The Fragrance Foundation(ザ フレグランス ファウンデーション)|米国の香水業界を結ぶ歴史、賞と人材教育

The Fragrance Foundation(TFF US)— 試香紙、香料の試料瓶、ノートを配した温かなスティルライフ。香りを広め、人を育てる。 香りの世界を広げる

私たちは、業界のためのリソースなのです。

— リンダ・G・レヴィ(2017年)

香水の箱や広告に、The Fragrance Foundation Awardsという名を見かけることがある。「香水界のアカデミー賞」とも呼ばれる賞だが、その背後にある団体は、授賞式だけを仕事にしているわけではない。

ザ フレグランス ファウンデーションは、米国で香水をつくる企業、香料会社、販売店、メディアなどを結ぶ非営利の業界団体である。香水を世の中にどう伝えるか。その仕事を担う人をどう育てるか。そして、業界の創造性をどのようにたたえるか。賞、教育、交流、一般への発信は、その問いへの異なる答えである。

1949年に始まった団体の歴史には、休止寸前の組織を立て直したアネット・グリーンの姿がある。彼女が変えようとしたのは、香水の売り方だけではなかった。香水を使うこと自体を、もっと身近な習慣にするという課題であった。

基本情報

  • 名称:The Fragrance Foundation(ザ フレグランス ファウンデーション)。本記事は米国の組織、TFF USを扱う
  • 設立:1949年、ニューヨーク
  • 創設に参加した企業:シャネル、コティ、エリザベス アーデン、ゲラン、ヘレナ・ルビンスタイン、パルファン・ヴェイユ
  • 組織の性格:香水業界の会員企業による非営利組織
  • 現在の運営:Presidentはリンダ・G・レヴィ。イベント・教育・Give Backを担当するExecutive Directorはシャーネ・ジャクソン
  • 会員:香水ブランド、香料会社、小売、メディアなど100社以上
  • 公式サイト:The Fragrance Foundation

役職と会員の規模は2026年10月時点の公式表記に基づく。英国やフランスにも同名の団体があるが、それぞれの賞、教育活動、運営の歴史を、米国のものと置き換えることはできない。

TFF USは、中立独立の消費者評価機関でも、公的な規制機関でもない。香水の創造性と価値を伝え、業界を育てる立場の組織である。その立場を知ることが、活動にも賞にも、適切な距離で関心を持つ出発点になる。

設立と、アネット・グリーンが変えた香水の習慣

1949年、ブランドの競争を越えて市場を育てる

創設企業の顔ぶれには、フランスの香水メゾンと米国の化粧品企業が並ぶ。個々の香水を売る企業が集まって、香水そのものへの理解を広げる組織をつくったのである。

当時の米国では、香水を毎日使う習慣を広めることが課題だった。グリーンが後に記した当時の姿は、土曜の夜の装いに、耳の後ろへ少量の香水をつける女性たちである。一つの香りを持ち、ブランドをめったに変えない。香水は特別な機会のための品であり、男性から女性へ贈られる贅沢品という位置づけも強かった。

この市場で必要だったのは、「自社の香水が優れている」という広告に加えて、香水を使う場面そのものを増やす働きかけであった。使う人と機会が広がれば、競争する企業に共通する土台も大きくなる。

設立当年の業界誌には、その共同作業の輪郭が残る。1949年12月、TFFの会長J・S・ヴィードホプフは、企画、財務、業界との関係、会員、販促の五つの委員会を任命している。企画委員会では自身がパルファン・シロの所属で記され、業界関係委員会はコティのジャン・デプレが率いた。シャネルのH・グレゴリー・トーマス、ランバンのウォーレン・ケインらも名を連ねる。会員委員会には香料会社フィルメニッヒの関係者が、販促委員会にはエリザベス アーデンやヘレナ・ルビンスタインなどの担当者が参加した。

創設企業の六社と、設立後の委員会に参加した企業は同じ範囲ではない。この早い時期から、ブランドだけで完結せず、香料、販売、広報を結ぶ形が見えてくる。

編集者から香水会社の広報へ

アネット・グリーンは、1949年の創設者ではない。後に団体を再建し、約40年にわたって方向を形づくった人物である。

1924年生まれのグリーンは、ニューヨーク大学やニュースクールでジャーナリズムを学び、ハーストの業界誌『アメリカン・ドラギスト』で仕事を始めた。編集補助として働き、若い女性に向けたコラムも担当した。その後は美容教育に関わるニュースレターの編集、販売教育、美容誌、新聞の女性向けページなどを経験している。

