The Perfume Society(ザ・パフューム・ソサエティ)|香水好きのための試香・出版・交流の歩み

The Perfume Society(ザ・パフューム・ソサエティ)— ノート、試香紙とサンプルを配した温かな読書机のスティルライフ 香りの世界を広げる

目指しているのは、人々がよりよく選べるようにすることです。

ローナ・マッケイ — 2026年公開、Karen MarinによるEssencionalの対話

香水を好きになると、ボトルの向こう側が気になり始める。誰が作り、なぜその香りになったのか。自分が感じた柔らかさや懐かしさを、どう言葉にすればよいのか。買う前にも、買った後にも、知りたいことは増えていく。

英国のThe Perfume Societyは、そうした関心に応えるために、香水の記事、サンプルを集めた箱、雑誌、調香師との対話を結びつけてきた。創設者は香りの書き手ジョー・フェアリーと、百貨店の香水売場やテレビ通販で経験を重ねたローナ・マッケイである。二人が開こうとしたのは、専門家だけが知る香水の世界へ、普通の香水好きが入っていける道だった。

基本情報

  • 名称:The Perfume Society(ザ・パフューム・ソサエティ)
  • 発足:2014年5月1日、英国で一般向けサービスを開始
  • 共同創設者:Jo Fairley(ジョー・フェアリー/Josephine Fairley)とLorna McKay(ローナ・マッケイ)
  • 主な活動:香水・嗅覚の情報発信、雑誌『The Scented Letter』、Discovery Boxes、試香教材、イベント
  • 法人:The Perfume Society(会社番号08413372、2013年2月21日設立)と、公式利用規約に併記されるPerfume Discovery Ltd(08207087、2012年9月7日設立)
  • 公式サイト:perfumesociety.org

The Perfume Societyの法人形態は、株式資本を持たない保証有限会社である。Perfume Discovery Ltdは私的有限会社である。一般向けの発足年と、準備段階に設立された二つの法人の設立年は異なる。

会員制度、物販、出版、ブランドとの協働を伴う活動であり、公的機関や香水業界を代表する規制組織ではない。「Society」という名称や保証有限会社という形だけを理由に、非営利公益団体と理解するのも適切ではない。

創設者と発足までの歩み

香りの書き手になったジョー・フェアリー

ジョーの香りの記憶には、祖母の温室がある。ローズゼラニウムとトマトが育ち、祖母は葉をこすって、幼いジョーの指にその匂いを移した。祖母の服の模様まで思い浮かぶほど、鮮明な記憶だという。

ジャーナリストだった父は、旅先の免税店から母と娘へ香水を持ち帰った。ジョーは若い頃からミス ディオール、カランドル、リヴ ゴーシュなどに親しんだ。香りを知ることは、専門用語を覚えるよりも先に、家族と暮らしの中で始まっていた。

よく匂いを感じられると、人生はよりよくなります。

ジョー・フェアリー — We Wear Perfume、2016年

16歳で学校を離れたジョーは出版の仕事へ進み、23歳で雑誌編集者となった。1991年には夫クレイグ・サムズとチョコレートブランド、グリーン&ブラックスを共同創設する。その後も事業と執筆を並行し、サラ・ステイシーと手がける『Beauty Bible』をはじめ、美容と暮らしを読者へ伝える仕事を続けた。

香水も長く書いてきた題材であった。調香師やブランドと接する機会を持つ一方、その知識をどう読者自身の楽しみにつなげるかが、やがて新しい活動の中心になる。

2016年、ジョーは香水の世界の変化を、グリーン&ブラックスを始めた頃の食の変化に重ねた。作り手に関心が集まり、厨房から出てきた料理人が料理を語るように、香水の作り手にも光が当たり始めていたのである。The Perfume Societyの調香師紹介欄も、作曲家や料理人のように、その仕事を知り、才能を認めたいという考えを掲げている。

教育と売場づくりを重ねたローナ・マッケイ

ローナはスコットランドのエアシャー出身で、両親とも教育の仕事をしていた。自身も教員資格を取得したが、夏の仕事で訪れたハロッズに惹かれ、そのまま14年間働くことになった。

販売や研修を経験し、バイヤーとして商品を選ぶ仕事へ進む。ハロッズの香水・化粧品部門を経て、1990年代初めにはリバティの香水売場づくりを担った。その後はQVCの英国での美容事業立ち上げに関わる。店頭で話を聞くこと、商品を試せる環境を整えること、自宅にいる人へ説明を届けることを、異なる売場で経験した人物である。

リバティでは、試香するために販売員へ頼み、戸棚のテスターを出してもらう売場を変えた。カウンターを取り払い、客が商品へ近づけるようにしたのである。ローナが重視したのは、店がどう見せたいかだけでなく、客がどう買い物をするかだった。

