序章
ミランダ・カーがミューズを務め、アレックス・イスラエルがパッケージをクリエイトしたこの香水は、「海へと誘う」香りとして生み出されました。すでに6作品が連なるLVのレ・コローニュ ライン。第7弾として産声をあげたのが本作。
パルファムドゥコローニュは、いずれもカリフォルニアをイメージした香りになっており、「日の出」をイメージしたカリフォルニアドリーム、「夕焼け」をイメージしたシティオブスターズに対し、パシフィックチルは、「海辺」をイメージした香りです。
この海辺のイメージは、アレックスと調香師のキャヴァリエが、シティオブスターズのお披露目会の際に、昼食を取りながらLAに対してどのようなインスピレーションがあるのか?を話していたことがきっかけでした。キャヴァリエにとっては、LAのインスピレーションの源は、カリブ海であり、はるか遠くにアジアがあり、そこで暮らす人々を想像することでした。
こんな話をしているうちに、「ビーチ」を元にした香りを創ることが決まったのです。ちなみに、アレックスが、パシフィック・パリセーズから美しい海の景色を見ながらハイキングすることが大好きという点も影響しているようです。
さらに面白いのは、その昼食のときにたまたまキャヴァリエが、4日連続で同じジュースを飲んでおり、「70年代にはウェルビーイングの代表だったものが、今ではすべて過剰になっているのだ」というコントラストに気づき、「人参とオレンジ、ブラックカラントを組み合わせたらどうなるのか?」と考えたところが調香の始まりだった点です。
現代に必要なチルい香水の誕生と考察
結果的に生まれたこの香りは、「ドラッグなんか使わなくてもリラックスでき、本当に楽しむことができる」というジャック・キャヴァリエなりの’chill’の意味を込め、「太平洋」と「平和」を意味するpacificと組み合わせたパシフィックチルという名になりました。
興味深いのは、マリンノートやオゾンノートが使われていないらしいにも関わらず、メロンにも似た、海辺を彷彿とさせる、アフタヌーンスイムの進化版のような香りがする点になります。
どのようにしてこの海辺の香りが生み出されたのかを邪推するに、アンブレットシードのアンバーグリスに近い柔らかなムスク調の部分と、これでもかと詰められたシトラス(オレンジ、シトロン、レモン)&グリーンさを感じるブラックカラント、この組み合わせが、さっぱりながらも海からくる潮風のような、塩っぽさを醸し出しているのではないか?
アンブレットシードは、かの有名なジョマロのウッドセージ&シーソルトやエルメスのエピスマリンのベースにも入っており、柔らかい陽の光を感じさせながら、ソルティーな感じを生み出す。 ここにミントが加わることでモヒートのような清涼感が生まれ、気分はさながらカリブの白砂輝くビーチでお酒を片手に、美しい海を見つめるかのよう。目の前に情景を浮かばせるのが素晴らしい調香師の技術。
それにしても、実はすべてのレ・コローニュシリーズにマリンノートを隠し込んでいたりして。 だって、彼はロードゥイッセイでマリンノートを駆使したのだから。