Sens Unique(センス・ユニーク)|パリの香水店の創業史と、作り手を伝える選品・対話の仕事

試香紙と本、コーヒーを配した温かな静物と、Sens Uniqueで扱うビューフォート・ロンドンのクール・ド・ノワール 香りの世界を広げる

香水には、語るべき物語がある。

レナータ・ファイズトディノワ

香水を探しているのに、最初から香料の名前を答えられるとは限らない。休暇が欲しい、誰かに抱きしめられたい。そうした日常の言葉を、香水選びの入口にする店がパリのマレ地区にある。Sens Unique(センス・ユニーク)は、複数の作り手の香水を集め、その違いを人との対話によって案内してきた専門店である。

棚には、エタ リーブル ド オランジェやピエール・ギヨームのように香水愛好家になじみのある名前と、ビューフォート・ロンドンやネアンデルタールなどが並ぶ。自分の知るブランドを試し直すことも、まだ知らない作り手へ進むこともできる。その選品の背景には、通訳として香水の仕事を覚えた店主の歩みがある。

基本情報

  • 名称:Sens Unique(センス・ユニーク)
  • パリ店開業:2011年
  • 創業・店づくりの中心人物:Renata Faizutdinova(レナータ・ファイズトディノワ)と、香水流通の仕事で出会った事業パートナー
  • 所在地:13 rue du Roi de Sicile, 75004 Paris, France
  • 業態:複数ブランドを扱う香水専門店・オンラインショップ
  • 公式サイト:Sens Unique

創業者と店の成り立ち

金融の勉強から、香水流通の通訳へ

レナータは、幼い頃から香水の仕事を夢見ていたわけではない。金融を学び、最初はファッションの仕事へ進んだ。香水との仕事上の出会いを問われたときの答えも、簡潔である。

まったくの偶然です。

レナータ・ファイズトディノワ、2015年

フランス滞在の3年目、ロシアの香水流通業者とフランスのメゾンをつなぐ通訳の学生アルバイトを引き受けた。ピエール・ギヨーム、クロード・マルシャル、マジュダ・ベッカリらとの商談に同行するうち、担当はフランス側の流通業務へ広がっていった。その流通業者は事業パートナーとなり、パリに店を開くという構想を共有することになる。

2011年、マレ地区で10ブランドから始める

パリ店が開いたのは2011年。出発時の選品は10ブランドだった。レナータが目指したのは、まだ知られていない香水との出会いをつくることだった。マレ地区は、自分自身が近くに暮らし、親しんでいた場所でもある。小さな店や芸術に触れる機会があり、知らないものに関心を寄せる人々が行き交う地区を、店の居場所に選んだ。

2013年の店頭には、香水を挟むように黒い現代的なイーゼルと金色の古風なイーゼルが置かれていた。当時の訪問記は約20ブランドを記録し、スタッフがピエール・ギヨーム、マジュダ・ベッカリ、MDCIなどの香水について話す様子を伝えている。作品を展示する道具と、作り手について話す人。その組み合わせが、初期の売場を形づくっていた。

カーンへの展開と、自宅で試すための箱

歩みはパリだけにとどまらない。2015年2月には、ノルマンディー地方のカーン、サン=ソヴール広場への新店舗開設が報じられている。これは過去の展開であり、現在の公式店舗案内に掲載されるのはパリ店である。

2016年12月には、月ごとのテーマで香水を届けるSens Unique Boxの最初の箱が登場した。6本の2mLサンプルを組み合わせ、5本はテーマに沿って、もう1本は新作や個人的な選択による驚きを添える構成だった。旅行、文学、音楽、あるいは革やローズといった主題から、違うブランドを横断して嗅いでみる。選品そのものを一つの読み物のように組む試みである。

最初のアイデアは、誰もが自宅でSens Uniqueの体験を楽しめるようにすることでした。

レナータ・ファイズトディノワ、Sens Unique Boxについて

店へ行けるかどうかにかかわらず、香りを試す時間を届ける。その発想は、ボトルを並べた売場を、家での比較へと広げた。ここでの箱の説明は開始時の仕組みであり、現行の定期便の募集案内ではない。

複数ブランドを選び、作り手を伝える

知られたニッチブランドと、新しい発見を同じ棚に

2026年10月の公式サイトには、エタ リーブル ド オランジェ、ピエール・ギヨーム・パリ、ラボラトリオ オルファティーボ、ビューフォート・ロンドン、ネアンデルタールなど、複数ブランドの販売ページがある。たとえばエタ リーブル ド オランジェには「You or Someone Like You」や「The Ghost in the Shell」、ビューフォートには「Coeur de Noir」や「Fathom V」が掲載されている。名前だけのブランド一覧ではなく、個別の香水を扱うマルチブランドの売場である。

