SHIRO(シロ)|北海道の大地から生まれた、正直なものづくり

シロの世界観と代表製品「SAVON EAU DE PARFUM 22 40ml」を表現したブランドイメージ ブランド創業者

「世の中にすでにあるもので『儲かりそうだから、ここで勝負しよう』というのではなく、世の中になくて、もっとこういうものがあったらいいのにと思うことを見つけてものづくりをしたら、今のSHIROができました。」

— 今井浩恵(SHIRO ファウンダー/ブランドプロデューサー)

基本情報

設立: 1989年(前身の株式会社ローレルとして設立)。自社コスメブランド「LAUREL(ローレル)」として2009年にスタート。2015年に「shiro」へ改称し、2019年に現在の「SHIRO」へリブランディング。

創設者: 今井浩恵(いまい・ひろえ)。現在は代表取締役会長兼ファウンダー/ブランドプロデューサー。

公式サイト: https://shiro-shiro.jp/

創設者・ブランドの成り立ち

北海道・砂川市という土台

SHIROの物語は、北海道砂川市にある農場から始まる。1974年、北海道旭川市生まれの今井浩恵は、室蘭の短大を卒業後、就職活動の合同説明会に友人の付き添いとして参加した際、偶然ローレルのブースに立ち寄り、入社を決めた。当時のローレルは、東京ドーム約10個分の広大な農場を持ち、テレビドラマ「北の国から」(1981年〜)をきっかけにラベンダー人気が高まった北海道で、観光土産品(ハーブ石鹸・ポプリ・ジャム・ドレッシングなど)の製造販売を手がけていた。

化粧水開発という転機

1990年代に入り、バブル崩壊で日本経済が悪化する中、ローレルの食品事業は堅調だった。しかし1998年、転機が訪れる。大手企業から化粧水の開発依頼が舞い込んできたのだ。今井は社員の一人として、未経験ながらそのプロジェクトを担当し、「ハーブウォーターミスト」を完成。開発から製造まで、すべての工程を自ら経験した。

この経験は、のちのSHIROの礎となった。

26歳での社長就任とOEM事業

2000年、今井は26歳という若さで創業者から事業を引き継ぎ、ローレルの代表取締役社長に就任する。彼女は会社を食品・雑貨製造から化粧品製造へと舵を切り、自社工場を武器に次々と取引先企業を開拓。やがてシャンプーやボディケアなどの生活雑貨のOEM(オーイーエム、相手先ブランドでの製造受託)を本格的に手がけるようになり、130ブランド以上に供給するほどの規模へと成長した。

しかし、その成功の中で今井はある違和感に気づく。

「ある日、私どもはメーカーにとって一番大切な『お客さまが喜んでいる顔が見えない』ということに気が付きました。」

— 今井浩恵

OEMで請け負う側にいる限り、ブランド側からはコスト削減の圧力がかかり、素材の品質を妥協せざるを得ない場面も生じていた。ものづくりの喜びは、あくまでも「自分たちが本当に使いたいものをつくること」にある——その信念が固まっていった。

自社ブランド「ローレル(LAUREL)」の誕生(2009年)

2009年、今井は「自分たちが毎日使いたいものをつくる・提供していく」という信念のもと、自社ブランド「LAUREL(ローレル)」を立ち上げる。初期アイテムには、フラスコ型のシャンプーやコールドソープが並んだ。地中海原産のローレル(月桂樹)を日本で初めて直輸入することにも成功し、「素材の良さをシンプルに届ける」というブランドDNAが生まれた。

2011年には、スキンケアライン「sozai LAUREL(ソザイ ローレル)」をスタート。北海道の「がごめ昆布」(水に入れると膨潤する特殊な粘性を持つ昆布)や「酒かす」(日本酒製造の副産物で豊富な栄養を含む)など、食品副産物として扱われがちだった身近な素材に着目した製品づくりを開始する。産地を直接訪ね、生産者と対話しながら素材を選ぶというスタイルも、このころ確立した。

「一般的なコスメティックメーカーは植物エキスなどをドラム缶で購入し、そのエキスがどんな原料から、どういう工程でつくられているのかを知らずに使っていることがほとんどです。SHIROは原料から徹底してこだわっているので、その差は非常に大きいと思います。」

— 今井浩恵

「シロ(shiro)」へのリブランディングと世界展開(2014〜2018年)