その発想は、香水の知識にも向けられた。好きな香水を手がかりに、別の候補を探すための仕組み「FRED」を作り、後にThe Perfume Societyの香水提案ツールへつなげていく。香りの分類を、売場側の整理だけで終わらせず、客との会話の入口にする試みであった。

1992年の香水提案ツールが二人をつなぐ

ジョーは1992年、ローナが考えた香水提案の仕組みを『YOU』誌で紹介した。気に入っている香水から別の香水へ案内する発想に惹かれ、長年、再び使える形にしてほしいとローナへ働きかけた。

二人の関係は、2014年に突然始まったものではない。香水を言葉で伝えるジョーと、選ぶ場を設計するローナには、それ以前から共有していた関心があった。

具体的なきっかけは、『YOU』誌のためにジョーが企画した試香会である。10人の香水好きが10種類の春の香水を試し、その反応を記事にする催しだった。編集者スー・ピアートと、香水の専門家としてフランスから来たローナもその場にいた。

香水を並べながら、ジョーは香水を楽しむ「Society」がないのは不思議だと口にする。スーは、それならジョーが作ればよいと促した。読者を集めて一緒に嗅ぐという、その場の仕事が、新しい事業の構想へ変わったのである。

二人はフランスで約一週間、活動の形を練り、その後、約二年半を準備に費やした。2015年当時の役割分担を、ジョーは編集、ローナはビジネスと説明している。ウェブだけで完結させず、サンプルと対面の接点を持つことが、発足時からの構想に含まれていた。

2014年5月の発足と雑誌の成長

The Perfume Societyは2014年5月1日に発足した。日付には、フランスでスズランを贈る五月一日の習慣が重ねられている。立ち上げを手伝った人々は、ロンドンで香水関係者へスズランの小枝を配った。

開始時から、ウェブ、Discovery Boxes、電子雑誌『The Scented Letter』、質問会やワークショップを組み合わせていた。当時の独立した紹介記事には、一般公開のサイトに加え、年額25ポンドの導入価格で会員制度を設け、試香セットや電子雑誌、イベントへの接点を提供する仕組みが記されている。これは創業時の制度である。

初期のサイトは女性調香師を前面に紹介した。香水の作り手を知る入口に、女性の仕事を先に置いたことも、立ち上げ時の特徴だった。ブランドについても、ニッチ香水だけに限定せず、広く扱う方針を示していた。

2015年までには、電子版から紙で読める雑誌へと展開する。デザイナーのジェニー・センプルは創刊時から誌面を支えてきた。ジョーだけの文章を集めるのではなく、スージー・ナイチンゲール、ペルソレーズなど、異なる書き手の仕事を迎え入れた雑誌になっていく。

創設者と現在の運営を分けて見る

法人登記では、ジョーは2021年4月14日にThe Perfume SocietyとPerfume Discovery Ltdの取締役を退任している。現在の本人の公式プロフィールも、事業から離れた後、『The Scented Letter』の編集者を続けていると説明している。共同創設者という歴史的な立場と、現在の経営上の役割は分けて捉えたい。

The Perfume Societyの現行登記では、ローナとハンナ・マッケイが取締役として記載される。2026年春の試香教材では、ローナとアリソンが箱に入った香水を説明する動画も案内されている。編集を続ける人、運営を担う人、試香を案内する人の仕事が重なって、この活動を形づくっている。

記事・試香・人との出会いをつなぐ仕組み

Discovery BoxesとSmelling Notes

Discovery Boxesは、複数のブランドのサンプルをテーマに沿って集めた箱である。一つのブランドの世界をたどるBrand Boxesもあり、選び方の単位が異なる。

重要なのは、小さな香水が届くことだけではない。箱には、香りを観察するための「Smelling Notes」が結びついている。初期にはポストカード形式で添えられ、現在掲載される箱の説明では、QRコードからオンラインの教材へ進む方式も使われている。

Smelling Notesには、香りの説明や背景に加え、嗅ぎながら自分に問いかけるための質問がある。たとえばエイト&ボブのオリジナルでは、肌の上で香りが落ち着き、温まる間に、木の香りがいつ現れるかを考える。ポール・スミスのエッセンシャルでは、自分にはどのノートが際立つかを尋ねる。正解を言い当てるより、時間や印象の違いへ注意を向ける教材なのである。

2022年秋の教材には、複数の香水に使われるカルダモンを、比較しながら探す問いもあった。同じ名前の素材が、異なる香水の中でどう感じられるかを考える入口になる。2026年春のページでは、Smelling Notesと開封解説動画が一緒に置かれ、紙、画面、手元の香りを行き来できる形が続いている。

