悪魔の香水用語辞典

悪魔の香水用語辞典

 アンブローズ・ビアス著『悪魔の辞典』を貢物とすることで誕生。用語の本質をより理解できるようにするため、現実や実体験を元に完全オリジナルで作成しており、香水初心者には少し刺激的な内容も。「香水用語集」とはまた違った解説をお楽しみください。
注:皮肉や風刺、批判による用語の再定義ではありません。

あ行

アコード

 アクアティックアコードとかライスアコードのように、実際には単体で存在しないものを作りだすときに使用するが、実のところ「○○アコードが~」と言っている人は大概意味が分かっていない。また、○○ノートともよく混同され、説明が不協和音を奏でることもしばしば。

#accord

アトマイザー

 香水を持ち運ぶときに使う小瓶。「勤務先や学校では使えないから」と帰り道に夢に浸りたい人、「香りがすぐ消えるの嫌なんだよねぇ」という香り増し増しが好きな人、旅行先でも恋人のように香りを感じたい人に使われる魔法の小瓶でもある。重要なことは、アトマイザーに移した香りは酸化の進行が早くなるため、使い切れる量をこまめに入れることである。信仰者の多い小分けボトルとは目的が異なる。

#atomizer

アブソリュート

 濃度が濃いということは分かるが、エッセンスやコンクリートとの違いが分かりにくく、香水初学者を悩ませる用語の1つ。抽出物の最終形態、最も時間がかかって辿り着く先=非常に高価と考えておけばよろしい。ローズアブソリュートを調べてみれば、いかに高い香料なのかが理解できる。

#absolute

アンバー

 全香水愛好家・全香水販売員を悩ませる悪魔の言葉「アンバー」。アンバーが何かを解説できる人を探すのは、藁の中から針を探すに等しい。気軽に「アンバー」と言っている人は9割が勘違いしており「アンバー」という香料が存在していると思っているが、実は単一の香料ではなく、「アンバーノート(つまり、いくつかの香料を組み合わせて作った香り)」を意味する。「アンバーグリス」とは全くの別物であることも合わせて理解したい。

#amber

アンフルラージュ(冷浸法・温浸法)

 これぞ伝統、匠の技。古来より人間は香りへの探究心が凄まじかったのだろう。動物性油脂に香りの成分を吸着させ、その後、脱脂することで元の香りを手に入れるという手法である。さて、ある人の体臭があなたにとってとても魅惑的な香りだったとしよう。あなたはどうやって、その香りを我が物とするか?そう、アンフルラージュを使えば良いのである……。続きは『香水ーある人殺しの物語』で。

エッセンス(エッセンシャルオイル)

 ○○のエッセンスと言うと、単に抽出されただけというイメージを持つかもしれないが、香水業界では「天然素材から抽出された天然香料100%」のものをエッセンスとかエッセンシャルオイル(精油)と呼ぶ。合成香料が混ざったり、天然香料100%ではなかったりすると、それはアロマオイルと呼ばれる。

 重要なのは、天然香料100%≠その天然素材と同じ香り、ということである。ローズのエッセンシャルオイルは、生でローズを嗅いだ香りと全く異なるということも多ければ、ローズによって全然違うということも頻繁にある。すなわち、エッセンシャルオイルとは名前の通り、その天然素材の「本質(エッセンス)」を抽出した香りであり、核なのである。核だけではそのものを描くことはできないため、細部を作り出すために調香師は核には存在していない部分を合成香料で補うのである。

#essence #essential oil

オーデコロン

 昔はコロンが流行っていたため、香水=コロン=香りが強くて嫌い、という認識が時代錯誤で残っている人もいるが、たしかにコロンが最も香りが強いという点では意外と間違いではない。コロンは最もアルコールが含まれているから拡散力が強いのである。しかし、認識を改める必要があるのは、オーデコロンの目的はシャワー後の清潔感であり、その持続時間の短さから他人を誘惑するものではないということだ。儚さとリフレッシュ、これがコロンの楽しみ方である。

