Heaven Scent(ヘブン セント)|海外で親しんだ香水の楽しみを、オスロにも

Heaven Scent(ヘブン セント)を題材にした編集イラスト。海外で親しんだ香水の楽しみを、オスロにも。ノルウェー・オスロ。

私たち自身が買い物をしたかった店。

クリスティアンネ・メディオー・オーモット、共同創業者

知らない名前の香水を前にしたとき、その一本へ手を伸ばすきっかけを作るのは何だろう。ノルウェーの首都オスロで2008年に始まったHeaven Scent(ヘブン セント)は、海外から選んだ香水と、それを説明する人の知識を一緒に届けてきた店である。

バイレードやディプティック、エディション ドゥ パルファム フレデリック・マル、メゾン フランシス クルジャン。異なる作り手の香水を扱うマルチブランドの専門店として、現在はオスロの3店舗とオンラインで展開する。その出発点には、幼なじみの2人が海外で出会った店や製品を、自分たちの街でも紹介したいという思いがあった。

基本情報

  • 名称:Heaven Scent(ヘブン セント)
  • 開店:2008年春、ノルウェー・オスロ
  • 共同創業者:Ingvild Toft Wæhler(イングヴィル・トフト・ヴェーラー)、Christianne Mediaa Aamodt(クリスティアンネ・メディオー・オーモット)
  • 業態:複数ブランドの香水・ビューティー専門店、オンラインショップ
  • 公式サイト:Heaven Scent

創業者2人がオスロに作りたかった店

海外での仕事と学びから、2008年の開店へ

クリスティアンネは子どもの頃から香りに関心を持っていた。1990年代に出会ったグタールのオー ダドリアンは、彼女にとって最初の「ニッチ香水」だった。後に世界のさまざまな地域で働き、30歳のとき、援助活動に関わる仕事を離れて香水店を始める道を選ぶ。パートナーになったのは幼なじみのイングヴィルである。

2人は海外で長く働き、学んだ経験を持っていた。製品やブランドへの情熱に加え、国外のショップのあり方も起業の刺激になった。長い計画と準備を経て、2008年春、マヨルストゥーエン地区のヤコブ・オールス通りに最初の店を開いた。

当時紹介したブランドは、ノルウェーではまだ大半が知られていなかった。2人が選んだのは、すでに名前の通った製品を並べるだけでは成立しない商売だったのである。香水を知ってもらい、その違いを伝え、選んでもらう仕事が必要だった。

私たちは、自分たちの店の構想を強く信じていました。

クリスティアンネ・メディオー・オーモット、イングヴィル・トフト・ヴェーラー

2人は起業について語る中で、外部投資家を入れず、自分たちで経営と店の方向を決めることを選んだと説明している。そのために、一段ずつ積み上げ、優先順位を厳しくつけてきた。海外の新しい名前を紹介する自由と、小さな店として事業を続ける判断は、切り離せないものだった。

エーゲルから路面店へ、2020年の拡張

最初の店の後、ヘブン セントは中心部の商業施設エーゲルへ移り、8年以上営業した。次の転機は2020年である。手狭になった売場を離れ、近くのウーヴレ・スロッツ通りの路面へ移転。同じ年には、創業したマヨルストゥーエン地区の商業施設ヴァルキリエンにも店を開いた。

中心部の店を大きくする一方、ヴァルキリエン店は小さく、より実験的な「妹」のような存在にする構想だった。単に同じ売場を複製するのではなく、立地と規模に応じて店の役割を変えようとしたのである。

その拡張の直後、感染症流行による営業制限が重なった。2021年、2店舗とオンラインを運営していたイングヴィルは、電話、FaceTime、SMS、メールでも顧客の相談を受けていた。香水を直接嗅げない状況でも、必要な助けを届けようとした。

以前からのお客様にも新しいお客様にも、必要な手助けが届くよう、私たちは最善を尽くしています。

イングヴィル・トフト・ヴェーラー、2021年

試香と対話に支えられた店にとって、閉店中も商品を発送するだけでは十分ではなかった。香りの説明や個別の相談を別の手段に置き換えたことに、接客を店の中心に置く姿勢が表れている。