この幅は、世界中の有名銘柄をすべて集めるという意味ではない。2022年時点でレナータは、25平方メートルの店に約30ブランドを選び、それぞれに十分な場所を与えると説明していた。広く流通するようになったブランドを外し、新しい作り手へ入れ替えることもある。棚の規模を際限なく増やすより、店が案内できる範囲を選び続ける考え方だ。

同じ2022年の説明では、ネアンデルタール、ビューフォート、ナゾマット、エリスが、意外性のある香水を求める顧客の例として挙がっていた。ただし、当時の顔ぶれをそのまま現在の取扱一覧にすることはできない。香水店の個性は、扱ったブランドの歴史と、今の棚の両方に現れるのである。

調香師のラボで学び、店頭の説明へつなぐ

売場で作品を伝えるには、香水そのものを理解する仕事も欠かせない。ピエール・ギヨームは2013年、Sens Uniqueとの取引を始める際、販売担当者を自宅へ招き、1週間ラボで過ごしてもらったと語っている。作品を理解し、自分と同じように話せるようにするためだった。

さらに彼は、フェドンの発表時、その担当者が新作を一度嗅ぎ、5分後の目隠しテストで名前を当てたという出来事を挙げている。これは調香師が語った当時の具体例である。取扱ブランドを増やすことに加え、香りを覚え、違いを説明できる人を育てることも、店と作り手の関係に含まれていた。

ピエール・ギヨームとの協働が映す店の個性

その関係から生まれた一例が、2020年に紹介された「La Nuit de l’Orchidée(ラ・ニュイ・ド・ロルキデ)」である。レナータが求めたのは、店の精神や雰囲気を映す香水だった。素材の指定から始めず、暗さ、温かさ、バロックと現代性が同居する感覚を伝えたという。

ピエール・ギヨームとの関係は、最初に紹介したパルフュムリー・ジェネラルから、複数コレクションの販売、作り手を招く催しへと続いていた。彼自身がデザインした専用カウンターも、その世界を伝えるための道具だった。共同制作の香水は、店が自社製品だけを売る場所へ転換したことを意味しない。複数の作り手を紹介する仕事から生まれた、一つの協働なのである。

接客と試香の時間

香料名の代わりに、今日の気分から話し始める

レナータが接客の入口に置く問いは、香水の専門知識を試すものではない。

今日は、何があなたを喜ばせてくれるでしょうか?

レナータ・ファイズトディノワ、2015年

休暇への憧れや、ロマンティックな気分、抱擁が欲しいという言葉でもよい。香りをどう感じるかは人によって違う。だから、言葉をあらかじめ狭く決めず、相手の反応に応じて物語や素材の説明を使い分ける。通訳から始まった仕事は、ここでは客の言葉と香水をつなぐ仕事になっている。

購入を急がず、選ぶ人の速度に合わせる

2022年、レナータは一本を選ぶまでの時間を「15分から6か月」と表現した。1時間をかけることも珍しくなく、客が自分の速度で訪れ、体験し、購入を決めることを重視していた。木や金色、落ち着いた色調、腰を下ろせる椅子を使った空間も、その時間を過ごすために考えられている。

現在の公式案内では、パリ店は毎日12時から20時まで。午後から夜にかけて開く店は、仕事のあとに香水へ向き合う時間も受け止める。自分が何を欲しいのか、うまく説明できなくても会話を始められること。センス・ユニークの試香の特徴は、その入口の広さにある。

歴史年表

年・時期 出来事
2011年 パリのマレ地区で開店。10ブランドの選品から出発。
2013年 訪問記に約20ブランドの売場が登場。ピエール・ギヨームが販売担当者のラボ研修について語る。
2015年2月 カーンへの新店舗開設が報じられる。
2016年12月 Sens Unique Boxの最初の箱。テーマと驚きの一本を組み合わせる。
2020年 ピエール・ギヨームとの協働作「ラ・ニュイ・ド・ロルキデ」が紹介される。
2022年 レナータが約30ブランドの選品と、購入を急がせない接客を語る。
2026年10月確認 公式店舗案内はロワ・ド・シシル通り13番地のパリ店。複数ブランドのオンライン販売も展開。

ちなみに…店名に重なる「一方通行」

フランス語のsens uniqueは「一方通行」。店のあるロワ・ド・シシル通りの交通と、嗅覚を表すsensという語を重ねた名である。店名の案は、かつて一緒に働いていた人から生まれた。新しい香水を知ったあとでは、以前の香水選びには戻れない。レナータは、そのもう一つの意味も店名に読み込んでいた。

参考文献

店舗・取扱情報の確認日:2026年10月15日。