#eau de cologne

オーデトワレ

 かつては市場のほとんどがオーデトワレだった時代もあったくらいだが、最近では持続性が高いものが好まれ、トワレの居所も少なくなってきた。未だファッションフレグランスの1万円前後の香水はトワレが多いが、ニッチフレグランスと呼ばれる香水ブランドはほとんどがオーデパルファムを発売している。長寿になった人間は儚いからこその美しさを忘れてしまったのだろうか。

#eau de toilette

オーデパルファム

 カジュアルに素敵な香りを纏いたいなら、オーデパルファム。柔軟剤や入浴剤の合成香料が大好きにも関わらず、間違った香水のつけ方をする人が多いために香水が苦手になってしまった人の多い日本では、地肌につけることを忘れてはならない。オーデパルファムは持続時間が長くなる場合が多い関係上、自分の鼻を信じてはいけない。つまり、香りが感じないからといって、何度もたくさんつけ直さないことだ。あなたの鼻は10分で麻痺しているだろうから。

#eau de parfum

か行

香りのピラミッド

 三角形△のピラミッド型を上段・中段・下段の3段に分け、上からトップノート・ミドルノート・ラストノートを構成する香料を表現したもの。実際には、ピラミッドの頂点から下るように香りが変化するわけではなく、同時に香りながら、その時々の強さがトップ・ミドル・ラストで違うということに注意されたい。さらに、香りのピラミッドには主要香料しか書かれないため、ここに載っていないからと自分が感じた香料が入っていないというわけではない。もしそれをいちいち指摘するような他人がいたなら、すぐに距離を置いた方が良い。匂いの問題ではなく、付き合いの問題である。

#olfactory pyramid #perfume pyramid

揮発速度

 揮とは「散る」という意味を持ち、揮発は、香水が蒸発することを意味する。したがって、香水の蒸発速度のことを「揮発速度」というが、より正確にいうならば、香水ではなく、香気成分の蒸発速度のことである。この揮発速度の差によって香りの展開を生み出すのが香水である。桜が散るからこそ美しいように、香水は揮発するからこそ美しい。香りが消えないのならば、そこに美しさは無いのかもしれない。
 我々は無形の消える香りのついた水にお金を注ぎこんでいるのであるが、そこに水以上の価値を人間が見いだせるのは、調香師の命がこめられているからか、物語に踊らされているのか。

世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし

在原業平

香水は蒸発して、消えてしまうからこそ、誰も所有できず、欲望が欲望のまま残るのである。人々の記憶や、嗅覚の共通の思いでのおかげで、香水を魅惑的なものにすることができる。

ジャン=クロード・エレナ

#evaporation rate #volatility

グルマン

 「食いしん坊」を意味するフランス語。食いしん坊のイメージは思い浮かばないファッションブランド「ティエリーミュグレー」の創始者ティエリー・ミュグレーが幼少期の思い出のお菓子を元に作ってもらった香りが世紀の大成功をおさめ、一つの系統となった。飲みたくなるほど、舐めたくなるほど、お菓子に近くなった香水は、人だけでなく虫まで呼び寄せる…という噂も。しかし、グルマンを作るための重要な香料の1つは土っぽい香りのパチュリである。すなわち、「食いしん坊」はお菓子の香りどころか、土の香りを食べる食通になったのである。

#gourmand

香気成分

 我々が日常嗅いでいる香りは、ほとんどの場合、何種類(何十、何百)もの香りの分子(成分)が構成している。そのため、「○○の香りが嫌い」というのは実は的を射ていないことが多い。正確に言うならば、「○○に含まれる、△△という成分の香りが嫌い」である。このため、あるローズの香水が嫌いだからといって、すべてのローズの香水を嫌いだと決めつけるのは早計。同じローズでも種類によって香りは異なり、生花とその生花から抽出した精油の香りも違う。さらにその精油を他の精油と組み合わせて香水は作るのだから。