彼女を香水企業へ迎えたのが、レンテリックの社長ジャック・モーアだった。グリーンは同社の広報責任者となる。文章を書く仕事に、商品を伝える仕事、販売する人を支える仕事が重なった。香水を化学的につくる専門家としてではなく、人々の暮らしと商品の間をつなぐ人物として、業界に入ったのである。

やがて自分のマーケティング・広報会社、アネット・グリーン・アソシエイツを立ち上げた。TFFの再建を頼まれたのは、その独立後のことだった。

1962年、弱っていた団体を立て直す

1950年代末には、TFFは業界の支援を失い、活動が立ち行かなくなっていた。モーアがグリーンに再建を相談したのは1961年。1962年、彼女はExecutive Directorに就任した。

グリーンは、自分の会社の無償の仕事としてTFFを引き受けた。団体が必要だと言うだけでは、会員は戻ってこない。ランバンのエドゥアール・クールナン、シャネルのグレゴリー・トーマスら、以前からの関係者と新しい参加者を集め、業界にどんな企業があるかを調べた名簿もつくった。

組織を立て直す仕事は、まず人と情報をつなぎ直すことだった。そのうえで彼女は、米国の暮らしの変化を、香水業界が考えるべき問題として持ち込んだ。女性の職場への進出や、街から生まれる新しい文化を、企業向けのセミナーで取り上げている。

当時のグリーンにとって、香水の市場は高級ファッションのサロンだけを見ていては分からないものだった。ヒッピー文化とムスクへの関心も、香水の発想が街から業界へ入ってくる動きとして捉えていた。

「香りのワードローブ」を日常へ広める

1960年代後半、グリーンは「香りのワードローブ」という考え方を打ち出した。服の色や装いを場面に合わせるように、香りも季節、気分、機会に合わせて選ぶという提案である。

私の目標は、香りをまとうことをファッションと結びつけることでした。

— アネット・グリーン(2000年)

これは、一生変えない「自分の香り」を否定する話ではない。香水との付き合い方に、複数の選択肢を加える働きかけだった。グリーン自身、考え方が定着するまでに約10年かかったと記している。

彼女は「perfume」だけでなく、コロン、トワレ、入浴関連の製品も含む「fragrance」という広い捉え方を重視した。特別な日の高価な贈り物に限らず、暮らしのさまざまな場所へ香りを置く。業界にとっては市場を広げる提案であり、使う人にとっては、香水の格式を少しほどく提案でもあった。

TFFが人々の好みを一つに決めたわけではない。選ぶ機会と、香りを使う理由を増やすことが、彼女の仕事の中心にあった。

1973年、創造性をたたえる賞が始まる

グリーンが構想した年次の賞は、1973年に初めて開催された。会場はニューヨークのプラザホテルで、参加者は約250人。初回の受賞香水にはシャネルの「N°19」があった。

香水は、調香師だけで完成するものではない。香りの開発、ボトルとパッケージ、ブランドの企画、販売や伝達が組み合わさって、人の手へ届く。業界が共同で創造性を表彰する場を持つことは、その仕事を社会に見せる方法にもなった。

1980年代には参加者が1,000人を超える規模へ育った。一方、親しまれる「FiFi(フィフィ)」という呼称には、賞の開始とは別の経緯がある。出版人ジョン・レデスが1989年にこの名を考案し、広めた記録が残る。賞そのものの出発を1973年、呼称が広まった出来事を1989年として分けると、長い歴史が見通しやすくなる。

大学教育、研究、香水の歴史へ活動を広げる

グリーンは、業界の未来を販売促進だけに託さなかった。FIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)と関わり、化粧品と香水の仕事を学べる教育を育てた。

FITのシャーリー・グッドマンに相談したことから、グリーンが週に一度教える機会が生まれ、学部長ジャック・リッテンバーグが教育課程への発展を提案した。最初のカリキュラムを形にしたのは、化学者で化粧品開発者のヘイゼル・ビショップである。グリーンは業界の専門家が教育内容を支えるAction Councilを組織した。

