなく、木や植物に囲まれながら、その香りが生まれた土地へ関心を向ける空間をつくった。

店舗のはじまり

アンドラーデは長く弁護士として働いた後、フランスのグラースで香水づくりを学んだ。転機となったのは、授業でオーストラリアの香料がわずかしか取り上げられなかったこと。自分の知る植物にも、まだ香水の世界で知られていない可能性があると気づいた。

その発見から育ったザ・ラカンターは、オーストラリアの植物を使う香りを創作するようになる。2021年にはパディントンにエンバシーが誕生。香りを試し、原料や土地の背景も知るための拠点となった。

店づくりの考え方

香りの前に、伝えたい物語がある

アンドラーデの創作は、好きな香料を集めることから始まるのではない。何を伝えるかを決め、それに必要な材料を選んでいく。

いつも、まずコンセプトから。

クレイグ・アンドラーデ

たとえば「ダーティー ゴールド ディガー」は、19世紀のヴィクトリア州のゴールドラッシュを手がかりにした香水だ。金を求めた人々の冒険と、その時代に始まったユーカリ油の蒸留を結びつけている。植物の名前に加えて、その土地で人が何をしてきたかまで、香りの題材になる。

香水を選ぶ人にも、一つの香りだけに自分を閉じ込めず、季節や気分に合わせて試す楽しさを大切にしてほしいと考えている。エンバシーで植物の背景に触れることは、未知の香りを試すきっかけにもなる。

材料に触れ、香りのつくりを知る

エンバシーでは開店当初から、中庭で香水の講座を行ってきた。アンドラーデが思い描くのは、完成品を嗅ぐだけでは分からない素材の姿に触れる体験だ。

原料に触れて、香りを嗅ぐことができます。

クレイグ・アンドラーデ

現在案内されているマスタークラスでも、精油やアブソリュートなどを嗅ぎ、香水の構成とブレンドを学び、自分のオードパルファンをつくる内容が組まれている。オーストラリアの植物に加え、世界各地の原料も扱う。開催日は個別に告知されるため、通常の来店と講座への参加は別に計画する形になる。

訪れたい店舗

シドニーのエンバシー

店内では、再利用したリバーガムの幹が香水の展示台となる。グレッグ・ハットンが磨き、上部に真鍮を合わせたものだ。アンドラーデ自身がつくった蜜蝋の器も照明に使われた。植物は香料としてだけでなく、家具や光の素材としても空間に取り込まれている。

ザ・ラカンター エンバシーの室内を参考にしたイラスト
ザ・ラカンター エンバシーの室内を参考にしたイラスト

ウィリアム・ストリートのこの店では、香水に加え、キャンドルや肌のケアに使う品々も紹介してきた。香りだけを切り離さず、触感や暮らしの場面と一緒に伝える店づくりである。公式の店舗案内には店のプレイリストも用意されており、音楽からその空気に触れることもできる。

参考文献