『The Scented Letter』が扱う香水の周辺

『The Scented Letter』は、新作だけを一覧にする雑誌ではない。調香師の働き方を紹介する「A Working Nose」、香料や創作の話、香りと記憶、旅、文化、暮らしを扱ってきた。

2024年春の号では、スージー・ナイチンゲールが香水とホームフレグランスのお香の流行を扱い、ブルーノ・ジョヴァノヴィックの仕事、マンディ・アフテルの香りの博物館をめぐる書籍の抜粋、香りを持つ家庭用品などを同じ号に収めた。香水の一本から、その素材や生活文化へ関心を広げる編集である。

同年、スコット・マクグラシャンが祖母とソワール ド パリの香りを題材に書いた文章も、英国のジャスミン賞の候補として紹介された。香水の話に、作り手だけでなく、香りを使う人の記憶も入ってくる。

電子版は創業時の会員特典から、メール登録で無料に読める雑誌としても案内されるようになった。紙の版は別の有料商品として扱われる。2024年春号の紹介では、電子版無料、紙版15ポンド、VIP価格12.50ポンドと記載されていた。媒体の違いと、時期による制度の違いを分ける必要がある。

調香師が読者と話す場

対面イベントでは、ゲランのティエリー・ワッサー、カミーユ・グタールとイザベル・ドワイヤン、リン・ハリス、フレデリック・マルなどが参加してきた。香水を嗅ぐだけでなく、作り手へ直接質問できる接点である。英国の百貨店や香水店との協働も、この場を支えている。2015年までには、歴史的な香水を伝えるオスモテックの出張企画も迎え、現在の創作と香水史の両方に触れる機会を作った。

2016年、ロンドンのリバティで開催されたフランシス・クルジャンとの催しは、本人からジョーへ提案したものだった。クルジャンは、人前で創作を説明する難しさを知りながら、その機会を求めた。

むしろ、考えを分かち合うことなのです。

フランシス・クルジャン — ペルソレーズによるNow Smell Thisの対話、2016年

来場者へ簡潔に、正確に、誠実に説明すること。クルジャンがこの催しに見ていた課題は、香水に詳しい人だけに通じる言葉を並べることではなかった。香りそのものには目に見える形がないからこそ、作り手が何をしたのかを説明する場が必要になる。

2020年4月6日には、クルジャンを迎えて初のInstagram Liveによる調香師対談を行った。ジョーは自宅から参加し、読者が寄せた質問を本人へ届けた。その後も、カミーユ・グタールとイザベル・ドワイヤンの協働や、ロックダウン中の創作を扱う対話へ続いた。英国の会場に足を運ぶ接点から、画面越しに質問し、後から動画を見る接点へも広がったのである。

鼻を鍛えるための言葉と観察

嗅覚のワークショップでは、何が入っているかだけでなく、どんな色や質感、場所、人物を思い浮かべるかを考えてきた。ロンドンや英国各地で行った催しには、スージーやジョーが案内役を務めたものもある。

こうした問いは、調香師に尋ねてきた学び方とつながる。マチュー・ナルダンは、匂いを自分の感情や記憶に結びつけることを重視し、アルベルト・モリヤスは、言葉にし、繰り返し嗅ぐことを勧める。クリスティーヌ・ナジェルの助言は短く、日常へ向けられている。

嗅覚の好奇心を持ってください。嗅げるものは何でも、どこでも、毎日嗅いでください。

クリスティーヌ・ナジェル — The Perfume Societyの調香師の嗅覚訓練を扱う記事

この活動でいう学びは、すべての香料を判別できるようになることだけを意味しない。同じ香水を別の日に嗅ぎ、自分の印象がどう変わるかを言葉にすることも含まれる。教材と作り手の言葉が、その観察の足場になる。

ブランドとの協働と編集の姿勢

サンプルは、ブランドまたは英国の販売代理店の同意を得て提供される。The Perfume Societyは試香の場を作ると同時に、商品を販売し、ブランドと共同の企画も行う。読者との関係と、香水を届けたいブランドとの関係が、事業の中で結びついている。

2015年当時、ジョーは香水提案ツールへの掲載料と、一般の記事で扱うことを分けて説明した。また、好みを否定せず、読者が自分で判断する方針を明確にした。

私たちは、何かについてどう考えるべきかを人々に指図したり、その人の選択を嫌な気持ちにさせたりすることは決してありません。

ジョー・フェアリー — ペルソレーズとの対話、2015年

厳しい採点を読む場所というより、香水に近づき、自分で判断するための案内を読む場所と考えると、この編集姿勢は理解しやすい。現行の利用規約も、香水提案ツールの推薦を、肌で試して決めることの代わりにはしていない。記事を読んだ後にも、判断は読者の手元に残される。