FITの記録では、1978年に化粧品・香水・トイレタリーの準学士課程がレブロンの支援を受けている。さらに学士教育へと発展し、1994年には業界の資金協力によって、アネット・グリーン・フレグランス・ファウンデーション・スタジオが設けられた。1999年には化粧品・香水のマーケティングとマネジメントを扱う大学院課程が加わる。

大学の教育は、企業が一つの商品を説明する研修とは異なる。原料や製品を知り、科学、企画、販売、経営をつなぐ仕事を学ぶ。そのために大学と業界を結びつけることも、TFFの役割になった。

活動は嗅覚の研究や歴史にも広がった。1981年には嗅覚研究を支える組織が生まれ、後にSense of Smell Instituteの名で活動した。1999年11月には、TFFでアネット・グリーン・ミュージアムが開かれ、設立から50年の歩みを米国社会の変化とともに展示している。これらは当時の展開であり、現在のTFFが博物館や研究所を同じ形で運営しているという意味ではない。

グリーンは2002年に退任した。2018年には回想録『Spritzing to Success』を刊行し、2026年10月に公表された訃報では102歳での逝去が伝えられた。現在の代表レヴィにとっても、就任後のメンターであり、友人であり、支援者だった。

ロシェル・ブルームから、現在の運営へ

グリーンの後には、ロシェル・ブルームが団体を率いた。2012年10月にはエリザベス・ムスマンノがPresidentに就任する。ディオールやヴェラ・ウォンなどでマーケティングと広報に携わり、自身の会社も持つ人物だった。

ムスマンノは、業界の内輪で知られる組織を、消費者にも届く存在へ育てようとした。2013年には、賞の名称を「Fragrance Foundation Awards」として打ち出し、FiFiという愛称から公式な団体名へ重心を移した。会員への価値と一般の認知を高めるため、芸術、ファッション、他業界の知見との接点も探っている。

香水の世界をほかの産業と結びつけ、逆の方向にもつなげていきます。

— エリザベス・ムスマンノ(2013年)

2017年9月5日にはリンダ・G・レヴィが就任した。直前の職務はメイシーズのオムニチャネル部門で香水を担当する副社長兼商品部門責任者。香水が店頭でどう紹介され、どう選ばれるかを知る、小売の経験を持っていた。

レヴィは、ブランドの物語、調香の芸術性、主要な素材を伝える販売員の仕事を重視した。同時に、独立系ブランドとの関係を広げ、小さな交流の場や専門能力の開発を増やす方向を示す。2018年にはFragrance Day、2019年にはデジタル媒体『Accords』と週刊ニュースレター『Noteworthy』、2021年には人材への入口を広げる取り組みが始まった。

香水を使う人を増やすという初期の課題は、香水を伝える人と、業界で働く人の範囲を広げる仕事へつながっている。

TFF USの主な年表

年 出来事
1949年 ニューヨークで設立。業界の共同活動が始まる
1961年 ジャック・モーアがグリーンに団体の再建を相談
1962年 グリーンがExecutive Directorに就任
1960年代後半 「香りのワードローブ」を提案
1973年 プラザホテルで初回の年次授賞式
1981年 嗅覚研究を支援する組織が発足。後のSense of Smell Institute
1989年 ジョン・レデスがFiFiの呼称を考案し、広める
1994年 FITにアネット・グリーン・フレグランス・ファウンデーション・スタジオが設けられる
1999年 FITの関連大学院課程が成立。同年11月、TFFでグリーンの名を冠したミュージアムが開館
2002年 グリーンが退任
2012年 エリザベス・ムスマンノがPresidentに就任
2013年 賞の名称をFragrance Foundation Awardsへ刷新
2015年 初回のNotablesが選ばれる
2017年 リンダ・G・レヴィがPresidentに就任
2018年 3月21日のFragrance Dayキャンペーンを開始
2019年 『Accords』『Noteworthy』を開始
2021年 Scents of Successと、代表性・包摂性への誓約を開始
2024年 団体の設立75周年
2026年 教育・一般への発信を継続。10月、グリーンの逝去を公表

業界団体として、企業と香水好きに何を届けるのか

ブランド、香料会社、小売を結ぶ会員組織

TFFの会員は企業単位で、会員企業の米国組織の従業員も会員の利益を受けられる。公式名簿には、シャネルやコティ、エスティ ローダー カンパニーズといった企業だけでなく、ジボダン、IFF、マン、ロベルテなどの香料会社、メイシーズ、ノードストローム、セフォラなどの小売も並ぶ。