#aroma compounds

合成香料

 ケミカルとか人工香料とも言われ、香害と言われ迫害されることもしばしばある。しかし、ほとんどの場面で我々は合成香料とともに生きており、「香水が嫌い。だって人工的な香りがするんだもん。」という人に限って、ほぼ合成香料の柔軟剤の香りや入浴剤の香りが大好きというのは何という皮肉だろうか。さらには、日本で食を美味しくするために使われるフレーバーは当然合成香料の賜物でもある。例えば、アイスクリームの味、かき氷のシロップ、飲み物、枚挙にいとまがない。

 また、「合成香料は危険で、天然香料は安全」という無知も度が過ぎる発言をする者もいて、どうしようもない場合も。天然のものでも重大なアレルギー反応を起こすものや死に至らしめるものはある。この世に絶対的な2分割などない。その良い例が合成香料である。

#artificial ingredients #man-made ingredients #synthetic #chemical

コンバイニング

 1つの香りでは飽き足らない、人間の知的好奇心が生み出した、2つの香りをミックスすることで香りを昇華させようという試みである。香水は調香師が香りの展開を考え作ったものだから組み合わせるのは香水の良さを損なうという派閥と、香水は自分の楽しみだからレイヤリングだって自由だという派閥が存在する。調香師の中でも意見は分かれるが、「使うのは購入者なのだから、その人が好きなようにしたら良い。私はあまり勧めないが。」というのが大方の意見のようだ。

 重ね付けを明確に推奨するブランドは、あらかじめシンプルな香りにしたり、香料を少なくしたりすることによって、重ねたときのカオスを防いでいる。つまり、レイヤリングを前提で作りながら、なおかつ1つの香りとしても成り立たせ、売れる香りを創るという高等技術である。

#combining #layering #mixology

さ行

シグネチャーセント

 自分のサインになる香りという意味で、香水を色々試したあとに気になり始める。いつも使って初めてその人のサイン=香水と自分の肌が一体となることが多いが、シグネチャーセントを探す人は、探すこと自体が目的となり、次から次へと香りを試すため、結果的に自分のサインを探し当てることができない事態に陥る。まずは好きな香りと暮らすのが肝要。

#signature scent #signature perfume #signature fragrance

シヤージュ

 香水をつけた人が通った場所に残る「香りの軌跡」をシヤージュと呼び、欧米では香水を評価する時の1つの項目となっている。日本においては、香りがその場にとどまった場合、ネガティブな印象を持たれやすく、香りの強さの指標になってしまっている。しかし、柔軟剤の通り過ぎた跡より、シヤージュにこだわった香水の残り香の方が良いに決まっている。

#sillage

た行

天然香料

 天然だから全てが良い、というわけではないが、香りの複雑さ・奥行きは合成香料と比べるまでもない。しかし、問題は天然の植物から抽出した精油は、天然の植物と同じ香りではないということだ。ローズの香りを生み出すとなったら、天然香料のローズだけではなく、合成香料をいくつか使うことで、よりリアルなローズの香りを生み出すことができる。天然香料と合成香料は切っても切れない縁なのである。

#natural ingredients

トップノート

 香水売り場で見かける「あ、この香り好き!」という大多数の声はこのトップノートのことを指している。儚くも30分後には香りが変わってしまうのに、最初の数分で好きな香りと断言して買った後にやっぱり違うとなるのは勿体ない。しかし、香りは直感だと信じて止まない人ほど最初の印象だけで決めやすく、また初心者はそんなこと露知らずのため、企業はこのトップノートの開発に予算をつぎ込むのである。
 最近では、ニッチフレグランスのブランドがこのことに声をあげ、自分たちはベースノートに最もお金をかけているということを強みにすることもあるが、昔は元々そうだったのだ。香りの嗜好が昔と今とで違うという考え方もできる。