歴史年表

時期 出来事
2008年春 イングヴィルとクリスティアンネが、オスロのヤコブ・オールス通りに最初の店を開く。
その後 中心部の商業施設エーゲルへ移転。2020年の移転発表時点で8年以上営業。
2020年 中心部の店をウーヴレ・スロッツ通りの広い店舗へ移し、ヴァルキリエンにも出店。
2021年 営業制限下、電話やFaceTimeなどを通じて相談に対応。
2026年10月確認 公式案内に中心部の本店、ヴァルキリエン店、オスロブクタ店の3店舗を掲載。

世界の香水を集める選品と、好みを広げる接客

著名な香水メゾンと新しい作り手を並べる

ヘブン セントの品揃えは、特定の自社香水を主役にしたものではない。公式の香水売場には、バイレードのブランシュやジプシー ウォーター、ディプティックのフィロシコスやタム ダオなど、ブランドを横断する作品が並ぶ。フレデリック・マルやメゾン フランシス クルジャンに加え、メゾン クリヴェリ、ドルセー、オルメといった名前も扱う。

創業者2人は現在も選品に直接関わり、原料、職人仕事、ブランドの姿勢、その製品ならではの特徴を基準として掲げている。香水だけでなく、室内の香りやスキンケア、ヘアケア、メイクアップまで扱うが、品数を増やすこと自体を目的にはしていない。

北欧の作り手も、この選品の一部である。スタッフのヘニア・ガンボルグ・ショールスヴィークは2010年から店で働き、自身の香水ブランド、カリットも立ち上げた。店はその香水を扱う一方、ソン ヴェナンなど別のノルウェーの作り手も紹介する。国際的なメゾンと地元の新しい香水を、一つの店で知ることができるのである。

ベストセラーを押すより、知らなかった香りへ案内する

創業者たちが大切にしているのは、十分に時間を取り、本人に合う香りを探すことだ。オスロブクタでの対話では、売れ筋を押しつけるのではなく、香りの好みが育っていくことを、食やワインになぞらえて説明している。

初めは好みの幅が少し狭く、好きになれないものもあります。でも、好みは時間とともに育つのです。

ヘブン セントの創業者たち

知らなかった香りを紹介し、試す範囲を少し広げる。それがこの店の考える案内である。イングヴィルは、開業当初には自分を象徴する一本を求める人が多かったのに対し、次第に衣服のように複数の香りを使い分ける人が増えたとも語っている。長く店に立つことで、顧客が香水に求める役割の変化も見えてきた。

オンラインにも、好みを探るための入口がある。香りの系統や素材のほか、調香師から製品をたどる「Handle etter nese」という分類が用意されている。ブランドの名前だけで選ぶのではなく、どのような香りか、誰が作ったかという視点で売場を歩ける構成だ。

現在の3店舗と、それぞれの品揃え

2026年10月時点の公式案内では、3店舗は同じ規模・同じ品揃えではない。中心部の本店は全取扱ブランドを扱い、ヴァルキリエンは小さな面積に選び抜いた商品を置く。オスロブクタ店にはフレデリック・マルやドルセー、オルメなども並ぶ。

店舗 公式案内の住所 売場の特徴
本店 Øvre Slottsgate 27, Oslo 全取扱ブランドを扱う中心店舗。メゾン フランシス クルジャンやメゾン クリヴェリなども掲載。
ヴァルキリエン Valkyriegata 3, Oslo 最も小さな店舗。ディプティック、バイレード、サンタ・マリア・ノヴェッラ、イソップなどの選抜商品と季節の提案。
オスロブクタ Operagata 75C, Oslo ディプティック、バイレード、フレデリック・マル、ドルセー、オルメなどを扱う。

これは店舗ごとの取扱方針であり、訪問日の在庫や全商品のテスターを保証するものではない。特定の作品が目当てなら、公式の店舗案内から確認しておくとよい。

ヘブン セントが掲げる言葉は「Buy less, choose well」。少なく買い、よく選ぶという考え方である。海外の知られざる名前をオスロへ持ち込んだ出発点から、複数のメゾンを紹介する現在まで、その「よく選ぶ」ための知識と時間を提供することが、店の仕事として続いている。

参考文献