会員が得るのは、交流、教育、賞への応募やイベント参加の会員料金、媒体での紹介、団体の運営へ参加する機会などである。香料会社には創作を伝える場が、ブランドには協働と発信の場が、小売には商品を伝える人を育てる場がある。

理事会にも、ブランド、香料会社、小売などの関係者が参加する。この構造は、業界の幅広い仕事を持ち寄れる強みである。同時に、TFFの判断が業界の関心から独立した消費者テストではないことも示している。

一般の香水好きに届くのは、公開記事、調香師の対話、店頭や文化施設でのイベント、Consumer Choiceへの参加などである。すべての活動が一般向けではないが、普段は瓶の後ろに隠れている作り手や仕事へ触れられる機会をつくっている。

賞は、香りだけでなく香水を届ける仕事をたたえる

現在のFragrance Foundation Awardsには、Fragrance of the Yearを中心に、Perfume Extraordinaire、Indie Fragrance、パッケージ、メディアキャンペーン、記事、革新など、異なる仕事を評価する部門がある。2026年の公式発表では、Fragrance of the YearにPopular、Prestige、Luxury、Ultra Luxuryなどの区分があり、女性向け、男性向け、Universalの枠組みも用いられている。

部門が違えば、評価している対象も違う。パッケージの賞を、その香り自体の最高評価として読むことはできない。人物や企業の長年の貢献をたたえるHall of Fame、Lifetime Achievement Perfumerも、ある年の新作を競う賞とは別の意味を持つ。

2026年には、Hall of Fameをノードストロームが、Lifetime Achievement Perfumerをオノリーヌ・ブランが受けた。長く香水を届けてきた小売と、香りをつくってきた調香師が並ぶところに、この賞が業界全体の仕事を見ていることが表れている。

この表彰は、情熱、創造性、喜びに捧げてきたキャリアを映し出すものです。

— オノリーヌ・ブラン(2026年)

オノリーヌ・ブランのような創作者の歩みを知ると、受賞という一行の背後にも、長年の仕事が見えてくる。

会員投票、専門家審査、消費者投票を分けて読む

応募は、部門ごとの条件に合う香水や関連製品を発売した企業であれば、会員・非会員の双方に開かれている。応募資格と投票資格は別である。

選考の基本は、会員投票、特定の部門に合わせた専門家パネル、Consumer Choiceの消費者投票という三つの経路に分かれる。どの部門も一般の香水好きが投票して決めるわけではなく、全賞が同一の審査方法で選ばれるわけでもない。

会員投票にも、企業ごとに一票という単純な仕組みとは異なる点がある。公式の会員案内は、米国での香水売上高に応じて投票権を設定している。2026年の通常会員用資料では2票、6票、12票、18票の区分があり、Indie会員用資料では1票とされる。これは会員が投票する対象部門の制度であり、専門家審査や一般投票の票数を説明するものではない。

したがって受賞は、応募条件とその部門の選考を通じて、業界や参加者から認められたことを示す。世界中の全香水を同じ条件で比較した順位、安全性の公的認証、すべての人に合う香りの保証として受け取る性格のものではない。

Consumer Choiceで一般の投票が届く範囲

Consumer Choiceは、香水好きが選考に参加できる部門である。ただし、好きな香水を自由に一つ書いて、過去の全作品から年間王者を決める仕組みではない。団体が示す対象候補の中から選ぶ。

2026年の米国版では、女性向け・男性向け・Universalを含む候補が、価格区分として「101ドル以上」と「100ドル以下」の二つに分けて発表された。一方、最終の受賞一覧ではConsumer ChoiceをLuxury & PrestigeとPopularの名称で掲載している。候補発表時の価格区分と、受賞一覧の部門名を区別して読む必要がある。

米国での候補、部門、投票期間はその年の案内による。英国やフランスの一般投票の対象と、そのまま同じものではない。ブランドの支持者が投票へ参加する賞でもあるため、一般投票という言葉を、無作為に選ばれた消費者の比較試験と同義にすることもできない。