#top note #head note

な行

ニッチフレグランス

 市場調査やマーケティングによって生み出された香水にうんざりしたとか、香水の最終決定権は経営層にあるため自分の作りたい香水が生み出せないことが嫌だ、というような理由から生まれた「芸術としての香水」を掲げるブランドのこと。このことから「ニッチフレグランスだからファッションフレグランスよりも良い香水を創っている」という迷信が生まれてしまい、現在では、価格設定がおかしいブランドや独創性の無いコピーフレグランスが多いブランドが生まれてしまった。「私たちはニッチフレグランスだから」とか「天然香料をたくさん使ってるんです」とか「高いから良い」といった謳い文句を並びたてている場合は必ず気を付けよう。そこに愛はあるのか。

 ニッチ自体は香水のフォーミュラを指しているのではありません。いつも言っているように、マーケティングの手法になってしまったのです。本当に面倒な話です。
 我々こそニッチフレグランスの元祖であり、パイオニアでした。2番目はフレデリックマルです。他のブランドはすべてニッチとは呼べませんし、意味あるブランドではないのです。

セルジュ・ルタンス

#niche fragrance #niche perfume

ノート

 ○○ノートという使い方で、複数の香料を組み合わせることで○○の香りを作った場合に使用する。ノートは音楽用語の音階に由来するが、音楽とは異なり7つのノートを使用して香水を生み出すことはあまりない。絵画のように色をたくさん使えば使うほど、無秩序に近づくからだ。

 ちなみに、このノートを2つ以上組み合わせて作った△△の香りを△△アコードと呼ぶ。

#note

は行

パフューマー

 フランスで調香師・パフューマーと言えば、1つの偉大な職業であり、大手の会社であれば、師匠のもとにつくジュニアパフューマーですらそれなりの給与がもらえる。しかし、悲しいかな、会社に所属する調香師が求められるのは、他の仕事と同じで、会社に従うことである。つまり、会社の指示と自身の考えを上手い具合に調えながら、売れる香りを生み出さなければならないのである。このため、彼らは、そのブランドがお金目当てなのか、素晴らしい香りを創りたいのか、を見分ける嗅覚も鋭い…のかもしれない。

#perfumer #nez #nose

賦香率(ふこうりつ)

 香水に与されている香料の割合のことをいう。ほとんど香りのしない水に香りをつけるというアイデアは、まさに天から授かった賜物であり、賦香とは素晴らしい単語である。
 一方で、少し香水を知るようになると急に発したくなるのがこの言葉でもある。そして、賦香率の高さを重視する人種が誕生するのであるが、これは一部の酒好きがアルコール度数を重視するのと同じようなものだ。すなわち、アルコール度数が高いから美味しい酒ではないように、賦香率が高いから良い香水というわけではない。賦香率の高い、高品質な香水」のような売り文句は、その香水への愛を説明しているわけでは決してないことに留意しよう。

#perfume concentration #ratio of alcohol

ブロッター

 ムエットとも呼ばれ、ブランドによって細長いものから正方形、長方形、円など多種多様な形をしている。元々、「ムエット(mouillette)」とは、フランス語でコーヒーや半熟卵に浸す薄く細長いパン切れを意味する。香水には元々スプレーなどついておらず、精油も基本的にはスプレーのない瓶におさまっているので、まさしく浸すわけである。
 一方、ブロッターの語源は、blot=吸着する・吸い取る、である。

#blotter #mouillette #scent strip #smelling-strip

ま行

ミドルノート

 調香師が最も表現したい部分と言われるが、実際、この部分を嗅いで香水の購入を判断するまで待つことができるのは、ミドルレベルの香水好きか、慎重なミドルエイジくらいだ。