2013年にはOEM事業から完全撤退し、2015年にブランド名を「LAUREL」から「shiro」へ変更。砂川本店のほか、シロ カフェ(shiro cafe)、シロ ビューティー(shiro beauty)も次々とオープンした。翌2016年には海外第1号店として、ロンドンのキングズ・ロードに出店する。

「We wanted to establish our place within one of the largest cosmetics hubs in the world(世界最大規模のコスメティックハブの一つに、私たちの場所を確立したかった)。」

— Hiroe Imai(今井浩恵), ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion、2018年)

ロンドンへの出店は単なる海外進出ではなく、今井にとってブランドの根本を見直す契機ともなった。

「海外に店舗を構えたとき、ロゴを含むかつての『shiro』はどこか弱々しかった。正直、『世界では戦えないな』と感じました。」

— 今井浩恵, WWDジャパン(ダブリューダブリューディー ジャパン、2020年)

この経験が、その後の大規模リブランディングへとつながっていく。2018年にはニューヨーク出店も果たした。

「シロ(SHIRO)」へ——10周年の決断(2019年)

2019年、自社ブランド誕生から10周年を迎えた節目に、今井はロゴを小文字の「shiro」から大文字の「SHIRO」へ、パッケージを一新するリブランディングを断行。シンプルさはそのままに、ネイビーカラーと大文字ロゴで「世界で戦えるブランド」としての存在感を打ち出した。

ただし、このリブランディングはSNS上で一部ファンから「#改悪」というハッシュタグとともに批判を受けることにもなった。今井はその声をこう受け止めている。

「『私たちの想いを、消費者の皆さんには伝えられていなかったんだ』と反省しました。(中略)販売を終了した製品にも多くのファンがいてくださったことを再確認し、正直、驚きました。製品が、多くの皆さんの生活に根付いていることを気づかせてくださいました。」

— 今井浩恵, WWDジャパン(ダブリューダブリューディー ジャパン、2020年)

こうした対話を経ながら、SHIROはさらに前進していく。コロナ禍の2020年には、感染拡大からわずか1ヶ月でハンドリフレッシングシリーズを開発・発売。開発から製造・販売まで一貫して自社内製できる体制が、そのスピードを支えた。

2021年の売上は前年比50%増を達成し、2026年の報道では直近9年間で売上高が約12倍の約230億円に成長したと紹介されている。2021年には今井が代表取締役会長に就任し、現在はブランドプロデューサーとしてものづくりの司令塔を担っている。

ブランドのこだわり

香りづくりの哲学

SHIROの香りは、「自分たちが毎日使いたいもの」という一貫した問いから生まれる。今井はラベンダー畑を直接訪れ、気になる素材を見つけたら開発担当者にすぐ連絡し、1週間以内に自宅へサンプルが届く——そんなスピードでものづくりが動いている。

「例えば、香水は従来、ラグジュアリーブランドの高価なものか、ドラッグストアで販売されている安価なものの二択でしたが、『その中間にある心地よい香りのフレグランスが欲しい』と思い、つくりました。全ての基点は自分が欲しいかどうかで、どこかで買えるのであれば、それを私がつくる必要はないと考えています。」

— 今井浩恵

素材へのこだわり——「顔の見える生産者」

SHIROは原料の調達において、生産者を直接訪問し、その思いを汲み取ることを原則としている。シアバターはガーナの女性協同組合から直輸入を開始し、タマヌオイルはハワイ産からわざわざ沖縄産へ切り替え、地元シニア層の雇用創出にも貢献した。廃材や規格外の素材を積極的に活用するなど、エシカル(倫理的)な調達姿勢もブランドの根幹にある。

フレグランスシリーズにも同様の姿勢が貫かれており、ハイエンドラインの「シロ パフューム」では、水の代わりに徳島県の木頭柚子と北海道のエゾヨモギの蒸留水を使用。スキンケア製品にも用いる植物由来の成分が香りをより深みのある仕上がりに引き立てている。

パッケージデザイン——「削ぎ落とす」美学

パッケージは10年以上をかけて一貫して「よりシンプルに」という方向で進化してきた。2009年のローレル時代はフラスコ型のボトルや香りをイメージした色使いが特徴で、ブランドを知らない人にも手に取りやすいデザインを追求。2011年の「sozai LAUREL(ソザイ ローレル)」では素材の産地を明記し、生産者の顔が見えるエシカルなものづくりをパッケージそのもので表現した。