賞を見るときには、受賞年、国、部門を一緒に読む。その三つが分かるだけで、受賞マークの意味はずっと具体的になる。

教育と人材育成で、香水の仕事への入口をつくる

香りを説明する人を育てるオンライン教育

香水を売る人は、香りの名前や素材を覚えるだけでは足りない。嗅覚の仕組みを知り、試香の変化を理解し、相手の好みや経験を聞き取って、言葉を選ぶ必要がある。

TFFが現在案内しているオンライン講座「Fragrance Escentials」は、香水の歴史、香りの変化をたどるScent Journey、嗅覚、消費者の体験を扱う。業界の知見と専門家の助言を、香りを学ぶ基礎へ組み直す講座である。

これは、調香師の長期養成課程や公的資格とは異なる。商品を紹介し、香りを理解するための基礎教育として位置づけられる。2017年にレヴィが説明したFragrance Academyなどの販売員教育と、現在の講座名を同一の制度名として混ぜることも避けたい。

2025年11月には、レナード・ローダーの功績を記念し、香水業界を志す大学生らへ2026年にこの講座を無償提供する計画を発表した。業界で功績をたたえることを、次の世代が学ぶ機会へ結びつけた例である。

Scents of Successで、知られていない職業を見せる

「Scents of Success」は2021年に始まった、学生に香水業界の仕事を紹介する教育プログラムである。大学でのキャリアワークショップ、パネル討論、メンタリング、就職関連の催しを通じて、仕事への入口を示す。

このプログラムを始めたシャーネ・ジャクソンは、会員たちから、自分の仕事の始まりを聞いていた。多くの人が偶然に業界へ入り、その後で香水への情熱を見つけている。その話は、香水の仕事が、学生にとって初めから選べる進路として十分に知られていないことを示していた。

そのとき、もっと教育と代表性、そしてアクセスが必要だと感じたのです。

— シャーネ・ジャクソン(2026年)

最初のキャリアセッションは、2021年10月、ジャクソンの母校スペルマン大学で開かれた。スペルマンは、歴史的に黒人学生の高等教育を担ってきた大学、HBCUの一つである。ジャクソンとレヴィがともに進めた取り組みは、香水を購入する人の多様さを、つくり、企画し、経営する側にもつなげようとするものだった。

香水の仕事は調香師だけではない。マーケティング、販売、製品開発、運営、経営、財務にも道がある。瓶や広告の背後にどんなチームがいるかを知ることは、香水に興味がある学生が、自分の能力と仕事を結びつける手がかりになる。

2026年10月時点の公式教育ページは、20を超えるキャンパス、約2,000人の学生に届いたと案内している。ただし、その数字は参加の広がりを示すもので、就職者数ではない。入口をつくることと、採用や昇進へ結びつくことは、異なる段階の仕事である。

Notablesと会員企業の協力で、次の担い手を育てる

2015年に最初のクラスが選ばれたNotablesは、業界の次の担い手を認める取り組みである。会員企業は候補を推薦でき、Notablesには、団体の今後の企画を考える定期的なThink Tankへの参加機会がある。

完成した業績をたたえる大きな賞に加えて、これから仕事を広げる人にも発言の場をつくる。大学とのつながり、販売や香水の基礎教育、企業で働く人の専門能力の開発は、それぞれ違う段階を支えている。

2021年には、代表性、尊重、包摂性への責任を引き受け、さまざまな背景の人がキャリアを築く障壁を減らすという#FragranceForwardTFFの誓約も生まれた。2023年にはニューヨーク・アーバン・リーグとのCatalyst Initiativeを開始し、香料会社、ブランドのマーケティング・教育、小売の仕事を紹介する交流を実施している。

業界が一緒に人材の入口を広げるという目標は、会員企業による組織だからこそ実行できる面がある。その成果は、誓約の言葉だけでなく、学ぶ機会と実際の仕事がどうつながるかによって見えてくる。

一般への発信と、調香師に出会う場

Fragrance Dayを、試香と学びの機会にする

TFFは2018年から、3月21日のFragrance Dayを軸に、香水の発見を促すキャンペーンを展開している。ブランドと小売の店頭企画、オンライン発信、芸術家との協働など、香水へ触れるきっかけをまとめてつくる活動だ。