#middle note #heart note

メインストリーム

 有名なファッションブランドやコスメブランドのフレグランスを言うが、ここ数十年はストリーム(流れ)の中流から上流にいる人ほど避けやすい。理由は明白で、調香師に〆切をもたせる(=完成していなくても完成になる)だけでなく、①マーケティングテストをすることで調香師の意図とは別の香りに変えてしまう、②結果的に似たような香水が生まれる(あの人気の香水をコピーしろという場合もある)、③売れた香りができれば「インテンス」「フレッシュ」など同じ香水のバージョン違いを量産する、④香りではなくキャッチコピーがメインの商売になってしまう、からだ。
 しかしながら、一流ブランドの資金を生かし、最高の調香師が良質な香料で調香することが多いため、最悪な香りにはならない。中には素晴らしい香りも誕生する。ニッチフレグランス(メゾンフレグランス)の台頭はメインストリームが広告を使うようになった1980年代後半から90年代。まだ30年しか経っていないわけである。数年も経たずにラインナップから人知れず消える香水を量産するメインストリームの香水の方が生き残っているのか、潤沢ではない資金の中で素晴らしい香りを追求していくニッチフレグランスの香水の方が生き残っているのか、あと四半世紀もすれば分かるだろう。

#mainstream #fashion fragrance #designers fragrance

メゾンフレグランス

 メインストリームに対し、香水を中心にブランドを展開しているフレグランスブランドのことを言う。かつては香水がメインであったゲランが、今ではコスメの方が目立っているのはLVMHの戦略なのだろうか。ゲランが興隆した頃とは異なり、現在のメゾンフレグランスは、時間とお金を惜しまず、調香師の芸術性に特化したニッチフレグランスブランドを指す。彼らは調香師愛護団体、芸術性愛護団体のようなもので、メインストリームの仕事が疲れた調香師たちの癒しの場となっている。しかし、ニッチブランドが増えすぎたため、現在ではメインストリームの香水よりもニッチブランドの香水の方が年間に発表される総数が多いようだ。中には「ニッチであること」をマーケティング戦略として使用しているブランドもあり、もはや訳が分からなくなっている。

#maison fragrance

ムスク

 「ムスクが好き」というのはよく聞くが、ムスクが何なのかを説明できる人はほとんど聞かない。「何か、セクシーな、色気を出すものでしょ?」と思っているのが大概だ。大きな間違いではない。

 ムスクとは、大別して3種あり、動物性・植物性・合成である。かつては動物性ムスクが香りに独特の奥行きとパワフルさ、艶やかさを与えるものとしてよく使われていた。動物性とあるように、麝香鹿(ジャコウシカ)の生殖器近辺にある腺から採れる分泌液がこの正体で、焼肉のタンやホルモンのように初めて知ると衝撃的だ。あまりに素晴らしい香りで、乱獲されたため、絶滅危惧種として保護され、今ではこの天然香料を香水に使うことはできない。
 この代わりに出てきたのが、合成ムスクと植物性ムスクであった。植物性ムスクはアンブレットシードなど香料自体が高価なものが多く、合成ムスクは安価で色々な香りのものが量産されている。比較的安いフレグランス商品(香水以外でも柔軟剤や芳香剤など)でムスクと書かれていたら大概が合成ムスク。日本人のいう「洗濯物の香り」とか「洗剤の香り」はまさに合成ムスクで、その香りの拡散力は動物性にひけをとらない。つまり、「洗剤の香りが好き」だけど「香水はキツイ」と言っている人は大抵自身が「香害」になっていることを知らず、ただ香水のつけ方を知らないだけなのだ。

#musk #musc

ら行

ラストノート

 最終局面であり、ここがしぼんでしまうと「第一印象は良いけど、次は無いかな」という出会いと同じになる。トップ・ミドル・ラストと聞くと、順番に香りが出てくるのかな?と思いがちだが、正確に言えば、最後まで肌に残っているのは何かという順序の方が合っている。すなわち、ラストノートとはベースノートとも言われるように、その香り全体を最後まで支え続ける地盤のようなものなのである。香りとは、とどのつまり分子の集合体であり、香水をつけなくとも肌に何かしらの香り分子は存在するため、あなたがつける香水とあなたの肌上に元々ある香りとが混ざりあった結果が”香り”なのである。「肌にのせると、最初の香りは良かったけど、最後の香りはあんまりだなぁ」となるのは、「土地(肌)と建築物の土台(ベースノート)の相性が悪かった」というもので、年齢や季節、食生活、住んでる場所が変われば、あなたの土地(肌)も相性の悪い香水が花開く土壌になる可能性は高い。

#last note #base note #dry down