2015年の「shiro」移行後はさらに装飾を削ぎ落とし、2019年の「SHIRO」リブランディングではネイビーカラーと大文字ロゴで、世界のコスメ市場でも存在感を発揮できるデザインへと進化した。ルームフレグランスのディフューザーボトルには、香り名を印字しないシンプルなガラス製を採用。何度でも洗浄して使えるサステナブルな設計を貫いている。

年間100以上という驚異的な数の新製品をリリースしながら、この一貫したシンプルさは揺らがない。

香水ラインナップ

SHIROのフレグランスは、大きく「スタンダードフレグランスライン」と「シロ パフューム」の2系統に分けられる。

スタンダードフレグランスライン

日常使いを想定したラインで、ユニセックス(男女兼用)設計が特徴。オードパルファン(40ml)、ボディコロン、ルームフレグランスディフューザー、そして練り香水(固形香水)など複数のフォームが揃い、同じ香りを「身にまとう」「空間に広げる」「保湿しながら楽しむ」形で統一して体験できる設計になっている。

定番の香りは以下の5種が主軸を形成している:

  • サボン(SAVON): 石鹸をイメージした清潔感のある爽やかなフルーツ調。シトラスとフルーティなトップノートが軽やかで、幅広いシーンで使いやすい。
  • ホワイトリリー(WHITE LILY): 清潔感と透明感が際立つフローラル。リリーを主役に、マグノリアなどの花々がレイヤードされたリニューアル版では、より丸みのある印象になった。
  • ホワイトティー(WHITE TEA): シトラス調の爽やかさの中に深みあるティーの香り。落ち着きと清潔感を兼ね備え、ギフトとしても人気が高い。
  • アールグレイ(EARL GREY): ベルガモットのフルーティな甘さを持つ紅茶の香り。一杯の紅茶を飲む瞬間の豊かな薫りを再現した。
  • キンモクセイ(KINMOKUSEI): 金木犀の甘く華やかな香り。季節感を大切にするSHIROらしい香りの一つ。

2022年には、国際香粧品香料協会(IFRA、イフラ)の新規制に基づきサボンとホワイトリリーのフォーミュラを変更。その際も今井自らが顧客へ動画でその経緯と想いを説明した。

シロ パフューム(SHIRO PERFUME)

ブランド10周年を機に誕生した、より本格的な香水シリーズ。世界各国の調香師に「最も思い出に残っている香り」または「自身のアイデンティティ」をテーマに自由に調香を依頼し、寄せられた数多くの作品の中から選んで製品化したコレクションだ。調香師の名前は非公開だが、アジア・欧州・北米など多様な文化的背景を持つパフューマーが参加しており、各作品にはその調香師の記憶や世界観を綴ったストーリーが添えられている。

このシリーズ共通の特徴は、水の代わりに木頭柚子やエゾヨモギ、白樺などの蒸留水やエキスを配合していること。これにより香料の深みが増し、スキンケアへのこだわりとフレグランスの哲学が一本の線でつながっている。

代表的な作品には、アップルやアプリコット、ベルガモットと花々が重なる軽やかな「フリージア ミスト(FREESIA MIST)」、スパイスとウッディが交差する「スパイス オブ ライフ(SPICE OF LIFE)」(トップ:ジンジャー、ブラックペッパー、ベルガモット/ミドル:ローズ、カルダモン、シナモン/ラスト:インセンス、ウッディ)などがある。その後も新作が継続的に追加されており、2025年7月には新7種が発売された。

さらに2025年には、倉庫に眠っていた未使用の香料と廃番製品のラメ・ハンドジェルを再活用した「ゼロ コレクション フレグランス(ZERO COLLECTION FRAGRANCE)」からジェルパフュームが登場。サステナブルなものづくりの姿勢をフレグランスの文脈でも体現した。

ちなみに…

砂川市の「みんなの工場」は、2023年4月28日のオープンからわずか半年で来場者数が約20万人に達した。ガラス張りの工場内で製品の製造工程を間近に見学できるほか、自分でサボン・ホワイトリリー・ホワイトティーなど複数の香りをブレンドし、オリジナルのフレグランスをつくれる「ブレンダーラボ」が特に好評で、全国各地からファンが足を運ぶ”聖地”になっている。

今井は現在、ロクシタン(L’OCCITANE)などが地域と結びついたブランド価値の高め方を参考にしながら、砂川とSHIROが互いに成長する未来を描いているという。

参考文献