日本から読めるものとサービスの条件

無料の読み物とオンラインの接点

ウェブには、調香師紹介「The Noses」、香料の解説「Ingredients」、香りの分類、香水に関するFAQ、読み物が一般公開されている。日本からも、英語の文章で香水の背景や嗅ぎ方を学ぶ入口になる。

たとえば作り手のページを読んでから、手元にあるその人の香水を嗅ぐ。Smelling Notesで時間の変化へ目を向け、その作品を作った人の言葉へ戻る。箱の購入だけを入口にしなくても、読むことと嗅ぐことはつなげられる。

対談の記録には公式YouTubeチャンネルへの導線がある。過去の映像を読む記事と合わせて探せる一方、現在申し込めるオンライン催事は、各回の告知で確認する。オンラインの対談と、試香キットの配送を伴う講座は条件が異なる。

有料サービスと日本への配送

以下は2026年10月14日に公式ページで確認した表示・条件である。価格表示は、購入受付や在庫があることと同じではない。

サービス 表示・性格 地域と利用上の区別
Discovery Boxes 複数ブランドをまとめた試香セット。
Niche VIIのページは一般23ポンド、
VIP19ポンド、送料別、在庫切れと表示
香水を含む商品は英国国内のみ。
チャネル諸島へは配送しない。
日本配送は対象外
Seasonal Scents
Subscription
季節ごとの試香箱。
掲載ページは3か月ごと21ポンドと表示し、
オンライン教材と開封動画を案内。
購入不可の表示もある
英国向け。さらに北アイルランド、
スコットランド高地、英国の離島を
対象外としている。郵便番号により
送料が加算される場合がある
『The Scented Letter』
紙版
電子版と別の有料商品。
過去の号の紹介には
紙版とVIP価格が残る
紙版の海外送料・現在の受付は、
雑誌の商品導線と問い合わせで
個別に確認する
VIP会員制度 入会時の箱、箱の割引、
イベント先行案内などを
組み合わせてきた制度
旧入会ページは現在404。
過去の年額25ポンドや特典を
現行の申込条件として使わない

公式の利用規約は、英国以外を配送先に指定した香水入りの注文を取消・返金の対象としている。英国向けのサービスを、日本からも同じ条件で受けられるものとして申し込まないことが大切である。

英国での対面イベントは、会場、開催日時、参加資格、料金を各回の告知で確認する。ロンドンの百貨店で行われた過去の催しが、そのまま現在の定期開催を意味するわけではない。Eventsのページには過去の活動の紹介があるが、確認時点では新しい募集一覧は表示されていない。

公式導線:試香箱の例、季節の定期箱、雑誌の商品一覧、問い合わせ。料金、送料、特典、受付状況は申込み時の公式表示を確認する。

主な歩み

年・時期 出来事
1992年 ローナの香水提案の仕組みをジョーが『YOU』誌で紹介。
後の香水提案ツールの前身となる
2012年9月7日 Perfume Discovery Ltd設立
2013年2月21日 The Perfume Societyの法人設立
2014年5月1日 一般向け活動を開始。
ウェブ、試香箱、電子雑誌、イベントを組み合わせる
2015年まで 『The Scented Letter』が電子版から紙で読める形へも展開
2016年 リバティでクルジャンとの対面イベントを開催。
作り手と読者の接点を広げる
2020年4月6日 クルジャンとの初のInstagram Live調香師対談。
読者の質問を自宅から届ける
2021年4月14日 ジョーが二法人の取締役を退任。
本人の現行プロフィールでは雑誌編集を継続
2024年 発足10周年。電子雑誌を無料登録で読める形でも案内
2026年春 ローナとアリソンによる箱の解説動画と、
オンラインSmelling Notesを掲載

The Perfume Societyの歩みに一貫しているのは、香水好きが自分で感じ、選ぶための接点を作ることである。書き手の言葉、手元のサンプル、作り手との対話は、それぞれ別の入口でありながら、同じ香りをもう一度嗅ぎたくなる場所へつながっている。

補足

2026年10月14日現在、旧VIP入会ページと旧海外向けデジタル購読ページは404、無料雑誌の登録ページには登録フォームが表示されず、雑誌の商品一覧も商品なしと表示される。電子雑誌を無料で提供してきた経緯と、現在新規登録できるかは別である。読めるウェブ記事・教材と、有料サービスの新規受付を区別し、登録・購読は公式の問い合わせ先へ確認したい。これらの表示だけから、活動全体の終了を意味すると断定するものではない。

参考文献

サービス・導線の確認日:2026年10月14日。