2026年のマイアミでは、3月10日にマイアミビーチ植物園で調香師のパネルが開かれた。レヴィが進行し、オノリーヌ・ブラン、ロドリゴ・フローレス=ルー、パティ・イダルゴ、ジノ・ペルコンティーノが、花や植物と創作の関係を語った。

翌11日には「5000 Role Models of Excellence Project」の学生を迎え、庭園を歩く体験と、調香師による香りづくりや花の素材の話を組み合わせた。授賞式で名を知る調香師が、植物を前に創作を伝える人にもなる。一般への発信と次世代の教育が、同じ企画の中で結びついた例である。

Accordsで、香水をつくる人の声を届ける

2019年に始まった『Accords』は、香水と文化、コミュニティーの関係を扱うデジタル媒体である。週刊ニュースレター『Noteworthy』とともに、イベントの日だけでは届かない情報を継続して伝える。

業界団体が発信する媒体であり、会員の活動や新作を紹介する役割も持つ。その性格を踏まえて読むと、普段は見えにくい調香師、企画担当者、小売、教育の仕事へ目を向ける入口になる。

香水を評価し、自分の好みを確かめる営みと、業界の仕事を知る営みは、同じではない。それでも、誰が香りをつくり、誰がその背景を伝え、どんな人が次の仕事を担うのかを知れば、一つの瓶の見え方は変わる。TFF USの歴史をたどる面白さは、香水を取り巻くその大きな共同作業に触れられるところにある。

補足

FITの教育史では、TFFの年表が1994年を学部課程の成立として掲げる一方、大学側には1978年の準学士課程と、それに続く学士教育の記録がある。1994年のスタジオ設置と教育課程の始まりは分け、本記事は大学側の記録に沿って記した。

参考文献

  1. リンダ・G・レヴィの就任時の対話 — Fragrantica
  2. 組織の目的・会員・国際的な関係 — The Fragrance Foundation, About
  3. 創設企業とグリーンの回想録の書評 — International Perfume Bottle Association
  4. 運営チーム・理事会・委員会 — The Fragrance Foundation, Who We Are
  5. 設立からの主要年表 — The Fragrance Foundation, Our History
  6. グリーン自身による団体再建、ワードローブ、賞、研究・展示の回顧 — Perfumer & Flavorist, September/October 2000
  7. 1949年12月の五委員会任命記事 — The American Perfumer and Essential Oil Review
  8. グリーンの経歴と再建・教育活動に関する口述史の概要 — FIT Archive on Demand
  9. グリーン自身による香水の習慣と活動の回顧 — Healthy Aging
  10. ジョン・レデスとFiFi呼称の成立 — Perfumer & Flavorist
  11. FITの1978年の教育課程などを記す年表 — FIT, 2013–2014 Annual Report
  12. ペグ・スミスの口述史概要:教育課程、Action Council、1994年のスタジオ — FIT Archive on Demand
  13. アネット・グリーン追悼文 — The Fragrance Foundation, October 2026
  14. グリーンの逝去と退任時期 — Perfumer & Flavorist, October 9, 2026
  15. ムスマンノの就任 — Perfumer & Flavorist, October 2012
  16. ムスマンノの改革と賞の名称変更 — Perfumer & Flavorist, June 2013
  17. 会員制度と特典 — The Fragrance Foundation, Membership
  18. 2026年授賞式と特別表彰 — The Fragrance Foundation, Awards
  19. 2026年の受賞部門一覧 — The Fragrance Foundation
  20. 応募資格と三つの投票方法 — The Fragrance Foundation, FAQs
  21. 2026年通常会員の投票権 — The Fragrance Foundation
  22. 2026年Indie会員の投票権 — The Fragrance Foundation
  23. 2026年Consumer Choiceの価格区分と候補 — The Fragrance Foundation, Awards Luncheon
  24. 現行の基礎講座とScents of Success — The Fragrance Foundation, Education
  25. 学生への講座提供計画 — The Fragrance Foundation, Circle of Champions 2025
  26. シャーネ・ジャクソンの対話:Scents of Successの動機と歩み — ESSENCE, October 2026
  27. Catalyst Initiativeと職業紹介 — The Fragrance Foundation, #FragranceForwardTFF
  28. Fragrance Dayの活動 — The Fragrance Foundation
  29. 植物園での調香師パネルと学生向け体験 — The Fragrance Foundation, Fragrance Day 2026 – Miami